気鋭のピアニスト・米津真浩が案内する“隠れた名曲”の魅力

レポート
2016.9.28
米津真浩(ピアノ)

米津真浩(ピアノ)

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「名曲は、皆さんがメロディーをよく知っているからこそ、弾きづらい」 第41回“サンデー・ブランチ・クラシック” 8.28ライブレポート

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGで開催されるサンデー・ブランチ・クラシックは、「クラシック音楽を、くつろいで楽しむ」がコンセプトのイベントだ。お茶や食事を楽しみながら、リラックスして良質な音楽を楽しめる。子供の同伴もOKのクラシックを身近に感じられるライブになっている。

8月28日(日)には、今後が期待される若手ピアニスト・米津真浩が登場した。イタリアの名門・イモラ音楽院で学んだあと、昨年冬から拠点を日本に移して活動している。

13時の第1部開演時、会場の雰囲気に合わせて、ごく自然に登場した米津は、早速演奏に入る。1曲目は、シューベルト作曲・リスト編曲「ウィーンの夜会」だ。激しく跳ねるような情熱的な場面と、優雅に歌うような叙情的な場面の対比がとても鮮やかで、曲の表情は目まぐるしく変わるが、場面の転換の仕方も丁寧でそつがない。

米津真浩 (撮影=原地達浩)

米津真浩 (撮影=原地達浩)

曲調が徐々に静まり、消え入りそうな繊細なパッセージを聴かせたあと、水が流れ落ちるかのような軽やかなコーダを経て、曲は終わる。拍手を受けながら、米津が最初の挨拶を述べた。

「皆様、今日は日曜日の貴重な時間を使っていただき、ありがとうございます。今日は30分と短い時間ですが、おいしいお茶と食事とともに演奏を楽しんでください。僕はこのLIVING ROOM CAFEには、何度かプライベートで来ています。食事もおいしく、いつもいい雰囲気なので、ぜひ楽しんでいただけたらと思っています。」

米津真浩 (撮影=原地達浩)

米津真浩 (撮影=原地達浩)

1曲目の「ウィーンの夜会」も、今日のような楽しいお茶会の雰囲気に合わせて選曲したそうだ。演奏時間が限られていることもあり、すぐに次の曲に入る。2曲目は、先程と同じくシューベルト作曲・リスト編曲の「水の上で歌う」。歌心満載のシューベルトの歌曲に、リストがきらびやかな超絶技巧を盛り込んで編曲したものだ。

導入部は哀愁漂う静かな曲調だが、曲は少しずつ緊張感を高めていく。波が寄せては引いていくように、盛り上がりを見せるとまもなく静まる……。ダイナミクスに合わせてのテンポのゆらぎも絶妙で、高音域であっても、音が鋭くならず柔らかい印象なのが素晴らしい。

(撮影=原地達浩)

(撮影=原地達浩)

3曲目はリスト作曲「ラ・カンパネラ」である。冒頭部から難しい高音域の跳躍が連続するが、流麗な右手の動きで見事にこなしていく。素早い手の動きは技巧的でありながら、鍵盤を優しく撫でるようだ。力が入りすぎていない、遠くへよく飛ぶ軽い音色が印象的。音楽は徐々にテンポを早め、劇的なクライマックスへと華麗に走りきっていった。

満場の拍手を受け、米津ははにかみながら挨拶した。

「ありがとうございます! 俗に名曲とよばれる作品は、『ピアニストなら簡単に引けるでしょ?』とよく言われるんですが、『名曲=簡単な曲』ではないんです。皆さんがメロディーをよく知っているからこそ、弾きづらいところもあります。ミスをした時もわかってしまうので、プレッシャーを感じながら弾いています(笑)。」

MC中の米津 (撮影=原地達浩)

MC中の米津 (撮影=原地達浩)

最後の演奏に入る前に、米津から告知がなされる。

「私事ですが、このたびフリーの立場から、高嶋音楽事務所に所属することになりました。11月27日に、銀座の王子ホールでデビューコンサートを行うことになっております。チラシには『危ないピアニスト』とありますが、どのあたりが危ないのかは、会場に足を運んで確認してください!」

カフェで食事を楽しみながら…… (撮影=原地達浩)

カフェで食事を楽しみながら…… (撮影=原地達浩)

早くも、この日最後の演奏が始まる。4曲目は、ショパン作曲「スケルツォ 第3番」だ。激しい動きのある導入部で、聴衆は一気に引き込まれる。やがて曲調は落ち着き、静かな子守唄のようなメロディーと、星のきらめきのような速いパッセージの掛け合いとなった。

米津はゆったりしたテンポで、情感たっぷりの演奏を披露した。ときに甘美で、ときに憂愁をたたえ、また激しい情念も覗かせる。最後の頂点とともに、あっという間の30分が終わりを告げた。

暖かい拍手に応え、アンコールが届けられた。クレマン・ドゥーセ作曲(マルク=アンドレ・アムラン編曲)「ショピナータ」である。ショパンの「軍隊ポロネーズ」を模した堂々とした開幕だが、サウンドはすぐにロマン派からジャズの語法を駆使した、小粋で情熱的な現代曲に変わる。小気味よい技巧を見せながら、演奏は華麗に終わったのだ。

サイン会での笑顔 (撮影=原地達浩)

