間宮祥太朗インタビュー 「ぼくが映画に求めているのは“驚き”なんです」

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2016.2.15
間宮祥太朗 撮影=西槇太一

間宮祥太朗 撮影=西槇太一

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2月13日から公開中の映画『ライチ☆光クラブ』 同作では、9人の美しい少年たちと1人の少女、そして思考するロボット・ライチが、廃工場の秘密基地・光クラブを舞台に裏切りと愛憎の物語を繰り広げる。その世界観は暗く耽美的であるだけでなく、残酷にして過激。そんな作品の中でも、最もエキセントリックなキャラクター・ジャイボを演じたのが、22歳の俳優・間宮祥太朗だ。ドラマ『ニーチェ先生』主演など活躍著しい間宮は、この難役をどう演じたのか?そして、俳優人生のきっかけを「映画」との出会いと公言する彼にとっての『ライチ☆光クラブ』とは?ロングインタビューで迫った。

映画は近い存在というか、観るのが当たり前
 

--これまでのインタビューでも、たびたび映画への愛を公言してらっしゃいますね。映画を好きになられたきっかけを教えていただけますか?
 

間宮祥太朗 撮影=西槇太一

間宮祥太朗 撮影=西槇太一



小学生の頃、父親が日曜日に仕事がお休みだったので、夕食後に家族で1本映画を観る習慣があったんです。映画を1週間に1本観るのが生活の一部みたいな感じで。だから、映画は近い存在というか、観るのが当たり前のことでした。最初は父親とか母親が趣味で借りてきた洋画の大作とかを観はじめて。それから、通っていた塾が2階で、その1階がTSUTAYAだったんです。塾が終わると、家に帰る前にTSUTAYAに入り浸るようになって、それで初めて自分の興味の沸くものを手に取り始めて。そこからどっぷりですね。

--『アイデン&ティティ』や『ツィゴイネルワイゼン』、それに『ポンヌフの恋人』などがお好きと聞きました。ただ、同年代でこういった作品を観ている方は少ないと思います。友だちと映画の話ができなかったのでは?

小学生の時はさすがにしなかったです。役者の太賀とこの業界に入る前から知り合いだったんで、中学生の頃にはそういう話はしていました。学校のクラスメイトとは映画の話はしなかったですね。

--間宮さんにとって、ジャイボ役は映画では初めてのメインキャラクターですね。決まったときは嬉しかったのでは?

そうですね。なんといっても、ガッツリと役をもらって長編映画に出るのが初めてなので。この業界に入ったきっかけは、もとをたどれば映画が好きだったということだけなんです。そういう意味で感慨深かったのは、この話が決まったときもそうですし、撮影中もそうなんですけど、去年の釜山国際映画祭に参加させていただいたことです。まあ、レッドカーペットには間に合わなかったんですけど(笑)

左から 間宮祥太朗、中条あやみ 第20回釜山国際映画祭にて 

左から 間宮祥太朗、中条あやみ 第20回釜山国際映画祭にて 


--オープニングセレモニーの終盤にギリギリで到着されたんですよね。

まさかの10年に一度の大荒れで飛行機が遅れて、「そんなことがあるんだ!?」って(笑) こんなに映画を愛して、初めて釜山に行けるというのに!ネタとしては面白いんですけどね(苦笑) でも、釜山に、それも役者として作品と一緒に招待してもらったのは感慨深かったです。

--そのエピソードだけでも、すごく映画がお好きなんだというのは伝わってきます。舞台やTVドラマと比べて、映画で演じる際の心構えに違いはありますか?

