さらなる飛躍を予感させるSHISHAMOの最新作『SHISHAMO 4』はいかにして生まれたのか
SHISHAMO
昨年11月から12月にかけて行われた『ワンマンツアー2016秋「夏の恋人はもういないのに、恋に落ちる音が聞こえたのはきっとあの漫画のせい」』の充実ぶりから、次なる作品への期待が高まっていたのだが、『SHISHAMO 4』はその期待をはるかに上回る作品となった。アルバムの中に“いい曲”がいくつかあるというレベルではない。1曲目から最後の11曲目まで見事に“いい曲”が並んでいる。どの曲も聴く人の胸の中にしっかり届いていくだろうポップソングとしての強度と、“これは自分のこと歌った歌だ”と感じたり、歌の主人公が身近なところで生活しているのではないかという気がしてくるリアルな存在感を備えている。つまりどの歌も生きているかのようなのだ。ソングライター・宮崎朝子の才能が全開となっていると同時に、彼女の作り出す歌の世界をSHISHAMOがバンドとして見事に共有して表現している。これらの歌はさらに多くの人々によって共有されていくことになるだろう。いかにしてこの新作は生まれたのか。宮崎に聞いていく。
――いい曲だらけなのですが、『SHISHAMO 4』が完成しての手応えはいかがですか?
いいアルバムになったなと思っています。納得しているし、満足しているし、自分でもよく聴いてます。『SHISHAMO 2』までは自分の曲をそんなに聴いてなかったんですけど、『SHISHAMO 3』から納得のいく作品を作ることができるようになってきました。
――納得のいく作品になった要因はどんなことですか?
経験が一番大きいんじゃないかと思います。『1』より『2』、『2』より『3』、『3』よりも『4』のほうがより納得のいく作品になっているので、いろんなことを勉強させてもらっていることがプラスになっているんじゃないかなと。昔の曲の中にもいい曲はあるんですけど、もっともっといい曲が作れるようになってきたというか。
――曲の作り方で、変わってきたところはあるのですか?
歌詞を作って、ギターを弾きながら歌っていくという作り方なんですけど、そこは変わってないんですよ。ただ、今回のアルバムは自分でハードルを上げてるところがあって。
――ハードルとは?
『SHISHAMO 4』を作るにあたってのビジョンがあって。『SHISHAMO 3』の次の作品を出すんだったら、全部シングル曲ぐらい、1曲1曲に存在感のあるアルバムにしたかったんですよ。今までのアルバムの作り方ってリード曲、シングル曲、アルバム曲っていう構成になっていたので、そこがハードルを上げたところですね。前から曲はそれなりに作っていたんですが、そのほとんどは今回のアルバムに入っていません。これは『SHISHAMO 4』に入れる曲ではないなって、自分でボツにした曲が結構あるので。
――シングルを作ろうと思ったからと言って、そんなに簡単にはできないのではないですか?
作るのはギリギリでした。今までで一番レコーディングはきつかったかもしれない。来月レコーディングなのに、曲がほとんどないみたいな(笑)。
――ということは、自分でハードルを上げて、かなりプレッシャーのかかる状況での制作だったわけですね。
はい。ただ、時間は一番かかってないアルバムだと思います。時間があまりなかったので。
――具体的にはいつ曲作りをしていたんですか?
レコーディングしたのは去年の10月の1か月間だったんですが、9月の時点で曲がない状態で。そこから毎日曲作りをしてなんとかなったんですが、1曲だけこぼれてしまい。そのレコーディングでは録ることができなくて、ツアー中にもう1回、レコーディングをしました。
――こぼれたのはどの曲ですか?
1曲目の「好き好き!」です。パンと明るい曲がほしいと思って作っていたんですけど、ハードルを越えたものにはならなくて。それでツアー中に熊本のホテルで作って、次の広島で3人でスタジオに入って練習して、東京に帰ってきてレコーディングして……っていうギリギリのスケジュールになりました。
――ツアー・ファイナルのアンコールで演奏してましたよね。
そうです、あの曲です。
――追い詰められて、力が出た。
元々追い詰められないと何もしないタイプなので、ちょうどいい状況だったのかなって思います(笑)。
――「好き好き!」、歌詞は先にできていたんですか?
