西野カナなどのヒット曲を産み出す男『エンタメの今に切り込む新企画【ザ・プロデューサーズ】第十六回・佐伯ユウスケ氏』

インタビュー
2017.3.2
ザ・プロデューサーズ/第16回佐伯ユウスケ氏

ザ・プロデューサーズ/第16回佐伯ユウスケ氏

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編集長として”エンタメ総合メディア”として様々なジャンルの情報を発信していく中で、どうしても話を聞きたい人たちがいた。それは”エンタメを動かしている人たち”だ。それは、例えばプロデューサーという立場であったり、事務所の代表、マネージャー、作家、エンタメを提供する協会の理事、クリエイターなどなど。すべてのエンタメには”仕掛け人”がおり、様々な突出した才能を持つアーティストやクリエイターを世に広め、認知させ、楽しませ、そしてシーンを作ってきた人たちが確実に存在する。SPICEでも日々紹介しているようなミュージシャンや役者やアスリートなどが世に知られ、躍動するその裏側で、全く別の種類の才能でもってシーンを支える人たちに焦点をあてた企画。

それが「The Producers(ザ・プロデューサーズ)」だ。編集長秤谷が、今話を聞きたい人にとにかく聞きたいことを聴きまくるインタビュー。そして現在のシーンを、裏側を聞き出す企画である。

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西野カナや関ジャニ∞への楽曲提供など、J-POPスタンダードとも言うべきバラードやポップソングを産み出し、自らもアニメ弱虫ペダルのエンディングテーマを歌うなど、幅広い活動を行う若き才能に話を聞いた。今回はいつものプロデューサーズとちょっとだけ趣向を変えて、多くの作家志望やクリエイターにむけて、活躍するクリエイターのルーツや考え方という部分に焦点をあてて聞いてみた。

――コンポーザーとして大活躍されていますが、ご自身としては作詞、作曲、アレンジまで全部自分で手掛けたいという気持ちが強いですか?

曲、アーティストによります。デモを作った時に曲の全容が見えている時は、そのままアレンジまでやらせて欲しいという話はしますが、どちらかというと全容は見えていない事の方が多いです(笑)。僕は曲を作る時、ピアノだけで作っているという事も影響していると思いますが、テンポ感とかビート感とかビジョンが見えていれば、と思いつつ、見えていてもやらせてもらえない事の方が多いので、本当はトータルで作る事ができたらいいですね。

――西野カナに関しては、曲によっては詞を共作したり、アレンジも手掛けています。

彼女の場合も曲によってです。カナちゃんのチームは“次はこういうのを作りたい”というビジョンが毎回明確なんです。でも僕はちょっと違う作り方でやらせていただいていて、オーダーはこういう感じだけど、後は自由に作ってください、というスタイルです。仮詞をつけてデモを作るので、詞を含めて採用される事もあります。

――プロフィールに「母のオーディオから流れる soul、R&B などの音楽に触れながら育ち」とありますが、佐伯さんの血となり肉となっている音楽は、ブラックミュージックが中心ですか?

母親が、当時流行っていたブラックミュージックを聴いていて、覚えているのはアニタ・ベイカー「Sweet Love」とか、ちょっとアーバンな感じがするものです。あまり土臭いブラックは好きじゃなくてブラック・ソウルをかみ砕いた感じのものが好きでした。山下達郎さんも大好きでよく聴いていました。

――吹奏楽もやっていたとお聞きしましたが、曲作りはいつ頃からやられていたのですか?

たぶん作曲と意識したのは21~2歳ぐらいだと思います。その前に専門学校に2年間通いました。そこで自分の頭の中に流れている音を、きちんと具現化するという作業を初めてやって、これが作曲なんだ、と意識したのはその後、少しずつ作り始めてからです。

――作曲した作品が学校の先生に評価された事が、この世界を目指すひとつのきっかけになったとお聞きしました。

そうですね、初めて書いた曲が学校の小さなコンテストで優秀賞を獲って、iPodをもらいました。それがすごく嬉しかったです。

――どんな曲だったんですか?