ぼくの場合は、舞台、ドラマ、映画で違うというより、舞台だったら演出家、ドラマ・映画なら監督によって違うものなので。例えば、監督がすごくわかりやすい芝居を見せたい方だったら、それにあわせます。同じドラマの学生役でも、現場が違えば自分の演技に対するスタンスも多少は柔軟に変えていきたいと思います。

--そうなんですね。間宮さんは映画の中ですごく映える方だと思ったので、撮られ方を何か意識してらっしゃるのかと思っていました。

ありがとうございます。『ライチ☆光クラブ』は映画なんですが、特殊すぎるというか、ジャンルが「ライチ☆光クラブ」なんで(笑)そういう意味では、映画として気をつけたというよりも、「ライチ☆光クラブ」という作品を映画にしたときに何を見せたいか?ということを考えました。漫画よりも、舞台よりも、去年のミュージカル(残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』)よりも、もっと生々しくするのが、映画で『ライチ☆光クラブ』をやることの意味だと捉えた部分があって。漫画のキャラクター性があって、素晴らしい造形なんですけど、ライチやセットも絵でみるよりおどろおどろしい。そういう意味で、生身の人間が演じるということはすごく考えながらやりました。

間宮祥太朗 撮影=西槇太一

間宮祥太朗 撮影=西槇太一


役者としてのエゴを持つのは、ジャイボにも失礼

--間宮さんの演じたジャイボは、非常に個性の強い妖しい魅力のあるキャラクターですね。どう向き合っていこうと思われました?

ジャイボは、わかりやすく言ってしまうと〝異端児″じゃないですか。なので、ぼく自身が異端だとかヒールという印象を持ちながら演じると、ジャイボからかけ離れてしまうことになる。どちらかというと、ジャイボを内側から見なきゃいけないと思ったので、あまり「変わっている」というイメージは持たないようにしました。ぼくが一番気をつけたことは、とにかく繊細で純粋であること。その感情の矛先は、ゼラ(古川雄輝)ただ一人に真っ直ぐ向かっている。真っ直ぐすぎるがゆえに、外側から見て屈折しているように見えてしまうということだと思うので。とにかく古川くん演じるゼラに対しての愛情を、真実味を持ってしっかりと演じるということだけを考えました。

--外見にも気を使われましたか?

ぼくは体格がわりといいほうなので、「間宮祥太朗のジャイボはゴツイんじゃないか?」というビジュアルイメージも持たれると思うんです。そのあたりはメイクさんとスタイリストさんが作りこんでくれました。おだててまつ毛とかをあげたりしながら、「今日もカワイイ!今日もキレイだね!ジャイボ、いってらっしゃい」って(笑)メイクに時間がかかるのもあって、すごく仲良くさせてもらいました。ビジュアルは作ってもらえるのでそこは信頼して。プロデューサーも、ぼくでいくと決めてくれたんだから、それも信頼して。ぼくはジャイボの内側だけを意識しました。

--内藤瑛亮監督にも相談しながら役を作っていったんですか?

監督とはジャイボの中身についてというよりも、居方(いかた)に関しての話をしました。

--作品の中での立ち位置ということですか。

そうですね。ありがたいことに、内藤監督はジャイボについて、ぼくにすごく委ねてくれて。ぼくが「こう思う」と言ったら、「間宮は一番ジャイボのことを考えて、わかってると思うから。思ったことは出来るだけ言ってほしいし、それでぼくが気づける部分があるから」とおっしゃってくれて。演出面で印象的だったことといえば、自分の出演シーンを4シーンくらい削ったことです。本当はジャイボがそこにいるという台本だったんですけど、いないことにしてもらったんです。

間宮祥太朗 撮影=西槇太一

間宮祥太朗 撮影=西槇太一


--出番が多かったのに、わざわざ自分で減らした?

減らしました(笑)ぼくが演じる演じないに関わらず、ジャイボはキャラクターへの引きが強いと思うんです。いるシーンいるシーンにすべて意味があるというか、良い意味でも悪い意味でも目を引いちゃう存在なので。例えば、ライチが完成して、「ライチ!ライチ!ライチ!」って叫ぶシーンでは、他のみんなのベクトルが同じ方向に向いてるのに、ジャイボは絶対に違うベクトルになってしまうから。異分子が一人映っていると、みんながライチを作ったことに観客も入っていきたいのに、一つの気になる点みたいな存在になってしまう。作品のためにもそこにはいないほうがいいんじゃないかな、と。

