YUTORI-SEDAI、the shes goneと共に咲かせた愛の花束「俺らを沢山笑顔にしてくれた分、あなたをこれまで以上に笑顔にしたい」
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YUTORI-SEDAI『"Reason for Smiling" Tour 2025』2025.07.17(THU)東京・新代田FEVER
2025年7月17日(木)、YUTORI-SEDAIが東京・新代田FEVERにて『“Reason for Smiling” Tour 2025』のツアーファイナルを迎えた。2025年4月にドロップしたメジャー1st EP「blanket」を携え、全5公演を展開してきた対バンツアーのラストには、the shes goneを招集。脳の奥がほのかな甘さで痺れ、少しずつ小さくなっていく幸福の塊に名残惜しさを感じてしまう、そんな飴玉を溶かすみたいな一夜を2組は描き出した。
the shes gone
「今日という1日を甘い記憶にしていこうか」と「甘い記憶」で滑り出したthe shes goneは、ほわほわなんて形容詞がよく似合う西尾マサキ(Gt)のまろやかなギターと松田ナオト(Ba)がソフトに刻む音符を先頭に、細部も思い出せないほどに些細で、それでも確かにかけがえのない記憶を閉じ込めたアルバムのページを捲っていく。
「夏を楽しみましょうか」と連ねた「きらめくきもち」も、緑に染まったフロアで左右に振られた沢山の手が風に吹かれる花畑とオーバーラップした「ラベンダー」も、決して特別な台詞が綴られているわけじゃない。<初めてを君に送るよ>(「きらめくきもち」)<好きになってく 君を好きになってく>(「ラベンダー」)とありふれた言葉が、時に恋人に囁くような、折に傷口を引っ掻くような4人の演奏を通じて、一切の濁りなく飛んでくるゆえに、兼丸(Vo.Gt)の唇から放たれる誰もに当てはまりうる言葉は、肩を寄せ合った私と僕のための歌としてそれぞれの思い出と重なるのだ。
「上手くいかないことばっかりじゃない、この世の中は。日々戦って、なんとかやりくりして今日を迎えている中で、その流した汗が無駄なんじゃないかって思っても、どこかで誰かが見てくれたらそれだけで良いんだと1秒1秒頑張るあなたと共に戦うための歌」と「エイド」で、涙を滲ませた暮らしの隣にthe shes goneの音楽が存在している事実を打ち立てれば、ラストは「嫌いになり方」で終止符を。熊谷亮也(Dr)の走り出すドラムロールに乗せて、この足を縛りつける鎖をぶった切ろうと足掻く前のめりな背中を見せつけ、「YUTORI-SEDAI、後は任せたぞ!」の叫びと共に舞台を降りた。
YUTORI-SEDAI
SEが流れ始めると、黄色いバックドロップが青白い舞台に浮かび上がった。「東京、このツアーで1番の時間にしよう!」と開幕を飾ったのは「23×3」。2024年3月の2ndワンマンや同年11月の3rdワンマンでもオープニングナンバーに抜擢された一曲で、青い春に託した煌めきを乱反射させると、「ぎゅっとして、」「ベストシーン」を重ねていく。一音目が鳴らされた刹那、フロアがパッと華やいだのを肌で感じた「ぎゅっとして、」も、<アルバムにも残らないほどの 些細な日々がきっと ベストシーンなんだって 思うから、><台本も無くたって どんな派手な場面よりもただ 二人で居られるなら>とここにある毎日を抱きしめる「ベストシーン」も、YUTORI-SEDAIのポップネスの結晶であるはず。メリーゴーランドさながらに回転する上原駿(Ba)のメロディアスなベースライン然り、櫻井直道(Dr)の晴れやかなプレイ然り、音を鳴らす喜びが、キュートに、ひたすらピュアに弾けているのだ。その眩しさは、改札前の待ち合わせで待ち侘びていたあの人を見つけた時の、恋する人々の表情に似ている。
