東の驚異、劇団ナカゴーがついに名古屋へ!

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アクテノン 夕暮れ迫り、まもなく開演時間を迎えるアクテノン。ギリシャ神殿を思わせる円柱状の美しい建物だ

アクテノン 夕暮れ迫り、まもなく開演時間を迎えるアクテノン。ギリシャ神殿を思わせる円柱状の美しい建物だ

東の驚異、劇団ナカゴーがついに名古屋へ!

小熊ヒデジ。劇作・演出・制作・プロデュースなど、主たる俳優以外の作業も名古屋を拠点に黙々淡々とこなしながら上京を重ね、その時々の刺激的な芝居や集団を求めて触手を伸ばし続けてきた名古屋演劇界のキーマン。ハイバイや五反田団、サンプルなど、それまで東海エリアではなかなか観る機会のなかった話題の演劇人を次々と呼び寄せ公演やワークショップを行ってきた彼が、いま最も情熱を傾け、名古屋公演を実現させた劇団こそナカゴーだ。

既に本サイトでも紹介された東京公演を経て、迎えた名古屋初日は8月15日。チラシにギッシリと並んだ白熱の推薦文に胸躍らせながら、この日のソワレへ足を運んだ。上演場所は、名古屋市演劇練習館アクテノン。昭和12年に配水塔として誕生し、後に図書館、そして20年前から演劇や音楽、舞踊など「舞台芸術の練習の場」として日々多くの集団に利用されているが公演が行われることは珍しく、いわゆる劇場ではない空間で上演を続けてきたというナカゴーらしさ、がここでも。

最上階にあるリハーサル室に入ると、階段状に組まれた椅子席と桟敷席があり、既に50名程が着座している。その後も開演間際まで予備席が次々と設けられ、この回の観客は60名を越えた。やがて、静かに流れていたカノンが止み暗転…。

明転すると、舞台上には一家の夫(篠原正明)と妻(高畑遊)、5歳の娘ミチカ(日野早希子)が。ちゃぶ台を挟んだ向かいには、10歳の息子カンタロウ(川﨑麻里子)を亡くした隣人イチコ(鈴木潤子)が座っている。幽霊のカンタロウと会話ができるミチカと、それに戸惑い諌める夫婦、どうしても息子の姿を見たいイチコとの間で会話劇が展開されていく中、少しずつ役者の表情やセリフから小さなおかしみがこぼれ出すと、当初は身構え、周りの様子を窺っていた観客があちらこちらでクスクスと反応しはじめた。

やがて皆の前に姿を現したカンタロウとイチコが対面、夫は仕事にかまけていた自らを反省し、ミチカとの時間を大事にすると誓う。そして「鬼ごっこがしたい」というミチカの望みを叶えようと、夫が鬼の真似をはじめ怖さをエスカレートさせていくと、突然ミチカが苦しみ始める。

セットと言えるのはちゃぶ台のみ、小道具もカンタロウの好物『シベリヤ』や真新しい運動靴などごくシンプルだが、そこで巻き起こる事象のインパクトは強烈だ。そしてここから事態は急転、いよいよナカゴーの真髄を目の当たりにすることに。

なぜか突如、営んでいた喫茶店の火事で焼け死んだアケミの魂がミチカに乗り移るのである。’90年代のサイコサスペンスドラマ『あなただけ見えない』を彷彿とさせる仰天の展開と圧倒的なスピード、黒子の主宰・鎌田が操る人形(ミチカ)のザックリしたチープ感の面白さ、日野演じるアケミのダミ声や絶妙な口調が怒涛のごとく客席に押し寄せ、場内は一気に興奮状態へ! 懐かしのタバコ『峰』や『ツムラの漢方薬』『はなきんデータランド』など、独特のワードチョイスもたまらない。

さらに「カンタロウとまぐわった」と言うアケミは、彼らを支配する“鬼”への捧げ物としてミチカの身体や妻の乳房を奪いにかかる。それに絶叫しながら全力で立ち向かう夫婦やイチコとの壮絶な攻防合戦でついに爆笑の連続となるが、一転、喫茶店で共に焼け死んだ常連客が妻やイチコに乗り移り、下ネタの連発やボルシチ談義(!?)が始まると、いつしか客席には唖然とした空気が…。しかし、執拗に展開されたアケミの暴走シーンとは裏腹に、家族愛を描いてあっさり収束したラストには茫然自失の観客も復活。惜しみない絶賛の拍手を送った。

過剰なまでの熱演の一挙手一投足を見逃すまい、絶叫の中に散りばめられたコトバひとつも聞き逃すまい! という緊張感と集中力で肉体的には疲れたが、くっきりと心に刻まれた役者たちの素晴らしき個性と、緻密に仕組まれた志高きクダラナサに感服しきり。とても濃密で贅沢で爽快な75分間だった。

終演後に行われたアフタートークでは、ゲストに名古屋の劇団少年王者舘主宰・天野天街を迎え、作・演出の鎌田順也、小熊ヒデジの3名が登壇。まずは、「初めてナカゴーを観た時、すぐにこれは名古屋に呼ばなくては! と思った。どこに連れていかれるんだろう…と、頭の中がショートし始めました(笑)」と小熊。野鳩との合同公演は観たが本公演は今回が初見という天野は、「観てすぐに感想を言うのは難しいけど、ヌケヌケとした感じで大好き。野鳩の水谷君が観た、以前の作品を朝まで細かく聞いたことがあって、それもすごく面白かった」と。小熊が最近の作風について尋ねると、「4~5年前から今作のような感じ。場がどんどん事故ってほしいなと思うようになって、こういう感じになってきたんです」と鎌田。

アフタートーク(左から天野天街、鎌田順也、小熊ヒデジ)

アフタートーク(左から天野天街、鎌田順也、小熊ヒデジ)

さらに観客から今作の人形について質問されると、「大変なので、できれば人形は使いたくなかった。『エクソシスト』のようにミチカに別の声をあてたかったが、それが出来なくて」と意外な返答をするも、「急に(ミチカが)はけてすぐ人形が出てくる工夫のなさは、自分では好きです」とも。また、先の鎌田の発言を受け「今の作風に行き着いた理由は何かあったんですか?」という観客の問いには、「今作の前半のように間を取る面白味みたいなのは、あざといと思うようになってきて。それで面白くしようとするんだけど気に食わなくなって、最近は絶叫系とか言われることがあるんですが、その気に食わないところを隠すためにやっているような感じがちょっとあります」と創作の秘密を明かした。

他にも多くの質問が寄せられ、観客の関心の高さが伺えたトークショーも盛況のうちに終了。全3ステージ約200人が享受したこの時間を、幸福と呼ばずしてなんと言えばいいのだろう。またの来名を! と言いたいところだが、それまで待てそうにない。

アフタートーク(左から天野天街、鎌田順也、小熊ヒデジ)

アフタートーク(左から天野天街、鎌田順也、小熊ヒデジ)

イベント情報
ナカゴー 第12回公演『率いて』

日時:8月15日(土)15:00・19:00、16日(日)15:00
会場:名古屋市演劇練習館アクテノン 5階 リハーサル室
出演:川﨑麻里子、篠原正明、鈴木潤子、高畑遊、日野早希子
http://nakagoo.com
 
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