--すごいですね。いないことで役を作ったんですね。

「何で削っちゃったんだろう」と思ったりもしました。削ったら削ったで、共演者に「おまえ、サボってんのか?」って言われるし(笑)

--そういうところは、映画が好きという部分に結びついてる気がします。作品全体のことを考えてらっしゃる。

ほんとに作品の一部なので。ジャイボって、役者としてはやりがいのある役だと思うんですよ。でも、そこで変に貪欲になって……例えば、前に出る出ない、食う食わないみたいなのあるじゃないですか?そういう役者としてのエゴを持つのは、ジャイボにも失礼だし。作品の中でジャイボを愛していれば、おのずとこのシーンはどうするべきか?というのは見えてくるかなと。

--そんなジャイボの真っ直ぐな愛が見えるのが、ゼラとのラブシーンだと思います。観ているこっちがドキドキするような演技でしたが、あのシーンはどういうふうに二人で作っていったんですか?

 

劇中で妖艶にからむ古川雄輝(左)と間宮祥太朗(右)『ライチ☆光クラブ』 (C)2015『ライチ☆光クラブ』製作委員会

劇中で妖艶にからむ古川雄輝(左)と間宮祥太朗(右)『ライチ☆光クラブ』 (C)2015『ライチ☆光クラブ』製作委員会


うまく口では言い表しにくいんですけど、ぼくは古川くんとは何のすり合わせもしてなくて。お互い、ある意味奇妙な距離感で撮影していたので、変な緊張感が生まれて。それは本当に正解だったと思うんですけど、カメラの前に立ってみないとわからないことだった気がします。もちろん、段取りの指示はありますけど、間とか息づかいとかはこっちに委ねられてるわけだから。古川くんとの呼吸で、お互いがよりドキドキできるように演じました。

--「ドキドキさせよう」という想いがあのシーンを作ったと。

そうですね。「ドキドキさせよう」だし、「一緒にドキドキできたらいいかな」と。あと、普通のラブシーンじゃなくて、変に妖艶なものがある場面だから、ドキドキだけじゃなくて、ゾクゾクしたいんですよ。ほんとに鳥肌とかも立っちゃって。こう、肌をフワーって触られた時に「皮膚、震える?」みたいな(笑) しかも、これを言うとまたすごくエロチックな話になってしまうんですけど……すごく寒かったんですね、現場が。すごく寒かったから、メチャ敏感になるんですよ(笑)

--ジャイボは14歳で、間宮さんが俳優のお仕事を始められたのは15歳ですね。ほぼ同年代ですが、当時を振り返ってみてジャイボに共感できる点はありますか?

間宮祥太朗 撮影=西槇太一

間宮祥太朗 撮影=西槇太一


共感できる点は……難しいですね(笑) ぼくはその時期、映画を観ていたので、とにかく映画の世界にいる時間が長ければ長いほど幸せだったんで。学校ではほとんど寝てましたし。

--今のお仕事は夢にまで見た世界というわけですね。

そうですね。でも、頭に無かったわけではないですけど、出る側になりたいっていう想いがすごく強かったわけではないんです。ただ、映画に携わる仕事はしたいなとは思っていて。ありがたいことに、巡りあわせで役者をやらないかという話が出たので、とりあえず入って。それも映画に関われることだし、自分も役者に興味はあるし。ただ、自分にあわなかったらやめようと思っていました。役者で一回入っていると、何か業界にパイプができそうじゃないですか(笑)

--役者を目指したわけじゃなくて、とにかく映画に関わる仕事に近づきたかったんですね。

そうです。ただ、まだ14、15歳ですし、裏方をやりたいのか?配給とかをやりたいのか?それともオモテ側をやりたいのか?っていうのもピンときてなくて。とにかく、将来的に映画に関われればいいな、っていう漠然とした気持ちだったので。

--役者として関わるようになって、気持ちに変化はありましたか?

