松たか子、森山未來、串田和美インタビュー 舞台『メトロポリス』は個性派チーム?
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左から、森山未來、松たか子、串田和美
舞台『メトロポリス』の原作は、1927年に公開された同名の傑作映画で、製作時から100年後の未来都市メトロポリスを描いたSF超大作。2016年この映画を舞台化するにあたって、スタッフに潤色の加藤直、音楽に平田ナオキ、振付に山田うん ほか、演出・美術は串田和美と錚々たる面々を迎えた。
出演には、マリアとマリアのアンドロイドの二人一役を演じる松たか子、巨大都市メトロポリスの支配者である父親の存在に葛藤する息子フレーダー役を森山未來が演じ、飴屋法水、佐野岳、趣里など豪華な布陣だ。
今回は稽古中に、串田和美、松たか子、森山未來の3人に、舞台の見所や意気込みを伺うことができた。気になる稽古の様子も撮り下ろしの写真と共にお届けする。
――原作『メトロポリス』の印象は?
松:私は小説は読んでいないんですけど、映画を観まして「すごくパワーが強いなあ」と感じました。これを当時作ろうとしていた現場の熱気もすごかったんじゃないかと思います。専門的なことはよくわからないですが、ここまでの作品を作る技術があったなら、セリフも入れることができたんじゃないかというぐらい(笑)。すごく緻密というか、細かく突き詰めている感じがして、当時の映画を作った人たちのパワーをお借りする気持ちで、臨んでいきたいなと思っています。
松たか子
森山:僕は原作の小説も、映画も観ようと思えば観られるんですけど……観ていないんです(笑)。もともと、『メトロポリス』の印象を聞かれると、“手塚治虫さん”のイメージが僕の中には強くあります。その原点にこの原作があるし、SFの金字塔と言われているような作品なので、すごいなあと思っています。映画ができて90年ほど経った2016年の今、どんな舞台ができるのかは、チャレンジでありつつ楽しみでもあります。
森山未來
串田:今回の舞台は、原作はこうでしたよって表現するものとは程遠いものを作っているんです。僕が原作を見た時から、時間が経ってこの稽古が始まって「改めてそろそろ観なきゃな」と思って観てみたら、「あれ、こんなだったかな」という感じと、「すげえな」という印象がありましたね。松さんが言ったように90年近く前なのに、なんでこんなことができるんだ!って。
串田和美
松・森山:(笑)
串田:現代だったら、映像を重ねることなんてコンピュータがあればなんでもないようなことだけど、当時は、ものすごい量の作業と工夫をして、群衆のシーンなどを表現しているんです。だから、僕たちは映画の公開から90年も遠く離れているけれど、同じ熱量でモノを作るとしたら、相当離れたことをしないといけないんだろうな、と。
稽古風景
――共演の皆さんの印象はいかがでしょうか?
