最高の3マンが実現「50年生きてきたご褒美」フット岩尾プロデュースの新音楽イベント『IWA ROCK』にDragon Ash、ACIDMAN、ROTTENGRAFFTYが集結ーー出会いと当日への意気込みを語る
10月10日(金)、大阪・なんばHatchにて、フットボールアワー・岩尾望がプロデュースする音楽イベント『IWA ROCK presented by e-Broad』が開催される。岩尾の生誕50周年を記念して開催される本イベントには、長年親交のあるDragon Ash、ACIDMAN、ROTTENGRAFFTYの3組が出演。無類のロック好きで“夏フェス芸人”としても知られる岩尾。お笑い芸人である彼の長年の夢だったという音楽イベントはいったいどんな内容なのだろうか。出演者、そしてイベントプロデュースへの思いについて話を聞いた。
ーー今回、岩尾さんがプロデュースする音楽イベント『IWA ROCK』が開催されます。生誕50年という節目、そして自身初のプロデュースとなる音楽イベントということですが、開催のキッカケは何だったんでしょうか。
以前から、こういうイベントができたらいいなって、何となくは思ってたんです。でも僕、いろんなフェスが好きで観に行かせてもらうんですけど、あくまでもお客さん側なんですよね。小籔(千豊)さんが主催している『KOYABU SONIC』に出演させてもらったこともありますけど、その裏側を見ていると、大変だろうから別に自分なんかがやらなくても……っていう風に思ってて。例えば、10-FEETがやっている『京都大作戦』に行くと、バンドマン主催のフェスは出演しているバンドも10-FEETのために熱いライブをするんですよ。いろんな相乗効果で、他にはないものが生まれるから観る方も絶対に楽しいし。
ーーアーティスト主催のフェスは他とは違った雰囲気がありますよね。
そうなんですよ。でもやっぱり、自分でもやれたらいいなと思って、40歳の時にちょっと動いてみたんですけど、うまく話が進まなくて。自分が好きやという気持ちだけで出来るもんじゃないしな~っていう話を『フットマップ』(関西テレビ)という番組のスタッフと番組収録終わりにご飯を食べながら軽い感じで喋ってたんですよ。そしたら「いいじゃないですか! やりましょう!」みたいな話が出て、そこからスタッフさんが色々と動いてくれて。「岩尾さんがやろう思ったらやれますよ!」となったんですよ。
ーー「やろう思ったらやれる!」。勢いを大切にする、関西特有のノリですね(笑)。
それが2年前くらいの話。そこから色々と話を詰めていって、じゃあ50歳の節目となる年に開催しようかと。まぁ言うても、僕の誕生日は12月なんですけどね……。僕のためにみんなが!というよりも、僕が本当に好きで、ちょっと親交もある3組に思う存分すごいライブをやってもらって、それを僕が楽しませてもらう。それくらいの気持ちでやっていけたらと思ってるんです。Dragon Ash、ACIDMAN、ROTTENGRAFFTY、この3組はロック好きの皆さんもきっとワクワクする組み合わせだと思うんで。
ーー岩尾さんが音楽好き、フェス好きというのは、音楽&お笑い好きには広く知られていますよね。テレビ番組では「夏フェス芸人」として出演されていたり、関西だと『京都大作戦』や『RUSH BALL』に遊びに来ているお姿を何度かお見かけしたこともあります。ほかにもアイドルやMr.Childrenも好きですよね。
今もアイドルのライブにはむっちゃ行ってますよ。アイドルのライブも観つつ、Dragon Ashのライブも、ものすごい長いこと観させてもらってますね。
ーージャンルを隔てることなく、幅広く聴かれているんですね。
僕自身、音楽にめっちゃ詳しいわけじゃないんです。でも今こうやって音楽フェスに行くようになったり、ラウドやミクスチャーを好きになったキッカケは全て、Dragon Ashが始まりなんです。
ーー今回出演する3組の中でも、思い入れが強そうですね。
その前には、AIRとか、THE BLUE HEARTS、JUN SKY WALKER(S)なんかも聴いていましたよ。でも、いまのフェスや、ラウドロックと呼ばれるシーンを好きになったのはDragon Ashが始まりですね。
ーー今回のイベントに出演するDragon Ash。彼らの音楽との出会いは何がキッカケだったんでしょうか
「陽はまたのぼりくりかえす」が入ったアルバム『Buzz Songs』の頃かな。当時はネットが今みたいに当たり前にある時代じゃなかったんで、雑誌とかでちょこちょこバンドの名前を見たり、聞いたりしてたんです。『ROCKIN’ON JAPAN』とか、有名な音楽雑誌に出てくる人はかっこいいぞっていう流れが当時あったんですよ。それで実際に聴いてみたら、僕がそれまで知らないタイプの音楽で。このバンドはカッコイイなぁと思ったら、そこからどんどんハマっちゃって。
ーー当時からライブに行かれていたんですよね?
