逗子三兄弟 インタビュー リアリティを追求する3人を改めて紐解く
逗子三兄弟
逗子(神奈川県)で生まれ育った長男・優己、次男・大雅、三男・翔馬からなるシンガーソングライターユニット・逗子三兄弟。
楽曲もMVも“インパクト大”な新曲「兄弟喧嘩」についてはもちろんのこと、実の三兄弟で活動することになった経緯や兄弟ならではの苦労など、たっぷりと語ってもらった。
そして、いきなり兄弟喧嘩が勃発(!?)する、現在開催中のツアーについても訊いた。
――取材が始まる前、みなさんおしゃべりすることなく静かに過ごされていて意外でした。兄弟だけに、もっとわちゃわちゃっとしているのかなと、勝手に想像していたもので。
大雅:いやいや、みんないい大人ですからね、そんなにわちゃわちゃはしないです(笑)。といっても仲が悪いわけではなくて、今日も一緒に来ましたし。
――一緒に住まれているとか?
大雅:兄貴は家族がいるから別なんですけど、俺と翔馬は一緒に暮らしてます。でも、会話がないときは全然なかったりもしますよ。
――にしても、三兄弟で一緒に音楽ユニットを結成しているって、すごく珍しいなと。
大雅:ですよね、よく言われます。
――よくあるのは、みんな音楽の道に進んだとしても、別々のバンドやグループに所属していたりとか、2人は一緒だけど1人は別とか。
大雅:僕らも最初はそうで……僕はもともと、優己のバンドでドラムを叩いていたんですよ。でも、活動休止中に「歌を歌いたいな。でも、ひとりで歌うのはイヤだから誰か誘おう」と思い立って、優己と、シンガーソングライターとして活動していた翔馬に声をかけたんです。
――すると、ふたつ返事で?
大雅:いやいや、最初はどっちにも「イヤだ」って言われました。それぞれ曲を書けるわけで、「なんで俺の曲にほかのやつが入ってくるんだ」って(笑)。
翔馬:僕はもともとひとりで歌っていたから、人と一緒に歌うのはイヤだったんですよ。でも、兄貴に誘われたから、「じゃあやってみようかな」っていう感じでした。……というか、僕は末っ子なので、そもそも拒否権がないっていう。
大雅:実際、翔馬は比較的簡単に取り込めると思っていたからね。
――「やるぞ」と言われれば……
翔馬:「はい、やります」って言うしかない(笑)。
――お兄さん、そんなに怖いですか?
大雅:俺はそんな怖くないですけどね、優己は怖いです(笑)。で、翔馬を味方につけた上で、優己をなんとか説き伏せて、まずは俺の書いたトラックに遊び感覚で2人に参加してもらったっていうのが、逗子三兄弟としての始まりです。ただ、逗子三兄弟を組んでから半年後くらいにインディーズでCDを出すことが決まった時点でも、優己はやる気がなくて。
優己:事務所と契約するっていうときも、面倒くさくて行かなかったり(苦笑)。
大雅:結婚してさっき話したバンド活動もストップしていたし、普通に働こうとしていたもんね。でも、「歌が好き」っていう気持ちが変わらないのは知っていたし、「とりあえずいるだけでいいから!」って、なんとか言いくるめて(笑)。
優己:インディーズでCDを出して、その1年後にメジャーデビューすることになったわけですけど、そのときも「決まっちゃったんならやるしかない」っていうのが、俺の本音でした。
大雅:逗子三兄弟を始めて2年目くらいまでは、そんな感じだったよね。とはいえ、優己にはやっぱり才能があるんですよ。俺と翔馬は、そういう優己に影響されて音楽を始めたっていうところがあって。翔馬が小6、僕が中2のころに、優己は大学1年だったわけですけど、自分で作った曲を俺たちに聴かせては「俺は天才だ」っていう刷り込みをしていたし(笑)。
――大人になってからも、折に触れそう感じるわけですか。
大雅:感じますね。「兄弟喧嘩」の元ネタを持ってきたのも優己なんですけど、カッコイイなと思ったし。昔も今も変わらず、兄貴が書いてくる曲に対して期待感がありますから。俺とか翔馬が書けないようなものを持ってくるあたり、すごいなと思いますよ。
翔馬:うんうん。カッコイイと思える音楽をやっていなかったら、「あいつみたいにはならない」と思っていたと思うので。素直にリスペクトはあります。
――逆に、大雅さんや翔馬さんに刺激を受けることもあったりして?
