ハイツェーにも感情をのせて歌いたい~『レ・ミゼラブル』新キャストインタビュー 生田絵梨花(コゼット役)編~

2016.12.31
インタビュー
舞台

生田絵梨花


ミュージカル界に燦然と輝く金字塔、『レ・ミゼラブル』が2017年、日本初演30周年を記念して全国各地で上演される。11月末に新キャストお披露目会見が行われたことは既報の通りだが、SPICEでは会見後、コゼット役の生田絵梨花(乃木坂46)、テナルディエ役の橋本じゅん、マダム・テナルディエ役の鈴木ほのかの3人に単独インタビューを敢行。まずは生田から、会見中の主な質疑応答の内容とあわせてお届けしていく。

【会見Q&A】コゼット役は、夢ではなく目標でした

――オーディションを受けた理由と、オーディションでのエピソードを教えてください。

初めて作品を観た小4ぐらいの時は、まだ自分があのステージに立つという想像は全くしていなくて、本当に雲の上のような存在でした。中学生ぐらいからコゼット役に心が動くようになって、私もいつか演じたいと思って声楽を習い始め、「夢」から「目標」にして取り組んできました。オーディションで特に印象に残っているのは、「本当に楽しそうに歌うね」と言ってもらったこと。これから勉強しなくてはいけないこと、プレッシャーもたくさんあると思いますが、楽しむことを忘れずに頑張りたいと思っています。

――『レ・ミゼラブル』のなかで、特にお気に入りのナンバーは?

コゼットが歌う《プリュメ街》。オーディションを受けるまで、コゼットには修道女のような大人しいイメージがあったのですが、「もっと無邪気で弾けている感じを出してほしい」と言われながらこの曲を歌ううちに、イメージがどんどん変わっていきました。皆さんにも、「こういうコゼット像もあるんだ」と思ってもらえるように歌えればと思います。

――アイドル活動が忙しいなかで、ミュージカルに積極的に挑んでいる原動力は?

この世界に入ろうと思った、元々のきっかけがミュージカルなんです。小学校低学年ぐらいの時に、テレビで見たことをきっかけに目指すようになって、ステージが好きという気持ちからアイドルになりました。乃木坂46として活動しているなかでも、『レ・ミゼラブル』に出たいという思いは、なくなるどころかますます強くなっていって。アイドルとしての色々な経験が、自分のやりたいことを再認識するための後押しをしてくれました。

――オーディションに立ち会ったスタッフ全員が、演出家の指導を受けるうちにどんどん表情が豊かになっていく、生田さんの変化に大きな可能性を感じたそうです。

初めて聞きました…!やっている最中は無我夢中で、自分がどう見えているかは全く分からなかったです。今の私はまだ何もない状態で、できることはただ、一生懸命エネルギーを注ぎ込むことだけ。なんでも知りたい、やってみたいという気持ちが強い、好奇心旺盛なところがコゼットと重なるのかなと思うので、とにかく夢中で頑張っていきたいです。

生田絵梨花

【インタビュー】エネルギーの渦のなかに光を灯せる存在に

――初めて作品を観た時の印象を、少し詳しくお聞かせください。小4というと、リトルコゼット役に憧れる年かなとも思うのですが(笑)。

その時は、ただただ「すごい作品だ!」と圧倒された感じで、自分がやりたいとかは全く思わなかったんです。それにリトルコゼットをやるには、その時点でもう身長が大きかったので(笑)。それまでにもミュージカルを観たことはあったのですが、全編を通して歌だけの作品は初めて。「音楽の力ってこんなにすごいんだ!」って、とにかく衝撃を受けたことをよく覚えていますね。その後も5回くらい観ていて、年齢が上がれば上がるほど、「この舞台に立ってみたい」という気持ちが強くなっていきました。

――生田さんが小4から今までというと、最初のほうはオリジナル演出版で、後半が新演出版ということになりますね。コゼットのキャラクター像の変化は、両バージョンの大きな違いの一つかと思うのですが、そのあたりは感じられましたか?

