名レーベル・UK.PROJECTは何故ロックリスナーに愛されるのか? その歴史とユニークさの秘密を“中の人”に訊いてみた

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2016.9.2
代沢まつり

代沢まつり

ロックファンなら「UK.PROJECT」(以下、UKP)というインディーズレーベルの名前を耳にしたことがあるはず。でも認識としては[Alexandros]やBIGMAMAのプロダクション? レーベル? その全体像はよくわかっていない方も多いかもしれない。そこで今回は、UKPで14年以上にわたりさまざまなバンド、アーティストを発掘・発信してきた袴田亜理紗さんと軽部徹さんに登場いただき、ユニークな同レーベルの方針や思い、そして9月に開催されるUKPの中でも“らしい”部分を担ってきた「DAIZAWA RECORDS」の創立15周年記念ツアー『代沢まつり』にかける思いも存分に語ってもらった。それにしても、話を聞けば聞くほど多くのバンドに愛され、重要なバンドを輩出してきた理由に、腹落ち感大です!


社長のスタンスは「全部うちの子だからみんなでやろうよ」

――ロックファンに広く知られているUKPが、実際にはどんな背景や歴史、思いを持ってやってらっしゃるかをお聞きできればと思います。まずUKPってレーベルであり事務所でもあるわけですが、元になってる考え方はどんなものですか?

袴田:UKプロジェクトの“UK”って、英国のUKではなくて“Unknown”という意味なんですよ。「知られざるものを見つけること」というところから来ていて、自分たちが好きだっていうアーティストを世に出そうというテーマで発足したレコード会社です。

――所属してるバンド、アーティストがメジャーに移籍しても事務所業務自体は続けていたり、メジャーからUKPに戻ってくる人も多いですよね。

袴田:確かに。最近ではART-SCHOOLがそうですね。私たちはインディーズのレコード会社なので、メジャーでデビューするとそこでお別れが来てしまうし、アーティストもインディーズでずっと活動していきたいバンドもいれば、メジャーで活動したいバンドもいて。もちろんそこは切っても切れないところだなと思うんです。だからバンドが場所を変えても活躍していることは素直に喜んでいますし、その後もずっと付き合いがあって……最近だときのこ帝国もすごく仲良くして、ライブもよく観に行くし、ご飯も行きます。THE NOVEMBERSも独立したけど、CDを作るたびに会社にメンバー全員で届けに来てくれるし、交友はずっと続いていますね。基本的にうちの会社の人は愛情深い人がとても多いので(笑)、移籍した後に「UKってすごく愛情があったな」って話をしてくれるのを聞くと、嬉しく思います。

――スタッフの皆さんが、それぞれの担当アーティスト以外のライブにもほぼいるし、総力戦だなという印象があって。

袴田:社長の遠藤は所属アーティストを「うちの子」って言うんですけど(笑)、「全部うちの子だからみんなでやろうよ」って感じで。だから時間があったらどこのライブでも行くし、ワンマンだったら必ずみんな調整して行く!みたいな感覚はありますね。

――余所では、アーティストの担当者が変わったことで縁が切れる場合って多いと思うんです。窓口が変わったらそれっきりになっちゃったりとか。でもUKPだと誰かに聞けばいいという安心感があります。

袴田:逆にメジャーのことはわからないんですけど、UKはみんな顔が見えてるから、そこがいいのかもしれないですね。大きい会社だと知らない人もいっぱいいるじゃないですか。UKの場合は、スタッフとアーティストがほとんど顔を合わせたことがあるので。それは『UKFC on the Road』を始めたことも大きいかもしれないですね。『UKFC』をやる時に必ず会いますし。あとは、アーティストが会社に来た時も普通にみんなと話すし、自分の担当バンドじゃなくてもご飯行ったり飲みに行ったりしますね。そこが多分、他のところとより距離が近いのかな?とは思ってます。そこで自分の担当には言えないけど実は思ってることとかを聞いたりして、それを自分から担当に話してみたりすることもあります。

――バンド内の悩みとか、これからどうしていくのかを良い意味で社内全体が共有できるという。

袴田:そうかもしれないですね。「あ、今このバンドこういう状況なんだな」とか、「このバンドはこういうことをしようとしてるんだな」ってことは、だいたいみんなが認識してて、「この考え方どう思います?」みたいな部分もみんなで話せる、そういう場所なのかもしれないですね。

――基本的なことを聞くんですが、今、UKさんの中にレーベルっていくつあるんでしたっけ?