優己:ありますあります。三者三様なので、逆に僕ができないことを大雅や翔馬ができたりするし。ただ、いつも誰かが曲を持ってきたら、3人全員が納得しないと形にしないんですけど……「俺だけハードルが高くねぇか?」っていう気がするんですよね(笑)。
翔馬:あ、それはある(笑)。
大雅:だって、俺らを音楽の道に引きずり込んだ張本人だからさ。そのあり余る才能を、ふんだんに見せてもらわないと(笑)。
優己:いつも「そんな簡単に通さないぞ」みたいな雰囲気がありますからね。まぁ、8年やってきて、今はそれが当然の宿命だとは思っていますけど。ライブとかでも、ちょろっと間違えたりすると、俺だけすげぇ言われたりとかする(笑)。
翔馬:なんでかって……俺はまず間違えないから! というか、普通は「今日は間違えちゃった」だと思うんですけど、優己の場合は「今日は間違えなかった」ですからね(笑)。
優己:それについては……反論はしない(笑)。でも、歌唱についても、俺が自分で100点だと思ってもダメで、120点に達して初めて、2人が納得するので。
――というお話からもわかるように、お互いに高め合える3人でもあるのでしょうね。
優己:だと思うし、他人とやるよりもプレッシャーはありますね。
――他人同士だったら、同じバンドやグループといえども、大なり小なりの遠慮があったりするのでしょうけど……。
大雅:妥協がないから、基準がどんどん上がっていくし。でも、キングギドラみたいに頭が3つある感じがすごくおもしろくて。
――3人ならではの化学反応とお互いへの絶大な信頼感が、そこにはあるのでしょうし。
大雅:うん、それは確実にあります。
優己:「裏切らないのって家族しかいないな」って、俺は思うので。
大雅:ただ……たとえばダブルデートなんかは、俺は死んでもしたくないですけど(笑)。
優己:2人に「早くいい人見つけてほしいな」とは思うものの、「この間彼女とさ~」みたいな情報は要らないし(笑)。
大雅:だろうね(笑)。あと、俺としては、「早くいい人見つけろよ」って言われて、半分は嬉しいものの、半分は「うっせぇな!」っていう気持ちがあります(笑)。
――相談とかはしないんですか?
翔馬:僕は、優己にも大雅にも絶対しないです!(笑)
大雅:だよな。
優己:俺からしたら、どんなにキャーキャー言われたって、大雅と翔馬はネギとらっきょうみたいなもんですけどね!(笑)
――なんという例え(笑)。なお、先ほどお話に出たデジタルシングル「兄弟喧嘩」は、たとえば結婚式の定番ソングとなった「純白の花嫁」(2011年リリースの1stミニアルバム『Z3 DRIVE MUSIC』に収録)や、昨年リリースの「JOYFUL DRIVE」といった、ハッピーでピースフルなイメージを大きくくつがえすようなガチバトルソングで。驚かされてしまうわけです。
大雅:去年、ドキュメンタリー映画『湘南の三兄弟』で、相当僕らの素の部分、裏側までバレちゃったわけですけど……僕らは自分たちの人生観をストレートに歌で表現するいっぽうで、エンターテインメントとして音楽をやっているプライドもあるし、歌手というよりはクリエイター集団としての意識が強かったりして。「兄弟喧嘩」は世間からしたらすごく攻めている曲だと見られるだろうなっていう自覚はありつつ、ロックは自分たちのルーツだし、自分たちにしかできない表現ができたなという自負はあります。確かに、「純白の花嫁」とかチャラい「サマーウルフ」(2010年リリースのデビューシングル)も僕らのリアル。でも、そういう側面しか見せないとしたら、それって嘘くさいじゃないですか。僕らはリアリティを追求しているし、それこそが僕らがやる意味なんじゃないかなって思うんです。
優己:「歌いたいものを探すよりも、自分たちで書いたほうが早いし的確だよね」っていうところからスタートして、それは今も変わっていないし。狙っても、奇をてらってもいないし、「兄弟喧嘩」は僕らが今、歌いたい曲なんです。
――通りで、生々しさを感じるはずです。
大雅:歌っていることは、超ショボいんですけどね(笑)。
――でも、スケールはすごく大きいっていう。
大雅:そう。世界観は、世界戦争規模にしたくて。MVにしても、兄弟っていうものすごく小さなコミュニティにおけるバトルを、あの壮大な規模で表現するっていうバカバカしさに真剣になっている僕らに、感銘を受けてくれたらうれしいなと(笑)。
――思わず、感動さえおぼえます(笑)。
翔馬:ならよかったです(笑)。順当にいけば一番強いのは長男なわけですけど、一筋縄ではいかないぞっていう遊び心も、MVには込めてあったりします。
大雅:三男だけ、応援している人が多いとかね(笑)。
翔馬:そうそう(笑)。いろいろ、楽しんでいただける映像なんじゃないかなと。
優己:男子の夢、たっぷり詰まっているしね。
――胸アツな必殺技とか。
優己:そう! 男子はいくつになっても、必殺技を繰り出したいんです(笑)。
大雅:少年ジャンプの実写版っていうかね(笑)。
――また、ロックはじめ、いろいろな音楽要素を呑み込むサウンドも刺激的です。
大雅:いろんな音楽が入り混じる湘南、横浜で活動してきたっていうこともあって。そう、僕らはかなりミクスチャーなんですよ。
優己:「兄弟喧嘩」っていうくっだらないテーマであっても(笑)、MVにしても然り、サウンドにしても絶対カッコ悪くならないようにっていうことは気をつけて。
翔馬:ラッパーだからヒップホップを歌うとか、DJだからレゲエをやるとか、それだけじゃつまんないので。くだらない兄弟喧嘩を大きなスケールに拡大して、自分たちのやりたいことを自由に詰め込んだ結果、めちゃめちゃ楽しめました。
――そこに、逗子三兄弟らしさがはっきりと見てとれますし……「兄弟喧嘩」は強烈なライブチューンなだけに、ワンマンツアー『ROAD TO 紅白 2017』でも、相当な威力を発揮しているのではないかなと。
大雅:まさに、今ツアー中なんですけど、だいぶお客さんに火が点きますよ。曲が始まる前には、その日お互いに気に食わないなと思ったことをステージ上でぶつけあっているんですけど……。
――いきなり兄弟喧嘩勃発!?
