「3ピースのガールズバンドっていうところにもう一回焦点を」 the peggiesはここで決定打を放つのか!?
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the peggies・北澤ゆうほ 撮影=上山陽介
インドア気味だから夏は引きこもり、それでいてサマソニにはしっかり参戦、敬愛するウィーザーを全力で楽しんで、自らのワンマンライブでは成長と課題と楽しさを確信し、原点回帰ともいえるバンドサウンドで勝負する新作を完成させる……と書いてみるだけでその充実ぶりとキャラクターがうかがえる、the peggiesのボーカル・ギターにしてソングライターの北澤ゆうほ。
今回のインタビューでも、間もなくリリースされる初のシングル「スプートニク / LOVE TRIP」を話題の中心に据えながら、最近感じていることやライブに関することまで、相変わらずの天真爛漫っぷりで語ってくれた。12月にはクアトロワンマンも控える彼女たち。話を訊いていても新曲を聴いてみても、飛躍の気配は十分だ。ぜひ今のうちのチェックをオススメしたいバンドです。
――この夏はどんなふうに過ごしてましたか?
夏はとにかく家に引きこもってて、曲を作ったり、いろいろ勉強してました。ライブに行ったりもしたし、インプットの夏でした。
――もともと夏は外に出て遊びたいタイプですか?
全然違います……なるべく家にいて、日が暮れてから家を出るっていう(笑)。
――じゃあ家にこもって作業する時期としては、タイミング的に良かったんですね。
ちょうどよかったです(笑)。
――サマソニにも行っていたとか。どうでしたか、ファンを公言するウィーザーは。
もう最高でした! 感動しました。その時はすっごく天気良くて、青空の元でウィーザーを観れました。ずっとこうやって(全力で盛り上がる)やってました。
――これ全然文章にできない(笑)。
どうにかしてカメラに抜かれて、大画面に映りたかったんですけど、全然映らなくてすごい悔しくて。隣にウィーザーのタオルを持っている人がいたんですけど、その人ばっかり映ってて……今度はタオル持っていこうと思いました(笑)。
――インプット作業というのは具体的にはどんなことをしてたんですか?
自分の作る曲に対して、いろいろと考えました。今、私はどういう風に曲を作るべきかなって。今まで聴かなかった音楽やみんなが知っているような今の曲もちゃんと聴いておこうと思って、その上で、本来自分が好きな音楽もあるから、そこを重ね合わせて曲を作れたらいいなと。今まで聴かなかった音楽も、周りの人に教えてもらったりして聴いてました。
――ちなみにどの辺りを聴いたんですか?
周りの人も偏りなくいろいろ教えてくれたんですけど、アニソンとか、昔の洋楽とか。J-POPとかも、勉強になるなって聴いてました。歌詞をちゃんとみんなに届けたいっていう気持ちがあって、私も歌詞って大事だと思ってるし、そこは共通してるからすごく勉強になって。今まで聴かなかった音楽を聴くようにして、自分だったらどうしようかなって考えて……だから夏はずっと頭がパンクしてました。
――インプットがあったということは、それを音楽として放出する作業に移っていくわけで。その一つとして、夏の始めにはワンマンもありましたけど、どうでしたか?
いっぱい反省点があって。終わったあと落ち込んだんですけど、お客さんに救われたライブだったなって思います。でも、それをポジティブに捉えようと思って一生懸命前向きに考えた結果、お客さんがサポートしてくれている時点でそれはすごくありがたいことで今までなかったことだから、そこに自分が上手く応えればいいことであって。今まで見えてなかった反省点や、考えもしなかったことがいろいろと浮かんできたライブだったので、前に進み始めたなって思いました。
the peggies・北澤ゆうほ 撮影=上山陽介
――前回のインタビューのときも、ライブに対しての意識が変わりつつあるっていうお話が出てましたけど、さらに一歩先の段階に行くための課題が見えたということでしょうか。
そうですね。そういう気持ちになってからの初めての大きなライブだったから、今までとはまた違うベクトルで学べたことが多くて。やってる最中はすごく楽しかったです。ワンマンってみんなthe peggies(以下、ペギーズ)を観に来てくれてる特別な状態だから。私たちと、私たちを聴きに来てくれているお客さんだけがいて、そこに精一杯応えなきゃいけないし、私たちも楽しまなきゃいけないっていう絶妙な緊張感とか、みんながこの時間を楽しみにしてきたっていうエネルギーの部分がすごく好きだなって。せっかく観に来てくれてるんだから応えなきゃっていう気持ちも自然と大きくなるし。みんなペギーズ好きなんだ……私も好きー!って思いながら。
――良い空間でしたよね、いっぱい入ってたし。
うん。女の子もいて嬉しかったぁ……!
