”危ないピアニスト”米津真浩再び! ラフマニノフとショパンで綴った30分
-
ポスト -
シェア - 送る
米津真浩 撮影=岩間辰徳
米津真浩が2度目の登場! 危ないピアニストが紡ぐ刺激的な音色 第48回“サンデー・ブランチ・クラシック”2016.10.16ライブレポート
毎週、日曜日の午後に渋谷のeplus LIVING ROOM CAFE&DININGにて行なわれている『サンデー・ブランチ・クラシック』。10月16日(日)の回に登場してくれたのは、ピアニストの米津真浩。米津は、8月末にもSBCに出演してくれており、早くも2回目の登場となった。
この日のプログラムは、11月27日(日)に銀座・王子ホールで行なわれた米津のデビューリサイタルの前哨戦とも言えるラインナップが用意されていた。定刻に颯爽とステージに登場した米津が、まず繰り出したのはラフマニノフ作曲「楽興の時」第4番。細かな左手の運指に、右手が情熱的なメロディを重ねていく。ラフマニノフらしい難曲を熱のこもった演奏で聴かせる。
撮影=岩間辰徳
「本日は、お時間を使ってご来場いただきありがとうございます。30分という短い時間ですが、美味しいお食事とともにぜひ音楽を楽しんでいただけたらなと思います」とにこやかに語りかける米津。演奏中とはうって変わった優し気な雰囲気に、音とのギャップを感じ驚かされる。
「1曲目にはラフマニノフを演奏させていただきましたが、皆さんラフマニノフはご存知ですか?」という米津の問いかけに、次々と手が挙がる。ラフマニノフの楽曲は、フィギュアスケートの浅田真央選手が使用したりしているため、耳にしたことのある方が増えているのかもしれない。
よかった、と笑顔を浮かべた米津は、さらに「ラフマニノフの身長がどれぐらいあったか、ご存知ですか?」と問いかけた。なんと、ラフマニノフは身長が2メートル近くある大男だったのだという。これは知らなかった方も多かったようで、客席からはへぇ~!と驚きの声が漏れた。
MC中の米津 撮影=岩間辰徳
体格に恵まれ手が大きかった上に、マルファン症候群を患っていたということが影響し、ラフマニノフは“ド”から“オクターブ上のソ”まで指が届いたのだそう。米津は「そういった背景と、彼自身も素晴らしい優秀なピアニストであったため、彼の作品はめちゃくちゃ難しい曲が多いんです」と教えてくれた。
「先ほど演奏した『楽興の時』は、6曲から成る組曲でした。続いては、その第6番と第2番と偶数曲を演奏してみたいと思います」と、再びピアノに向き直る米津。壮大な第6番に、感情の昂ぶりをそのまま音に閉じ込めたような第2番、それぞれアグレッシブな音が力強く鳴る。
撮影=岩間辰徳
続いては「ショパンの曲を2曲お届けいたします」とガラッと雰囲気を変えての演奏となった。まず、披露されたのは「ノクターン」第3番。この曲は、ショパンの作った『ノクターン』の中では演奏される機会が少ないものだそうだが、米津にとって「今、僕が弾いてみたいと思っている楽曲№1」だそう。ピアノの黒鍵と白鍵の上を縦横無尽に動き回る米津の手元から目が離せなくなった。最後の一音まで余韻を残し、惹きつける。最後は、ショパン2曲目として名曲「スケルツォ第2番」のスケールの大きな演奏で空間を圧倒。
鳴りやまない拍手に、再びステージに戻ってきた米津は、アンコールとしてリムスキー=コルサコフ作曲の「くまんばちの飛行」が軽快に披露され、あっという間の30分を締めくくった。
終演後にお客様とのふれあいも 撮影=岩間辰徳
終演後のインタビューで、米津は「このカフェでの演奏は、お客さんとの距離が近いこともあり、その反応がダイレクトに伝わってきます。それは、温かくもあり、怖くもあるのですが(笑)。今日は、お客様の温かさに助けられつつ演奏いたしました」と振り返った。
プログラムの中でも多く演奏したラフマニノフとショパンは、米津自身がとても好きな作曲家だという。「ショパンは日本でも大変人気のある作曲家だと思いますが、ラフマニノフは一般的にまだピンとくる方は少ないのかなと……。そういった作曲家を紹介する意味でも、演奏機会を多く持ちたいなと思っています」と考えを明かし、「伝え方一つで聴衆は耳を傾けてくれるのを知っているので、メジャーではない曲もどんどん演奏していきたいと思います」と自身の考えを語った。
インタビュー中の様子 撮影=岩間辰徳
米津に付けられたキャッチフレーズは、“危ないピアニスト”。その刺激的な響きに反し、米津自身は柔和で笑顔の素敵な好青年だ。しかし、その手から繰り出される音色を聞けば、その言葉の示す真意にはっとさせられる。
2016年、新たな船出を迎えた“危ないピアニスト”米津真浩。「今日の出会いをご縁として、僕のこれからを見守っていただけたらなと思います。ぜひ、今後のコンサートにも遊びにきてほしいです!」とメッセ―ジをくれた。
彼の何がそんなに“危険”なのか……ぜひ一度、その耳で確かめてみてほしい。
“危ないピアニスト” 米津真浩 撮影=岩間辰徳
日曜日の午後は、クラシックと共に優雅なひとときを。次回も『サンデー・ブランチ・クラシック』をお楽しみに!
千葉県立幕張総合高校を経て、東京音楽大学器楽専攻(ピアノ演奏家コース)卒業。
同大学院を首席で修了。
第76回日本音楽コンクールピアノ部門 第2位入賞。岩谷賞(聴衆賞)を受賞。
大学院修了後、東京音楽大学非常勤助手を勤め、更なる研鑽を積むため、2013年・2014年度ローム・ミュージックファンデーション奨学生としてイタリアの名門イモラ音楽院へ留学。
2015年冬より拠点を日本へ戻し本格的に演奏活動を開始。
小町碧/ヴァイオリン&加納裕生野/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円