大雅:そうそう、急に始まるっていう。この間は、俺が翔馬に「おまえ、納豆ついたままのお椀を食洗器に入れるなよ、あとから入れる俺のことも考えろよ!」とか(笑)。
翔馬:お互い、日常のくだらない文句なんて山ほどあるからね(笑)。他人同士だったらなかなか言えないんだろうけど、それを敢えてステージ上で言っちゃうところに、やっぱりおもしろさがあるかなって。
優己:僕は、そうやって下々の2人がやり合っているのを見ているんですけど……。
大雅:うん、巨匠ぶってる(笑)。
翔馬:「俺には文句ないだろ」みたいなスタンスだけど、僕も大雅も「あなたに一番文句あります!」っていう空気はあるっていう(笑)。
大雅:優己的に、自分の家族と両親が一番、そこから友だちなんかがずらっと続いて、最後に俺と翔馬がくるっていう。プライオリティが一番低いことに、俺たちとしてはやっぱりモヤモヤが拭えないからね(笑)。
――なにしろ、ワンマンツアーが楽しいことになっているようで。追加公演もありますし、見逃せませんね。
大雅:これまで東京や地元のライブではバンドを入れていましたけど、今回のツアーでは中高から一緒のバンドメンバーで地方もまわっていて。アツい一体感やグルーヴがある中で、よりドラマティックに、エモーショナルに感じてもらえるんじゃないかなと思います。日々辛いこと、苦しいことがある人、非日常を楽しみたい人には、どんどん遊びに来てもらいたいですね。
――逗子三兄弟の音楽には、時に救われたり、時に背中を押してもらえたりしますから。
大雅:お、うれしい。そうですね、「楽しかった!」だけじゃなく、「明日からまた頑張ろう」って思える何かを持って帰ってもらえると思うので。
翔馬:CDとか配信で聴くよりも、絶対に生で聴いたほうが「いい歌だな、いい曲だな」って思ってもらえる自信もあるし。ぜひ、足を運んで体感してほしいですね。
優己:あと、大雅の歌う姿とはまた違う姿を見てもらえるツアーでもあるので。
大雅:えーっと……だいぶ楽しんでいます!
翔馬:それ、すごく伝わる(笑)。
優己:お楽しみに、です。僕自身、これまでの人生で唯一やめられなかった最高の遊びが、音楽で。今はいろんな娯楽があるけど、「音楽って感動もできるし、笑うこともできるし、涙することもできるんだよ」っていうことを、身をもって伝えていきます!
取材・文=杉江優花
2月5日(日) 鹿児島CAPARVO HALL 開場15:30/開演16:00
2月11日(土) 仙台LIVE HOUSE enn 2nd 開場17:00/開演17:30
2月18日(土) 岡山CRAZY MAMA KINGDOM 開場17:00/開演17:30
3月12(日) 金沢Million City(追加公演) 開場15:30/開演16:00
3月19日(日) 名古屋RAD HALL 開場15:30/開演16:00
3月20日(月・祝) 大阪Music Club JANUS 開場15:30/開演16:00
3月25日(土) 松山W Studio RED(追加公演) 開場15:30/開演16:00
3月26日(日) 福岡DRUM LOGOS 開場15:30/開演16:00
4月2日(日) 東京・赤坂BLITZ(追加公演) 開場16:00/開演17:00
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