香港の大規模同人誌即売会『Creative Paradise 03』に行ってきた 会場で感じた香港二次創作事情をレポート

レポート
2016.9.14

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以前SPICEでお届けした『ACGHK』(Ani-Com & Games Hong Kong、「香港動漫電玩節」)の現地レポートに続き、今回は香港のコミケとも言える同人誌即売会『Creative Paradise』のレポートが到着。今回も香港で初のアニソンDJイベント『秋葉東京』を開催した伊勢 清孝氏からのレポートだ。香港アニゲ事情に詳しい彼が現地で見た今の香港同人カルチャーはどういうものなのだろうか?Ise氏撮りおろしの写真を満載して独占でお送りする。

 

大家好!(みなさんこんにちは!)香港で開催されたACG(Animation・Comics・Games)に関する展示会「ACGHK」の様子をこの前レポートしました伊勢です。前回に続きまして、同会場で開催された香港最大級の同人誌即売会「Creative Paradise」の初日の様子をメインにお送りしたいと思います。

−「Creative Paradise」とは?

香港には大型の同人誌即売会が3つあり「Creative Paradise(創天綜合同人祭)」、通称「CP」はそのうちの1つです。2014年から「ACGHK(Ani-Com & Games Hong Kong、「香港動漫電玩節」)」と日程を合わせる形で開催されており、今年で3回目です。当イベントは初期より「コミックマーケット」と連携を行うなど、日本の同人誌文化に対する理解や、香港における同人活動の促進、今後のあり方についても真摯に考えて運営されおり、イベントに対する明確なビジョンを持つ同人誌即売会です。

 

−香港同人作家やファンにとっての「夏の祭典」、それが「CP

今年の『CP03』は7月29〜31日の3日間に渡り開催され、世界各地から300サークル、6企業の参加がありました。香港のサークルのみならず、台湾・タイ・中国・シンガポール・インドネシア・日本からの参加もあり、国際色豊かに繰り広げられました。企業ブースとしては、日本と香港から合わせて6社が参加しました。会場には2箇所の特設ステージが設けられており、シンガーソングライター・パフォーマー・同人業界有識者・ライトノベル作家・イラストレーターなどが日本から招聘され、歌唱や演奏のパフォーマンス・講演・サイン会などが行われます。「香港・夏の同人誌の祭典」と言っても過言ではありません。

ジャンル傾向は、『艦隊これくしょん』や『Re:ゼロから始める異世界生活』そして『刀剣乱舞』など、日本でも現在進行形で勢いのあるものから、作品展示、芸能、評論、一次創作系など、幅広いジャンルのサークルが参加しています。

初日の7月29日(金)は、平日にも関わらず多くの人がお目当ての同人誌やグッズを求めて会場に訪れていました。『CP03』に入場するためには「ACGHK」の会場を経由する必要があります。当然筆者もその流れに乗って会場移動をするのですが、移動最中に目に入ったエスカレーター下の整列済み列を勘案すると「大して並んでいないだろう」と高を括っていました。これは、大きな誤解であることを、後から気づかされるのでした。

△	ACGHKからの移動中、エスカレーター上から見た列。待機列はさほど長くないように見えました

△ ACGHKからの移動中、エスカレーター上から見た列。待機列はさほど長くないように見えました

エスカレーターを上り切ると、関係者通路と一般通路が分かれており、このとき筆者は間違って「一般参加者通路」に入ってしまいました。そこで見た光景がこちらです。ご覧ください。

待機列が「大したことない」と思っていて本当にすみませんでした

待機列が「大したことない」と思っていて本当にすみませんでした

コミケットに参加したことのある方だとピンとくると思うのですが「東1ホール」のような場所いっぱいに、折り返しでの列形成がなされていました。これは、「ACGHK」の出口からずっと続いており、来場者数を推計することは難しいのですが、並んでいる人数だけで数千、もしかすると数万人規模であると思われます。

お目当てのサークルの新刊や、久々に会う友達との再会を心待ちにしている人たちが、それぞれの目的のために数時間かけて入場する姿は日本の同人誌即売会とまったく同じ状況でした。

会場を待ちわびる一般参加者(先頭集団)のみなさん

会場を待ちわびる一般参加者(先頭集団)のみなさん

会場内の雰囲気についてお伝えすると「東京ビッグサイト」と同じような感じです。1サークルで複数の机を広々と使っているところもあれば、机1つのところなど、様々な割合で使用しています。特筆すべきは、この机「引き出し」が備え付けられていました。サークル参加者にとってはとてもありがたい機能だと思います。