大阪・南港にあった旧Zepp Osakaに行ってました。も電話で取ったりして。
ーー当時は電話で取るか、店頭に並んでを買っていましたね。
そうそう。初めて行ったのは99年の『Viva La Revolution』のアルバムツアーかな? Dragon Ashが世の中的にもドカン!っと知られた頃。
ーーそこからKjさんと親交を持つようになったのはどういった経緯があったんでしょうか。
Dragon Ashを聴きだした頃、それまで服には詳しくなかったんですけど、Kjの影響もあって『GDC』とか裏原系のアパレルブランドにも興味を持ちはじめたんです。
ーー岩尾さんは服好き、オシャレなイメージがありました。当時はそうではなかったんですね。
音楽だけじゃなく、服にも興味を持ちはじめたキッカケがそういう音楽や雑誌からなんですよね。
ーー音楽がキッカケでファッションにも目覚め、さらにたくさんの音楽を聴きだしたと。
ほぼKjを追っかけてるだけでしたけどね(笑)。
ーー追っかけですか(笑)。実際に本人に会ったときはいかがでしたか?
……最初に会ったときは“小っさ!”って思いましたね。
ーー筋肉隆々のイメージが大きいですよね。
いや、筋肉あっても小ちゃいんですよ。でもね、Kjはカリスマなんです。僕はライブで前に行って暴れるタイプではないんで、ライブハウスの一番後ろのフロアとかで観てるんですよ。それでもすごく圧倒的なオーラを放っていて、大きく見える。アイドルもそうなんですけど、スターといわれる人たちは生で会うと小さいなって感じる人が多いんですよ。オーラがあるし、顔が小さくてスタイルのバランスも良いから、ステージの上では大きく見える。
ーーカリスマ性、ですね。
僕はロケとか道を歩いている時でも、『テレビで観るより、意外と大きいんですね』って言われるんですよ。それってテレビ画面でいかに僕の存在感が小さく見えてるかってことなんですよね(笑)。
ーーフットボールアワーは街ブラ系の番組によく出演されているから、自然と親しみが沸いちゃうんでしょうね。ちなみに、NOBUYAさんとは生年月日が同じとのことですが、ROTTENGRAFFTYとはどんなキッカケで出会ったんでしょうか?
20年くらい前に、ラジオ大阪で音楽番組を担当していた時期があったんですけど、そこにゲストでNOBUYAくんとN∀OKIくんが来てくれて。そこで生年月日が一緒やな~みたいなことを喋ったりはしたんですけど、そこからしばらくは会ってなくて。たくさんのゲストの中のひと組という感じで、僕自身も東京と大阪を行ったり来たりの忙しい時期だったんでライブに行ったことがなかったんですよ。でも、それから数年経って、フェスに行くようになったときに『京都大作戦』とか色んな場所でロットンの名前を見かけるようになって。会場にめっちゃ人も集まってるし、すごいお客さんの声が沸いてる。「ロットン、いつの間にかすごいことなってるやん!」って驚きましたね。そこから楽屋なんかで会って話をするようになって、単独ライブを観に行かせてもらって。徐々に仲良くなりましたね。
ーーDragon Ashとはまた違った出会いですね。ライブの印象はいかがですか?
Dragon Ashのライブでもダイブやモッシュはすごいんですけど、ロットンはお客さんの暴れ方が違いますよね。
ーー今回、岩尾さんがそのサークルやモッシュに混ざる、なんてことは?