その時、携帯をなくしていたんですよ。いつもは携帯で詞を書いてるんですけど、ツアー中ずっと携帯を持ってなかったので、これは書けないなと思って、ホテルの部屋にあるメモ帳にメモしながら、歌と同時進行で作っていました。歌詞が出てくるままパーッと歌って、忘れないようにその言葉をメモして、みたいな。
――それまでは同時に作ったことはあったんですか?
本当にたまにですけど、ありました。
宮崎朝子
――同時に作るのはどうですか?
早く終わるんで楽でした(笑)。歌詞を考えて、それから曲を作ってという時間が省略されるし、出てきたままの言葉なんで、楽っちゃかなり楽です(笑)。
――すんなり出てくるものって、聴いていても自然に入ってきて、気持ち良かったりするのかもしれないですね。
歌もすんなり出てきたんで、聴くほうもきっと聴きやすいんじゃないかなとは思います。
――サウンド的にモータウンや50~60年代のオールディーズに通じるテイストも感じましたが、意識したところはありますか?
いえ。昔から時々、「こういうのを聴いていたんですか?」って言われることがあったんですが、私は洋楽って聴かなかったりするので、そこは特に何も考えてませんでした。
――どこかで自然に体の中に入っていたものが出てきたということなんでしょうね。
そうなのかもしれないですね。
――「好き好き!」は1曲目の曲を作るというイメージはあったのですか?
作ってからですね。作り終わったときに、ギターの最初の音が1曲目にふさわしいんじゃないかなと思ったので、1曲目にしました。
――“好き”という言葉を7回続けて繰り返していると、“キス”に聞こえてきますが、これは?
歌ってるときに、そう聞こえちゃうな~って思いながらやってました。
――シングル曲のつもりで作る場合、メロディーを作る意識や作り方には変化はあったんですか?
曲の作り方は特に変わってないですね。ただ、歌詞に関しては、聴く人の顔を思い浮かべるようになってきました。どういう人に届いてほしいのかとか、自分だったら、こういうときにどう言ってほしいのかとか、考えながら作っています。聴いている人の心にちゃんと届いてほしいから。
――たくさんライブをやって、実際に聴いている人の顔を見てきた経験も大きいのでしょうか。
そうですね。見ているとわかりやすいんですよ。歌いながら、すごい泣いてる女の子を見ると、“あっ、失恋したんだな”とか(笑)。「さよならの季節」をやってるときに泣いてる子がいると、先輩が好きだったんだなってわかったり(笑)。聴く人の心境にあてはまる曲を歌うのが好きなので、そういう光景に出会えることはプラスになっていますね。
――ライブハウスツアーでは花道があったから、より至近距離から観客の顔を見えたのではないですか?
とても近かったですね。その前はホールツアー、大阪城ホール、野音と指定席のライブが続いていて、ライブハウスのワンマンが久しぶりだったんで、とにかく近く感じました。で、ライブハウスって、やっぱりいいなって。
――ライブハウス・ツアーを観ていて、バンドの演奏もより歌の世界と連動しているなと感じました。そしてその印象は『SHISHAMO 4』にも当てはまります。レコーディングをしていて、バンドの演奏に関して、何か感じるところはありましたか?
吉川は真面目なので、すごく考えるんですよ。自分のドラムは何のためにあるんだ、みたいな(笑)。でもそういうのは要らないんだよって。SHISHAMOはドラムがテクニカルである必要もないし、歌をよりよく聴かせるための演奏に徹したらいいんじゃないかってところは共有できていたと思います。優先順位的にまず歌がちゃんと届くかどうかを大事にして演奏していくという。
――確かに技術うんぬんよりも、歌が届く演奏ができるかがどうかがより重要ですよね。
バンドって演奏がかっこいいのがすごいっていう風潮もあるじゃないですか。でもSHISHAMOがなりたいのはそっちの方向ではないんで。
――新作の楽曲はどれも歌と一体となった演奏ですよね。その中でも特に「終わり」は鳥肌ものでした。悲しみや喪失感を疾走し炸裂するバンドサウンドで表現しているところが素晴らしいです。
私は「終わり」が一番好きですね。SHISHAMOの曲って、ストーリーになってるものが多いんですけど、この曲はそうではなくて、絶望という気持ちが主役になってる曲というか。それだけで歌詞も曲も作ってるし、それだけで歌ってるし、その気持ちだけで演奏しているイメージなんですよ。
――負の感情があそこまでエネルギッシュにほとばしっていくところが気持ちいいです。
歌ってても、気持ちいい曲ですね。
――Dメロで一度溜めてから、再び炸裂する構成も見事ですが、錬りあげて作ったんですか? それとも最初からこのイメージで?
