fripSide 二年ぶりのアルバム『infinite synthesis 3』本人たちによる全曲レビューインタビュー【後編】
fripSide 八木沼悟志(sat)・南條愛乃 撮影=岩間辰徳
八木沼悟志(sat)と南條愛乃のユニット・fripSideが、約2年ぶりとなるアルバム『infinite synthesis 3』を発売した。枠にとらわれずfripSideらしさを追求した作品に仕上がっている。今回SPICEではfripSideの2人にアルバム全曲を聞きながら、曲を作ること、セルフカバーを行った理由、アルバムの構成などを語ってもらうセルフレビューインタビューを実施した。すでに掲載されている前編に引き続き、トラック8からトラック14までの後編をお届けする。
――改めて、アルバム後半をレビューしていければと思います。続いては、トラック8の「white forces-is3 edition」となります。
八木沼: 『シュヴァルツェスマーケン』のオープニングですね。
――これは前奏ががっつりありますね。
南條: ですね。これもシングルの時とアレンジが変わりました。
――さっき言っていた、男子っぽいfripSideという感じの曲ですが。
八木沼: 真ん中な感じはしますよね。
八木沼:これは……fripSideですね(一同笑)。
南條: これはfripSideですよね(笑)。
八木沼: fripSideだね(笑)。
――いわゆるファンが持っている印象としてのfripSideのアルバムに一番近いのかな?と思いました。
八木沼: そうかもしれない。
――まとまった所で次に行きましょうか(笑)。 「crescedo -version2016-」ですが、今回セルフカバーとしてこの2曲を選んだ理由って何かあるんですか?
八木沼: これはSPICEさんだけにお話するんですけど、今回サウンドをリメイクするにあたって、一番難しいと思った2曲なんです。簡単じゃないなってそれだけなんですよ。この2曲を選んだ理由は。……正直、やりたくないなって思ったのをやりましたね。
――それはなぜしょうか?
八木沼: ずばり、挑戦です。やっぱりやりたくないって思うには、いろんな背景があって、多分お客さんの曲に対する愛情の強さだったり、昔だからこその重さみたいなものだとか、いろいろあるんですよ。サウンド的にもそういうのはあるし。正直今と比べたら技術的に古い機材を使ってたりもする。
――そういうのを受けて、南條さんはいかがでしたか。
南條: 息継ぎが大変でした(笑)。
八木沼: 一言!(笑)
南條: ライブどうするんだろうって思ったんですけど、昨日のリハでは歌うことができましたね。
――確かに息継ぎポイントないですよね。
南條: そうなんです。レコーディングの時はこれは苦しいなと思ってたんですけど、結構できましたね!
八木沼: ナンちゃんはこのテンポでも、16分休符があるとそこで息が吸えるんですよ。それでまた次の4小節先まで歌っちゃうからすごい。俺は絶対できない。
――それは才能ですね。
八木沼: 才能っていうか、技術。
南條: 皮膚呼吸ですかね(笑)。
八木沼: それはない(笑)。
――技術的に自分がスキルアップしてきたと思うところはあるんでしょうか。
南條: fripSideだからっていう意識の持ち方っていうのが、昔よりは、もっと楽に持てるようになってきてるっていうのも大きいんですけどね。あとは、去年膝を怪我して、リハビリで筋トレをしなきゃいけなくて。それをやったことでちょっと土台がしっかりしたというか、逆に、それで歌いやすくなったなというのがあるんです。
――体のベースが鍛えられた。
南條:全部独学でただがむしゃらにやるだけだったので、リハビリで鍛えることで必要な部分が徐々に強くなってきたっていうのがあるみたいですね。
南條愛乃 撮影=岩間辰徳
――では、続いて「Run into the light」。これは英語詞が多く、ちょっと硬質な感じを受けたのですが。
八木沼: うんうん。
――これを南條さんの声でやってるのがすごいハマったんです。
八木沼: ありがとうございます。結構楽しんで作りました。
南條: 日本語の歌詞すごい少ないですからね。歌詞カード見て「おお?」っていう(笑)。今回、英語の歌詞についてもsatさんこだわってて。
八木沼: そうなんですよ。英語の歌詞って今までずっと自分で書いてきてはいたんですけど、やっぱ、英語圏の人から見るとちょっとナンセンスが入ってるそうなんです。こういう言い方しないよ、100点じゃないよって言われたり。ナンセンスな英語を使ってるって言われたくないじゃないですか。世界中にもfripSideを聴いてくれるファンの輪が広がっているっていう感じがあるので、英語的にしっかりしたものを作って行きたいんですよ。
――たしかにその気持はわかりますね。
八木沼: 僕自分で、今会社をやっているんですけど、ニューヨークに支店を作りまして。そういう日本人アーティストのための、英語詞とか英語タイトルをチェックする機構を働かせようかなって。
――それはちょっと新しいですね。あまりそういった機構というか、システムって聞いたことがないです。
八木沼: そうなんです。僕らがやっているのはアニソンですけど、アニソンも英語はもうちょっと頑張らないとね。
南條: 助かりますね。グーグル先生に聞いても微妙なニュアンスがわからなかったりしてたし(笑)。
八木沼: そう。慣用句とか、流行りの表現の仕方ってあると思うので。
――僕らが洋画などを見て、日本語が出てくると「おや?」っていうのありますが、向こうもそう思ってるんですよね。
南條: 確かにそうですね。
――メロディにしっかり乗る英語の譜割りだったりって、実はすごく難しいんじゃないかと。
八木沼: 英語ならではの音符への乗っかり方ってもちろんあるので、日本人だとそれがわからなくて、変なところで切っちゃったりとか。そういうのを現地の人がチェックする、一緒に考えるっていうことをやっています。
――英語詞を歌うことについて南條さんはどうですか。
南條: ほんとに英会話教室に通い続けたらよかったなっていう。
八木沼: わはは(笑)。
南條: 3回しかいってなくて、無料期間が5回あったのに……そこまで到達できなかった(笑)。月謝払ってるのに!
