whiteeeenと青春恋愛映画の組み合わせは何故ウケるのか 音楽担当が何故か映画を語る

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2016.8.8
whiteeeen

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人はなぜ映画を観るのだろうか。

すごく哲学的な問いみたいになってしまったが、そうではない。僕は音楽ジャンルの担当だし、映画館には数年に一度ペースでしか行かない、本来は映画の「え」の字も口にする権利のない人間で、SPICE映画担当の藤本氏からはこのコラムを書くこと自体に懐疑的な目を向けられている。だから、もっと当たり前の話をしようと思っている。

人が映画を観る理由、映画を面白いと感じる理由はさまざまだが、出ている俳優目当て、その監督の作品は全部観る、みたいな人はややこしくなるので今回は除外して、作品そのものに対して、観る者は一体何を期待しているのか?について考えたい。

アクション映画が好きな人は俳優の一挙手一投足にアドレナリンが出てテンションが上がったり、アクションそのものの上手い下手に感動したりしなかったりする(らしい)。SFものが好きな人はスペクタクルな映像のスケールや設定・世界観に対するワクワクを、ミステリーだったら謎解き要素やどんでん返しのサプライズを、ホラー映画は単純に肝試し的スリルと恐怖を、僕たちに与えてくれる。ヒューマン系のストーリーはとにかく感動してダバダバ泣いてストレス発散したい層に大ウケだ。つまり、このあたりのジャンルは、単純に眼前で繰り広げられる物語や世界観そのものを楽しめるタイプ。映画好きな人だったらそれだけで観る理由になりそうだ。では、恋愛映画はどうだろう。

恋愛映画。いわば他人の色恋である。

想像してみてほしい。ファミレスかどこかで、特に親しくもない知り合いから恋愛事情やらノロケ話を2時間にわたって一方的に聞かされる状況を。……完全に地獄だ。恋愛映画だって、一歩間違えればそうなってもおかしくないはずなのだが、実際には映画の主要ジャンルに君臨している。なぜなのか。

僕は、それは自己投影だと思っている。「自分もこんな恋愛がしてみたい」「してみたかった」という憧れの気持ちも多分に含まれているだろうが、「自分も」と言っている時点でそれは既に自己投影していると言って良い。「妄想」と置き換えても可だ。恋愛映画の市場を支える乙女やカップルたちは、きっとこんなことを思って観ているはずだ。「あんなシチュエーションで告白されたら」「あんな風に抱きしめられたら」「結婚式中に元彼が乗り込んできたら」……安心してほしい。基本的にあなたの人生にそんな事態は起きません。でも、映画の中ではそんなロマンチックでドラマチックな恋愛を疑似体験し放題なのである。やったね。

つまり、他人の色恋沙汰という本来何の興味も持てないお話を、イケメン&美女のキャスティングと普通の人生では起こり得ないシチュエーションやストーリーという力技で持って、思わず自分に置き換えて「ステキィ!」と舞い上がってしまいたくなる、強烈なコンテンツに仕上げているのが恋愛映画ジャンルなのである。しかも、ちゃんと幅広い層が自己投影できるように、中高生の甘酸っぱい恋が題材となっているものから、オトナの恋愛事情、ドロドロ不倫略奪ものまで、視聴者の年齢や嗜好、恋愛事情にあわせたラインナップが揃っている。観る側は、そのときの自分が一番没入できそうな作品を観に行けば良いという仕組みだ。

これで自己を投影しながら没入して楽しむタイプの映画=恋愛映画という仮説が完成した。そうなると、「いかにストーリーに入り込めるか」「自分に置き換えたときにいかに魅力的であるか」が、恋愛映画にとってとても重要になってくる。それらを実現するための大事な要素は、まずさっきも書いたキャスティングだ。よくあるパターンとしては“イケメン×美女”、“サエない男×美女”というやつ。なぜか“イケメン×残念顔の女子”というものはあまり無く、あったとしても可愛い女優が残念役をやっていたりする。このあたりはメインターゲットとなりそうな女子層の思考パターンとプライドによるものである気がするのだが、あまり突っ込むと燃えそうなので触れない。……話がズレたが、要するに福士蒼汰とか山崎賢人とか本田翼とか広瀬すずを恋愛ものでよく見かける気がするのは、映画を通した疑似恋愛と妄想を、より魅力的なものにする手段なのである。

