小林研一郎(指揮) 読売日本交響楽団 コバケンとウィーンの巨匠との邂逅
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小林研一郎は独自のポジションを持つ指揮者だと思う。音楽はいつも熱く、心に迫ってくる節回しがある。無骨に見えるスタイルは、華々しいスポットライトを浴びる超一流ブランドとはまた違った魅力を放つ。また国内だけではなくハンガリー、オランダやチェコのオーケストラとも太い絆を持ち、地味ながら国際的にも根強い人気を誇る。
おのれの道を黙々と歩み続ける「炎のコバケン」はどこまでも自然体。だからこそ気づきにくいのだが、東京がグローバルな音楽ビジネスの一角に組み込まれた現状にあって、70代後半でのこの活躍は凄いことだ。齢を重ねるほどに根を深く張り、カリスマ性をじわじわと増大させているのではないか。
そんなコバケン、11月には特別客演指揮者を務める読響の定期に登場し、べートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」とブラームス「交響曲第4番」を組み合わせた重厚なドイツ・プログラムを聴かせてくれる。ともにがっちりとした構造を持つ曲で、読響を相手に真正面からぶつかっていく指揮ぶりや、ブラームスの哀愁をどう歌わせるかといったあたりに注目したい。
ベートーヴェンの独奏を務めるのは、1928年生まれのイェルク・デームスだ。盟友パウル・バドゥラ=スコダと並び戦前のウィーンの薫りを知る得難い長老で、古楽から名立たる歌手を支えてきた伴奏の妙技に至るまで、幅広い経験に裏打ちされた音楽を聴かせてくれる。そろそろ90歳に近づいてきたが、毎年のように元気に来日してくれるのも嬉しい。ウィーン風の格調高いベートーヴェンは、“コバケン節”とどのような対話を交わすのだろうか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2016年10月号から)
小林研一郎(指揮) 読売日本交響楽団 第564回 定期演奏会
11/24(木)19:00 サントリーホール
問合せ:読響
http://yomikyo.or.jp