八木沼: ナンちゃんが英会話教室行ってるの面白いね。
南條: 海外でライブさせてもらう機会もちょこちょこあったので、そこで日常会話ぐらい話せたら、現地のファンの方も喜んでくれるし、いいか!って思って会員になったんですけど、全然行けなくて(苦笑)。 趣味とか話しているレベルで終わってしまいました。
――「Dry your tears」はいかがでしょう。
八木沼: これも同じロジックで、英語。
南條: そうですね。
八木沼: 10曲目とセットです。
――さっき言ったアルバムの流れとしても、後半のオーラスに向かっていくというところで、この2曲の流れは良いなぁと思うんですけど、「Run into the light」と比べて、こっちの方が疾走感がある気がします。
八木沼: そうですね。
――テーマも近いんでしょうか?
八木沼: テーマも同じですね。なんか「Run into the light」で言い切れなかった言葉を「Dry your tears」に持ってきている感じがあるんですよ。だから2曲セットで聴いてもらえると、「Dry your tears」ではより具体的に説明が入るっていう。
――南條さんこの曲はいかがですか。
南條: かっこいいですし、ライブとかでも盛り上がりそうだなと思って歌いましたね。
――そして、12曲目は「unlimited destiny」。聴いてる中で、アルバムのビジュアルである宇宙船の雰囲気にすごく近しい印象がありました。
南條: アルバムの一番最初に、fripSide自体がコンセプトってsatさんが話してましたけど、とはいえ、前回の『infinite synthesis 2』というアルバム全体を表しているのが、「infinite synthesis」って曲だと思ったんですけど、今回のアルバムでそう言えるのは、この曲かなっていう。
――総まとめって言ったら変ですが、なにか表している曲かなっていう感じがしたんですよね。
八木沼: これ、「Luminize」のカップリングなんですけど、このアルバムの中では一番最初に録った曲なんですよ。だからコンセプト的なものにはなりやすかったのかな。
――それを踏まえて、ラスト2曲へ。このラスト2曲もセット感を感じたんですけど。
八木沼: うん、なんかね。
――「One and Only」の後に「Side by Side」がくるっていう流れが素晴らしいなって。
八木沼: ありがとうございます。なんかここで終わりそうな曲ですよね。
――ここで終わるような感じの曲だからこそ、最後の「Side by Side」がスーっと入ってくるというか。
八木沼: なんていうのかな、打ち込み系の音楽ジャンルで、90年代の曲とかR&Bとかを取り入れたものが流行った時期があったんです。うちはそういえば、そういうチャンネルって作ってないなって思ったので。ギターもガットギターを録音したんですけど、ナイロンガットで録るのってあんまりないので、サウンドが出来上がって、南條さんに作詞をしてもらって、とてもいい感じになったなと思います。
――じゃあ、こちらの作詞に関しては。
南條: 幸せな歌詞にはしたいなと思っていたんですけど、時間は有限だっていうことを言いたくて。大事な人だったり、ペットや家族でもいいんですけど、ずっと一緒にいたいなと思っても、究極の意味では叶わないじゃないですか。だから、それまでの時間を大事に生きて行けたらいいよね、というような歌詞です。
――そして最後の「Side by Side」へ。
八木沼: この曲に関しては古典的fripSideサウンドであり、一番デジタルJ-POPを好きな人が喜んでくれる曲じゃないかなと思います。
南條: これ歌ってても聴いていても、いい意味で気楽に耳に入ってくるというか。ここまでが鬼気迫ったりとか、疾走感に乗っかっていくような、結構集中して聴いてもらえるアルバムだと思うんですね。この曲が一番最後で世界が広がる感じで、リラックスというか……リセットできるような感じだと思います。
八木沼: エンド感はあるかもしれないですね。
――このアルバムは、すごく考えられていて、トラック1から14までを流して聴くっていうことを考えて作られているなっていう印象が強いです。さっきおっしゃっていたように、配信でつまむんじゃなくて、アルバムを聴いて欲しい。
八木沼: 通して聴いてもらえると、より楽しいかなっていう。今回のアルバムで、一番いいなと思ったのが、僕も彼女も歌詞を書いているじゃないですか。書いてもらっている中で、こうやって並べた時に、アルバムとしての統一感が出るんですよ。 起承転結で、ちゃんと終われるっていう。それが自然と2人でできるようになったっていうことが、一つ進歩したなってちょっと思っています。
――今のfripSideはライブを拝見しても曲を聴いても、どっちかがどっちかに寄り添って、頼っているというよりかは、ちゃんと2人が立っているイメージがあります。南條さんがどんどん立ってきている印象があって。
八木沼: そう、それがいいんですよ。キャリアとか年齢とか色々あると思うんですけど、それだけじゃない感じがしますね。お互いの役割がきっちりしてるんじゃないかな。
撮影=岩間辰徳
――ツアーもありますが、15周年記念プロジェクトの第一弾ということで、埼玉スーパーアリーナ単独公演が決まっています。
南條: 15周年ですけど、私が入って8年目なので、fripSideのお祭り的なイメージが強いですね。あと、fripのライブステージってレーザーとかバンバンと使うんで、広い会場の方が映えるなと思っているので。今ままでツアーに来てくれた人も、来られなかった人も一堂に集まって、fripSideの曲を聴いて楽しもうよっていう一日になるんじゃないかな。