実は東京女子流に提供した「Regret.」という曲が、初めて書いた曲なんです。それはいわゆるシティポップを意識した時期だったので、そういう匂いがするものになりましたが、でもアレンジは相当変わっています。そういう時期から“ませたい”人だったんです(笑)。ちょっとJ-POPを見下すような感じで(笑)、でも本当は大好きなんですけどね。申し訳ないくらいロックを通っていなくて、ビートルズとかも全然聴かなかったです。

――エイベックスの作家チームに所属したきっかけを教えて下さい。

エイベックスのリズムゾーンの作家チームに2007年頃に入りました。きっかけは、学校を卒業した年に湘南の街角音楽祭みたいなイベントに出た時に、審査員に当時エイベックスの作家のマネージャーの方がいて、賞は獲れなかったのですがその時に名刺をいただきまして。それで、僕の曲をアーティストに提供したいのですがどうですか?と言われ、その時は僕も尖っていたので「無理ですよ、自分の曲は自分で歌うので」と言って断って。でもその作家チームの立ち上げのタイミングで「もちろんアーティストとして活動するのは構わないし、デメリットになることはない。アーティストとしてやっていくにしても、引き出しが増えると思うので」と言われ、考え直して、「じゃあこの曲はあげられませんが、所属してやらせてもらいます」ということになって。そうしたら所属から1年後くらいに幸運にも、関ジャニ∞さんの2009年のアルバム『PAZZLE』に「YOU CAN SEE」という曲が採用されて、無理矢理アレンジもやらせてもらって。

――最初からラッキーですね。

あまり人に言いたくないくらいラッキーでした(笑)。

――いいプロモーションにもなりますよね?

はい。そこから一年間また書き続けて、今度は、(西野)カナちゃんが「会いたくて」などヒット曲を連発している時に、「このままで」(‘10年)という曲を提供しました。当時のカナちゃんファンにはあの曲が新鮮だったようで、着うた全盛時代だったこともあって、アルバム曲なのに人気でした。その後に、いいバラードを探しているというリクエストがあり、提供したのが「君って」(‘10年)です。たくさんの人にああいうど真ん中のバラードがウケたのは嬉しかったです。2曲とも元々あった曲で、そういうほうが書下ろしよりも不思議とウケます。

――それ面白いですね。

だから色々なジャンルでやらせてもらえるのかなと思います。自分の色が認めてもらえているというか、変に気負わないのがいいのかもしれませんね。

――佐伯さんが書くメロディには、必ず切ない部分がありますよね。

それは特別意識していませんが、自分が気持ちいいと思う部分がそこなんだと思います。調子が悪い時に提出すると「なんかいつもの佐伯くんの泣きがちょっと薄いような…」とか言われて(笑)。

――そういう切なさやメロウな感じって、年齢関係なくみんな好きですよね。

やっぱり日本的なんでしょうか。その観点でいえば、小学校5~6年から中学くらいまでは、ずっとシングルを借りまくっていて、CDが売れていた時代の小室哲哉さんとか、SPEED、ラルク、GLAYとかを聴きまくっていました。最近、車に乗りながら当時の曲をランダム再生で聴いていた時に思ったのですが、やっぱりブラックミュージックももちろん好きですけど、根底にはその思春期に聴いた音楽達が強く根付いているんだなと。ミーハーな部分が功を奏しているのかもしれないです。いい感じに自分の中で混ざり合ったのかもしれないですね。

――佐伯さんはメロディだけではなく、言葉も特徴的ですよね。時にシニカルだったり、勇気付けてくれたり。

シニカルというのはよく言われます。そういう人間なんですよ(笑)。すぐ皮肉を言いたくなるんです。歌詞なので普通にいきたくないというか。

――佐伯さんの中で曲を作る上で、これだけは絶対に譲れないというようなポリシーはありますか?