あまり構成を考えて作ることがなくて、歌詞をバーッと書いてから曲を作っているので、歌いながら、そのときのノリでこうなったということですね。バーッと歌っていって、止まりたくなったら止まるっていう。あの静かなDメロは私も好きです。
松岡彩
――SHISHAMOの曲は恋の歌が多いですが、こだわっていることはありますか?
恋してるときがもっとも音楽を聴きたくなるんじゃないかなと思っていて。中学時代に片思いしていたとき、自分自身、音楽を求めていた記憶があるので、同じような立場の子に聴いてもらえるとうれしいなと思いながら作っています。自分が聴く場合にも、そういうものばっかり聴いちゃいますし。
――宮崎さんの描くラブソングって、せつなさやときめきの描写がリアルですが、同時に、どこかで冷徹に俯瞰から観る視点が存在しているところが特徴的なのではないかと思います。自分ではどうですか?
どうなんだろう? 音楽じゃなくても、何に対してもそういうところがあるので、俯瞰で見るところは音楽にも出ているかもしれないですね。そういう見方をすることで、女の子目線と男の子目線の曲を書けたりするのかなと思います。
――「すれちがいのデート」はまさにそういう曲ですよね。1コーラス目が女の子の視点で、2コーラス目が男の子の視点で。2コーラス目を聴いていて、ハラハラしてしまいました。そんなことじゃ、フラレちゃうぞって(笑)。
男目線の歌詞も間違ってはなくて、正しいことを言ってるんだけど、すれ違っていて、絡まってるっていう。この曲の歌詞は楽しんで書いてました。同じことを違う目線で言う歌詞、特にサビの部分が楽しくて。男の子が<君のしたいことがしたいから今日もノープラン>って、全然すれ違ってるし!って(笑)。
――そうしたすれ違いをポップなメロディで楽しげに表現しているところがいいですね。このリズムも独特の躍動感を持っていますが、歌詞に呼ばれて、メロディ、リズムが出てきたんですか?
歌詞から書くと、自然と曲が歌詞に合ってくる気がしているので、ずっとそうやって作っています。リズムもその流れの中で自然にこうなりました。
――ライブではこの肉体的な躍動感をどう出すかがポイントになる曲ですね。
結構難しいので、もっと練習しなきゃって曲ですね。
――レコーディングではこの曲を演奏するにあたって、どんな意識でのぞんだのですか?
曲のウキウキ感、ハッピーな感じをどう出すかということですよね。でも結局、こういう曲は楽しく演奏するのが一番ですね。ライブでもやっぱりそれが一番で。
――そういう、演奏する上でのイメージは、吉川さんと松岡さんに伝えたりするんですか?
結構伝えます。やっぱり曲の受け取り方って、人それぞれで感覚の違いが生じたりするので。たとえば、穏やかな曲のつもりで作った曲で吉川がドラムをガシガシ叩いたりしたら、「この曲はこういうイメージだから」ってことは説明します。
――演奏したり、会話したりする中で、曲の世界観をバンドで共有していくわけですね。
そうですね。だからライブで新曲をやってからレコーディングすると、かなり楽です。
――昨年は武道館、野音、ホール、ライブハウスなど、たくさんのライブをやってきてますが、アルバム制作の上でプラスになりましたか。
ツアーはバンドにとって、大きいですよね。ライブが終わった後に、次のステージのために、その日のうちにみんなで話し合うことができるので、次に反映したり、活かしたりということがいろいろ出てきて。ツアーで新曲をたくさんやるのはバンドにとっても良いことだし、歌もどんどん変わっていきますね。「きっとあの漫画のせい」も大阪城ホールでもやっていたんですけど、その時から歌がどんどん変わっていって、大阪城ホールよりも野音のほうが良くて、レコーディングしたときにはさらに良くなりました。実際にステージでやりながら、もっとこう歌ったほうが伝わるだろうって、だんだんわかるようになってくる。なので、「きっとあの漫画のせい」はいい歌を録れたと思っています。
――バンドの演奏もいいですよね。
『SHISHAMO 4』の中では一番バンドっぽい曲かもしれないですね。全員の楽器の持ち味みたいなのも出ているのかなと思います。
――宮崎さんの歌って、言葉もメロディもリズムも一体となっていて、とても自然に入ってきます。どんなことを重視して歌っているのですか?
