第4回悲劇喜劇賞受賞の「キネマと恋人」、再演決定にKERA感激

第4回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞贈賞式より。(c)公益財団法人早川清文学振興財団

第4回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞贈賞式より。(c)公益財団法人早川清文学振興財団


去る3月24日に東京・明治記念館にて、第4回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞の贈賞式が行われ、受賞作の世田谷パブリックシアター+KERA・MAP♯007「キネマと恋人」より、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)と出演者が出席した。

選考委員と批評・評論家の劇評意欲を奮い立たせる優秀な演劇作品を顕彰することを目的とした本賞。4回目の開催となる今回は、今村忠純、鹿島茂、小藤田千栄子、高橋豊、辻原登の5名が選考委員を務め、受賞作には、正賞として演劇雑誌・悲劇喜劇(早川書房)にちなんだ賞牌と、副賞の100万円が授与された。

受賞に際しKERAは「ハヤカワ『悲劇喜劇』賞は、劇評意欲を奮い立たせる1作品に贈られる作品賞ということですが、劇評意欲を奮い立たせる1本に選ばれたこと、そして作品に関わる全員に賞が与えられたことが本当にうれしいです」と喜びを語る。また本作の再演が決定したことを受け「この公演は途中インフルエンザにより5公演が中止になってしまいました。それによって観ることができなかった方も多かったと思います。もしかしたら劇場まで来て中止を知った人もいたかもしれない。みんな忸怩たる思いでした。観たいと思ってくださった方々に、また新しい形で『キネマと恋人』を観ていただけると思うと大変有難いです」と再演への意気込みを語った。

2016年11月から12月にかけて上演された本作は、ウディ・アレン監督の映画「カイロの紫のバラ」の設定を日本の架空の港町に置き換え、物語の展開に変化を加えて翻案したKERA流ファンタジックコメディ。キャストには、妻夫木聡、緒川たまきをはじめ、ともさかりえ、三上市朗、佐藤誓、橋本淳、尾方宣久、廣川三憲、村岡希美らが名を連ね、振付を小野寺修二が担当した。なお4月7日発売の「悲劇喜劇」5月号には、選考過程の採録および選考委員それぞれが推薦する作品の劇評と本作の戯曲が掲載されるほか、KERAのロングインタビューや妻夫木、緒川、ともさかのインタビューなども掲載される。

なお、「悲劇喜劇」賞の受賞により、2017年はすでに第51回紀伊國屋演劇賞 個人賞、第68回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞、第24回読売演劇大賞最優秀演出家賞と4賞連続受賞となったKERAは各賞についての所感を語った。

cube presents「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~」の作・演出に対して、また世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#007「キネマと恋人」の台本・演出に対して贈られた紀伊國屋演劇賞 個人賞については「縁がないかなと思っていた」と語るKERA。「今回の受賞はちょっとびっくりしました。残念ながら授賞式に欠席し直接選評を伺えなかったのですが、『ヒトラー、最後の20000年』が対象作になったのは、意外でありうれしかったです」と述べる。

また世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#007「キネマと恋人」の台本に対して贈られた読売文学賞 戯曲・シナリオ賞については「受賞はとても意外でした。舞台『陥没』の稽古中に受賞を伝えられたのですが、上演台本という特殊な形態のものにも”文学賞”が与えられる、一瞬何の事やら分からなかった。最終的には作品全体への評価を頂く事が一番うれしいのですが、それとまた逆の、劇作家である純粋な個人に対して賞を頂いたことは光栄です」と感激を語る。

読売演劇大賞 最優秀演出家賞は、シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ 2016「8月の家族たち August:Osage County」の演出に対して贈られたもの。「この作品を上演した経緯に想いを巡らせます」とKERAは振り返りながら、「この戯曲を演出するに至るまで、ひたすら色々な戯曲や、戯曲が原作の映画を見て、脚本を取り寄せ読み、また探す、ということが繰り返され、思いのほか大変なこと始めてしまったと思いました。この作品との出会いは、たまたま映画館でやっているものを観たという運命的なものでした。結果が残せたのは、作品選びが大変だった分報われてよかったなという感じです」と感慨を述べた。

最後にKERAは「今まで一作一作、ピンボールゲームのように、一つ作品を創ったら今度は反動で真逆の方向の作品を創る、といったようなスタイルでしたが、これからは、一つの作品ですぐ跳ね返すのではなく、1年2年かけて少し掘り下げていくような、もう少しブレスを長く取るようなやり方になるんじゃないかなと思っています」と今後の展望を語った。

4賞連続受賞について、KERAのコメント

自分の中では、様々な賞を頂戴したことによって自分自身は変化をしたくないという気持ちが大きいですが、世間的な認識は大きく変化してほしいです笑。僕の場合、出自がバンドだったこともあり、ミュージシャンが何かへんてこりんな演劇を創ってるらしい、というような、観ず嫌い、食わず嫌いのような人も多くいましたので、そういった人たちが、偏見なく観てくれるきっかけになるといいなと思います。
あと創作において、もちろん傍若無人が良いとは思いませんが、不必要な謙虚さを持ってしまうとやっぱり面白いものなんかできなくなってしまう。無理かもしれなくても、やりたいと思うことは、言っていかないと面白くならないと思います。箔とかそういったことは大切だとは思いませんし、創作の本質にはあまり関係のないことなのかなとは思いますけれども、やりたい事を言いやすくなる環境ができることで、作品もより良くなる強度を増す、そういった相乗効果が生まれるのならば、大切な事かもしれないと思います。

2017年、『陥没』が終わり、これから『ワーニャ伯父さん』とナイロン100℃の公演が控えています。『ワーニャ伯父さん』は今まで上演したチェーホフ作品の中でもコメディのセンスを入れ辛い、苦い印象の作品。ナイロンも別役実的な不条理路線にしたいと思っていますので、今年の作品は、シリアス目のものが続くと思います。
今まで一作一作、ピンボールゲームのように、一つ作品を創ったら今度は反動で真逆の方向の作品を創る、といったようなスタイルでしたが、これからは、一つの作品ですぐ跳ね返すのではなく、1年2年かけて少し掘り下げていくような、もう少しブレスを長く取るようなやり方になるんじゃないかなと思っています。

ステージナタリー
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