ありきたりになってしまいますが、自分が気持ちいいものを、ということです。年々自分の曲に対するハードルが自分の中で高くなってきていて、この前作ったのは、自分もプレイしている好きなアプリゲームの音楽だったので、すごくプレッシャーがあって苦戦しました。

――作品を生み出すという事は身を削っているということですよね。

本当にそうです。お風呂に入りながら、今日も寿命が縮んだなと思います(笑)。だからこそ作品をちゃんと扱ってくれないと、すごく憤りを覚えますね。マネージメントに曲を渡したのに、その後なんの音沙汰もない時は「どうした?あの曲」ってなります。

――今、手がけてみたいアーティストはいますか?

ずっとRHYMESTERが好きで、一番リスペクトしてるのですが、最近Mummy-Dさんと一緒に曲を書かせていただく機会に恵まれて。入野自由という声優に僕が曲をずっと提供していて、自由がKREVAさんの舞台に出たんです。そこにDさんも出演していて、自由が自分のアルバムにDさんにリリックを書いて欲しいとお願いをしたら、僕がプロデュースした自由のシングルに入っていた曲を、Dさんが気に入ってくれたようで、それでDさんから「佐伯くんと一緒にやろうよ」というお話を戴いて、一緒に作業させていただき、夢のような時間でした。なのでHIP-HOPのトラックメイキングにチャレンジしてみたいです。自分のルーツになっているサウンドを、HIP-HOPとかシティポップ、渋谷系のような音楽に乗せるという事にトライしてみたいです。ど真ん中ではない事を。

――ど真ん中ではないことも含めて、違うことをやるソロプロジェクトがSHUHARIHITOですか?

そこはまた違う人間がいますね。昨年まで大手事務所に所属していて、新しい座組で何かやろうということで、一人サカナクションみたいな事をやらない?と提案され、作ってみたら意外とかっこよかったのでそのプロジェクトで進めていきました。

――SHUHARIHITOはこれからも折を見てやっていくつもりですか?

そうですね。そっちはサウンド周りは一人でやっていますが、スタッフも数人いて、みんなのプレイグラウンド的に面白いことやって、クリエイター集団のような感じで、気長に楽しみつつやっていけたらと思っています。

――ガス抜きにもなっている感じですか?

そうですね。また色々なガスが溜まりまくっているので、それを抜かないといけないですね(笑)。でもどの活動も別のベクトルがあってやりたいものというか、佐伯ユウスケとしてもこういう方向性は自分では持っていると思いますし、SHUHARIHITOも全部一緒にすればいいのに、という話もありましたが、聴く人も難しいと思いますし、何よりも自分が分けないとやっていけないと思いました。

――今回シンガー・ソングライターとして、TVアニメ『弱虫ペダルNEW GENERATION』のエンディングテーマを手がけていますが、原作の『弱虫ペダル』は、読んでいたんですか?

いえ、話をいただいてから読みました(笑)。思っていたより、全然面白かったです。

――強い詞が印象的です。

ご存知だと思いますが、元々熱い曲を書くタイプではないのですが『弱虫ペダル』という作品に合うように、熱い、エネルギッシュな曲を作る事になって、最初に作ったものはまだまだ熱さが足りなくて。それでもう一回書いたのが「ナウオアネバー」です。でも、いくらタイアップとはいえ、佐伯ユウスケというものを出さなければ意義がないと思っていたので、いかに自分が歌う意味と、その色、かつ『弱虫ペダル』という作品の世界観に合わせるか、そのバランスを考えた結果、この曲になりました。

――「ナウオアネバー」という曲は、『弱虫ペダル』という作品を通して、聴いている人に強いメッセージを送りたかったのでしょうか?