やっぱり気持ちですね。レコーディングでは歌に一番気合いを入れています。SHISHAMOの音楽って、中学生くらいの子が聴いてくれていて、ギターとベースの違いもわからないような子もたくさんいるんですが、それってとてもいいことだなと思っていて。そういう子からしたら、まず歌しか入ってこないだろうから、やっぱり歌に最も集中すべきだなと。なので、歌は1日1曲しか歌わないんですよ。歌録りする日にその曲の主人公の気分を合わせた服装でスタジオに入るようにしています。
――今回のレコーディングで、この曲はこんな服装で歌ったという具体例を教えてもらえますか?
「魔法のように」は女の子の曲だったんで、マニキュアを塗って、スタジオに入りました。
――前からそういうやり方なんですか?
かなり昔からですね。全曲、そうやって歌の主人公に気持ちを合わせて歌っています。それでもたまにわからないこともあって。「きっとあの漫画のせい」は引きずってないってことを歌いながらも、引きずってることも伝えなきゃいけない歌なんですよ。“引きずってるよ~”っていう心の動きを感じながらも、真逆の言葉を歌うと、全然違う聞こえ方になるんですけど、どうやったらこの曲にふさわしい伝わり方になるのか、つかむのに時間がかかりました。
――この歌の主人公は強がりなタイプなんだろうなと思うのですが、その強がりの加減も歌によって変わってきますよね。
強がりな部分って歌詞に書いてないところなので、あえて描いていないところを歌でうまく伝えるにはどうしたらいいんだろうって、歌いながら見つけていく感じでした。
――「メトロ」も歌詞だけ見ると、前向きな言葉ってほとんどないけれど、きっと主人公は前に進んでいくんだろうなという予感の漂っている歌になっていると思いました。
「メトロ」はそういうところのある曲ですね。失恋したときって、割り切ったからといって、忘れられるわけじゃないのはわかってるけど、なんとなく区切りを付けたいみたいなところってあると思うんですよ。この曲を失恋した人が聴いたとして、ただ絶望だけで終わる曲だったら、何も残らないじゃないですか。聴く人の顔を思い浮かべながら作るようになったことが、「メトロ」のこういう終わり方につながっているんじゃないかな。
――宮崎さんと歌の主人公の距離感って、どんな感じですか?
歌に登場するキャラクターの傾向は、私が好きな女の子ですね。私がかわいいなと思う女の子が主人公だったりします。私は頑張ってる子が好きなんですよ。『SHISHAMO 4』に入っている曲って、性格はバラバラなんですけど、何かに頑張っているってとこは共通していて、そこがかわいいなって思います。
――個人的には「終わり」とともに特に好きなのは「音楽室は秘密基地」です。この曲はNHK『みんなのうた』のために書き下ろしたとのことですが、どんなとっかかりから作ったのですか?
『みんなのうた』から“学校”というキーワードをいただいて作りました。
――お題があった上で作るのは大変ではなかったですか?
私はそっちのほうが向いてますね。これまでも自分の好きな曲だけを作るというやり方というよりは、身近な人に「キーワードをちょうだい」って言って、何かもらって作ることのほうが多かったんですよ。縛られた中で作るほうが楽しいというか。なんでもいいとなったら、いろんな可能性があるわけですけど、それよりも限られた中で工夫しながら作るのが楽しいところであったりするんじゃないかなと。
吉川美冴貴
――工夫するってクリエイティブな行為ですもんね。「音楽室は秘密基地」はストーリー展開も見事ですし、情景も浮かんでくる曲です。これは体験に基づいたものではなくて、創作なんですか?
そうです。この曲は結構すんなりできました。『みんなのうた』を小さいころに見ていたんですが、その当時、ストーリーがちゃんとある曲を好んで聞いていた記憶があるんですよ。なので、ちゃんと起承転結のある曲を作ろうってことは決めてました。それと、学校感みたいなものが出たらいいなってことは考えてました。
――最後に大人になってからの話が出てくるところもいいですね。
あの部分がないと、別れたっきりで、起承転結の“結”がないんじゃないかなと思って、最後につけました。こうすることによって、小学生のころを描いた歌なんですけど、大人目線で書いてる曲になるので、幅広く好きになってもらえるんじゃないかな。
――この歌で描かれた先のこともいろいろと想像させるし、広がりもあって。
私も昔の先生に会ったりすることがあるので、こういう事もきっとあり得るだろうなと思って書きました。
――ピアノも実に表情豊かだし、バンドの演奏も体温があります。レコーディングのとき、どのようなイメージで?
