吉沢亮・北村匠海出演『マーキュリー・ファー』動画配信に先駆け、トレーラーを公開 演出・白井晃からのメッセージも
『マーキュリー・ファー』メインビジュアル 撮影:設楽光徳
2022年1月28日(金)~2月16日(水)まで世田谷パブリックシアター、続く全国6カ所での公演を終えた『マーキュリー・ファー』。白井晃演出のもと、吉沢亮・北村匠海ら魅力的なキャストが挑んだ本作は、全国各地で好評得た。
(左から)北村匠海、吉沢亮 撮影: 細野晋司
(左から)吉沢亮、北村匠海 撮影:細野晋司
このたび4月3日からの動画配信に先駆け、『マーキュリー・ファー』トレーラーの公開が決定し、動画配信に向け、白井からのメッセージも到着した。
演出・白井晃メッセージ
白井晃
演劇は、本来、劇場で表現者とお客さまが、時間と空間を共にすることで成り立つものです。この作品が訴えかけるものを「生」で感じていただきたい。それが私の願いでした。
しかし、この2年間、私たちを襲った新型コロナウイルス感染拡大は、演劇の原則を覆すもので、お客さまが劇場に来場されたくても、それがままならぬ状況が続いてしまいました。
このような中、少しでも多くの皆様にこの作品に触れていただきたい。その想いから、今回映像配信させていただくことになりました。
作品の作者である、英国の戯曲家フィリップ・リドリー氏も、自分の舞台作品を映像配信することを良しとしてきませんでした。それは、演劇に対する同様の思いからに他なりません。しかし、今回、コロナ禍において、演劇に触れる機会が制限されている事態を憂いて配信を許諾してくださいました。
この作品を、リドリー氏が書いたのが2005年、イラク戦争で自国の暴挙に対しての抗議の気持ちが反映されたものと言われています。当時、私はこの作品の過激さに、日本での上演は難しいと思っていました。しかし、それから10年後の2015年の初演を前に、シリアの内戦が激化する中、あたかもこの作品世界と現実が地続きになってしまった感触があり、今こそ上演する意味があると思い上演に至りました。演劇が、現実を反映することの意味をこれほど感じたことはありません。
そして、2022年。
今回、二度とこのようなことがあってはいけない、という思いから再演に踏み切りましたが、まさか作品の上演期間中に、ロシアのウクライナへの侵攻という事態が起こるとは想像もしていませんでした。同じことがまた繰り返される。新型コロナウイルスの感染禍と戦争は、人間の本来持つ動物的な本能を剥き出しにしました。
演劇は、常に社会を映す鏡でありたいと思っています。まさに、この『マーキュリー・ファー』は、私たちが生きる現実の厳しさを反映しています。しかし、この中で描かれている一番大切なものは「愛」です。私たちを最後に支えるのは小さな愛情たちです。家族であったり、恋人だったり、友人だったり。このことをこの作品は私たちに教えてくれます。
今回、この作品の再演に際し、参画してくれた出演者、スタッフの皆さんの勇気に、心から感謝の意を申し上げたいと思います。素晴らしい俳優たちでありスタッフです。
この配信は、もはや、単なる配信の意味を超えているように思います。世界に向けての切実なる訴えであり、願いでもあります。
触れてみてください、この世界に。そして、私たちの住む現実の先にある愛と希望を感じていただければと思います。
公演情報
【配信期間】2022年4月3日(日)10:00~4月9日(土)23:59