『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』がモノクロ表現で獲得した“説得力”とは?
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(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED (C)2016 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
2015年、最も熱く支持された映画の1つである『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。多くのリピーターを生みだし、シンプルな内容ながら、その世界観に圧倒される映画ファンが続出した。大作アクション映画としては異例ともいえる、同年アカデミー作品賞最多受賞を果たした本作は、ジョージ・ミラー監督の最高傑作の呼び声も高く、将来クラシック作品に数えられるだろう。
そんな『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だが、2015年の段階からモノクロ版の存在が監督自身の口から示唆されていた。監督自らモノクロ版の方が素晴らしいと語っており、公開を臨む声も多く聞かれた。そして2017年、ついにそのモノクロ版『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』の公開が実現した。映画はサイレントからトーキーへ、そしてモノクロからカラーへと進化していったが、そうした映像表現の進化と逆行するかのようにカラーからモノクロへと変化した本作。一体どのような違いが生じているのだろうか。
色彩を失ったことで生まれた説得力
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本作は核戦争後の荒廃した未来を舞台にしている。資源の枯渇した未来でわずかに生き残った人類が支配したりされたりしている設定だが、このマッドマックス本来の設定がモノクロになることによって一段と説得力が増した。本作のカラー版は非常に色彩豊かで、それはそれで魅力的なのだが、ともすれば豊かな未来という印象を与えている面もあった。色彩を失うことで、作品本来の世界観に、より忠実になったと言える。イモータン・ジョーの砦の機械類の汚れや貧しい人々の肌の汚れ具合が、モノクロの陰影によって一層強調され、困窮具合がより鮮明になり、対象的に水は光にあたり、とてもきらびやかで、水がこの世界でいかに貴重なものなのかが、映像によってもよくわかるようになっている。
さらに神格化された“神話を下敷きにした物語”
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ジョージ・ミラー監督はマッドマックス2の制作時に、神話学者ジョゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』を読み込み、神話の構造を学んで取り入れたと言われている。この本は、神話が、世界各地で驚くほど似かよったかたちで作られていることを指摘しており、その構造を、
1:旅立ち(分離)
2:試練(通過儀礼)
3:帰還(リターン)
であると分析している。本作は「行って帰ってくるだけのストーリー」と言われるが、それはまさに神話的な構造だ。
こうした、本作の神話的側面もモノクロ化によって強化されている。モノクロ化によって1ショット毎が叙情的な雰囲気を持ち、崇高さがプラスされているのだ。とりわけ、緑の地が失われたと知ったフュリオサが、絶望で膝を落とすシーンの美しさは格別。豊かさを象徴する緑という色の場所を失った悲しみの表現として、確かにモノクロは適切だし、光の当たり方も大変美しい。その他、ウォーボーイズたちが白塗りなので、彼らの存在が一層強調されている。アクションシーンにおいても車の爆発などで吹き飛ぶウォーボーイズがカラーの時よりも目立つ。カラー版で爆風や車の破片など、いろいろなものの中に隠れて見えにくかったモブのウォーボーイズたちもはっきり見えるのだ。
アクションで最も迫力が増しているのは、砂嵐の中のシーン。一寸先は闇というような地獄の様相を呈していて、段違いの迫力になっている。
ジョージ・ミラー監督はこのモノクロ版に関して、「分かりづらくなったシーンもある」と語っているが、そのわかりづらさがこの砂嵐のシーンでは、ポジティブに作用していると言える。
モノクロの表現力を見直す機会に
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現在、映画はカラーであることが当たり前になっているが、本作のモノクロ版を見れば、カラーにはない表現力がモノクロにはあることがよくわかるだろう。かつて、フランク・ダラボン監督が『ミスト』をモノクロで作ろうとしたが、カラーでの公開を余儀なくされ、BDの特典でモノクロ版が収録されたことがあったが、ダラボン監督はモノクロ版をこそディレクターズカット版だと思ってほしいと語っていた。モノクロの良さがなんなのか、モノクロ表現を突き詰めた日本の漫画に慣れ親しんでいる日本人には、理解可能な部分が多々あると思う。この機会に多くの人に映像におけるモノクロの豊かさを見直してほしい。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』は新宿ピカデリー他全国公開中。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』Blu-ray(2枚組) 、<ハイオク>コレクション(8枚組)は2月8日発売。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』
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監督:ジョージ・ミラー
制作:ダグ・ミッチェル、ジョージ・ミラー、P・J・ボーテン
脚本:ジョージ・ミラー、ブレンダン・マッカーシー、ニコ・ラザウリス
撮影:ジョン・シール
美術:コリン・ギブソン
衣装:ジェニー・ビーバン
編集:マーガレット・シクセル
音楽:ジャンキー・XL
視覚効果監修:アンドリュー・ジャクソン
出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース=バーン、ゾーイ・クラビッツ、ロージー・ハンティントン=ホワイトレイ、ライリー・キーオ、アビー・リー、コートニー・イートン、ジョシュ・ヘルマン、ネイサン・ジョーンズ
映倫区分: PG12
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『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』
2017年2月8日発売
■【初回限定生産】マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション Blu-ray(2枚組)
3,990円+税
【初回限定生産】マッドマックス <ハイオク>コレクション ジャケット
■【初回限定生産】マッドマックス <ハイオク>コレクション(8枚組)
9,990円+税
マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション ジャケット
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
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