故・蜷川幸雄の魂を森田剛、宮沢りえが受け継ぐ。唐十郎の伝説的傑作『ビニールの城』開幕

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宮沢りえ『ビニールの城』

宮沢りえ『ビニールの城』


蜷川幸雄の追悼公演『ビニールの城』が、8月6日(土)Bunkamuraシアターコクーンにて開幕した。

本作は80年代、石橋蓮司・緑魔子らの劇団第七病棟に唐十郎が書き下ろした戯曲。もともとシアターコクーンの芸術監督・蜷川が今年、演出する予定だったが、5月に亡くなったことを受け、かつて蜷川スタジオに在籍、状況劇場を経て新宿梁山泊を旗揚げし、「唐十郎・蜷川幸雄」両名の薫陶を受けた金守珍が演出を手がけた。

腹話術師の朝顔(森田剛)は、8か月前に別れた相棒の人形「夕顔」を探し続けている。生身の人間と向き合うことができない朝顔の前に、かつて朝顔と夕顔が暮らすアパートの隣室に住んでいたと語るモモ(宮沢りえ)が現れる。モモは朝顔に人形など忘れて自分の想いを受け止めてほしいと必死に乞うが朝顔はつれない態度。そんなモモへの愛ゆえに「夫」を演じる夕一(荒川良々)は、もはや自分自身が人形である夕顔であると混同している。実はモモはアパートの一室に捨て置かれていた“ビニール本”をのヌードモデルだった。「夕顔」を探し続ける朝顔は奇妙な男たちに出逢う中で徐々に混乱を深めていく。

朝顔に向かってモモは叫ぶ。「助けて、ビニールの中で苦しいあたしを!」と。

『ビニールの城』

『ビニールの城』

六平直政『ビニールの城』

六平直政『ビニールの城』

朝顔を演じる森田は、かつて『血は立ったまま眠っている』『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』で、モモ役の宮沢は『盲導犬-澁澤龍彦「犬狼都市」より-』『海辺のカフカ』『元禄港歌-千年の恋の森-』などで、蜷川の魂を直接受け止め、役者のポテンシャルの限界に挑戦した二人だ。初日前に行われた公開稽古では、腹話術の人形が数多く並ぶ怪しげな倉庫、さらに水場のある不思議なバーを舞台に、モモの愛を受け入れられずかたくなに心を閉ざし続ける朝顔と、それでもひたすらに愛を求め続けるモモの姿が観るものの心に激しい痛みを残していた。

本作の上演について、森田、宮沢、荒川から以下のコメントが届いている。

■森田剛

この『ビニールの城』は蜷川さんが携わった最後の作品になりますが、こんなに素敵な出演者、スタッフの方が集結していることは蜷川さんが引き寄せてくれた奇跡だと思っています。稽古を通じて、皆さんの力、思いが大事な作品だと改めて実感しました。より一つになって、初日を迎えたいです。稽古中は、蜷川さんが見守ってくれているのをみんなで感じながら、演出の金守珍さんを信じてついていきました。公演が終わった後に自分と向き合って、蜷川さんへ思いを報告できたらいいなと思っています。今回、人形を介してしか人と向き合えない腹話術師を演じるにあたり、いっこく堂さんに腹話術の指導をしていただきました。短期間の稽古でしたが、僕の出来ることを引き延ばして下さり、お芝居の延長で腹話術が出来る感覚を教えていただきました。唐十郎さんの作品はセリフが力強く、なぜだかわからないけど感動してしまう言葉が多いです。なかなかこのような作品に出会えることはないと思います。皆さん色々な視点で観劇されると思いますが、僕らは自信を持ってこの作品をお届けする覚悟はできています。素敵な言葉たちをぜひ感じて下さい。

『ビニールの城』

『ビニールの城』

■宮沢りえ

大好きな蜷川さんからそっと、手渡されたモノを、ギュッと握りしめたまま、森田さんを始め魅力的な共演者と、最高のスタッフと、密度の高いお稽古を重ねました。掌の中にあるのはやっぱり、志高く作品を創るという、魂でした。劇場に観に来てくださった方に、そして、どこかで見守ってくれてる蜷川さんに、その魂を思いっ切り、届けたい。それだけです。

宮沢りえ『ビニールの城』

宮沢りえ『ビニールの城』

■荒川良々

(初日に向けて)一生懸命やります!

(今回が初の唐戯曲への挑戦となるが)
戯曲で読んでる時はわからなかった事が稽古を重ねていくうちに台詞が身体に沁みてきます。
(『ビニールの城』の魅力は)観劇してくれる人が決めて下さい。
 

なお、上演されるシアターコクーンのロビーや階段の壁や柱には、これまで蜷川が手掛けた数多くの作品の舞台写真が飾られていた。もし早めに劇場に向かうことが可能であれば、時間の許す限り、蜷川の世界に想いを馳せていただきたい。

公演情報
芸術監督 蜷川幸雄・追悼公演『ビニールの城』
 
■日程:2016年8月
■会場:Bunkamuraシアターコクーン
■作:唐 十郎
■演出:金守珍
■監修:蜷川幸雄
■出演:森田 剛、宮沢りえ、荒川良々、
江口のりこ、大石継太、鳥山昌克、柳 憂怜、広島光、
石井愃一、金 守珍、六平直政 ほか
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