――fripSideのライブを観ると、お2人ともすごい楽しそうなんですよね。
南條: お客さんが入って歌うのとレコーディングは、違った楽しみや魅力がありますね。
八木沼: 15年ですよ。そりゃ、歳もとりますよね。
南條: 中学卒業ですよ、15年というと。
八木沼: 15歳……そうか、そういうことか。
南條: 次からは高校ですよ(笑)。
八木沼: おかしいなあ……(笑)。
――satさん、この15年はどうでしたか?
八木沼: どうかな。前半と後半でやってることがガラッと違うので。でも、南條さんが入った2期は、あっという間な感じがしますね。
――1つのユニットの冠をかぶり続けるっていうのは結構なことだと思うんですけど。
八木沼: うーん、なんだろうね。お客さんに後押しされているのかな? それがなかったら多分、15年もやってないと思っているので。
――多分、この15周年プロジェクトが終わったら、次は20周年に向けての話もあると思うんですけど。
南條: プラス5年ですね。
八木沼: 5年先でも、まだ40代!
――まだまだいけますね。
八木沼: いやー! わかんないっす(笑)。
インタビュー=加東岳史 撮影=岩間辰徳
【CD+Blu-ray×2】GNCA-1490 \5,300(税別)
【CD+DVD×2】GNCA-1491 \4,800(税別)
【通常盤】
GNCA-1492 \3,000(税別)
●クリアスリーブ&デジパック仕様
●Blu-ray(2枚)収録内容
・fripSide concert tour 2015 ~infinite synchronicity~
<2015.12.13[sun] 東京・府中の森芸術劇場 どりーむホール>
・fripSide オランダドキュメンタリー映像
・1983-schwarzesmarken-(IS3 version) PV
・PV Making
・SPOT(SPOT in Stores Now ver./SPOT Special ver.)
fripSide LIVE TOUR 2016-2017 FINAL in Saitama Super Arena -Run for the 15th Anniversary- supported by animelo mix
先行応募券(受付締切:2016.10.16(日)23:59)
■収録曲
1.2016 -Third cosmic velocity-
2.Luminize
(TVアニメ「フューチャーカード バディファイト ハンドレッド」OPテーマ)
3.1983-schwarzesmarken-(IS3 version)
4.determination
5.magicaride -version2016-
6. Answer
7.Two souls -toward the truth-
(TVアニメ「終わりのセラフ」名古屋決戦編OPテーマ)
8.white forces -IS3 edition-
9.crescendo -version2016-
10.Run into the light
11.Dry your tears
12.unlimited destiny
13.One and Only
14.Side by Side
■2016/10/29(土)千葉 市原市市民会館大ホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/11/13(日)北海道 千歳市民文化センター大ホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/11/19(土)神奈川 神奈川県民ホール大ホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/11/27(日)長野 キッセイ文化ホール中ホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/12/04(日)大阪 オリックス劇場(開場17:00/開演18:00)
■2016/12/11(日)広島 広島上野学園ホール(開場17:00/18:00)
■2016/12/17(土)岩手 盛岡市民文化ホール大ホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/12/18(日)宮城 仙台サンプラザホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/12/24(土)福岡 福岡国際会議場メインホール(開場17:00/開演18:00)
■2017/01/07(土)愛知 名古屋国際会議場センチュリーホール(開場17:00/開演18:00)
■2017/01/21(土)岡山 倉敷市民会館(開場17:00/開演18:00)
■2017/02/19(日)福島 南相馬市民文化会館(開場17:00/開演18:00)
■2017/02/26(日)新潟 新潟県民会館大ホール(開場17:00/開演18:00)
■2017/03/05(日)石川 本多の森ホール (開場17:00/開演18:00)
会場:さいたまスーパーアリーナ
出演者:fripSide
料金:通常席 前売 8,640円(税込)、当日 9,180円(税込)
<お申込み期間:2016/11/16(水)12:00~2016/11/22(火)23:59>