――セットリストもすごいなと思いました。「グライダー」が一番最後だし、前半でいろんな面をバーッと見せながら、だんだんジワジワとドラマティックな曲を並べていって。私たちこんなバンドですっていうのも見せつつ。
ワンマンだからいろんな曲をやりたいし、ワンマンだからこの曲聴けるかな?って来てくれている人もいるだろうから、そういうのにも応えたくて。でも、セトリを決めるのってめっちゃ大変だなって、いつも思います。意外と曲がいっぱいあるから、そこから掻い摘んで1時間半に収めるのって難しい。
――順序ももちろんあるし、MCの場所とかも。
そう、そこらへんは上手にできたかなって思います。セトリとMCのバランスや、喋る内容は詰めてから臨んだんで。私があがらないように。あとは場の空気に対応しようと思ったんですけど、土台はしっかりしておこうと思って、めっちゃ台本を書いてました(笑)。土台がしっかりしてたから安心できて、自由にやる部分が映えたかなって思います。
――そこまで決めこんでたと思えないくらい、遊び心や自由だなぁっていうところもあったけど(笑)。そういう部分も含め、良さが出ていたんじゃないかなと思いました。で、そのライブでもやってたのが、今回の新曲「スプートニク」ですよね?
そうです!
――初のシングルになりましたけど、今までと違うところはありましたか?
今までは、「ペギーズにはこういう曲もこういう曲もあります、まとめてパッケージにしたので、いろんな面を聴いてください」っていう感じで、アルバムの中にいろんな色をもった曲を集めて出してたんですよ。今まで最初に9曲入り、5曲、9曲だったかな? そういう感じで出していって。インディーズで一年半くらいの間に3枚出せたって結構出してる方だと思うから、手に届く範囲ではいろんな人に届いたと思っていて。ってことは、ペギーズにはいろんな曲があることを分かってきてくれたと思うんです。だから、またアルバムで多様さを見せるよりは、1曲2曲でガツっと響かせることが大事かなと思って。情報を数多く提供するっていうよりは、絞って多くの人にいかに届けられるかっていうところも、今後バンドを続けていく上では大事かなって。
――今までは「引き出しがたくさんあるんですよ」って、いろいろと開けて見せていたのが、その中でも特に強みが凝縮されたもの、明確なものを出そうと。それが両A面という答えになったんですね。曲について聞きますが、それぞれの曲はペギーズのどんな強みを打ち出したものになってるんですか?
『NEW KINGDOM』(前作のアルバム)を出したときに、すごい良いアルバムが出来たと思って。10代で最後に作ったアルバムで、とにかく良いものを残そうと思ったし、ペギーズがどうとかではなく、とにかく良いものが世に残るように作って。二人が全く演奏していない曲もあるし、ゲストで入ってもらった方のバキバキのギターソロとかもあったり、3人のアレンジだけじゃなくて、作れるものの中で一番なものを作ろうと思ってできた作品なんです。それはそれですごく満足したし、納得のいくものができたんですけど、次もCDを出すって決まったときに、どうしよう?と思って。次も、もう一回この方向性でいくのか、3人でバンドをやっているっていうところにもう一回焦点を当てるか。そこで、3ピースのガールズバンドっていうところをみんなに伝わるような音源にしたいなと思ったんです。3人でアレンジを考えた「スプートニク」もそうだし、3人だけで演奏できて、3人だけで伝わる音楽を作ろうって。
――どちらの曲もそういうタイプの曲ですよね。
そうです。2曲とも、私たちが3ピースっていうことを伝えたかったのと、今まではあまり書いてこなかった恋愛の……僕とキミ、みたいな曲をリード曲にしようと思って。これまでは恋愛の曲とかって遊び心で作るものしかなかったんでけど、せっかく若いんだし(笑)、別に書きたくないわけじゃなかったし、自分の持っている恋愛感も歌詞に一回書いてもいいかなと。共感してもらえたら嬉しいし、また次への自信に繋がるんじゃないかなと思ったんです。どっちもラブ系の……私たちなりのラブソングで、「あ~、めっちゃラブソング!」っていう感じじゃないかもしれないけど、みんなに共感してもらえて、なおかつ、ゆうほってこういうことを考えてるんだなって思ってもらえるような。
the peggies・北澤ゆうほ 撮影=上山陽介
