The Songbardsの初ワンマンツアー、新曲やカバーも飛び出した東京公演を観た

レポート
音楽
2019.5.3
The Songbards

The Songbards

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The Songbards ワンマンツアー '19 「ウグイス放浪」 2019.4.19  渋谷WWW

2017年3月に神戸で結成された4人組バンド、The Songbards。UKロックや日本の歌謡曲、フォークからの影響を受け、乾いたギターの音色やシンプルなビート、温かみのあるメロディを持ち味としたバンドである。

そんな彼らがこの春、初のワンマンツアーを開催した。この記事では、ツアーファイナルにあたる渋谷WWW公演の模様をレポート。なお、彼らが東京でワンマンライブを行うのも今回が初である。この日4人は、現在リリースしているCDに収録されている曲を全曲演奏したほか、リリース時期未定の新曲や自分たちのルーツにあたるバンドのカバー曲も披露。盛りだくさんの内容となった。

SEが流れると、オーディエンスへ手を振ったりしながらメンバーが登場。ドラムセット付近に集まると、ステージに背を向けた状態で音を合わせ、そのセッションがどんどん加速。ピシャリと音が鳴り止むと、「雨に唄えば」が始まった。軽快なサウンドに乗っかって、ステージ中央に立つ上野皓平(Gt/Vo)が「The Songbardsです、よろしく!」と挨拶。続く「ハングオーバー」は松原有志(Gt/Vo)がメインボーカルを務める曲で、そのあとの「21」は上野と松原のツインボーカルによる曲だ。柴田淳史(Ba/Vo)や岩田栄秀(Dr/Vo)によるコーラスが、その歌声の層をより分厚くさせている。

そう。The Songbadsはメンバー全員が唄えるバンド。彼らが敬愛するザ・ビートルズと同じように、それぞれが個性を発揮しているところが面白いポイントだ。ライブだと、それらの個性が偶発的にぶつかり合うことにより、また新しい化学反応が発生していくことになる。5曲目の「Time or Money?」は昨年秋にリリースされた最新ミニアルバム『The Places』の収録曲だが、ギターが鋭く突き抜けたり、後半へ行くにつれてベースの音が太くなっていたり、アウトロで上野、松原、柴田がステージ前方に出てきて楽器を掻き鳴らしていたり……と、音源よりも熱量を感じられる。ここで最初のMCに入ると、松原が「The Songbardsが東京に春を告げにやってきました!」と宣言。「これ言うのが一番緊張したんだよね〜」と言いながら笑顔を覗かせた。

先述のように、この日はThe Songbardsにとって初の東京ワンマンだったが、4人の様子を見る限り、そこまで緊張している様子はなく、ナチュラルなテンションでライブをすることができている。昨年夏にはイギリス・リバプールへ行き、“1週間で11本のライブを行う”という武者修行のような日々を過ごした彼ら。そこで自信をつけられたこと、さらに帰国後、自分たちのツアーでその自信をより確かなものにさせられたことが今回のツアーの土台にあるようだった。

「普段あまりやらないカバーを。別れの曲なんですけど希望を込めて」(上野)と、チューリップ「サボテンの花」を披露すると、上野がインドを訪れたことをきっかけに書いた曲=「斜陽」、3拍子のリズムが心地よい「街」と、バラード曲を続けて演奏。美しい旋律の数々と温かみのあるサウンド、上野のやわらかな歌声に、会場全体がうっとりと聴き入った。

「自分たちだけを観に来たお客さんがこんなにいるなんて嬉しい限りです。この感動と喜びを(後々)ちゃんと思い出せる人になれたらと思います」と上野が伝えたあとに演奏されたのは“心の拠り所”について唄った「Inner Lights」。転調を経て、「春の香りに包まれて」のドラマティックなサウンドが鮮やかに花開いた。「ローズ」を経て、いよいよラストの「太陽の憂鬱」へ。オーディエンスが腕を上げてバンドのサウンドに応えるなか、カッティングの勢いに合わせて松原がする、空を蹴り上げるような動作が目を惹く。ライブ冒頭では若干堅く感じられた柴田の表情も完全に和らいでいる。活き活きと躍動する4人のアンサンブルは、その輝きのまま、ラストまで駆け抜けていく。

アンコールでは「ファイナルだからもう1曲くらいカバーやろうか」(松原)とザ・ビートルズ「Don't Let Me Down」のカバーをかなりのクオリティで披露したほか、新曲「悪魔のささやき」も演奏。<青春の二文字を抱きしめて/このままずっとこうしていたいな/いつか死ぬ事を忘れなければ/別にどうってことはないんじゃない>とロマンと真実を唄う「青の旅」には、このバンドの美しさが詰まっていたように思う。揃って深くお辞儀をしてから4人はステージを去っていったのだった。


取材・文=蜂須賀ちなみ

セットリスト

The Songbards ワンマンツアー '19 「ウグイス放浪」 2019.4.19  渋谷WWW
1. 雨に唄えば
2. ハングオーバー
3. 21
4. Philadelphia
5. Time or Money?
6. サボテンの花(カバー)
7. 斜陽
8. 街
9. Time Capsule
10. Inner Lights
11. 春の香りに包まれて
12. ローズ
13. 太陽の憂鬱
[ENCORE]
14. Don't Let Me Down(カバー)
15. 悪魔のささやき(新曲)
16. 青の旅
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