そうですね……偉そうなことは何も思ってないですけど、「合わなかったらやめよう」って思ってたものが、今は「これをずっとやっていきたい」という気持ちになっています。その想いの変わり目で、マインドが変わるというか、徐々にですけど。今は映画が大好きですし、映画に関われることは素晴らしいですけど、ドラマも舞台も、ぼくの中では「これだけを特別に大切に」っていう想いはなくて。色んなことをやって、結果自分がどういう役者人生を歩むのかっていうのが、まだ全然わからないし。別に目標を立てているわけでもないので、どういう道筋になっていくかは、目の前の仕事をやっていくなかでどうなるか次第だと思っています。

 

間宮祥太朗 撮影=西槇太一

間宮祥太朗 撮影=西槇太一


映画に求めているのは“驚き”
 

--本作の過激な演出も映画ならではのものだと思います。ラブシーンでは「アレをアレする」ような場面もありますし、グロテスクなバイオレンスシーンもある。間宮さんと同世代で、そういう刺激的なものが苦手な方もいると思います。間宮さん自身は過激なテイストはお好きですか?それとも苦手?

両極端に好き嫌いで言えば、好きなほうですね。韓国のキム・ギドク監督がすごく好きだったりするので。ただ、過激なものを観たいわけではなくて、ぼくが映画に求めているのは“驚き”なんです。過激なものに興奮するというよりは、自分の知らない、見たこともない、想像もできない世界でこんなことが起こっているのか!っていうところに驚きと刺激があると思うので。映画には実生活にない「ハイになる感じ」を求めていて……そういう意味では全然好きですね。

--『ライチ☆光クラブ』の過激な表現は、少年たちの残酷さや心情を上手く表していると思います。だから、あの表現には必然性があるのでは?

そうですね。必然性はあるんですけど、「登場人物が14歳なのに作品がR15+(※15歳未満は視聴禁止)指定ってどういうこと!?」って思いましたけどね。ほんとに「どういう映画や!」と(笑) でも、それは必然性なんだと思います。「アレをアレする」シーンでも、監督に「あの動きはR18+になっちゃうんで」って言われて、「ええ!そうなんだ?」って思いました。ほんとに、微妙なグレーゾーンを攻めました(笑) 

--必然性があるものなら、今後も過激な演出にもどんどんチャレンジしていきたい?

ええ、何も厭わずやれるので。あと、ぼくはそんなに羞恥心がないので、何をやっても恥ずかしいと思わないんですよね。別の作品で、全裸に前バリして縛られてるみたいなシーンがあったんですが、全然大丈夫でした(笑)

--素晴らしい!

前バリつけたの初めてだったんですよ!「ベッドシーンじゃないんだ?」と思って(笑) 『ライチ☆光クラブ』でも、映像での初めてのラブシーンの相手が古川くんだった。それもぼくにとっては愉快なことだったし。やっぱり、自分の思ったのと違う方向にいくのが面白いですね。

 

間宮祥太朗 撮影=西槇太一

間宮祥太朗 撮影=西槇太一


インタビュー・文=藤本洋輔 撮影=西槇太一

映画『ライチ☆光クラブ』は新宿バルト9ほか全国公開中

プレゼント

間宮祥太朗 直筆サイン入り『ライチ☆光クラブ』コミケ限定クリアファイルを1名様に

クリアファイルはコミケ89だけで販売された限定もの

クリアファイルはコミケ89だけで販売された限定もの


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作品情報

ライチ☆光クラブ​

『ライチ☆光クラブ』 (C)2015『ライチ☆光クラブ』製作委員会

『ライチ☆光クラブ』 (C)2015『ライチ☆光クラブ』製作委員会



新宿バルト9ほか全国公開中

監督:内藤瑛亮
脚本:冨永圭祐、内藤瑛亮
原作:古屋兎丸「ライチ☆光クラブ」(太田出版)

出演:野村周平、古川雄輝、中条あやみ、間宮祥太朗、池田純矢、松田凌、戸塚純貴、柾木玲弥、藤原季節、岡山天音

配給・宣伝:日活
制作:マーブルフィルム 


(C)2015『ライチ☆光クラブ』製作委員会
 
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