林遣都インタビュー 26歳、変幻自在の俳優は「人の心に届くような芝居をしたい」

2017.2.22
インタビュー
イベント/レジャー

林遣都 撮影=岩間辰徳

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直木賞作家・乃南アサの同名ベストセラー小説を原作とした映画『しゃぼん玉』が3月4日から公開される。同作は、親に見捨てられ、通り魔や強盗傷害を繰り返す無軌道な男・伊豆見翔人が、逃亡先の宮崎県・椎葉村で偶然出会った老婆スマや村の人々の愛情によって無くした感情を取り戻していく物語だ。

主人公の翔人を演じるのは、林遣都。芥川賞受賞作を原作とするドラマ『火花』では売れない若手漫才師、朝の連続テレビ小説『べっぴんさん』ではプロを目指すジャズドラマー、『HiGH&LOW』シリーズではあらくれものたちをまとめる頭など、26歳にして変幻自在の芝居を見せる俳優だ。そんな林は、変化していく孤独な青年役にどのようなアプローチで挑んだのか。また、芸歴60年を誇る名優・市原悦子との共演からどんな影響を受けたのか。

嘘のないように、人間性を作って取り組まないと

林遣都 撮影=岩間辰徳

――最初に脚本を読んだ時の感想を教えてください。

純粋に話が翔人​の物語なので、とてもやりがいがあり「嘘のないように、人間性を作って取り組まないと」と思いました。ただ、市原さんとご一緒できるということで、(現場に)行ってみて感じたイメージを大事にしたいと思い、台本を読んだイメージや実体験だけで演じてはいけないと思いました。

――ロケ地の大半が宮崎県の椎葉村と聞きましたが、撮影期間はどれくらいですか?

撮影期間は2週間ちょっとで、椎葉村には行きっぱなしでした。ありきたりですが空気が綺麗で自然が豊かで人が温かくって、平家の話だったり、「日本三大秘境」と言われるだけの歴史があって。若輩ながら「日本が守らなければならない場所」だと思いました。土地の人しか入れないような、秘境の中の秘境で撮らせていただきました。

――かなり貴重な体験をされたんですね。

もっともっと映画やいろいろな映像の舞台にすればいいのに、と思う場所が(椎葉村には)たくさんありました。ぼーっと景色を眺めているだけでも、いろいろと考えさせてくれる凄い空気感の場所です。

――椎葉村でのエピソードはありますか?

滞在中は、感情移入しやすい環境でした。撮影も順取りでしたし、泊まっていた宿もお母さんみたいな方がやっている宿でした。朝起きるとごはんを作ってくれて、「夜ごはんどうする?」「おにぎりを持って行きなさい」って言ってくれました。お風呂とかも「沸いてるから」って。普段撮影している環境にはないような、そういう意味でも(役と)重ね合わせられるような部分もあって、より気持ちが入りました。
 

市原悦子との共演は「本当に圧倒されっぱなしでした」

林遣都 撮影=岩間辰徳


――市原さんとの共演はいかがでしたか?

たくさんお話をさせていただいたわけではないんです。僕もそう思っていたんですが、最初に「難しい役ですね」とおっしゃって頂き、「しっかり演じないとだめですよ」という意味のメッセージだと受け取りました。現場に入ってからは、本当におばあちゃんが翔人の面倒をみている感じで接してくれました。

――一緒に芝居をして刺激を受けたことはありますか?

自分が歳を取っても、こういう“映っているだけで深みがある俳優”を続けて、存在感を持てるようになりたいと思いました。市原さんが最初に農作業しているのを見ただけで、そこに住んでいるたたずまいを感じました。いまの自分にそれが出来るとは思えません。現地の方との食卓のシーンでもその姿が自然で、昔からずっとこういう時間を過ごしていたんだろうという会話の仕方とか……本当に圧倒されっぱなしでした。セリフじゃない部分でも一つひとつの仕草を「凄い!」と思ったり。この年齢でご一緒できると思っていなかったですし、やりたくてもなかなかご一緒出来る方ではないと思います。​生き方や自分をどう人として深めていくかを、より毎日感じていました。

――自分でも想像以上の力が出たと思いますか?

手を握ってもらうだけで声が心に響くような、震えるものがありました。それは市原さんの芝居もあるんですが……現場では僕を翔人として見てくださって、監督と話すときも「この子は。この子は」と呼んでくださったり。朝現場に行ったら「寒いからストーブで温まってなさい」とか、本当にまっすぐに気持ちが入っていける環境を作ってくださったからだと思います。

 

『しゃぼん玉』劇中より (C)2016「しゃぼん玉」製作委員会

 

――市原さん以外にも綿引勝彦さんたちとも出演されていますね。

僕は、いつも持っているすべてを注ぎこんでいるつもりなんですが、皆さんと共演して、まだまだわからない凄さがあると気付かされることばかりでした。先輩の皆さんとご一緒した時には毎回得るものがあると思っていますが、自分が何かを勉強するとしたら、その方たちが自分の歳の時にどんなことをしたのか、過去の作品を観ることは重要だと感じました。

――映画では、“食”も重要な部分を占めている気がしました。

もともと僕は生活するうえでも“食”を大事にしていたので、より「ちゃんとしたものを食べないと」と思いました。本当に全ての食事が感動的でした。実際にちょっと太りましたし(笑)。忘れられない味って「このことなんだな」って今でも思い出します。まっすぐ直接「身体のエネルギーに変わっていく」ような、そういう感覚でした。やはり東京でちょっとおしゃれなものを食べるのとは違う感じです。

――林さんにとって、思い出の料理はありますか?

