ターゲットは殺人鬼!渾身のドッキリが予想外の方向へ『スケア・キャンペーン』#野水映画 “俺たちスーパーウォッチメン”第十七回

特集
2017.1.13
 (C) WILDSIDE 2014

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

今年もやってきました!訳あって日本未公開になってしまった怪作を上映してくれる特集企画『未体験ゾーンの映画たち2017』が!作品ごとの上映回数は少ないものの、ホラーやスリラー作品も多いので、ラインナップを見るだけでもわくわくする。6回目の今年は、特にホラータイトルがキレッキレで光っているぞ!今回はその中の一本、『スケア・キャンペーン』を紹介しよう。

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一般人に心霊ドッキリを仕掛け、怖がる様子を隠し撮りする番組『スケア・キャンペーン』は、視聴率が低迷。スタッフたちは上司から動画投稿サイトの過激な映像を見せられ、「これくらい話題になるものを作れ」と難題を吹っ掛けられる。スタッフたちは仕方なく廃病院でのドッキリを企画するが、ターゲットの男はなんと本物の殺人鬼だった!

既視感+新たなビジュアル&展開で魅せる80

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監督・脚本を務めるのは、2013年、『モーガン・ブラザーズ』でシッチェス映画祭(ファンタジーを中心にホラーやスリラー作品なども扱うスペインの映画祭)の賞を獲ったケアンズ兄弟。『モーガン・ブラザーズ』は、経営難から死体で肥料を作ることを思いついた肥料工場の冴えない兄弟が、若者たちを助けたことで自滅していく……というスプラッター・コメディだ。実はこの『モーガン・ブラザーズ』、雰囲気も日本版のパッケージも、同じジャンルの『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』(10)にどことなーく似ている作品。こちらも、“2人の冴えない男”が、“若者たち”に殺人鬼と間違えられたことで酷い目に遭い、若者も“自滅”していく(パッケージは検索して見てみてね!)。「似てるなー」と思いつつも楽しめる作品だった。ケアンズ兄弟が敢えてそういったテイストを狙ったのかどうかはわからない。が、この『スケア・キャンペーン』は、その“どことなーく”な既視感を使った面白さが炸裂しているのだ!

テレビ番組の制作に携わる主人公がより過激な作品を求め泥沼へ、というストーリーはデヴィッド・クローネンバーグ監督の『ビデオドローム』(83)を思わせるし、無料で手軽な娯楽が氾濫する中、若年層の視聴率を取るために四苦八苦する制作陣の姿は、現代社会の様相を反映しているようでもある。ヒロインのエマだけはプロデューサーである元カレのエスカレートを止めたり、ドッキリ仕掛け人の女の子を気遣ったりと、唯一まともな女性として描かれているが、彼女をあざ笑うかのように、殺人鬼はイッちゃった目で、みーんなバッタンバッタン殺してゆく! いやー気持ちがいいね。爽快あっぱれ! なんですが、なんかフツーの殺し方でさっくり殺しすぎちゃって、あっという間に終わっちゃいそうだなぁという予感が。

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しかし、そこからは二転三転、『サプライズ』(11)の仮面集団のようなインパクトのあるキャラクター要素や、小説やサバイバル漫画などで見られるオチなど、ビジュアルや展開の新しさで楽しませてくれるのである。覚えのあるような設定を使いつつ、観ている映像はまったく新しい。既存の要素を上手くリサイクルすると、こんなに面白くなるものかと感心するばかり。そんなわけで、「一体このオチはどこに結着するんだ!?」と、ジェットコースターのごとくスリリングな80分間を過ごせるはずだ。

わがままそうだけど憎めない 仕掛け人・アビーに注目

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殺人鬼の登場するホラーというと、たっぷりの血液とぶちまけられる内臓を期待する方も少なくないだろう。だが、本作のゴア表現は正直そんなに多くない。コンパクトな尺に収めるためか、あるいは予算のせいか、殺害シーンが端折られてしまっているのは個人的マイナス1ポイント。でもその分テンポ感アップでプラス2ポイント。まぁとはいえスプラッターお約束のチェーンソーなどは健在だし、見せるところ(と書いて人体の中身と読む)はしっかりと見せてくれるぞ。電動丸ノコが出てきたくだりは、足をバタバタさせて喜んでしまった(笑)。

そしてもうひとつの推しポイントは、幽霊メイクで登場する仕掛け人・アビー役のオリヴィア・デヨングだ。M・ナイト・シャマラン監督の『ヴィジット』(15)で祖父母にコワーイ目に遭わされる少女役で主演した彼女は今回も可愛らしく、一服の清涼剤となっている。ちょっとわがままそうで、でも憎めない彼女が生き残れるのかどうかにも、ぜひ注目していただきたい。

 


『スケア・キャンペーン』は1月14日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷「未体験ゾーンの映画たち2017」ほか全国ロードショー

作品情報

『スケア・キャンペーン』​
 

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【キャスト】
ミーガン・ワーナー、イアン・メドウズ、オリヴィア・デヨング『ヴィジット』、シグリッド・ソーントン
【スタッフ】
監督・脚本:コリン・ケアンズ&キャメロン・ケアンズ『モーガン・ブラザーズ』
(2016年/オーストラリア/80分/カラー)
原題:SCARE CAMPAIGN
配給:クロックワークス
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公式サイト:http://aoyama-theater.jp/feature/mitaiken2017
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