“夕焼け”という言葉は出してました。ドラムとか他の楽器のことはそんなに詳しくないので、専門的な説明はできないんですけど、「夕焼けの雰囲気を大事にしよう」とか、そんなふわっとしたイメージを伝えながら、やっていました。
――「メトロ」「明日も」でホーンが入ったり、「夏の恋人」でストリングスが入ってきたりと、バンド以外の音も目立っていますが、曲を作ったときから入れようと思っていたのですか?
「メトロ」はイントロのフレーズが先ですね。このフレーズ、どういう音色にしようって考えていて、ホーンがいいかなって。そうやって自然に入れられるようになってきました。前だったら、入れていいのかな? 大丈夫かな?ってまよったと思うんですよ。スリーピースってところもありますし。でもそういうことがあまり気にならなくなってきました。結局、曲にとっていいというのが最優先という意識になったことで良くなったところはたくさんあるんじゃないかな。「メトロ」にしても、ホーンが入ることで前向き感が出たと思いますし。
――バンド以外の楽器のレコーディングで印象に残ったことはありますか?
「明日も」のホーンのソロですね。私はもともと曲作りに関しては、結構かっちりしていて、“ここはこうです”っていう自分の中の正解があって、誰に何を言われても、“絶対に変えられない。譲れない”っていう頑ななところがあったんですが、最近はいい意味で妥協できるようになってきました。そう思えるようになってから、曲がより自由になった気がしています。「明日も」のホーンをお願いするときも、「激しめのをお願いします」って言って、自由にやっていただきました。前だったら、自分以外の誰かのクリエイティブな要素を入れることができなかっただろうなって思います。人を信用して、お任せできるようになってきたことで広がった部分がたくさんあるなって感じてますね。
――「夏の恋人」もストリングスが入ることで、世界が広がってますもんね。
あのストリングスが無かったら、もはや「夏の恋人」じゃない、ぐらいの勢いですね(笑)。
――でも「夏の恋人」、純粋にとても素晴らしい曲だと思いますよ。すでに名曲の風格が漂っています。ライブハウスツアーでも本編最後に演奏するのにふさわしい懐の深さを持っていましたよね。
あの座の終わりにふさわしい曲だったなと感じてます。
――アルバム・ラストの「明日も」も聴く人々にパワーをもたらす曲だと思いますが、この曲はどういうきっかけから生まれたのですか?
サッカーの試合を観て作った曲で。地元の川崎フロンターレをSHISHAMOで応援してるんですけど、曲が作れたらいいなって思っていて……初めて試合を観に行ったとき、サポーターという存在を初めて知って、サポーターに意識がいっちゃったんですよ。熱がすごいじゃないですか。この人たちは普段どういう生活をして、週末、どういう気持ちでサッカー観戦に来てるんだろうってことが気になってしまったんですよ。サポーターの気持ちを歌った曲ですね。
――歌詞の“ヒーロー”ってはもともとはサッカー選手のことだったんですね。
曲を作ったときはそうなんですけど、聴く人によって、いろんなヒーローになるんじゃないかなと。ライブも週末ですし。
――ヒーローにSHISHAMOを重ねる人もいそうですね。
そういうふうに言ってくれる人もいました。
――この曲の最後でギター、ベース、ドラムが順に入ってきて、ソリッドな演奏が展開されるエンディング、いいですね。
アルバムの最後でもあるんで、3人で終われるのがいいなと思って、こうしました。でもこの曲、アルバムに入れるか入れないか、迷ったんですよ。というのは、今まで歌ってきたことと違う歌詞の曲が入るのはどうなんだろうって思ったから。その気持ちは今もあります。でもやっぱりいい曲には間違いないし、この曲によってSHISHAMOの可能性も広がっていくんだろうなって思ったので、入れましたけど。
――“違う”というのは?
