高畑充希&門脇麦W主演! 楳図かずおワールドがここに ミュージカル『わたしは真悟』ゲネプロレポート
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近年、漫画の舞台化が相次いでいるが、この原作を舞台にしろと言われれば、多くのクリエイターが躊躇してしまうのではないだろうか。それほど本作の世界観は特異であり、謎に満ちていて、安易に手を出せば自らのクリエイターとしての浅薄ささえ暴き出されてしまうような恐怖がある。
そんな偉大なるSFコミックの金字塔に、最高のキャスト&スタッフで挑んだのが、ミュージカル『わたしは真悟』だ。
原作は、生きる伝説・楳図かずお。演出は、31歳の若さでアルベールビル冬季オリンピックの開・閉会式の演出を手がけたフランスの気鋭、フィリップ・ドゥクフレ。
注目の真鈴(まりん)役には高畑充希。悟(さとる)役には門脇麦と、今最も旬の女優が名を連ねた。
年末年始最大の話題作とも名高い本作の初日直前最終舞台稽古が、12月1日、KAAT神奈川芸術劇場にて行われた。ここでは、その模様をお届けする。
これが、フィリップ・ドゥクフレの『わたしは真悟』
日本には数多くの素晴らしい才能を持った漫画家がいるが、楳図かずおほど独特のタッチを持った描き手は少ない。緻密に描き込まれた1本1本の線に、この世のすべてを呑み込むように見開かれた目。荒唐無稽なストーリーとともに、模倣しようとしてもまるで近づけない、唯一無二のオリジナリティがある。
この圧倒的な独創性に、フィリップ・ドゥクフレはどうアプローチしたのか。幕が上がってみれば、そこには大いなる才能への深い敬意を持ちながら、自らの感性と知恵のすべてをもって新しく塗り替えた、フィリップ・ドゥクフレの『わたしは真悟』があった。
まず目につくのが、フィジカルムーブメントとしての面白さだ。
物語は、深く愛し合う小学生の真鈴と悟が、子どもをつくるために東京タワーの333メートルから飛び降りるという、本作において最も有名かつ象徴的なシーンから始まる。アンサンブルたちは、ある者はアクロバティックに、ある者はコンテンポラリー的な動きを交えながら、市民のパニックを表現。演者総勢で繰り広げられる集団的身体パフォーマンスは、観客にフィリップ・ドゥクフレ版『わたしは真悟』の世界をシンボリックに提示する。
悟役の門脇麦(左)と真鈴役の高畑充希(右)
幼い真鈴と悟の遊び相手だった産業用アームロボットが、ふたりの愛によって自意識に目覚め、真鈴と悟を両親と認識し、双方の名から一字ずつ取り、「真悟」と名乗る。それが、『わたしは真悟』の骨格だ。顔さえ持たない産業用ロボットが、ふたりを救うため、命をかける姿には、「人間とは何か」という形而上学的テーマが孕まれている。
本作に底流する哲学と、フィリップ・ドゥクフレは誠実なほど真っ向から対峙している。
1幕中盤に登場するアンサンブルダンサーたちの動きは、果たして電流のようにも見て取れ、あるいは生命の根源である精子の動きにも重なり合う。本来なら命を持たない産業用ロボットに、自我が芽生え、やがて人知を超えた進化を遂げる。フィリップ・ドゥクフレは、役者の身体の可能性をあくまで信じ、神の領域に踏み入る原作の精神を、舞台上に立ち上がらせた。
真悟役の成河
また、本作を語る上で真悟役の成河の身体能力は欠かすことができない。今やすでに多くの名声を得た俊英ではあるが、本作での存在感は群を抜いている。
その無重力の動き。下水道のシーンでは、輪の上をひょいと風のように自在に渡る。しかし、この輪は幅10cm程度しかない。足をかけるフックもほんの短いものばかりだ。しかし、成河の動きはまるで不安を感じさせない。本作がこれだけ無機的でありながら無垢さを損なわずに成立したのは、“人ならぬもの”として舞台上を支配した成河の傑出した才能によるところが大きいのではないだろうか。
真鈴役の高畑充希
音楽はループ音を多用し、怪奇的とも近未来的とも幻想的ともとれる重層的な世界をつくり上げていた。
その中でも、高畑充希の透明感あふれる歌声が今もまだ耳元に残っている。冒頭では門脇麦と共に東京タワーの上という高所で、純粋無垢な小さな恋を歌う。さらに1幕中盤でも、失われた記憶への混乱を繊細な歌声で表現。映像作品での活躍もめざましい高畑だが、そのホームグラウンドは舞台にあるということを証明するような質の高い演技を披露している。
演出面でもうひとつ重要なのが、その前衛的な映像表現だ。役者のアップまでを巨大スクリーンに投射する演出は、インパクト大。また、楳図かずおの漫画や絵も使用し、不思議な融合を果たしている。
マスコミに公開されたのは1幕のみ。2幕以降は、文字通り劇場に足を運んだ者だけが体感できる世界となっている。楳図かずおのグロテスク的ホラー感は極力抑え、全体的にはスタイリッシュに、それでいて奇妙な不安が終始こびりつくように構成された本作が、どのような結末を迎えるか。それは、その目で確認してほしい。
プレビュー公演は12月2日(金)よりKAAT神奈川芸術劇場にて上演。その後、12月9日(金)の浜松市浜北文化センター大ホールを皮切りに各地を経て、東京公演は2017年1月8日(日)より新国立劇場中劇場にて初日を迎える。
★主演・高畑充希&門脇麦にインタビュー! 楳図かずおのイメージといえば「グワシ!」
日時:2016年12月2日~3日
会場:KAAT神奈川芸術劇場
料金:S席 ¥9,500、A席 ¥6,500、B席 ¥5,000(全席指定・税込)
■静岡公演
会場:浜松市浜北文化センター 大ホール
料金:S席 ¥10,800、A席 ¥9,800(全席指定・税込)
日時:2016年12月15日(木)13:00公演/18:30公演
会場:富山市芸術文化ホール (オーバード・ホール)
料金:S席 ¥10,800、A席 ¥7,500、B席 ¥5,500(全席指定・税込)
料金:S席 ¥10,800、A席 ¥7,500、B席 ¥5,500(全席指定・税込)
日時:2017年1月8日(日)~26日(木)
会場:新国立劇場 中劇場
料金:S席 ¥10,800、真悟シート(学生限定・当日引換) ¥4,500(全席指定・税込)
<出演者>
高畑充希、門脇 麦/
小関裕太、大原櫻子/成河
田鍋謙一郎、奥村佳恵、斉藤 悠、宮 菜穂子、水野栄治、江戸川萬時
清家悠圭、加賀谷一肇、碓井菜央、工藤広夢、引間文佳、鈴木 竜
原作:楳図かずお『わたしは真悟』(小学館刊)
脚本:谷賢一
演出・振付:フィリップ・ドゥクフレ
音楽:トクマルシューゴ/阿部海太郎
演出協力:白井晃
S席 12,000円
(通常:CD代2,900円+
■販売期間
11月2日(水)12:00~予定枚数終了次第販売終了
※お申込み後のキャンセル・変更はお受けできません。
※未就学児は入場不可。