あらき、声帯ポリープ除去手術を乗り越え再起の狼煙を上げたツアー初日をレポート

レポート
音楽
2022.10.11
『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』

『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』

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『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』
2022.9.30 横浜BayHall

声質や歌い方が変わってしまう可能性もあるといわれる声帯ポリープ除去手術。不安と闘い相当な覚悟でそれに臨んだ男は、難局を乗り越え、信じる仲間たちと共に再起の狼煙を上げた。

活動9周年を迎えた記念日・2022年8月10日に2枚組アルバム『IDEA』をリリースし、9月から12月にかけて単独としては過去最多の全国17か所に及ぶツアー『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』を開催中のあらき。ツアー初日の9月30日、神奈川・横浜BayHallで行われたあらき公式ファンクラブ「あらき組」限定公演の模様をネタバレを極力避けてお伝えする。

『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』

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SEもなく静かな中でステージに現れ、オーディエンスの長く大きな拍手で迎えられたたあらき。スタンドマイクに向かいアカペラで歌い始めたのは「Ark」だ。過去と未来、あらきとファンをしっかりとつなぐ言葉のひとつひとつに魂を込めた歌声に、心が震える。7月にポリープ除去手術を受けて以降、初めて立つステージであるだけに少しばかり案じていたが、杞憂だったようだ。後半、バンドサウンドやメンバーのコラースが重なってみてもやっぱりそう思う。

「IDEAツアー初日、横浜公演へお越しいただき、誠にありがとうございます。本日は、IDEAツアーのエピソード0でございます。ご存知の方も多いかと思われますが、私は2か月前に喉のポリープ除去手術をしまして、それを乗り越えてここに立っております。歌から離れて、2か月。このブランクがあったことにより、私はあらきを失ってしまいました。今日は、みなさんと共にあらきを取り戻していきたいと思います」

『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』

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決意の言葉にどうしたって胸が熱くなるが、なにかのキャラが憑依しているような低音ボイスが気になるところ。「ちょっと様子がおかしいとお思いでしょうが、今日はずっとこの調子でいきますので(笑)。失ったものは、5つ。まずは、アーティキュレーション、つまり滑舌でございます。滑舌を取り戻すために、こちらの曲で楽しんでいきましょう!」

そう呼びかけて、『IDEA』に収録の「A New Voice」へ。6月開催のツアー『ARAKI LIVE ARK -撃壌之歌-』でライブバージョンを初お披露目した、キャッチーでいてトリッキーなナンバーだ。痛快すぎる巻き舌も、難易度高すぎな怒濤のラップも、特別塗装のお立ち台に乗ってアオる姿も最強で、滑舌、見事に取り戻せているではないか。オーディエンスはまだ声を出すことはできないけれど、クラップからは高揚がひしひし伝わってくる。

『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』

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ツアーは12月まで続くため、ここから先の流れをつまびらかにするのは控えておくとして。“未知なる矛盾”に向き合いロックに振り切った前作『UNKNOWN PARADOX』と対をなす、“存在”をテーマにエレクトロ色を強く押し出した『IDEA』のナンバーも、ツアータイトルが示すように多くちりばめられているセットリスト。ロックのほかボカロ曲やJ-POPなど多彩な養分で育ってきたあらきの豊かな表現力がますます鮮やかに花開いて、とんでもない刺激に満ちている。この日だけの髪色なのだろうか、紫メインのグラデーションカラーもばっちりきまっていた、ということも記しておきたい。

『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』

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また、滑舌に続き、タイミングばっちりにジャンプするリズム力、色や温度、風景や香りまでイメージさせる表現力、キンドル=情熱を燃え立たせるエモさ、アイディエイト=思い描く力、すなわち総合力も、ロールプレイングゲーム的な筋立てで次々と奪回。「みなさんご無沙汰ですね、あらき100%です!」と胸を張るあらき、なんならパワーアップして帰ってきてしまったわけで、本当にすごい人だ。さらには、6月末に渋谷で行ったゲリラライブで心残りとなったというとある曲では、伸びやか&完璧なハイトーンを響かせ、メンバーと共に遊び心を見せる余裕も。あらき、完全復活である。

『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』

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『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』

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すると、突然バースデーソングが流れ始め、10月4日に誕生日を迎えるあらきにバンドメンバーが一足早くバースデーケーキをプレゼント。まさかのサプライズに驚きつつ、少し照れくさそうなあらき。メンバーに囲まれオーディエンスと一緒に記念写真も撮ってもらって、幸せそうな笑顔を見せた。

『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』

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なお、愛知・大阪・青森・新潟・東京公演の特典付き、特典のラミネートパスにプリントされているのは、徳川の家紋の派生であるあらき家の家紋に10月4日=天使の日にちなんだ羽根を合わせたものなのだとか。今後、「あらき組」の家紋とするそうなので、できれば手に入れておきたいところだ。

『ARAKI LIVE TOUR -IDEA-』

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「せっかく羽根があるので、もっともっと高く羽ばたけるように、治った喉と共に頑張ってまいりますので。ロングツアー、完走できるようにみなさん応援よろしくお願いします!」

急きょ行うこととなったポリープ手術に合わせて、もともと決まっていたツアーのスケジュールを組み直したこと。それをスタッフやバンドメンバーが快諾して、全面的に協力してくれたこと。そうしたことを明かしたのも、家族である「あらき組」だからこそ。熱くて温かい、そんなライブだったようにも思う。

中国で9は“永遠”と同じ発音のため吉数とされるという。活動9年目にして、困難に打ち克って再び立ち上がったあらき。その先も見据え、ツアーファイナルまで力強く駆け抜けていくに違いない。


文=杉江優花 撮影=Ryuji Tamaki

ツアー情報

『ARAKI LIVE TOUR IDEA』
■ 9月30日 金 【神奈川】横浜BayHall ※あらき公式ファンクラブ「あらき組」限定
■10月15日 土 【岡山】YEBISU YA PRO
■10月16日 日 【香川】高松MONSTER
■10月21日 金 【愛知】名古屋DIAMOND HALL
■10月22日 土 【大阪】梅田CLUB QUATTRO
■10月29日 土 【鹿児島】CAPARVO HALL
■10月30日 日 【福岡】BEAT STATION
■11月03日 木祝 【青森】青森Quarter
■11月04日 金 【宮城】仙台darwin
■11月10日 木 【静岡】浜松窓枠
■11月11日 金 【山梨】甲府CONVICTION
■11月18日 金 【京都】京都FANJ
■11月19日 土 【滋賀】B-FLAT
■11月24日 木 【新潟】新潟LOTS
■11月25日 金 【長野】CLUB JUNK BOX
■12月02日 金 【沖縄】桜坂セントラル
■12月22日 木 【東京】LINE CUBE SHIBUYA
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