実はこの曲に限らず、聴き手側にいかにメッセージを伝えるかという事は、あまり考えずに歌詞、曲を書くタイプで。今回もそうですが、自分に向けて歌うことの方が多いです。今年30歳になって、佐伯ユウスケ名義では再スタートになるこのタイミングで、今回のタイアップを決めていただいて、自分にハッパをかけるという事も含めて書きました。ゼロからのスタートというイメージです。

――自分に向けて言葉をぶつけている感じなんですね。

はい。自分が思っていないと共感してもらえないので、聴き手の事を考えていないわけではないのですが、常に自分に向けてです。

――胸に響くいい詞とメロディです。

ありがとうございます。結構チャレンジというか、今まで自分が知らないサウンド、自分の中にないサウンドですが、これはこれとしてチャレンジだなと。

――『弱虫ペダル』は熱狂的なファンがいるマンガですが、曲を書く時にそれがプレッシャーになりましたか?

なりました。でも作品の大きさというよりも、作品のコンセプトが明確にあるというプレッシャーです。

――今回アレンジは佐伯さんではなく宮崎誠さんです。

そうですね、これはもう完全に『弱虫ペダル』の世界観に寄せてもらおうって思って。多分アレンジまでやると自分では寄せられないというか、絶対に自分の世界観が色濃く出てしまいそうで。なので詞・曲を作って、あとは『弱虫ペダル』の世界観に精通している宮崎さんにお任せしようと。自分で作詞・曲のアレンジを人に任せるという事は、今まではあまりなかったのですが、そういうものの良さも知っていきたいという、新しい観点で割り切った部分はあります。

――「ナウオアネバー」が完成した時は、最初はどんな印象でしたか?

なるほど、と思いました。とはいえ自分でそれを超えるアイディアも提案できないし、一回噛み砕いてみようと思って、2~3日して好きになりました(笑)。

――疾走感がありますよね。

はい。僕には出せない感じで、お任せしたからこその疾走感だと思います。

――いい意味で俯瞰で曲を書けたという事ですよね?

はい。原作の方や、サウンドチームは、何が熱いと思っているのだろうという事を、俯瞰で見ながら書けた事がよかったと思います。

――『弱虫ペダル』のコアファンにとっては「ナウオアネバー」は、新鮮な感じがするかもしれませんね。

そうですね。挑戦状のような感じで、賛否両論きっとあると思うので、そこで気に入ってもらえたら、してやったりという感じです(笑)。

 
 
【佐伯ユウスケ「ナウオアネバー」MV Full Ver.】
 
【佐伯ユウスケ「ナウオアネバー」メイキング映像】
 

企画・編集=秤谷建一郎  取材・文=田中久勝  撮影=三輪斉史

リリース情報

「ナウオアネバー」/佐伯ユウスケ(TVアニメ「弱虫ペダル NEW GENERATION」エンディングテーマ)

【アニメ盤】THCS-60128/アニメ描き下ろしジャケット/¥1,400(+税)/1枚組
【アーティスト盤】THCS-60129/アーティスト撮り下ろしジャケット/¥1,700(+税)/CD + DVD(2枚組)
【通常盤】THCS-60130/アーティスト撮り下ろしジャケット/¥1,200(+税)/1枚組
収録曲
1.「ナウオアネバー」
作詞・作曲:佐伯ユウスケ 編曲:宮崎 誠
2.「終わってゆく場所」
作詞・作曲:佐伯ユウスケ 編曲:宮崎 誠
3.「Step by Step」
作詞・作曲:佐伯ユウスケ 編曲:宮崎 誠
4.「ナウオアネバー」(Instrumental) 5.「終わってゆく場所」(Instrumental)
6.「Step by Step」(Instrumental)
特典
【アニメ盤】TVアニメ『弱虫ペダル NEW GENERATION』エンディングムービー絵コンテブックレット
【アーティスト盤】DVD[「ナウオアネバー」ミュージックビデオ]

 

 

イベント情報
・3/26(日) AnimeJapan2017 2日目REDステージ歌唱
https://www.anime-japan.jp/main/rgb_stage/
・7/9(日) ツール・ド・ヨワペダ2017 @舞浜アンフィシアター
http://yowapeda.com/news.html#_EVENT

 

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