サイン会での笑顔 (撮影=原地達浩)

終演後には、舞台上で米津のサイン会が開催され、写真撮影に応じるなど気さくにファンとの交流を楽しんでいた。舞台とお客の距離が近いこの会場ならではの光景だ。

15時からは、第2部も行われた。曲目は同じだが、第1部よりさらにリラックスした印象だ。会場全体も、食事や飲み物をゆっくり味わいながら、音楽を心地よく楽しんでいる。ホールでのコンサートと違い、静かさをマナーとして強制しているわけではない。しかし、米津の技巧に引き込まれ、会場全体が集中して耳を傾けている雰囲気は、とても気持ちのいいものだ。

インタビューに応える米津 (撮影=原地達浩)

インタビューに応える米津 (撮影=原地達浩)

終演後の米津は、「お客さんとの距離が近いので、息づかいを間近に感じられます。そこが逆に緊張しました(笑)。お客さんは暖かかったので、最終的にはとても楽しかったです」と感想を述べた。「クラシックのコンサートというと、一般のお客さんはどうしても敷居が高く感じます。今回のような、リラックスして聴ける企画は貴重だと思います」と語ってくれた。

プログラムのコンセプトとしては、「第一に、耳馴染みのよさを大事にしています。それに加えて、優雅だったり情熱的だったり、表情の豊かな曲から選びました」と、クラシックに馴染みのないお客さんにも、知られざる名曲を紹介したかったという。

11月27日のコンサートについては、「事務所所属としてのデビューコンサートなので、自分の持ち味をフルに発揮できるプログラムにしています。今後も、曲に込められた作曲家の想いを表現するため、とことん努力を続けていこうと思っています」と意気込みを見せてくれた。

米津真浩(ピアノ) (撮影=原地達浩)

米津真浩(ピアノ) (撮影=原地達浩)

根本にある想いはそのままに、魅力的な“危ないピアニスト”はさらなる飛躍に向かう。11月にデビューリサイタルを控える米津だが、10月16日(日)に再度この『サンデー・ブランチ・クラシック』に登場してくれることがわかった。今度はどんな楽曲を聞かせてくれるのだろうか。『サンデー・ブランチ・クラシック』、次回もお楽しみに。

プロフィール
米津真浩(Tadahiro Yonezu)

1986年2月14日生まれ。千葉県千葉市出身のピアニスト。
千葉県立幕張総合高校を経て、東京音楽大学器楽専攻(ピアノ演奏家コース)卒業。同大学院を首席で修了。大学、大学院在学中特待奨学生として在学。2009年度、同大学ティーチングアシスタント。大学院修了後、異例の若さで母校である東京音楽大学にて非常勤助手として後進の指導に当たった。2007年 第76回日本音楽コンクールピアノ部門 第2位入賞。岩谷賞(聴衆賞)を受賞。
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉、Gross Vogel Philharmoniker、東京音楽大学ブレイジングオーケストラと共演。
仙台クラシックフェスティバル2011年・2012年出演、成田国際空港ロビーコンサート出演。ソロ、室内楽、アンサンブル等の演奏活動だけにとどまらず、クラシック音楽の普及をモットーに音源や記事の提供、TV出演、ボランティア活動、後進の指導、青少年文化センターアーティストとして小学生から高校生までを対象とした学校公演を行ったりと、アウトリーチ活動にも積極的に力を注ぐ。
これまでに寺田栄子、高梨淳子、村上隆、弘中孝、Leonid Margariusの各氏に師事。また、M.ラエカッリオ、P.ネルセシアン、S.ドレンスキー、A.サッツ、M.ベロフ、D.ヨッフェ、B.リグット、V.リャードフ、B.ゲツケ、T.ゼリクマン、B.ペトルシャンスキー、P.ドヴァイヨンといった世界的なピアニスト・教授陣の指導を受ける。
大学院修了後、東京音楽大学非常勤助手を勤め、更なる研鑽を積むため、2013年・2014年度ローム・ミュージックファンデーション奨学生としてイタリアの名門イモラ音楽院へ留学。2015年冬より拠点を日本へ戻し本格的に演奏活動を開始。フジテレビ 『幸せ追求バラエティ 金曜日の聞きたい女たち』 へ出演中。

 

公演情報
危ないピアニスト!?米津真浩デビューリサイタル

■日付 2016年11月27日(日)
  開場時間 13:30
  開演時間 14:00
■会場:銀座・王子ホール

<予定曲目>
ラフマニノフ:楽興の時 作品16
ショパン:ノクターン 作品 9-3
ショパン:スケルツォ第3番 作品39
ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22 ほか
※曲目は変更になる場合がございます

■お問合わせ先:髙嶋音楽事務所(03-6455-1671)
■料金 前売:4,000円、当日:4,500円
■インターネット申込はこちら:http://www.st18.jp/tickets/
■公式ホームページ:https://www.tadahiro-yonezu.com/
 

 

サンデーブランチクラシック情報
10月2日(日)
伊勢久大/ヴァイオリン&青木智哉 /ピアノ from ザ・フレッシュメン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500

10月9日(日)
ディミトリー・コルチャック/テノール
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500

10月16日(日)
米津真浩/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500

10月30日(日)

鈴木舞/ヴァイオリン&岩崎洵奈/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500
 
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