いかに作品に入り込ませるかを考えたときの、もう一つ重要な要素。それは音楽だ。これは恋愛映画に限った話ではないが、劇中の何気ないシーンでかかるインストでも作品の雰囲気作りに一役買うし、クライマックスを彩る主題歌に至っては絶大な役割を果たす。良いストーリーに良い音楽が流れる、良い音楽が良いストーリーに使われている、という相乗効果は強烈で、映画のサントラCDという商品形態が一定のシェアを保ち続けているのもそのためだろう。余談だが、筆者はRADWIMPSが大好きなので本来興味のないアニメ映画『君の名は。』を絶対に観に行こうと思っているし、そのくらいの威力が映画主題歌にはあるということだ。

特に、ロマンチックでドラマチックな雰囲気づくりが重要な恋愛映画において、クライマックスにどんな主題歌が流れるのかは、その作品の良し悪しを決定づけることになり、ひとつの疑似恋愛が観るものにとって素晴らしいものになるかどうかを左右する、最重要課題である。万全のキャスティングとストーリーでもって、自己投影したくなるような魅力的な恋愛を演出しきった上での最後の仕上げという、とても重要な役割を果たすことになるのだ。“イケメン×美女”のキスシーンでサンボマスターが流れるようではダメなのだ。僕は好きだが。

で、ここからが本題。

そういう観点で昨今の恋愛映画の主題歌を眺めていたら、面白い存在に行き当たった。今夏公開の『青空エール』で主題歌を担当する、whiteeeenだ。このwhiteeeen、歯磨き粉の名前では決してない。meri(メリ)・kana(カナ)・hima(ヒマ)・noa(ノア)という4人からなる女性ボーカルユニット。勘の良い方はお気づきかもしれないが、“eeee”と伸ばすネーミングはそう、ざっくりいうと、あのGReeeeNの妹分アーティストなのである。GReeeeN同様、一切の顔出しを行っておらず、その声と歌のみで勝負しているのも特筆すべき点だ。ちなみに「4つの「e」はGReeeeN同様、メンバーの人数、笑顔の歯をイメージして名づけられた」(オフィシャルサイトより)そうなので、歯磨き粉説もあながち遠くはないのかもしれない。

彼女たちが結成・デビューとなったキッカケは、GReeeeNの「愛唄」をリメイクした「愛唄~since 2007~」を歌うユニットを募集するために開かれたオーディション。そこでなんと42万5091人にも及ぶ応募者の中から、“声”のみで選ばれた4人だというから凄い。そんな鳥取県の人口にも迫ろうかという人数の中から彼女たちの声が選ばれた最大の要因は、無垢な透明感なのだという。この選考基準は、「愛唄~since 2007~」が主題歌として起用された映画『ストロボ・エッジ』の存在が大きいことは想像に難くない。この『ストロボ・エッジ』、学年一の人気者イケメンと、いまいちパッとしない純粋な女子高生の恋愛模様を綴った、少女漫画原作のバリバリの恋愛映画である。『愛唄』もまたバリバリの恋愛ソングの名曲。王道恋愛もののクライマックスに流れる王道恋愛ソング、まさに最強の組み合わせではないか。

だが、ひとつ考えてみてほしい。10代の恋愛もののこの映画、もしGReeeeNの歌う「愛唄」が起用されていたとしたら……ちょーっとばかり、コッテリしすぎていたのではないか。「愛唄」発表から10年近く経ち、メンバーも筆者同様にそれだけ年を重ねてきている。これはもちろんGReeeeN自体がどうこうという話ではなく、10代女子をターゲットにした映画において、より共感と自己投影を得るにはどうしたら良いのか。純粋な女の子の話なのだからピュアな歌声が合うよね、という話。30代向けならGReeeeNでドンピシャだっただろうし、中高年向けだったら小田和正あたりを起用した方が刺さりそう、そういうことだ。

