街を行き交う”リアル”な現代人が彫刻で出現 『踊れ彫刻 – 覆面男と服好き女 -』レポート
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(c)girls Artalk
ファッション雑誌に掲載される女性や街を歩く一般女性など、『消費社会に生きる女性』を制作のテーマとしてきた飯沼英樹と、『覆面を被る人物』をモチーフにする尾花賢一。この二名の作品を展示する『踊れ彫刻 – 覆面男と服好き女 -』が、8月5日~27日にかけて、表参道hpgrp Gallery 東京で開催された。強い個性を放つ作品を生み出す2人の共通点は、『どこかにいる現代人』がモデルであることだ。そんな親和性をもつ両者に、創作の背景などについて詳しく語ってもらった。
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仏像をイメージした新作を発表している飯沼。展示されていた作品は、鮮やかな色彩が粗く彫られた木肌に塗られており、躍動感と力強さを感じる一作となっている。しかし飯沼本人は、とても儚く繊細そうな外見と、優しい物腰が特徴的だ。作品から感じていたイメージと、人柄にギャップがあると感じさせられた。
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――『現代を生きる等身大の女性』を表現しているということですが、飯沼さんのイメージする”現代の女性”とはどんな人なのでしょうか。
飯沼英樹(以下、飯沼):自分磨きをしながら力強く生きている人、です。見た目だけではなく、例えばヨガが流行していますが、あれは元々は心を整えたり、邪念を失くす神聖なもの。そういうものが広がってるのは、ただのダイエットとはやっぱり違うと思います。今回の作品ではヨガのポーズもイメージしています。現代の女性は仕事と家事を両立していたり、バリバリのキャリアウーマンだったり、一昔前までの女性像よりもずっとタフに見えますが、でもただ強いだけではないような気がしていますね。
――制作時間は1体でおおよそどれくらいかかっているのでしょうか?
飯沼:赤と青の子から制作を始めたのですが、それ以外の3体は同時進行でつくっていきました。なので制作時間というと……かなり長い時間を同じ部屋で過ごしましたね(笑)。だから全員に愛着が湧いています。
お話しを聞いたあとに、5色のイメージカラーで方位を表している『現代版5大菩薩』のような今作を改めて鑑賞してみた。すると、無敵ではないけれど、一生懸命なありのままの女性たちを表現していると再認識させられた。
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写真をみると理解していただけるかと思うが、飯沼の作品はサイズがとても大きい。目を細めて穏やかに応えてくれた彼が、こちらを3体並べて制作していたとは。本作のタイトルは『服好き女』。文字だけを見ると、少し女性を揶揄している印象も受けるが、インタビュー後に改めてタイトルをみつめると、自信に溢れ凛々しく生きるための努力をしている女性への敬意を感じさせる言葉であったことに気づかされる。
続いて、会場に入った時に”ウィーーーーン”と動き、気になって仕方がなかった、こちらの”お掃除ロボット”に被せた彫刻作品。
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早速、本作を制作した尾花氏本人に話を聞いた。
――どうしてこのような作品が思いついたのか全く想像がつきません。どのようなキッカケがあったのか教えてください。
尾花賢一(以下、尾花):行き交う普通の人たちと、その”場”を作りたかったんです。なぜお掃除ロボットを選んだのかというと、なんか他の家電と違いません? ”うちのルンバ”って言ったり、名前をつけて呼んだり。なんか人間みたいだな……と気づいたんです。
確かに動くこのアート作品を見ていると、障害物にぶつかって止まったり、充電器に戻れずモゴモゴしていたりよ、動きがなんとも不器用で可愛く見えてくる。
そして『レセプション』というタイトルがついたこちらの作品は、本展覧会のために作られた新作だそうだ。”覆面”というある意味、非日常な人の、日常の1シーンを切り取る尾花氏らしい作品だが、どうやら今回の作品はそれだけではないようで……。よくよく近づいてみると、背景はただの”絵”ではなくボコボコとしている。なんとあらかじめ”彫刻”として彫った平面上に色を付けているのだ。
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キャンパスのサイドまでしっかり彫られていることがわかる。”絵”でも”彫刻”でもあるハイブリッド作品。尾花氏の経歴ならではの新しいアート分野といえよう。
――どうしてこのような作品を制作したのですか?
尾花:レセプションていう少し特別で華やかな空間に、’”覆面”をかぶったちょっと変な奴が、普通に話しているというのがなんか面白いかなって。
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紹介した作品だけでなく映像作品にも広がりを見せ、尾花氏のアートへのキラキラとした好奇心を感じた展示が並んでいた。彫刻というカテゴリーの中でも独特の個性を発揮する2名のアーティストの共演であった。
文・撮影=山口 智子
開催場所:hpgrp Gallery 東京
開催期間:2016年08月05日 ~ 2016年08月27日
時間:12:00から20:00まで
曜日:月曜休館 毎月最終日曜日休館
ホームページ:http://hpgrpgallery.com/tokyo/
入場料:無料