天野天街×シェイクスピア 再び!〈少年王者舘〉が新人公演『夏の夜の夢』を、GWに名古屋で上演
『夏の夜の夢』に出演する〈少年王者舘〉の新人一同。前列左から・ひらのみやこ(スタッフ)、新部聖子、今井美帆、渡邉菜央、五月女桜子 後列左から・田口田一大助、飯塚勝之、森春介、佐伯ピン子、後藤美智子
今(2023年4月)からおよそ1年前の2022年3月に、劇団創立40周年を記念して26年ぶりの新人募集オーディションを東京・大阪・名古屋で実施し、14人もの新たな顔ぶれが劇団員となった〈少年王者舘〉。多くのメンバーが入団しながらも、本公演は2024年夏に予定(当初は2020年8月に上演予定だったが、新型コロナウイルスの影響により延期)と、彼らの本格的なデビュー作は少し先となっていたが、この度、その本公演に先駆けて新人お披露目公演が行われることが決定。2023年のゴールデンウィーク期間中、5月4日(木・祝)と5日(金・祝)の2日間にわたり名古屋の「北文化小劇場」にて、新人とおなじみの劇団員を含む総勢18名出演による『夏の夜の夢』を上演する。
新人公演『夏の夜の夢』チラシ表 コラージュ/アマノテンガイ
『夏の夜の夢』といえば、ギリシャ・アテネ近郊の森の中を舞台に、問題を抱えた4人の人間の男女の恋模様や、妖精の王と女王のいざこざ、妖精が仕掛ける魔法のいたずらが複雑に絡み合いおかしな出来事が展開される、言わずと知れたイギリスの劇作家、ウィリアム・シェイクスピアの代表的な喜劇作品のひとつだ。〈少年王者舘〉を主宰し、本作の脚本と演出を担う天野天街は、これまでにも劇団内外の舞台で数々の原作モノを手掛けてきたが、シェクスピア作品に本格的に取り組んだのは本作が初。
〈少年王者舘〉主宰で、脚本・演出を手掛ける天野天街
実はこの作品、天野が2011年以降、脚本と演出を依頼され年に一度公演を行ってきた熊本の演劇ユニット〈雨傘屋〉のために手掛け、2017年に上演した作品がベースとなっている。〈雨傘屋〉では既存の台本を用いることを基本とし、それを天野が上演用に書き換えて演出する形で公演を行っているため、上演作品は毎回、〈雨傘屋〉主宰の阿部祐子がセレクト。そこで天野は、当時初めてシェクスピア作品と対峙することに。
「『夏の夜の夢』は題名がいいですよね。シェイクスピアの作品はいつか出来たらいいな、とは思っていましたけど、それまでちゃんと戯曲を読んだこともないし、こういう機会がないとなかなか読まないだろうから、阿部さんから『夏の夜の夢』を提案された時は、ちょうどいいな、と思いました。脚本を書くにあたって、最初はシェイクスピアの全作品をコラージュするみたいなことをやってみようと思ったけど、1週間とか2週間で書き直したから、そんなこと出来るわけがない(笑)。それで、坪内逍遥はじめ4つぐらいの翻訳を照らし合わせてガイドにしながら、ともかく全体像もわからないまま一行目からずっと、自分なりに変換していく形で書いていきました」と、天野。
『夏の夜の夢』稽古風景より
熊本の演劇ユニットのために、熊本の劇場で上演するべく、熊本で書かれたこの脚本には、シェイクスピア作品でありながら、熊本弁とおぼしきセリフの数々も差し込まれている。時代や場所を限定せず、遊び心やバカバカしいやりとりもふんだんに盛り込んだ、いつもの天野作品らしい描き方をしている一方で、原作の翻訳をベースにした韻文の長台詞を多く残すなど、シェイクスピア作品特有の雰囲気を踏襲したようなシーンも印象的な本作。両者のテイストのバランス具合が、天野がこれまで原作モノを脚色してきた作品とも、完全にアマノワールド一色の〈少年王者舘〉作品とも少し違った印象を受け、その点について尋ねてみると、
「原作の構造とか構成には手をつけずに、全く同じ流れのまま書き換えていったので、いつものような脱構築はしていないんですよ。さっき話した通り、何人かの翻訳をミックスしたものをベースにしながら全部書き直していった、という感じ。あまり予算がなくて十全に出来たとは言えないけど、僕としてはとても面白い公演になりました。元々は〈雨傘屋〉のために書いたものだから王者舘っぽくはないのかもしれないけど、基本はそのままの台本でやります。ただ、今回は熊本の時より出演者が何人か多いので、新しく創るシーンもあります。主に妖精が出てくるところで、変なところをちょっと歪ませたり、相変わらずループ(天野作品では常套の、同じシーンを何度も繰り返すこと)もあるので、その辺りは王者舘っぽくなると思いますよ」と、回答。
新人組にとっては来夏に控えた本公演の前哨戦であり、劇団全体にとっては新生〈少年王者舘〉の幕開けともいうべき今回の公演。初々しい!? 新人たちと、個性あふれる既存メンバーが織りなす、ひと足早く訪れた“夏の夢”のようなひとときをご堪能あれ。
新人公演『夏の夜の夢』出演者一同。新人10名を含め総勢18名が出演
取材・文=望月勝美
公演情報
■脚本・演出:天野天街
■出演:飯塚勝之、今井美帆、後藤美智子、佐伯ピン子、坂井可南子、五月女桜子、田口田一大助、新部聖子、森春介、渡邊菜央(以上、新劇団員)/夕沈、山本亜手子、小林夢二、宮璃アリ、る、岩本苑子、篠田ヱイジ、月宵水
■会場:名古屋市北文化小劇場(名古屋市北区志賀町4-60-31)
■料金:一般3,000円 U-22 1,500円 ※22歳以下の方は、当日受付で年齢のわかる証明書を提示
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「伏見」駅下車、地下鉄名城線に乗り換え「黒川」駅下車、4番出口より北へ徒歩12分
■問い合わせ:少年王者舘 050-5372-6714 shounen@oujakan.jp
■公式サイト:http://www.oujakan.jp