2代目チャーリィ、矢田悠祐が躍動!~『アルジャーノンに花束を』稽古場レポート~

レポート
舞台
2017.2.7
矢田悠祐(チャーリィ役)、水夏希(キニアン先生役)(写真:平林孝棋)

矢田悠祐(チャーリィ役)、水夏希(キニアン先生役)(写真:平林孝棋)


32歳になっても幼児並みの知能しかないチャーリィ・ゴードンが、手術により天才に変貌する姿を描く、ダニエル・キイス作のSF小説『アルジャーノンに花束を』。何度となく映像化・舞台化されているこの名作が、荻田浩一の脚本・演出によりミュージカル化されたのは2006年のことだった。初演、再演(2014年)とも、チャーリィ役の浦井健治の適役ぶりが話題となった本作。新たに矢田悠祐を主演に迎えて上演されることとなり、新チャーリィに大きな注目が集まる中、稽古風景が公開された。

『アルジャーノンに花束を』稽古場(写真:平林孝棋)

『アルジャーノンに花束を』稽古場(写真:平林孝棋)

「代表作にできるように頑張りたい」

2週間かけて歌稽古と本読みを行ったあと、立ち稽古に入って4日目というこの日は、幕開けから一幕半ばまでを早くも通してみる稽古。子どものようだったチャーリィが、徐々に知能をつけていく過程が描かれたのだが、その変化をごく自然に演じる矢田に驚かされた。純真無垢な姿と賢くなった姿の両方を、歌を通して無理なく表現できる俳優は浦井健治しかいないのではないかと思っていたが、矢田のチャーリィも説得力十分。プロデューサーの「彼しかいないと確信した」というコメントにも納得がいく。

『アルジャーノンに花束を』稽古場

『アルジャーノンに花束を』稽古場

手術を受ける前の矢田チャーリィで印象的なのは、舌足らずな喋り方や自由な動きといった演技プランもさることながら、何よりもやはり集中力だ。勢い余って稽古場の壁にぶつかった時でさえ、その表情は矢田本人ではなくチャーリィのままだった。そして手術の効果が表れて以降のシーンでは、それまで真っ直ぐだった歌声に持ち前の美しいビブラートを加え、歌唱力を存分に発揮。真っ直ぐに歌ってもきちんと音楽として届けることができる声質の良さと共に、本意気で歌った時の迫力をアピールした。

チャーリィ役の俳優に加え、荻田によるミュージカルならではの奔放な演出もまた、本作の大きな見どころ。一曲の中で時空を超越した事柄が次々と描かれ、想像力に訴えるセットや小道具が多用され、ほとんどの役者が一人で複数の役を演じる。稽古を見ていたら、オリジナル作品としての志の高さを改めて感じると共に、水夏希戸井勝海ら、力のある役者陣が奏でる新たなアンサンブルに期待が高まった。しなやかでダイナミックな踊りと独特の佇まいが光る、ネズミのアルジャーノン役の長澤風海にも期待大だ。

『アルジャーノンに花束を』稽古場

『アルジャーノンに花束を』稽古場

30分ほど通したところで、荻田が「今日はここまで」と声を掛けると、戸井が「良かった、どこまで行くのかと思った」と苦笑い。逆に言えば、止められなければどこまででも行けてしまえるほど、稽古は順調ということだろう。最後には矢田が、「素晴らしい作品で初主演をさせていただくので、自分の代表作にしていけたら。作品の魅力を100パーセント伝えられるように頑張ります」と意気込みを述べ、この日の公開稽古は終了。その言葉通りの、完成度の高い舞台の誕生を心待ちにしたい。

矢田悠祐(チャーリィ役)(写真:平林孝棋)

矢田悠祐(チャーリィ役)(写真:平林孝棋)

取材・文:町田麻子

公演情報
ミュージカル『アルジャーノンに花束を』

■原作:ダニエル・キイス
■脚本・作詞・演出:荻田浩一  
■出演:
矢田悠祐、蒼乃夕妃、皆本麻帆、吉田萌美  
小林遼介、長澤風海、和田泰右  
戸井勝海、水夏希

 
<東京公演>
■日時:2017年3月2日(木)~3月12日(日)
■会場:天王洲 銀河劇場

 
<兵庫公演>
■日時:2017年3月16日(木)18:30
■会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

 
■公式サイト:http://www.algernon-musical.com/
 
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