主催者なんで、その予定はないです(笑)。一応仕事なんで、混ざっている場合じゃないですね。
ーーですよね(笑)。ACIDMANとの出会いはいかがですか? 大木さんとは20代の頃からお酒を一緒に飲む仲だそうですが。
一番、ご飯行ったり飲みに行ったりするのは大木くんですね。一時期は家が近かったこともあって、週2、3回は会ってましたね。Dragon AshやACIDMANの他にも、数組出演する対バンイベントを観に行かせてもらったときに、僕の友達がDragon AshやACIDMANと繋がっていたことから、ご飯を食べにいったり、ライブに行ったり~という仲になったんです。出会ってしばらくした頃にACIDMANの武道館初ライブがあったんですよ。初めての武道館ということもあってか、そのライブがとにかく良くて。もっと早よーに聴いといたら、早よ知っといたら良かった、って後悔したのを覚えてますね。なかでも印象に残っているのが、アンコールで“ディープな曲をやります”って「廻る、巡る、その核へ」を披露したんですよ。演奏が10分以上もあって、映像もすごい楽曲で。
ーー私もそのライブに行きましたが、すごく魅せられる時間でしたね。
ACIDMANにもすごく激しい曲はあるし、初の武道館なんやから、もっと派手にブチ上がるような曲で終わってもえぇやんって思ったんですけど、どんどんと“うわー……すげぇコレ!”って引き込まれて。
ーー今回出演する3組は誰もがエモーショナルなパフォーマンスで魅せてくれるアーティストばかりですが、それぞれに異なる感情が湧き出てきますよね。
そうなんですよ。ACIDMANのその武道館のライブは誰もが立ち尽くして、棒立ちで、“喰らった”感じのステージでしたね。僕は結構人見知りなところがあるから、すぐに仲良くなれるタイプじゃないんですよ。でも武道館のライブ終わり、大木くんへライブの感想メールをすぐに届けたくて、道路の路肩に停めてまで打ち込んだのを覚えてますね。それをきっかけにお互いさらに仲が良くなったし、尊敬もしてますし。
ーー今回出演する3組、それぞれに思い出深い出会いがあるんですね。夏フェス芸人として、他にもたくさんのアーティストのライブに足を運んでいるかと思います。今回のイベントをプロデュースするにあたり、この3組に出演をお願いしたのは即決でしたか?
そうですね。フェスに行くことはあっても、あれもこれも行くタイプでもないですし。この3組がめちゃくちゃ好きで、ライブにも行ってる。順位を付けるわけではないですけど、上位3組は自然と彼らの名前が出ました。ライブを見てきた時間や、その濃さも。あとはただライブを観てるだけじゃなくて、親交もありますしね。
ーーイベント出演に向けて、各アーティストへのアプローチはご自身でされたんでしょうか?
いや、そこは最初の段階からそれぞれの会社同士で話し合っていただいて……。
ーー親交があるということで、気軽に電話で「イベントに出てよ!」な感じかなと思いきや。
別に向こうからしたら、出なくてもいいイベントですしね。
ーーそんなことはないですよ!(笑)
だって、こっちが勝手にやりたい!って言ってるだけですね。僕が言ったワガママで無理してもらうのも悪いし、そこはちゃんと良い条件で出演してもらいたいですから。
ーーSNSでは各アーティストからコメントが届いていて、岩尾さんに色々お願いしてみようかな?なんてメッセージもありました。
僕からすれば、いつも通り最高のライブをやってください!というか、最高のライブをやってくれるし、間違いのないイベントなんですよ。だからそれだけで最高なんで、僕がなんかやったりとかは……。こんな曲も聴きたいなっていうのはちょっと言ってみようかなぁとは思ってますけど、それも厚かましくなったらダメなんでね。
ーーそこも控えめですね(笑)。岩尾さんはご自身のYoutube番組でベースを披露していたり、相方の後藤さんはギターもプレイされているので、お笑い芸人として、何かしらコラボとかがあるのかな?と期待しているんですが。
僕が何かで出るというのはあんまりね……ないと思います。お客さんも好きなバンドと岩尾が楽曲コラボをする、なんてことは求めてないと思うんですよ。ファン側からしたら「お前、出んでえぇねん!」ってなるでしょ?。
ーーそれぞれのアーティストのライブ観てきた、ファンである岩尾さんだからこその思いですね。
そこに異物を混ぜることを歓迎しないと思うんです。
ーー岩尾さんは異物ではないですよ(笑)。
お祭り的要素があるイベントも楽しいとは思うんですけど、僕が出すぎるのはなぁ…と思うんです。各バンドからもらったメッセージのなかで、ロットンのNOBUYAくんがライブでベース弾こうよってコメント出してくれて。実際に会ったときもその話があったんですけど、そこから別に具体的な話も出てないんで……。
ーーまだイベント開催まで2か月以上はあるんで!ここからじゃないですか?