――「LOVE TRIP」の方は、かなりストレートに恋愛ソングですよね。タイトル通り、恋してダメになっちゃったな~みたいな。そしてこの曲もそうですけど、一人称“僕”が多い。
そうなんですよ。そこ直そうと思ってて(笑)。
――あ、持ち味じゃないんですか?(笑)
頭の中で、“私”が出てこないんですよね。自分の頭がわりと男性脳なんです。「私、今あなたに恋をしてて」っていう言葉が……そういう状況になったら出てくるんだろうけど、今は出てこなくて。その自分の感覚じゃないものを、人に共感してもらいたいがために書いたとしても、一部の人に共感してもらえても、自分にとっては嘘になっちゃうし。そういうのは分かる人には分かるから。今は自然と出てくるものを歌詞にしたいなと思ってるんです。そうするとわりと男前?な感じになっちゃうんですよ(笑)。
――自分の思っていることではあるけど、歌詞というフィルターを通すことによって、”僕”っていう主人公が歌うことになる。面白いですね。
僕になっちゃう(苦笑)。最初は私も気づかなかったんですけど、この間も言われて「ほんとだ!」って(笑)。他の方の曲とかを聴いていると、みんな“私”って言ってるから、ナチュラルにできてるんだろうなって思って。それぞれの持ち味だから、それは各々の魅力でいいんだろうけど、私はいろんな歌詞を書きたいし、いろんな曲を書きたいって思うタイプだし、これしかやらないっていうよりは、こういうのもやって、ああいうのもやって楽しいな、こういうことが伝わればいいなっていう気持ちで音楽をやってるから。今後は、”私”っていうワードがナチュラルに出てくるように感情を調整中です(笑)。
――(笑)。しっとりと女心を歌うペギーズ。
そう! そんな風になりたいなって思って。
――“僕”って良いですけどね。北澤さんの声で「僕」がポンッと入ってくると気持ち良いです。
ほんと? じゃあ、バランスを調整して(笑)。
――あと、タイトルについても。「スプートニク」って初の人工衛星らしいですね。
そうなんです。もともとすっごい宇宙が好きなんですよ。宇宙っていうだけで、やば!鳥肌!って(笑)。一度は宇宙に行ってみたいんですよ。その気持ちは絶対なくさないように死んでいこうって思うくらい。宇宙の意味わからない果てしなさにすごくワクワクするんですよ……分からないものに対してワクワクするのって完全に子供心じゃないですか。そこを忘れずにいたいと思ってて。小さいときからずっと宇宙に興味があって、曲を書き始めたときにも、もう2曲目あたりから宇宙がどうだ、星がどうだっていうような歌詞ばっかり書いてたんですよ。宇宙って正解がないじゃないですか。もちろんすごく詳しい人は、「いや違う、宇宙には実際~~」とか思うかもしれないけど(笑)。
――そこは抽象的な言葉として。
絵的にも綺麗だし、表現をする言葉として使うのもすごい好きなんです。「スプートニク」は、<宇宙の>って始まるんですけど、弾き語りで家で作っているときナチュラルにフワっと出てきたんですよ。この歌詞良いなと思って、それが多分一年くらい前。サビだけ作ってそのまま放置だったんですけど、今年に入ってこれを曲にしてみようかなと思ったんです。せっかくなら宇宙にまつわる曲にしたいなと思って、いろいろと考えたているうちに、人工衛星の名前をつけたいなと思って。地球と人工衛星の距離感みたいな。この曲ってラブラブみたいな曲じゃないじゃないですか。
――そうですね。
結局付き合ったの? 別れたの? どっちなの? みたいな、分からない感じ……未知な感じが宇宙らしさにつながるかなと思ったし、人工衛星って地球の周りを同じ距離感で回ってて、絶対に交わらない関係性みたいな部分が、歌詞の僕と君の距離感とすごい似てるなって思って、人工衛星の名前をつけようと。で、いろいろと人工衛星のことを調べたら、スプートニクが初めての人工衛星で。多分戻ってこなかったんですよね。その切ない感じも気に入っちゃって。「スプートニク」にします!って言ったら、「言いづらいよ~」って言われちゃって、「そんなことないです!!」って(笑)。
――言いづらさは置いておいても、字面もいいですよね。
そう。カタカナでもかっこいい。
――初の人工衛星ってことで、孤独感もあるじゃないですか。宇宙でひとりぼっちっていうセンチメンタルな感じというか。
