『AMIT 2017―Art, Media and I, Tokyo』レポート 休日の丸の内で“ワンデイ・アート体験”

2017.3.13
レポート
アート

会場の様子

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3月4日、丸ビル・マルキューブにてアートフェスティバル『AMIT 2017』が開催された。AMITは「Art, Media, and I, Tokyo」の略。東京の都市空間でアートとメディアと各人の「I」が出会い、それぞれがつながっていくことを目的とした芸術祭だ。4回目を迎える今年のテーマは「Naturewise」。「自然に沿った」を意味する造語であり、自然そのものが「wise(賢く、思慮深い)」だとする意味合いも含んでいる。

都心でありながら緑豊かな丸の内で、自然とテクノロジーや都市との関係、人間の中に存在する自然を探りだす。そんな1日限りのアート体験をここに紹介したい。

 

三角形で作れる秘密基地

鳴川肇《Paper Dome Oct 9》

遠目からみても目立つこの立体は、鳴川肇の《Paper Dome Oct 9》。段ボールのパーツを組み合わせて作られた簡易組み立て式ドームで、大人が入れるだけの充分な高さがある。「Do More With Less(最小で最大の効果)」を信条とした、アメリカの構造家バックミンスター・フラーが考案した「ジオデシック・ドーム」が原案で、セルフビルドと軽さが売りだ。三角形のみで構成されることにより、少ない材料で強度が保たれ、広い空間が実現できるエコロジーな建築方法である。プラネタリウム投影が作品の目的だが、ちょっとした秘密基地のような使い方も楽しめそうだ。

《Paper Dome Oct 9》の組み立てマニュアル

鳴川は、建築家、構造家、そして慶應義塾大学大学院准教授という多彩な肩書をもつ分野横断型の研究者。大学では実際に手を動かしながら幾何学を学ぶ研究室を開き、世界を俯瞰する新たな視点を学生らと探究している。研究室のサイトには、段ボールの型紙とマニュアルが掲載されており(http://narukawa-lab.jp/archives/pager-geodesic-dome-oct96/)、実際に組み立てている様子がわかる動画も公開されている。

 

苔に学ぶ、生命の神秘

三原聡一郎《空白のプロジェクト#3 – 大宇宙(うちゅう)の片隅》

大きな毛玉が床に転がっていると思いきや、近づいてよくみると……苔玉である!

《空白のプロジェクト#3 – 大宇宙(うちゅう)の片隅》

三原聡一郎の《空白のプロジェクト#3 – 大宇宙(うちゅう)の片隅》。実はこの苔玉、時折コロンと動くのだ。最初はビックリするが、また動くところをみたくなってついじっと見入ってしまう。会場では動く苔玉の姿を目撃し、「うわー本当に動いた!」と歓声をあげる人も。あたかも生きているかのような不思議な体験となった。

科学分野で注目されている、砂や土に棲息する微生物で発電する微生物燃料電池(MFC)。この研究にアーティストとして三原は注目、現在はバッテリー内蔵の苔玉だが、ゆくゆくは微生物発電によって苔玉を動かそうと考えている。なお三原は、微生物や苔のほかにも音、泡、放射線、虹などを用いて自然や現象を芸術として読み替える試みを行っている。

 

“まるで制作プロダクション”
熱気に包まれたアニメーションワークショップ

わかりやすく丁寧に解説するひらのりょう

展示のすぐそばではワークショップが開かれていた。トップバッターを務めたのは、不思議な作風のアニメーションで注目を集める映像作家のひらのりょう。参加者全員で描いたイラストをつなぎあわせて、即席でアニメーション作品をつくるという内容で、土曜の朝ながら8名の参加があった。

はじめに、ひらのが提案したのは各自でオリジナルキャラクターをつくること。「どうぶつ」などの基本設定を決めたら、連想ゲームのように頭に浮かんだイメージをどんどん紙に書いていく。ある程度マインドマップができたら、基本設定とその末端にあるイメージを組み合わせ、それをキャラクターに落とし込む。「名前と性格も考えると、キャラクターに愛着が湧きますよ」とのアドバイスも。

ひらのが書いたキャラクター考案マインドマップ


キャラクターが出来上がったら一旦それを目に焼き付け、今度は目をつむった状態で紙の上に書いてみる。難しい要求に参加者は眉間にしわを寄せつつも、己が生み出したキャラを紙に再現していく。書き終わりパッと目を開けた参加者は、その不格好な出来に思わず苦笑い。今回のワークショップで使用するキャラクターは、この目をつむって描かれたもののほう。ひらの曰く、こうして書いたキャラクターのほうがより可愛くなっているんだとか。

次に、自分の書いたイラストのトレースを右隣の人に渡し、左隣からはその人の書いたイラストを受け取る。自分のキャラクターが左隣の人のキャラクターに変形していくまでを、24枚の絵で描いていくのだ。その24枚の絵を1秒間で順番に投影し、アニメーションを作っていく。ちなみに、1秒あたり24コマという数字はディズニーアニメが用いる「フルアニメーション」という形式なんだそう。日本のアニメは1秒あたり8~12コマらしい。

 


変形過程の全体がみえてきたら、キャラの動きを1枚ずつ書き起こしていく。与えられた時間は2時間。マルキューブの一角はまるで制作プロダクションのような熱気を帯び始めていた。

限られた時間内で、カラーも塗ってゆく

「迷ったら終わり。えいっとやっちゃったほうがいい。何とかなる!」という言葉をかけ、凝り固まった雰囲気をほぐすひらの。目を見張るような集中力で、着実に作品をカタチにしていく参加者たち。今度は着色をほどこし、1枚1枚に命を吹き込んでいく。参加者同士が助け合う姿も見られ、そこには確かな一体感が生まれていた。

助け合えば作業も早い! 初対面の参加者の間にも、いつのまにかコミュニケーションがうまれていた

全員の絵が完成したところで、それぞれをスキャナで取り込む。次から次へと絵が取り込まれていく様子に、作品の完成間近を実感する。全員の絵を取り込んだところで、ひらのがその場でサクッと編集。

絵をスキャンして取り込んでいく

編集するひらのりょう

そして、あっという間にアニメーションが完成。さっそくモニターに映し出され、全員で鑑賞する。キャラがうまい具合に変形していき、ひとつの作品としてちゃんと完成されていたのには驚きを隠せない。最後に参加者が自己紹介しつつ、考えたキャラの名前と設定を説明。イヌとインベーダーが合体したイヌベーダー、ロケットにはまってしまったウマ、など奇想天外なアイデアは聞いているだけでも面白かった。参加者のなかには会社員もおり、これだけクリエイティブな休日の過ごし方もなかなかないように思う。

会場ではこのほかにも、三原による苔玉制作や、鳴川によるペーパークラフトワークショップも開催。さらに、参加アーティスト3人とモデレーターの四方幸子氏によるトークセッションも行われた。ワンデイながらもひとつひとつの奥行きが深く、充実した内容だったAMIT。来年の開催にも期待が膨らむ内容であった。

会場にて、偶然にもチラシミュージアムのキャラクターに遭遇

 
イベント情報
AMIT 2017―Art, Media and I, Tokyo

開催日:2017年3月4日(土)※終了
開館時間:10:00~21:00
EXHIBITION 10:00~21:00
WORKSHOP 10:00~13:00/13:30~14:30/17:00~18:00
TALK SESSION 15:00~16:30
入場料:無料
主催:AMIT実行委員会
http://amit.jp/

 

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