袴田:まずUK.PROJECTというレーベル、DAIZAWA RECORDS、RX-RECORDS、DECKREC、TV-FREAK RECORDS、銀杏BOYZは初恋妄℃学園。今メインで動いてるのはそれぐらい。他にもバンドに合わせて作ったレーベルが多数あります。

――2000年代に入ってからは、RXのバンドがそれまでのUKさんのイメージからはちょっとはみ出して、BIGMAMA[Alexandros]が頭角を現しました。

袴田:RXができてからの変化はあったと思います。それ以前は“下北系”って言われるような音楽があったと思うんです。BUMP OF CHICKENがいて、BURGER NUDSがいて、BUNGEE JUMP FESTIVALやGIANT STEPとか、ハイラインレコーズが盛り上がってた2000年代初頭の音楽は、「下北と言えば!」って感じのものだったと思うんです。

軽部:UKPって大きな枠でいうと、3回ぐらい大きな変遷があって。まずレーベル立ち上げ時の80年代後半のKUSU KUSUとか餃子大王などイカ天(『三宅裕司のいかすバンド天国』)から火がついたバンドブームのとこから始まって、90年代中盤から2000年代初頭ぐらいまでスカパンクとか青春パンクとかが盛り上がって、多分そのあたりと下北系ギターロックの時代って同じなんですよ。それが結構長いこと続いて、それからRXとかのパンク……じゃないんですけど、なんだろうね? RXって。

袴田:元々はメロディックみたいな感じ? RIDDLEとか。

――『AIR JAM』以降のメロディックって感じですね。

袴田:そうですね。で、その間にDAIZAWA RECORDSがあって。2001年にOO TELESAと出会って、ギターロックというジャンルの音楽をもっと目立たせたいと始まったレーベルです。
 


バンドを口説いて返事を待つのは恋愛にも似た気持ち!?


――やりたいことができるレーベルって、なかなか出来ることじゃないと思いますが。

袴田:そういう会社なんだと思います。誰でも彼でもそうはいかないですけど、好きなことをやっていいというか。私も右も左もわからない19歳の時に入社して、「どうするか、何がやりたいか」って聞かれて。その時、私、椿屋四重奏ってバンドのライブをよく観に行ってたんですよ。だから、「今、椿屋四重奏ってバンドを見てて、すごくかっこいいバンドなので、そのバンドのCD出したいです」って言ったら「わかった、いいよ」って。……すごくないですか?

――一回、社長とライブを観に行くとかじゃなくて?

袴田:どうだったかな? 曲は聴かせたと思うんですけど、「いいんじゃない、やりたいんだったらやったら?」と。で、「じゃあ観に行こうかな」とか、そんな感じだったと思います。「すげえな。やりたいことやれるんだ」と思って。

――そこから当然、バンドサイドに交渉しに行くわけですよね。

袴田:バンドとはもともとライブを観に行った時に会話とかはしていて。で、「CD出したい」って話をしたら、「正式に言ってくれ」と。「どうして俺らをやりたいのか、ちゃんと説明して、こっちに申し入れをしてほしい」と言われたんですね。で、自分はライブのこういうところを魅力だと思っていて……っていうことを申し入れて、「分かった、じゃあCDを出そう」ってなりました。

――一緒にやりたいと思うのはどんなバンドなんでしょう?

袴田:やはりウタが強いバンドが多いですね。あとはステージの佇まいや内から出る魅力とか。私は基本的にライブを観て、「いいな」と思ったら声をかけに行きますけど、軽部さんはUKPに送られてきているデモテープ聴いて「いいな」と思ったものを観に行ったりもするし。例えばそれが[Alexandros]だったりして。

――そのときは何にピンときたんですか?

軽部:何ですかね、あれは。明らかに聴いた瞬間に異質というか、そのクオリティは他になかったし、ビジュアルも良かったし。なんでこんなにカッコいいバンドがデモテープ送ってきたんだろう。どうせどこかの大人がすでに囲ってるんじゃないの?って半笑いしながら音源を聴いてました。で、RXを運営している千田にも聴いてもらったら、彼は即メールでコンタクトをとりだして、数日後には二人でライブを観に行ってました(笑)。そこからは恋愛みたいな感じで、すごいドキドキするんですよ。

袴田:分かるわぁ。そうだよね!

軽部:「好き」って言って、向こうも「好き」って言ってくれるか?みたいな、ある種の告白をしに行くわけで。振られたくないじゃないですか? で、「やりましょう」って言われるまでが……結構「一週間ぐらい考えさせてください」っていうバンドもいるんですよね、焦らすというか。でもそれも楽しかったりして(笑)。

袴田:楽しいんだ? 私、吐きそうだよ(笑)。

軽部:「早く返事欲しいな~」って。

袴田:結局断られることもあるので、そういう時はめちゃくちゃ泣きますね。もう振られた後みたいに(笑)。

――相当凹みそうです。話は変わりますが、日本では“レーベル買い”(所属レーベルで音源の購入を判断すること)ってあんまり無いと思うんですよ。そんな中でDAIZAWA RECORDSってそれができる気がするんです。