父親が山口県の海のそばで育ったので、小さい頃は年に1回は父の実家に行っていました。僕は海のない滋賀で育ちましたが、父と海に潜ったりするのが好きでした。よく魚や貝を食べていましたが、その時は良さがわからなくって、あまり食べなかったです。いま思うともったいなかったですね。

 

今は「人の心に届くような芝居をしたい」

林遣都 撮影=岩間辰徳


――俳優業の魅力はなんですか?

昔から変わらなくって単純なんですが、デビュー作の映画『バッテリー』が上映された頃に母親が喜んで20回以上観てくれました。母もいろいろと大変な時期だったのに……。生きがいのように観に行ってくれて、「こんなに素敵な仕事はないんじゃないか」という思いがどんどん広がって、自分が表現したことで誰かが笑ったり泣いたり感動したりしてくれる。単純ですが、これ以上やりがいのある仕事はないと思っています。いつまででも続けたい仕事ですね。

――多くの作品に出演されていますが、多様ですよね。作品選びはどうやって?

俳優仲間でも面白い人はたくさんいて、常に10代、20代は「代わりなんていっぱいいる」って思っていましたし、実際にそうでした。そういう思いがずっとあったので、“求められること”を求めて、存在価値を早く示したいと思っていたので、いただいたお話を断る理由もないと思っていました。どんな役でも、それが犬であっても「できないものはない」そういう気持ちでいたのもあります。ちょっと前までは「なんでもやってやるぜ!」と意気込んでいた感じもありましたが、今はこういった作品をやらせていただいて、人の心に届くような芝居をしたいと思っています。

――スクリーンデビューから10年。いま、どんな時期だと思いますか。

ちょうどドラマ(朝ドラ『べっぴんさん』)で久々に関西にいる時間が長かったんですが、地元の人たちと会う機会があったんです。今まであまり同い年の人と接する時間を持ってなく、やっぱり自分は社会人から見たら何もないですし、特殊と思われている仕事をやっているから何にも言えることがないと思いました。分からない話がいっぱい出てくるんです。でも、だからと言って自分は「こんなに素敵な仕事はない」と思って、楽しくやっています。大変な仕事だと感じているので、向上心を持っていないとすぐに“置いていかれる”焦りのほうが大きいです。

――10代の頃は、いかがでしたか?

最初は自分から求めて掴んだものではない(編注:中学時代にスカウトされて事務所入りした)ので、待っている状態でした。その後は目の前に次々と作品があって……。やっぱり何にも考えてなかったです。やっぱりそうやってちゃんと向かい合っていないと、どんどん状況が変わってくる。悩むことがありましたし、常に満足していなかったです。20代は一回しかないので、いろいろな作品を残さなきゃって思っています。

――では、20代の目標は?

英語をしゃべれるようになりたいです。海外の作品に出てみたいとも思うんですが、そうじゃなくって……3年前に俳優として凄く悩んでいた時期に、仕事で海外に行ったんです。その時にいろいろな人と出会って、「俳優業だけに囚われちゃ駄目」って思ったときに気持ちが楽になったんです。人生を豊かにしたいので、コミュニケーションを取るのは重要ですね。

――劇中では“しゃぼん玉”を「ふわふわしていて、帰る場所がない」と例えています。でも林さんには帰る場所があるようですね。

大変ですけど。でも大変な時は「ふわふわしたい」と思います(笑)。それこそ今日、地元の友人とメールをしていて「ふわふわしたい時もあるよね」って会話をしました(笑)。

――では、林さんが「やり直せる」としたらやってみたいことは?

今までの話から「え?なんで」って思われるかもしれませんが、「音楽をやってみたかった」(笑)。僕の短かった地元の青春時代の大切な時間に、ずっと仲が良い友達が音楽を志していて、中学の時にちょっとだけ一緒にやったんです。でも僕は俳優に進んでしまった。いまでも心残りがあって、作品でたまにアーテイストの方と接する機会があるんですが、お芝居の表現とは違い、表現が本当に自由そうでいいな、と思って。でも、音楽をやることはないですけどね(笑)。

――では、最後に作品の魅力を教えてください。

監督が「何を感じてほしいかと言うと『自然があって、人の愛情に溢れた映画』それしかなく、それを言葉にしてしまいたくない何かがある作品」とおっしゃっていました。僕もそうで、それぞれが感じるものを掴んでもらって、大切に持ち帰ってもらえるような力を持った映画だと思っています。若い方でも、どんな人でもいろいろと感じることが散りばめられていると思います。そういった映画に参加できて嬉しいですし、本当に幸せな時間を過ごすことができました。

映画『しゃぼん玉』は3月4日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国公開

取材・文=Hirayama Masako、撮影=岩間辰徳

プレゼント情報
林遣都​サイン入り 『しゃぼん玉』ポスター 1名様に
 


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作品情報

映画『しゃぼん玉』

(C)2016「しゃぼん玉」製作委員会

林遣都 藤井美菜 相島一之 綿引勝彦/市原悦子
原作:乃南アサ『しゃぼん玉』(新潮文庫刊)
主題歌:秦 基博「アイ(弾き語りVersion)」(OFFICE AUGUSTA)
脚本・監督:東 伸児
エグゼクティブ・プロデューサー:近藤雅信
企画プロデューサー:豊山有紀 プロデューサー:浜本正機 上原英和
製作:「しゃぼん玉」製作委員会(ブレーン パラッツォ東京プラザ 共立 エスプリ)
制作プロダクション:エスプリ
配給:スタイルジャム
宣伝:フリーストーン 宣伝協力:ぴあ 企画協力:新潮社
特別協賛:宮崎県北部広域行政事務組合 椎葉村 協賛:神楽酒造 宮崎交通 センコー 岡田花店 平和リース
後援:宮崎県
(C)2016「しゃぼん玉」製作委員会
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