そこがすごい出せるかなって思って。かっこいいっていう感じじゃなくて。
――すごく良い曲だと思いました。今回は両A面のほかにも3曲入ってますけど、3曲目「LOVE in the TOKYO [ぺぺぺぺremix]」のアレンジいいですよね。
めっちゃイケイケですよね! 私も家で聴きながら踊り狂ってます、家族が誰もいないときに(笑)。あれ、かっこいいですよね! リミックスを頼んでやってもらったんですけど、「あ、リミックスってかっこいんだ」って気づきました。原曲の「LOVE in the TOKYO」と全然違う魅力が出て。
――元の曲もすごくダンサブルな曲だと思うんですけど、そのダンス成分がより強調されているというか。あれは是非聴いてほしいですよね。
リミックスって、提示する人の熱意と、聴く側の「聴いてみたい」っていうバランスが取れてない気がするんですけど、これに関しては一回でいいから聴いてみてほしい。こういうのもあるんだ!っていうのを感じてほしいなって思います。このシングルの中で、もしかしたら一番挑戦的かもしれない。シングルの3曲目にいきなりあんなイケイケな曲を挟むっていう(笑)。これ、今ライブのSEで使ってるんですけど、結構いい感じに登場出来るんですよ。
――あたたまった状態で1曲目にいけそうです。そうそう、ライブといえばワンマンライブも2本控えてまして。まずは生誕祭的なものですよね?
そうですね。私、本当に自己主張強いんで(笑)。でも、謙虚さと傲慢さの押し引きって大事だと思ってて、「私、謙虚だから」って言ってる人ほど、それって傲慢じゃんって思うんですよ。私はそこの押し引きを上手くやりたいから、MCでは絶対に自分の誕生日を言わない……祝ってもらいたいけど、言われるまで言わないって決めてる(笑)。
――いつものライブのような顔をして?
平然とした顔してて、「おめでとう」って言われたときに「! あ~!」みたいな(笑)。
――まあ、タイトルに「~ゆうほが生まれた日~」ってついてるんだけど(笑)。で、大阪なんですね。
初めて東京以外でワンマン出来るのが嬉しくて。大阪には最近いっぱい行ってて、お客さんの雰囲気もすごい好きなんです。楽しみ~。たこ焼き食べれないと泣いちゃう(笑)。
――そして、その一週間後には(渋谷)クアトロですよ。1つの節目感がありますね。
そうですね。クアトロっていうネームバリューが知れ渡ってるから、みんなからしてみても、「へえ、クアトロでやるんだ!」って気にしてくれるキッカケにもなると思うんで。すごい楽しみです。
――これ、タイトルが気になるんですけど……“final”ってなってますよね。
最後にしようと思って、そんな喧嘩を売ったようなタイトルを(笑)。『宣戦フ告』だなんて、血走った目みたいなタイトル止めた方がいい!(笑)
――じゃあ、これ以降はもっとまろやかになるんですか?
まろやかになるか……もっとハードになるかですね(笑)。高校生のときからずっとこのタイトルでやってきたんですけど、クアトロでやるっていうことをバンドの一つの節目にしないといけないじゃないですか。クアトロでやるからには、バンドの歴史的にも「あの時のライブは」ってずっと何年も言えるような節目にしないといけないと思ってて。そういう気持ちも込めて、これで最後だみたいな。
――今までの流れで進むのはここでいったん区切って。
そう。またこれから頑張るっていう意気込みを、“final”っていう言葉に込めました。
――それ以降のペギーズがどんな感じになっていくのかも、この時に観れるんでしょうね。
そうですね。楽しみにしていてほしいです。……ワクワクしてほしいな。追っていたいって思えるバンドでいたいなって思うし、この先どうやって進んでいくんだろうって、気になるような存在でいなきゃなってすごく思います。
取材・文=風間大洋 撮影=上山陽介
the peggies・北澤ゆうほ 撮影=上山陽介
2016年10月19日発売
「スプートニク / LOVE TRIP」
全5曲収録 1,296円(税込)
品番:POCS-9153
※期間生産限定盤
1. スプートニク
2. LOVE TRIP
3. LOVE in the TOKYO [ぺぺぺぺremix]
4. 青春なんかに泣かされて 2016.7.28 at clubasia
5. ときめき?シンフォニー 2016.7.28 at clubasia