袴田:うん、そういうのいいなって思ってます。海外はよくあるし、私もレーベル買いすることもあるし。「そこが出すんだったら絶対良いだろう」って感じで買うんですけど、DAIZAWAはそういうことのできるレーベルだと思ってて。やっぱりテイストが一貫してるんで、DAIZAWAが好きであればどれ買っても好きだと思うんですよ。中の人間が社長、私、軽部と、全員でも数人なので、そうすると自分の趣味ってブレないじゃないですか。担当バンドがCDを出すと、「これ袴田さんでしょ」っていろんな人から言ってもらえるんですよ。それって、分かってもらえててすごく嬉しいなと思うんです。ラジオ局に行っても「これ袴田さんの新しいバンドでしょう」「わかりました?」「聴いただけでわかったよ」。そういう部分が確立できてきているので、DAIZAWAを好きな人には新しい所属バンドも躊躇なく買ってもらいたいなっていう気持ちはすごくあります。


オーディションで再認識したUKP育ちのバンドたち

――そして今年で6回目を迎えた『UKFC』の存在もあって、UKPの実像がより見えるようになってきたと思うんですが、そもそもこのイベントはなぜ始めることになったんですか?

袴田:一番最初はツアーで。5バンド([Alexandros]the telephonesBIGMAMAPOLYSICSTHE NOVEMBERS)で回ろうと。良いバンドがいるから集まってツアーしようというのが最初でした。

――普通、あれだけ違う5組だとどうなんだろう?と思うけど、回を追うごとに良いムードが生まれて(笑)。

袴田:お互いの音楽をリスペクトし合えてるし、やってることは違うけど一貫してる何かがあって。だからお客さんにとっても、ちゃんと感覚としてストーリーを持って観れたんじゃないかなと。

――6回やってきて『UKFC』はどう変化してきたと思いますか?

袴田:認知されてきて、夏の風物詩としてお客さんが楽しみにしてくれるようになったのが、単純に嬉しくて。一昨年にはオーディションやったんですよ。オーディションで優勝したら『UKFC』に出れてCDも出せるみたいなことをやって、そこでたくさんの応募があって、みんなで聴いて、「これはいいバンドだから残そう」っていう会議をたくさんしたんです。

軽部:それが……優勝したのがHelsinki Lambda Clubで、彼らはもちろんCDを出したんですけど、最終12バンド残ったうちのHelsinki、PELICAN FANCLUBpollythe equal lightsCettiaDATS……6組が結局うちからリリースして。……みんな出してんじゃん!っていう、優勝したHelsinkiには申し訳ないことになってしまいました(笑)。

袴田:そこに応募してくるアーティストって、UKの音楽を聴いて育ってきてるとか、好きなアーティストがいるから応募してくれてる人が多いので、UKに合う色っていうのがあるんですよ。だからか、オーディションやってみんなでライブを観ると、それぞれ好きなアーティストが見つかっちゃうんですよ。『UKFC』の中でもそこは面白かった。で、落ちたアーティストはその年の『UKFC』のステージに立てなかったけど、(結局リリースしたので)翌年のステージには立てたんですよ。だからUKのアーティストがそこでグッと増えて、今年の『UKFC』はステージ一つ増やしました(笑)。

――今年の『UKFC』にも出ていたバンドでまわる『代沢まつり』も控えていますが、DAIZAWAの軸は歌とギターということですよね。

軽部:実は、その線引きは結構曖昧で。割と感覚というか。

袴田:最初はそういう風に始まったけど、だんだんとどういう色なのか匂いなのかみたいな、感覚だけで共有できるものが見つかって、このバンドはそうだ/そうじゃないっていうことで選んでるかもしれないですね。私たち自身の感覚でジャッジするというか。

軽部:なんとなく「これはDAIZAWAっぽいね/ぽくないね」っていう基準が、スタッフの中で共通してあるから。だから、lovefilmとかなんでDAIZAWAなの?って思う人もいるかもしれない。

袴田:まぁ、そもそもthe telephonesが、DAIZAWAですからね。

――そこがまず面白いですよね。

袴田:そうなんですよね。the telephonesがDAIZAWAだから、石毛くんがソロで出してもDAIZAWAだし、石毛くんが新しいバンドやってもやっぱDAIZAWAだっていうのは、まぁそれぞれのバンドもそうだし、彼が持っているものやことがDAIZAWAなんだなって感覚。遠藤がそこをジャッジしてる部分もあると思うし。


