「あいちトリエンナーレ2016」参加アーティスト 制作レポート③ ダミコルーム&ダニ・リマ公演
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ダニ・リマ『Little collection of everything』プレ公演より
〜アート鑑賞のプレ体験ができる「ダミコルーム」と、遊び心あふれるダニ・リマ公演『Little collection of everything』の制作現場より〜
今回の「あいちトリエンナーレ」は、【現代美術】や【舞台芸術】と並ぶ3本柱のカテゴリーとして、【普及・教育】が挙げられているのも特色のひとつ。文化芸術を鑑賞するだけでなく、“日常への浸透”を目的に、「みる」「であう」「たいけんする」「つくる」「かんがえる」「しる」「しらべる」といった活動も多く展開しているのだ。年齢を問わず誰でも楽しめるものが用意されているが、今回はその中でも、“子どもと大人が一緒に楽しめる”プログラムをご紹介。
まずは、全く新しい試みとして国際展に導入された「ダミコルーム」から。「愛知芸術文化センター」12階 アートスペースHに開設されたこの部屋は、「ニューヨーク近代美術館」の初代教育部長を務めたビクトル・ダミコ(1904-1987年)が考案した装置「アートティーチング・トイ」の展示とコラージュ(バラバラの素材を自由に組み合わせて造形作品をつくる)の体験ができる場だ。
台の四面にある鍵盤を押すことで、光があたり動く色の噴水になる「カラー噴水 光の泉」
「子どもから大人まで一人一人が美術に参加することによって情操面で豊かになり、人間性が育まれ、生活が活気づけられていると信じている。」(「こどもアートカーニバルin Aichi」1996年、こどもの城造形事業部編より引用)というダミコは、視覚・聴覚・触覚・知覚・運動感覚といった感覚をひらく19種類の「アートティーチング・トイ」によって、色や光、形、素材などとの新鮮な出合いを提供。作品を鑑賞したり創作する際、この体験が土台となって新い発見や驚きを後押しし、アートへの興味を触発するというものなのだ。
報道陣に事前公開されたこの日は、実際に子供たちが「アートティーチング・トイ」やコラージュを体験。みな好奇心いっぱいの眼差しで装置を楽しんでいた。
いろいろな形や色のパーツを組み合わせて簡単にデザインをアレンジできる「フリーデザイン ベロクロ」
触ったり覗いたりしながら、さまざまな角度から色、光、形、リズムなどを体験できるトイに、子どもたちは夢中!
ここでモノ作りの気持ちが高まったら、“創意工夫を体験する場”として設けられた隣室の『キャラヴンファクトリー』へ。その場にある材料と道具を使ってオリジナルの〈なにか〉を作ることができる「とことん」プログラムや、気軽に参加できる15分程度の「のびのび」プログラムなど、いずれも当日受付なのでぜひ体験を。
こちらが「キャラヴァンファクトリー」。「いつでも」プログラムもあるので気軽に訪れてみよう
場所/愛知芸術文化センター 12階 アートスペースH
期間/毎日(休館日は除く)
時間/10:00~17:00(最終受付16:30)
対象/だれでも(未就学児は保護者同伴)
参加方法/当日受付(混雑時は整理券を配布)
場所/愛知芸術文化センター 12階 アートスペースG
期間/「とことん」プログラムは8月全日・9月と10月の土日祝、「のびのび」プログラムは9月と10月の平日、「いつでも」プログラムは会期中毎日 ※いずれも休館日は除く
時間/10:00~17:00
対象/だれでも(未就学児は保護者同伴)
参加方法/「とことん」プログラムは1日4回定時開催で当日先着受付(詳細は公式サイトを参照)、「のびのび」プログラムは当日受付(混雑時は整理券を配布)
続いては、【舞台芸術】の〈パフォーミングアーツ〉プログラムより、ダンサーで振付家のダニ・リマが演出と振付を手がけた『Little collection of everything』をご紹介。現在オリンピックが行われているリオデジャネイロを拠点に活動するブラジルのカンパニーで、今回が初来日公演となる。
主宰のダニ・リマは先鋭的なサーカス集団の創設者を経て、1997年に現在のカンパニーを結成。これまでブラジルやヨーロッパの主要なフェスティバルで勢力的に作品制作やワークショップを行ってきた。本作はリマが初めて子ども向けに創作した作品で、舞台写真からもわかる通り、舞台上には多種多様でカラフルな日用品が数多く登場。4人のダンサーがこれらを使ってさまざまなパフォーマンスを展開する。
公演初日を数日後に控えたこの日、子ども向けのワークショップが開催され、ダニ・リマと出演ダンサーのひとり、清水悟のインタビューも行われた。まず、初めて子ども向けの作品を創作したことについては、
「これまでの大人を対象とした公演では、ダンサーたちはもっとゆっくりなテンポの動きで言葉もあまりありませんでしたが、子ども向けの作品を創るにあたって言葉が必要になってきました」と、リマ。
今回の日本上演では、8割が日本語、2割がポルトガル語での上演のため、日本の小さな子どもでも理解しやすいものになっている。「月に持っていくもの」や「お母さんが遊ばせてくれないもの」といった言葉の掛け合いが頻繁に行われ、誰もが子どもの頃に遊んだようなシーンが展開されていくのだ。
出演ダンサーの清水悟とカンパニー主宰で演出を手がけたダニ・リマ
また、日本文化の大ファンというリマに、日本上演にあたって日本らしい日用品もアイテムとして取り入れたかどうかを尋ねると、
「仏像や盆栽などを使うことも考えましたが、ブラジルの文化を日本に持ってくることも大事なので変えていません。でも、ペンや紙、ペットボトルや脚立など、日本の家庭でも使われるものがほとんどですよ」と応えた。
ワークショップでは、日用品を使って子どもたちが協力し合い、自由な発想で「スペシャルヒーロー」を生み出す体験をした
さらに日本の観客に向けて、
「人生の中で詩的な場面に出くわすと、人生の深さを知ることになります。作品を観に来こられる方たちも、ブラジルの動作や仕草など、詩的な見方をしていただければ」と、メーセージを送った。
『Little collection of everything』プレ公演の様子。上演が進むにつれて、言葉遊びから徐々に身体表現へ
『Little collection of everything』はオープニング作品として上演され、名古屋公演は終了しているが、8月17日・18日の2日間にわたり豊橋公演が行われるので、こちらへぜひ。詳細は下記及び公式サイトを参照。
日時:8月17日(水)15:00、18日(木)15:00
会場:穂の国とよはし芸術劇場 PLAT アートスペース
料金:当日一般3,500円、学生(25歳以下)1,500円、こども(4歳~中学生)500円、3歳以下無料(膝上鑑賞)
上演時間:50分
■テーマ:虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅
■芸術監督:港千尋
■日時:2016年8月11日(木・祝)~10月23日(日) 74日間
■会場:名古屋地区/愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場、栄会場、名古屋駅会場 豊橋地区/PLAT会場、水上ビル会場、豊橋駅前大通会場 岡崎地区/東岡崎駅会場、康生会場、六供会場
■料金(国際展):◆普通
■問い合わせ:あいちトリエンナーレ実行委員会事務局 052-971-6111
■公式サイト:http://aichitriennale.jp/