はい、すごく感じました。ただ、やはり最初に観て衝撃を受けたのがオリジナル演出版だったので、落ち着いたイメージが私のなかでは強くて。だから、本当の意味でイメージが変わったのはオーディションの最中だと思います。まるでワークショップのようなオーディションで、演出家もすごくユニークな方だったので、その場でどんどんテンションを上げられてしまいました(笑)。「心の内に情熱を秘めているワクワクした感じを出してほしい」などと導いてもらったことで、私のなかから色々なものが引き出されていったので、もっと引き出していただけると思うと、稽古がすごく楽しみです。

生田絵梨花

――生き生きとしたコゼットが誕生しそうで、こちらも楽しみです。そして作品ファンとしては、生田さんが出演されることで、ミュージカルを観たことがない方も足を運ばれるのではないかという点もまた楽しみです。

ああ、そうなったらいいなと思います。ファンの方のなかには、ミュージカルを観たことがなくても『レ・ミゼラブル』は知っていて、気になっていたけどきっかけがなかったという方が結構いらっしゃるんです。そういう方にはぜひ、この30周年をきっかけに足を運んでいただきたいですね。『レ・ミゼラブル』は多くの方に愛されている作品ですし、キャストはすごい方々ばかり。そこに自分が参加することには大きなプレッシャーがあるのですが、ファンの方の温かい応援の言葉が、頑張ろうと思える原動力になっています。

――ではコゼット役について、少し具体的な部分についてもお聞きできればと思います。ものすごい高音が含まれる、歌についての印象はいかがですか?

高いですよね…(笑)。声楽のレッスンに通って、なんとか出せる状態にしてからオーディションに臨んだのですが、ただ出るだけではダメなのだと実感しました。もちろん技術は大切ですが、役として歌うためにはそれを越えて、プラスアルファが必要なんですよね。今はまだ、ハイツェー(highC。高いドの音)とかを出す前には緊張してしまうので、まずは緊張しないで出せるようにして、本番では感じたままに歌うことが理想。もっともっと、努力しないといけないと思っています。

生田絵梨花

――そしてもう一つ、コゼット役の方は農民や娼婦など、ほかにもいくつかの役を演じることになりますが、それについては。

それに関しては、すごく楽しみです。まだ現実を知らないから言えることかもしれないですけど(笑)、一つの舞台で色々な役を演じるのは初めての経験なので、好奇心を持って取り組みたいなあって。演じることは好きですが、まだまだ自分で出せるアイデアが少ないので、皆さんに色々なことを教わりながら引き出しを増やしていければと思っています。

――そんな好奇心旺盛なところ、まさにリアルコゼットですね!では最後に、今の生田さんが思う『レ・ミゼラブル』という作品、そしてコゼットという役のいちばんの魅力とは?

大切な人を想って、命を犠牲にしてでも立ち向かっていく登場人物たちの姿に、私はいつも鳥肌が立ちます。それが作品の魅力で、コゼットに関しては、なんて言うんだろう…。この物語のなかで、コゼットってすごく重要なポジションだと思うんです。ジャン・バルジャンがコゼットを守ろうとするところから物語が始まりますし、マリウスとエポニーヌのように、コゼットと出会ったことで運命が変わっていく人もいます。作品全体を覆っている「革命」というエネルギーの渦のなかに、光を灯せる存在であることが魅力だと思うので、そういう存在になれるように演じたいですね。

生田絵梨花

(取材・文:町田麻子 写真撮影:荒川潤)

公演情報
ミュージカル『レ・ミゼラブル』
 
■作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク
■原作:ヴィクトル・ユゴー
■作詞:ハーバート・クレッツマー
■オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
■演出:ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル
■翻訳:酒井洋子
■訳詞:岩谷時子
■プロデューサー:田口豪孝/坂本義和
■製作:東宝
■公式サイト:http://www.tohostage.com/lesmiserables/

■配役:
ジャン・バルジャン:福井晶一/ヤン・ジュンモ/吉原光夫
ジャベール:川口竜也/吉原光夫/岸祐二
エポニーヌ:昆夏美/唯月ふうか/松原凜子
ファンテーヌ:知念里奈/和音美桜/二宮愛
コゼット:生田絵梨花/清水彩花/小南満佑子
マリウス:海宝直人/内藤大希/田村良太
テナルディエ:駒田一/橋本じゅん/KENTARO
マダム・テナルディエ:森公美子/鈴木ほのか/谷口ゆうな
アンジョルラス:上原理生/上山竜治/相葉裕樹
ほか
 
<東京公演>
■会場:帝国劇場
■日程:2017年5月25日(木)初日~7月17日(月・祝)千穐楽

 
<福岡公演>
■会場:博多座
■日程:2017年8月

 
<大阪公演>
■会場:フェスティバルホール
■日程:2017年9月

 
<名古屋公演>
■会場:中日劇場
■日程:2017年9月~10月