自分の中でSHISHAMOとして書いていいことと書いてはいけないこととがあって。勝手に狭めてるところもあると思うんですが、私はそもそも応援ソングが嫌いで、「がんばれ」って言われると「なんでお前に言われなきゃいけないんだ」みたいに感じてしまうタイプなので、これまでそういった曲を作る気がまったくなかったこともあり、SHISHAMOでやるのは違うんじゃないかなって。でもこの曲ができていろんな人に聞かせたら、みんなが「いい」って言ってくれて、反応がとても良かったという。
――宮崎さんの中から自然に出てきた曲なのだから、狭める必要はないのではないかと思いますけど。
自分としてはまだどうなんだろう?っていう気持ちはあって。SHISHAMOのお客さんにどう受け入れられるんだろうなっていうのはずっと考えてますね。
――観客の反応も含めて、アルバムの曲をツアーでやるのは楽しみなのではないですか?
ツアー、どんなものになるんだろうってドキドキします。
――春のツアーはアリーナ、武道館、ホール、そしてライブハウスと様々なタイプの会場でやるわけですが、こういう組み方にしたのはどうしてなんですか?
いろいろなところでやりたいってことですよね。大きいところでやりたいという気持ちはずっとあって、2度目の武道館がこんなに早くできるとは思っていなかったんで、うれしいです。言い方が難しいけど、1回だけなら、勢いで出来たりもするかもしれない。でも2回となると、重さが全然違うと思っているので、ありがたいですね。アリーナ編は大きいところでやって、ライブハウス編では大分とか宮崎とか福井とか、行ったことのない場所にもたくさん行くので、今回のツアーはそれが一番楽しみですね。
――好きなバンドが自分の住む街に来てくれるって、観る側にとってもとてもうれしいことだと思います。
地方に行くと、「来てくれてありがとう」って言ってくれたりするんですが、めっちゃ“こちらこそ”じゃないですか。「来てくれてありがとう」って言ってもらえるのもうれしいけど、こっちから会いに行けるのもうれしいんですよ。
――ツアー・タイトルは『SHISHAMO ワンマンツアー2017春「明日メトロですれちがうのは、魔法のような恋」』。“こんなツアーにしたい”というイメージはありますか?
それはまだ言えないですね。結構内緒にしておきたい(笑)。来てからのお楽しみにできたらいいなと思ってます。ただ、(特別な何かが)何もないことはないです。アリーナでは、大きなところでしかできないことをやりたいので、今、いろいろ考え中です。
――バンドは今、とてもいい状態なのではないかと思うのですが、自分ではどう感じていますか?
常に頑張り時ではあるんですけど。状況に関しては、あんまり自分では変わらないように思っていて。規模は大きくなってるんですけど、自分のやることは変わってないし、やりたいことも変わってないし。いい曲を作って、ライブをするっていう、それだけなんですよ。それをずっと繰り返していくだけっていう。
――そのサイクルの中でこれだけ成長していけるところが素晴らしいなあと思います。
ともかくできる限り、いい曲を作り続けることが大事で。曲もライブもだんだん良くなっているので、今までどおり、健康に気を使いながら、続けていけたらいいなと思っています。
取材・文=長谷川誠 撮影=上山陽介
SHISHAMO『SHISHAMO 4』
UPCM-1404 2,700円(税込)
【収録曲】
01. 好き好き!
02. すれちがいのデート
03. 恋に落ちる音が聞こえたら
04. 終わり
05. 恋
06. 音楽室は秘密基地
07. きっとあの漫画のせい
08. メトロ
09. 夏の恋人
10. 魔法のように
11. 明日も
03.18(土) 愛知 日本ガイシホール
OPEN 16:00 / START 17:00
OPEN 16:00 / START 17:00
03.31(金) 東京 日本武道館
OPEN 17:30 / START 18:30
06.07(水) 福島 club SONIC iwaki
06.08(木) 山梨 甲府KAZOO HALL
06.11(日) 和歌山 SHELTER
06.13(火) 福井 響のホール
06.15(木) 鳥取 米子AZTiC laughs
06.16(金) 山口 周南RISING HALL
06.19(月) 高知 キャラバンサライ
06.21(水) 大分 DRUM Be-0
06.22(木) 宮崎 WEATHER KING
※3歳以上必要
※ライブハウス編 1DRINK代別(福井公演のみDRINK代無し)
アリーナ編 :好評発売中!!!
ホール編 :02.19(日) AM10:00~
ライブハウス編:04.23(日) AM10:00~