こうして彼らの代名詞とも言える温かなラブソングを届けたからこそ、昭和歌謡の血統に位置するであろうメロディーが渋みを演出する「新宿ロマンス」や、「東京、ロックは好きかい?」とドロップされた「ロックンロール」といった「blanket」収録の楽曲群が存在感を放つ。特に「ロックンロール」という逃げも隠れもしないタイトルを掲げたアグレッシブな楽曲を、このメジャーデビューのタイミングで刻めた意味はバンドにとって大きいだろう。<鳴らせ 鳴らせ、いつだって 離れていても声が届くように>の一節や鋭いアンサンブルには、EPのタイトルに潜ませた「どんな時もあなたを暖かく包み込みたい」という願いが、そして「あなたに寄り添いたい」と思い続けてきたYUTORI-SEDAIの旗印が宿っていたのだ。
とびっきりのかわいいを通じて、自らを肯定する新曲「YURU FUWA」を終えると、金原遼希(Vo.Gt)は「あなたの笑顔の理由になりたいと素直に思った」とツアータイトルに込めた純然たる思いを口にし、こう続けた。
「自分は普段ヘラヘラしているんだけど、その分悲しいって感情も笑顔で表現しちゃう時があって。でも、バンドをやってくる中で、みんなが自分のことのようにバンドの成長を喜んでくれてる姿に何回も背中を押してきてもらったのね。そういう“喜んでもらえた”って瞬間が、自分にとって1番嬉しかったりして。だからこそ、みんなにもらったものを何十倍にして返していきたいし、笑顔にしていきたい。俺らを沢山笑顔にしてくれた分、あなたをこれまで以上に笑顔にしたい。音楽が鳴っていない瞬間、それぞれの日常に戻った時にも心から楽しいと思えるようなパワーを届けたいと思っているので。不器用だけど僕なりの素直な気持ちなんで、良かったら受け取ってください」。
ここまでバンドを支えてくれたオーディエンスへの愛と改めて見出した音楽を鳴らす意味。YUTORI-SEDAIが鳴らすミュージックの矢印はどこまでもリスナー1人1人へ向いていることを確かめたところで、「すき。」「アイラブユーベイビー」と特大の花束が贈られていく。不器用なんて百も承知だから、この歌くらいはせめて素直に。どストレートに次ぐどストレートな告白が次々に降り注ぐ中、「すき。」の歌詞にある<時々折れそうになる日もあるけど 諦めたくない お洒落して今日も会いに行くの>の数行に、恋する乙女にとってのメイクと3人にとっての楽器が同じ役割なのかもとハッとする。すっぴんのままじゃ、なかなか自信も持てない私と僕にとっての魔法。愛する人と真っ向から対峙するためのおまじない。それがメイクであり、音楽であるならば、YUTORI-SEDAIの好きな人とは、ほかでもなくこの場に集った全ての人ではないか。
変わらないアイラブユーを誓う「足りないくらいがちょうどいい」で本編を終えると、アンコールでは「君と音楽」をプレイ。<いつかその先でまた 君と会えるように>と再会の約束を結び、ツアーの幕を下ろした。そんなYUTORI-SEDAIの次なる目的地は、2026年1月の大阪、東京でのワンマンライブ。ライブ終盤、金原は「自分が選択していく道を正解に変えていくことがやるべきことなんだと、あなたの前で歌って、あなたの笑顔を見る度に思います。どんなにネガティブになっても、あなたがいれば自分を肯定できる気がしています。いつかもっともっと大きなステージであなたと会えるように、これからもよろしくお願いします」と語っていたが、もう既に3人は夢見る大きなステージに向けて歩みを進めている。その道には、YUTORI-SEDAIとファンが手渡しあった無数の愛が敷き詰められているはずだ。
取材・文=横堀つばさ 撮影=Ayaka.
セットリスト
2025.07.17(THU)東京・新代田FEVER
the shes gone
01.甘い記憶
02.きらめくきもち
03.想いあい
04.ラベンダー
05.ひらひら
06.エイド
07.シーズンワン
08.嫌いになり方
YUTORI-SEDAI
01. 23×3
02. ぎゅっとして、
03. ベストシーン
04. サマートリガー
05. 新宿ロマンス
06. 私だって、
07. 幸せにしたいんだ
08. ロックンロール
09. 恋しちゃったんだ
10. YURU FUWA
11. すき。
12. アイラブユーベイビー
13. 足りないくらいがちょうどいい
EN1. 君と音楽
リリース情報
2025年8月13日(水)リリース
ライブ情報
■2026年1⽉30⽇(⾦)【東京】渋谷WWW
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