森山:原作の『メトロポリス』は、建物もとても壮観で、そこで働く労働者の数などを通じて、とてつもない大きさと量を映像の中に埋め込んでいるような、規模を見せるような作品でした。舞台の上で、それをそのままやることは、絶対にできないけれど、そこには誰もいないのに群衆がいる。誰か1人はいるけれど群衆が群れている、というような描写をどんな風に見せるかという想像力を、お客さんとこちらで互いに喚起させ合う作り方を模索している状態です。
松:稽古を進めている内に、舞台の『メトロポリス』がどんな世界かということがだんだん明らかになっていって、みなさんとても“掘る”のが似合う人だなって(笑)。
森山:“労働者”みたいに?(笑)
稽古風景:趣里
松:共演者の方々は“ふわふわ”した人たちというよりも、ずっと地に足をつけて掘っていくことができる人たちで、その中で新たに加わってくれた趣里ちゃんは、チュクチュクとほじくるタイプ(笑)。みんながひとつに向かって掘り続けられる人たちだなって、すごく個性を感じていて飴屋さんみたいに本当に立っているだけで……。
森山:沈んでいる(笑)。
松:飴屋さんは、なにかを発してる。とっても優しい、思っていた以上に可愛らしい人なんです(笑)。そういう人もいれば、未來くんのように身体的に優れたものを見せてくれる人たちもいる。頼もしい先輩たちがいてくれるから、私はみんなを見て「すごいな」って思う日々なんです。本当にしっかりした個性を感じるメンバーだと思います。だから、いつか自分にも「あ、これかな」と思う瞬間が来るんだろうなと楽しみにしています。
稽古風景:松たか子
(左から)森山未來、串田和美
串田:今、いろんなお芝居があるけれども、僕は『メトロポリス』を台本にする時に、潤色の加藤直さんに「完成図じゃなくて出発点の脚本を書いて欲しい」と言ったんです。どこに行くかもわからずに、“どこどこに集合”ぐらいしか書いていないのが出発点だと思うんですね。集合した人たちに与えられた地図のようなものも大事だけれど、そこに集合した人たちが、「あっちじゃないか、こっちじゃないか」と旅をして、朦朧とした時に元気な子供が、「あっちだ!」と叫んでついて行ったら「本当だ!」みたいな。そういうふうに作りたいなって思ってるんです(笑)。
森山:樹海とかに行っちゃったらどうしよう(笑)。
稽古風景:佐野岳
稽古風景
串田:集団では、色々な役割の人が自然に決まります。普段は細かいことをうるさく言わないのに、「俺が言わなきゃ」って思う人が出て来たり、それこそドンとした人がいたりすると、すごくいい。みんなが喋り出してるのに、その人だけは黙っていて、でもそれも気になる黙り方だったり。
安心する黙り方ってあるじゃないですか。学校だと「黙っている人はダメだ」って決められちゃうこともあるけれど、社会はもっと自由なチームでできている。そういう意味でも、とってもいいチームですし、その主軸にお二人が入ってくれているという感じがしますね。
稽古風景
稽古風景
――最後にメッセージをお願いします。
森山:『メトロポリス』は90年前にできた作品で、当時の“摩天楼を見たらすごい”とか“ロボットが出てきたらすごい”っていう考え方は、今の時代で“それはすごい”というふうにはならないじゃないですか。“今”の僕たちの肉体と頭で、『メトロポリス』をやることの意味を自然と発っすることができているはずなので、お客様にもそういったところを拾ってもらいたいですね。
松:お芝居は、映像とは全く違う。チャンネルは変えられないし、人がそこでやっていることに、居合わす・目撃するという感覚は舞台ならではのものです。少しでも「気になるな」って思っていただけたら公演のホームページを開いてもらえたら嬉しいです。
串田:松さんと森山くんの2人も、いろいろ恐れずに挑戦してくれているし、体のあまり動かない人も一生懸命やっている。「こうしたらだめ」というのではなく、その人の魅力と限りない表現を探しています。見たことのないものを使って “見たことがある” っていうようなものを作れたら一番いいな。今度の芝居も“闇”だったり、いろんな抽象的な言葉が出てくるのでいろんな表現をします。ありとあらゆることをね(笑)。
(左から)森山未來、松たか子、串田和美
(取材・文・撮影:竹下力)
チラシ
■会場:Bunkamura シアターコクーン
■原作:テア・フォン・ハルボウ『新訳 メトロポリス』(訳・酒寄進一、中公文庫)
■演出・美術:串田和美
■原作翻訳:酒寄進一
■潤色:加藤直
<出演>
松たか子、森山未來、飴屋法水、佐野岳、大石継太、趣里、さとうこうじ、内田紳一郎、真那胡敬二、大森博史、大方斐紗子、串田和美 ほか
<ミュージシャン>
平田ナオキ、エミ・エレオノーラ、青木タイセイ、熊谷太輔
■公式サイト:http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/16_metropolis.html