この「愛唄~since 2007~」、実際にiTunes/レコチョク他、計8配信サイトでチャート1位を記録し、レコチョクアワード月間最優秀楽曲賞4月度シングル月間1位獲得するなど、とても大きな反響があった。劇場に足を運んだ女子たちが、スクリーンで繰り広げられる恋模様と福士蒼汰の格好良さ、そしてこの名曲にヤられて、帰り道で早速主題歌をダウンロードする絵が眼に浮かぶようだ。時代に合っている。また、これほどのヒットとなった要因としては、顔出しをしていないことによって、アーティストイメージのフィルタを通さずすんなり曲自体が入ってきて映画に溶け込み、映画に入り込んだ視聴者にも“自分の歌”として違和感なく寄り添える強みもあったのではないだろうか。GReeeeNという稀代のソングライターと組み、若年向け恋愛映画主題歌に特化したようなこの立ち位置は、ファン層やターゲットが細分化されている現在の音楽シーンという側面から見ても、とても理にかなっている。

今夏、whiteeeenが主題歌を務める青春&恋愛映画が再び公開されることになった。三木孝浩監督による『青空エール』である。こちらは2008年から別冊マーガレットで連載され340万部を突破した河原和音原作の同名漫画を実写化したもので、北海道・札幌を舞台に、ブラスバンドに憧れ吹奏楽の名門校に入学した高校1年生女子と、甲子園を目指す同級生の野球部員の恋模様を中心とした青春物語……という、もうあらすじを読んだだけで30代の筆者が何故か気まずくなるくらいの、キラキラした青春群像とキュンキュンな恋模様が想像出来る作品だ。三木監督はほかにも『アオハライド』なんかも手掛けているこの道のプロだし、主演が土屋太鳳、竹内涼真というのも、もう……はぁ。眩しくて直視できない。こちらの主題歌として、whiteeeenが再びGReeeeNの名曲をカバーしたのだ。曲は、あの「キセキ」。

可愛い。

可愛い。

かっこいい。

かっこいい。

「キセキ」といえば、テレビドラマ『ROOKIES』の主題歌であり、GReeeeNにとって初のオリコン1位獲得曲。あの当時、『ROOKIES』と「キセキ」の相乗効果は半端ではなく、映画ではなかったものの作品に自己投影するという役割を存分に果たしていた。運動部に所属したことが通算5ヶ月しかない筆者をバッティングセンターに通わせ、やっぱ野球っていいよなぁ、ちゃんと青春しとけばよかったなぁ、と謎のノスタルジーと後悔まで感じさせたほどである。『青空エール』もまた野球もの。「キセキ」との噛み合わせの良さは先人が証明している。間違いない。

しかし、また「愛唄」同様に例のターゲット層問題が浮上してくる。『ROOKIES』はもう8年も前(その事実にビビった)の作品な上、あれは恋愛要素は薄く、不良が野球で更正しながら夢を追うという熱血ストーリーだった。それゆえ「んなぁしたぁぁぁ~」というあの歌い出しに日本中がグッときたワケだ。それを土屋太鳳×竹内涼真の『青空エール』でやってしまうとどうだろうか。きっとその瞬間に「ったりめーだ!」と市原隼人がカットインしてきてしまうだろう。うん、脳内で試したところ、やっぱりちょっとテイストが変わってしまった。そこでwhiteeeenの出番なワケですよ。