開場前の様子。潤沢にスペースが割り当てられています

開場前の様子。潤沢にスペースが割り当てられています

参加サークル名一覧、ブース番号、ステージでの演目とタイムテーブルが大きく掲示されています

参加サークル名一覧、ブース番号、ステージでの演目とタイムテーブルが大きく掲示されています

開幕時間を迎え、会場からは大きな歓声と拍手で一般参加者を迎える中、一般参加の皆さんは猛ダッシュで、目的のサークルめがけて猛虎のごとく向かう姿がそこにはありました。

「急がないでくださいね〜」という優しいアナウンスはあるものの、何時間も先頭集団で並んでいた一般参加者にとっては、もう耳に入っていない状況です。開門とともに、ダッシュです、ダッシュ。

香港の同人誌即売会でよく見られる開幕ダッシュ。不思議とけが人は出ません。謎の協調性があります。

香港の同人誌即売会でよく見られる開幕ダッシュ。不思議とけが人は出ません。謎の協調性があります。

−香港の同人誌・グッズの完成度

「CP03」に出展しているサークルの作品完成度について、これは筆者の主観が入るかもしれませんが、日本の同人誌即売会で頒布している作品に匹敵するか、それ以上を行っています。どちらも甲乙つけがたしです。私が初めて香港の同人誌即売会に参加したのが2011年8月の『Comic World Hong Kong』でした。それからちょうど5年が経ちました。当時も「香港の同人作品はグッズも多いし、完成度が高い」と思ったのですが、それは年々加速し、一種の到達点に達したのではないかと思えます。

『Re:ゼロから始める異世界生活』より。

『Re:ゼロから始める異世界生活』より。

『グランブルー・ファンタジー』より。

『グランブルー・ファンタジー』より。

サークル「黒蛛白蛛(BsWs)」の最後尾札。イベント開始直後から長蛇の列が生まれます

サークル「黒蛛白蛛(BsWs)」の最後尾札。イベント開始直後から長蛇の列が生まれます

サークル「風林火山(Nature Four)」の『艦これ』のTシャツ。お好みの艦娘Tシャツをゲットできます

サークル「風林火山(Nature Four)」の『艦これ』のTシャツ。お好みの艦娘Tシャツをゲットできます

日本から参加の同人サークル「いちごさいず」と「うつらうららか」

日本から参加の同人サークル「いちごさいず」と「うつらうららか」

−頒布物の傾向と日本との違い

頒布物に関して、日本とは異なる傾向があると筆者は感じています。それは、同人「誌」も当然多数頒布されていますが「グッズ展開のバリエーションとサイズの大きさ」を特異点として挙げることができると思います。日本の同人誌即売会の定番グッズは「アクリル樹脂のアクセサリー・缶バッジ・小型タペストリー」を思い浮かべる方も多いと思います。しかし香港の即売会の場合、もちろん日本と同傾向の小型グッズも多くありますが、いったんそれを脇に寄せて言及すると「Tシャツ・抱き枕・ショッパーバッグ」が比較的多く見られます。PRのための「のぼり」や「バナー」も多種多様で、しかもかなり大きく長いサイズ(感覚的には、B0〜1ノビで男性の身長に近いくらいまでのもの)で作っているサークルも多々あります。この違いはどこからくるものか考えてみました。結果、次のことが推察されます。

(1)1サークルのブース面積(背後や足元の在庫置場も含め)が、日本のそれと比較してかなり広いため、グッズも大型化できた、(2)深センが近い。そのため製造を深センの工場で安価に行うことができる、(3)香港内でのバナーやポスター印刷が価格はリーズナブルかつ納期がめちゃくちゃ早い、(4)割り当てられたサークルスペースから少しくらいバナーやポスターがはみ出してもお互い様精神でそんなに気にしない、この4点が要素であると考えます。

コミケットではさすがに無理だと思いますが、1サークルのブース面積を増やしたイベントを開催することで、何かしらの変化が起きるかもしれないと筆者は感じています。

抱きまくらも豊富にそろっていました。

抱きまくらも豊富にそろっていました。

−特設ステージも盛り上がる!