「よくこのメンツで回ったね」って5年後ぐらいに言われたらいい。

――リスナー目線としては、dipsyrup16gの存在はすごく大きかったと思うんです。

袴田:うんうん。そこの血はずーっと続いてるし通ってて、ジャッジのポイントだと思います。あと、最近は「DAIZAWA RECORDSで出したい!」って言ってくれるアーティストがすごく増えてきて、なんか浸透してきたなっていうことが……嬉しいなと。DAIZAWAを聴いて育ってバンドやって、「いつか自分はDAIZAWAで出したい」と思っていたバンドが、DAIZAWAで出るっていう。PELICAN FANCLUBとかそうなんですよ。古い音楽かも聴いてたりとかしてて、だからずっと憧れを持ってくれていて、“DAIZAWA以外だったら出したくないと思ってた”と言われたこともあります。だから、どこのオーディションにも応募してなかったんだけど、UKプロジェクトだったから初めて応募して、リリースが決まって。ホントに泣くほど喜んでました。

――軽部さん、pollyに関してはいかがですか?

軽部:最近、翳りのあるというか、そういうバンドをあんまり見なかったんですよね。あと、ヴォーカルの佇まいというか、久しぶりにカリスマっぽい人を見つけたなと思って。やっぱり、僕は、表現者って扱いが面倒くさい人が多い印象があって、でもそんな人物に引かれてしまうんですよね。

――面倒くさい人、多いですよね(笑)。

軽部:(笑)。pollyに関しても「あ、面倒くさい、こいつ」と思って、それはいい意味での面倒くささなんですけど、成功する人ってこういうタイプなんだろうなと思って。最初に知ったのはもう3年ぐらい前だったんですけど、そのころは割とJ-ROCK寄りな音楽だったんですよ。でもただのJ-ROCKではなくて、ちょっと闇というか、ポップな曲調なのに切なくて。そこが面白かった。今、2枚CD出してるんですけど、1枚目と2枚目でかなり音楽の幅も広がったというか。

――面倒くさい人の歴史も綿々と続いてるじゃないですか。

袴田:その辺も続いちゃってますもんね(笑)。

――ウソツキも『UKFC』で観たとき、新しいミニアルバムの曲が追加されたことで幅ができたことを実感しました。

袴田ウソツキの竹田くんがこの『代沢まつり』をやるにあたっての、きっかけとなることを言ってくれて。DAIZAWA RECORDSが15周年だったので、“15周年”っていう打ち出し方をしてるんですけど、元々は、DAIZAWA RECORDSのバンドでツアーを回りませんか?っていうところから。彼も「DAIZAWA RECORDSで出したいです」って言ってくれたバンドで、今はもうレーベルを引っ張っていくバンドに自分たちがならなきゃいけないし、「なるぞ」って気持ちで言ってくれてますね。

――3バンドのテンションが違ってそうで、そこも面白そうですね。

袴田:全然違うところがわりと面白いなと思って(笑)。音楽的な部分もそれぞれ別だし、だけどそこは一個のDAIZAWA RECORDSっていう芯によって、同じところにいて。聴いてきた音楽も違うしやってきたことも違うけど、ツアーを回っていく中で、一個の共通点があることはお客さんにも伝わるだろうし、大きく言えばDAIZAWAのレーベルの芯みたいなものがわかるだろうと思います。

――ジャンル云々じゃなくて、バンドが持ってる指向性ということで言えば、過去から今回の『代沢まつり』に脈々と受け継がれてると思います。

軽部:これ、5年後ぐらいに「よくこのメンツで回ってたね」って言われるぐらいに成長してるといいですね。10年ぐらい前のフライヤーとか見ると、「このキャパでこのブッキングやってたんだ!」とかあるじゃないですか。

袴田:そういうライブって、後々「観てて良かったな」って自分たちも思ったりするから、このイベントもいつかそういう風に思ってもらえたら良いですよね。「こんなことやってたんだ!」みたいなね。


取材・文=石角友香

イベント情報
代沢まつり < DAIZAWA RECORDS 15th Anniversary for the Future >
ウソツキ / PELICAN FANCLUB / polly

9月16日(金)栃木・HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
OPEN 18:30 / START 19:00
前売 ¥2,500 / 当日 3,000 (ドリンク代別)
 
9月17日(土)宮城・LIVE HOUSE HOOK SENDAI
OPEN 17:30 / START 18:00
前売 2,500 / 当日 3,000 (ドリンク代別)
 
9月22日(木・祝)大阪・LIVE SQUARE 2nd LINE
OPEN 17:30 / START 18:00
前売 2,500 / 当日 3,000 (ドリンク代別)
 
9月23日(金)愛知・APOLLO BASE
OPEN 18:30 / START 19:00
前売 2,500 / 当日 3,000 (ドリンク代別)
 
10月4日(火)東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00
前売 3,000 / 当日 3,500 (ドリンク代別)
GUEST:きのこ帝国(東京公演のみ)

 

 

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