一応、頭の隅には置いておこうかなとは思ってますけど……。でもベースもケースに入ったままなんでね。
ーー岩尾さんは『KOYABU SONIC』でバレンシアガのベーシストとしても活動されていましたよね。
一度だけ復活ライブをして、また解散したんでそれっきり。ベースは2年近く弾いてないですね。
ーー最近は『KOYABU SONIC』に『やついフェス』など、お笑い芸人主催の音楽フェスが増えています。今回の開催にあたり、何か参考にするイベントやフェスなどはありましたか?
この3組が揃った時点で、ほぼ僕の仕事は終わったと思ってます。
ーーもう終わりですか!?
それくらい“最高じゃない?”っていう3組だと思うんですよ。本人たちに話を聞いてみると、Dragon Ashとロットンの2マン、Dragon AshとACIDMANの2マンは過去にあるんですけど、この3組での3マンは今までにやったことがないらしくて。
ーーフェスで同日に出演していることはあっても、3組でのイベントは確かに聞いたことがないですね。
それだけでもプレミア感があると思います。
ーーそれぞれのアーティストのライブで、岩尾さんが聴きたい曲がどんなものなのかも気になります。
本人たちにもまだ言うてないんで。それが実現するかもわからないんで。
ーー当日の楽しみにとっておきましょう。相方の後藤さんには今回の開催についてお話はされましたか?
やることは知ってるみたいですけど、それについて話をしたことはないですね。番組の告知で話をした時には、「お前、大丈夫なんか? ロックフェスの主催者で一番向いてない人間やで?」とは言われましたけどね(笑)。確かに、せやな、とは思いましたね。
ーー最高の3組が揃っただけでも、主催者にふさわしいと思います。
ほかのイベントの主催者さんが何をしてるのかも分からないんでね。小籔さんは出演者のラインアップはもちろん、ほぼすべての運営に関わっていて、会場のトイレの数をどうするかという会議にも参加しているらしいんですよ。でも、今回の会場のなんばHatchには決まったトイレの数がありますしね。
ーーそうですね(笑)。ライブハウスなので、トイレ問題は大丈夫だと思います。
仮設トイレをもっとつけたほうがいいとか、そういう会議が必要なら参加しますけど。
ーーそこはプロのイベンターさんにお任せしましょう!
僕の仕事はこの3組が揃って、当日を無事に迎えられたらそれで良いと思ってます。でも、あの曲やってほしいなとかっていう気持ちはやっぱりあるんで。でも、それもどう伝えたらいいのかわからないんですよね。直接会って喋るのがいいのか……。
ーー確かに、どういう経緯でお願いするのが良いのか悩みますね。きっと本人たちは岩尾さんからの連絡を待ってるんじゃないですか?
直前までほったらかしにしてたら、「リハ入らなアカンから無理やわ」とかってなりそうですね。ちょっと早めに考えときます。
ーー今回のイベントポスター、岩尾さんと愛犬・つくしちゃんとの2ショットというのも新鮮でした。
吉本の宣材写真はあるんですけど、バンドのアーティスト写真が並ぶなかにその写真を使うと、一気に“吉本お笑い祭り”みたいになっちゃうんで。
ーー漫才とライブの2本仕立てのイベントだと間違えられるかもしれないですね(笑)。今回の開催は大阪での公演のみとなります。SNSでは東京での開催を望む声も多く上がっていました。まだ開催前ですが、2回目以降の開催については考えていらっしゃいますか?
何回もやるつもりは今のところなくて。この1回目が喜んでもらえないと、次はないと思うんで。僕の遠慮がちな性格だからっていうわけじゃないけど、ほんまにこの1回で良いんですっていえるくらい、すごい3組が揃ってくれてるんで。50年生きてきたご褒美みたいなものなんです。だから、次にどうこうというのは考えてないですね。
ーーお笑い芸人さんの名前が冠についたイベントで、こんなにも本人が遠慮がちなイベントは初めてですが……、最高の3組というのは間違いないです。お客さんにはぜひ、この3組での3マンライブをぜひ体感していただきたいですね。
今回のイベントが何事なのか分かってない人もいるかもしれないので説明すると、基本的にはめっちゃかっこいいロックバンド3組の3マンライブだと思ってください。で、時々MCというか、ステージの合間にちょっと僕が出るだけなんで。何よりもまず、この3組のライブを観てほしいです!
取材・文=黒田奈保子 撮影=浜村晴奈
イベント情報
MC・プロデューサー :岩尾望(フットボールアワー)