「CP03」初日の29日には、奥華子さんのミニライブが開催されました。その中で『愛を見つけた場所』『楔』『ガーネット』の3曲を披露。ファンで埋め尽くされた客席からは「香港にようこそ」「待っていました」など、多くの声援が送られる熱いステージとなりました。

奥華子さんの歌声は、香港のファンの心にしっかりと伝わっていました

奥華子さんの歌声は、香港のファンの心にしっかりと伝わっていました

次にステージに登壇したのは、「株式会社とらのあな」の代表取締役会長の吉田博高氏。登場するやいなや「皆さん、エロい本は好きですか!?」という質問から入りました。これにより、講演を聞きに来た聴衆の心を一瞬で掴んだ吉田会長からは、「とらのあな」社の売り上げの遷移や同人誌市場全体の変遷、海外サークルの日本における活動内容やその市場規模、今後の同人活動に関する全体的な方向性予測など示唆にあふれるもので、ユーモアを交えてわかりやすくお話しされていました。

−企業ブース

参加企業は『Manga Art, Ltd / 漫画Art』、『C4 CAT / 炸彈猫』、『Haneda Project / 羽田プロジェクト』、『Global Comic, Com Inc.』、『JIKU CHUSHIN HA / 軸中心派』、『VisualArts/Key』の6社でした。(表記はすべて「CP03」イベントガイドに記載ママ)

−国際化が進む「同人誌即売会」

コミケットにおいて、実数は把握していないながらも海外からのサークル参加が増えているということを、コミケットの市川共同代表から数年前に発表したことがありました。

(参考『コミックマーケットの歴史と現在』, http://www.comiket.co.jp/info-a/C77/C77CMKSymposiumPresentation.pdf, 市川孝一, 2009)

 

『CP03』に参加するサークルの一部は、ほかの国・地域で開催される同人誌即売会(コミケット含む)にも参加していることもあり、いろいろなイベントで見たジャンル傾向、グッズ、テイストについて、どのようなものがファン層に好まれるか、受け入れられるかを相当研究していると思われます。29日に特設ステージで行われた「とらのあな」の吉田会長の講演内でも一部話があったのですが、以前は「日本の絵の塗り」と「(日本以外の)アジア各国の絵の塗り」は異なっていたが、近年それらが混ざり合って同じ傾向になってきている、というものです。 

実際、トレーディングカード形式のソーシャルゲームなどでも、日本のイラストレーターだけではなく、海外のイラストレーターを起用することも増えています。大勢のプレイヤーはこのことを感じることなく、違和感なくプレイしていると思います。これはとても興味深いことであると言えますし、アジア圏の多様なイラストのテイストが、ある程度のセグメントをもって収束されてきていると考えられます。

若干堅くなってしまいましたが、イベント全体として見た場合「自分がこの作品、このキャラクターやストーリーが好き!」ということがいたるところから感じられ、頒布された同人誌やグッズには、作り手側の「愛情」が込められていることが伝わってきます。国際都市香港らしく、いろいろな国や地域から人が集まり、勢い・熱量・温かみの揃った素晴らしいイベントだと私は思います。

「タイ」から参加したサークルが『台湾の陽々』というタイトルで、「日本」発のタイトルである『艦これ』同人誌を「香港」で頒布していました!

「タイ」から参加したサークルが『台湾の陽々』というタイトルで、「日本」発のタイトルである『艦これ』同人誌を「香港」で頒布していました!

−さいごに「CPへの参加のススメ」

海外の同人イベントに共通して言えることですが、いいことがたくさんあります!私が体験したもので言えば、以下の様なものがありました。

  • 各地に友だちができます
  • 異なる文化や習慣を持つ人たちとの相互理解が深まります
  • 食や地域に関してなんとなく詳しくなった気がします
  • 良い刺激を受け創作意欲が増します
  • 純粋に面白いです

 

「LCC」という格安航空の誕生により、安価に近距離海外旅行ができる時代になりました。香港国際空港へは「香港エクスプレス」が直通便で乗り入れています。羽田から深夜便で出ていますので、

  • 金曜日の仕事が終わり次第羽田空港を出発
  • 土曜日の早朝(朝4時くらい)に香港国際空港に到着
  • 市内でお粥やワンタン麺を食してからイベントにGO

 

ということが可能です。帰りは

 

  • 日曜の夜便に駆け込み機内で寝る
  • 月曜日の早朝に羽田に到着
  • 到着ロビーでシャワーを浴びる
  • そのまま会社や学校に出社&登校!

 

と普通に出社や登校もできます(かなりハードではありますが……)。土曜夜だけホテル泊の「1泊3日香港の旅」がこれで完成します。予算は4〜5万もあればオッケーです。所要時間も羽田空港から4時間半程度。感覚的には「ちょっと東京から大阪に行ってくる」のと大差ありません。もし「香港のCPにサークル参加したいな」「ACGHK含めて一般参加で参戦してみたいな」と感じてくださる方がいらっしゃったら、とても嬉しいことです。ぜひ香港の「Creative Paradise」に参加してみてはいかがでしょうか?

撮影・レポート・文=Kiyotaka Ise

 

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