「キセキ~未来へ~」と題したwhiteeeenの新曲。実際に予告編動画を観ても、あの「んなぁしたぁぁぁ~」が、女子のちょっとあどけなさも含んだ透明感ある声によって「明日ー」とスッと入ってくる。それでいて曲自体は抜群にエモくてドラマティックだから、二人の恋の行方とストーリーの起伏を間違いなく盛り上げてくれそうだ。というか、これは泣いちゃうやつ。何より土屋太鳳が可愛いし。原作者の河原和音さんも「青空エール』を描いている間、ずっと聴いていた曲なので、主題歌になって嬉しいです。きれいな声で爽やか切ない気持ちになります。whiteeeenさんの「キセキ~未来へ~」とともに場面映像が流れるMV映画ver.は本当によかったです。サビの盛り上がりで泣きました」と太鼓判を押しているそうだ。

作品にしっかり合う名曲を、顔出しをしないことによって極力余計なイメージを与えずに、しかも透明感たっぷりに歌うwhiteeeen。“青春恋愛映画×whiteeeen”という組み合わせは、今後ある種の黄金パターンとなっていくのかもしれない。“何気ない日常を綴った映画×くるり”とか、“マッドな世界観のアニメ×凛として時雨”みたいな安心感。ともかく『青空エール』に行く予定の人もそうでない人も、特に恋愛映画でキュンキュンするのが好きな方は、一度whiteeeenをチェックしてみてはいかがだろうか。


文=風間大洋

『青空エールペアチケットプレゼント企画
※2組4名さまに映画の前売り券をプレゼント


応募方法は、SPICE【音楽】のアカウントをフォローの上、下記ツイートをRTするだけ!

https://twitter.com/spice_mu/status/762574407902502913​
当選者の発表はご本人へのDMでの連絡とかえさせていただきます。応募期間は2016年8月18日(木)23:59まで!

 

リリース情報
whiteeeen ニューシングル「キセキ~未来へ~」
 8月17日発売

価格:1,180円(税込)
品番:UPCH-5883
<CD収録曲>
1. キセキ~未来へ~ ※映画『青空エール』主題歌
2. メロディー ※映画『青空エール』挿入歌

配信情報
GReeeeNの名曲 「キセキ」のカバー曲・「キセキ~未来へ~」(映画『青空エール』主題歌)
iTunes、レコチョク、 他サイトにて好評配信中!
iTunes http://po.st/kisekimiraieitms
レコチョク http://po.st/kisekimiraiereco

 

上映情報
『青空エール』
8月20日(土)全国東宝系公開
 

©2016 映画「青空エール」製作委員会 ©河原和音/集英社


【キャスト】
土屋太鳳 竹内涼真 葉山奨之 堀井新太 小島藤子 松井愛莉 平 祐奈 山田裕貴
/志田未来/上野樹里 ほか
 
【スタッフ】
原作:河原和音「青空エール」(集英社マーガレットコミックス刊)
監督:三木孝浩(みきたかひろ)
脚本:持地佑季子
(C)2016 映画「青空エール」製作委員会
(C)河原和音/集英社
公式サイト:http://www.aozorayell-movie.jp/
 
【ストーリー】
ブラスバンドの応援に憧れる小野つばさは、吹奏楽部の名門・白翔高校に入学する。だが、トランペット初心者のつばさ。レベルの高い猛練習についていけず、何度も挫折しそうになる。そんなつばさを勇気づけてくれたのが、クラスメートで野球部員の山田大介。お互い夢に向かって励まし合うふたりは、ある「約束」をかわす。それは、いつか甲子園に大介が出場し、アルプススタンドでつばさがトランペットで応援すること。いつの間にかつばさには、大介へのほのかな想いが芽生えていた。1年生の夏、地区予選の決勝まで勝ち進んだ野球部を、吹奏楽部が応援することに。ところが途中出場した大介のミスで惜しくも敗退。グラウンドで立ち尽くす大介のために、つばさは一人でトランペットを吹いてしまう。謹慎処分となったつばさを心配して訪ねて来た大介。ふくらむ気持ちを抑えきれずに、つばさは大介に「好きっていったら困る?」と告白してしまう。つばさと大介の恋の行方は?そして、ふたりの夢のたどりつく先は?
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