山崎樹範「僕は不倫しません!」 舞台~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』ゲネプロレポート
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©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
2017年4月13日から、東京・俳優座劇場にて~崩壊シリーズ第2弾~『リメンバー・ミー』が開幕した(その後、大阪、名古屋、福岡も巡演)。前作に続き、主演はなにかと話題の注目俳優・山崎樹範。作・演出は、人気放送作家のオークラが手がける。初日幕開けを数時間後に控える中、開催された会見とゲネプロ(公開通し稽古)をレポートする。上演時間は約90分間で、休憩はなし。会見とゲネプロには、オフィシャルサポーターの一般観覧者も招待された。
史上最低最悪の公演「九条丸家の殺人事件」から1年…劇団「荻窪遊々演劇社」の舞台監督の杏里は、恋人である座長の栗須は結婚を決意する。しかし、杏里の父親が猛反対。「劇団員風情に、娘をやれるか!」と怒鳴られ、なんとか説得をするが〝結婚の条件〟を突きつけられる。
「俺を泣かせてみろ!」
1年ぶりに再会したかつてのメンバー。父親を泣かすために始まった芝居は、新たなる崩壊の始まり…!?
舞台上のひやひやはすべて計算
(前列左から)松下洸平、彩吹真央、山崎樹範、梶原善、オークラ、(後列左から)伊藤裕一、上地春奈、味方良介、大水洋介 ©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
山崎樹範(カムカムミニキーナ)は、このカンパニーでも、また、劇中の『荻窪遊々演劇社』でも座長を務める。「近年まれにみる中身のない芝居なので、とてもライトな気持ちで観ていただけます。皆さんの悩みの根本的な解決はできませんが、日々の悩みを忘れていただけるような芝居をしたいと思っています。90分間の“痛み止め”みたいに思っていただければ幸いです」と作品の魅力を語る。
松下洸平は、『木の上の軍隊』などシリアスな作品への出演が続いていたことから「この作品に呼んでいただけてうれしいです。昨日、やましげさん(山崎)から『コメディ2枚目』という称号をいただきました。前作を上回る仕掛けに僕らは翻弄されるわけですが、それをただただ笑っていただき、存分に楽しんでいただきたい」と笑顔をみせた。
味方良介は、キャストの中で唯一、崩壊シリーズ初参戦となる。「高いところからすみません」と頭をさげ会場を和ませると、「稽古場初日から『すげーところに来てしまったな』と思いましたが、素晴らしいキャスト、スタッフ、制作陣の力でここまでこれました。楽しんでやっていきたいと思います」と挨拶した。
上地春奈は、自身の演じる舞台監督・杏里を「座長の栗栖さん(山崎樹範)と恋仲にあるスケベな関係」と紹介。梶原から「付き合ってる人を“スケベな関係”って紹介するの?」とツッコミが入り一同が爆笑する中、「ひやひやする場面もすべて計算で動いています。安心して笑っていただければと思います」とアピールした。
大水洋介(ラバーガール)は、「お酒好きなメンバーが揃っています。顔合わせで『飲みすぎないように』と挨拶したにもかかわらず、飲みすぎで稽古初日を休むという失態をおかしました。本番は気を付けて、楽しいお酒を飲みつつ楽しい舞台ができれば」とコメント。共演者たちは「お酒の話ばっかり!」と笑う。
伊藤裕一(劇団お座敷コブラ)は、音響・照明スタッフの鳥場の役を演じる。「鳥場くんはちょっとおっちょこちょいで、前回は(劇中の)皆さんにたくさんご迷惑をおかけしてしまいました。今回は鳥場くんにも少し集中力がついて、僕自身もこの舞台に立てるよう、この1年がんばってきたので、鳥場くんと僕の成長した姿を、皆さんにお見せできれば」と見どころを紹介した。
彩吹真央は、前回、座長・栗栖(山崎)と杏里の恋愛関係に割り込む浮気相手・里田を演じた。「前回は原作がある作品を“原作があったのかな?”というくらいオークラさんワールドに仕上げてくださいました。今回は100%、オークラさんの脚本ということで楽しみにしていました」と語る。
梶原善は、「自分がまず楽しみ、皆さんにもっと楽しんでほしい」と落ち着いたトーンで挨拶するも、「ぶっちゃけ、ぶっつけ本番的な要素が多々あります。こんなところでペラペラしゃべっている場合じゃない。これからやらなくてはいけないところが多々あるんです! ドキドキドキドキして……なんてスケジュールなんだ!」とまくし立て笑いを誘った。
作・演出のオークラは「本当に中身のない芝居です。やましげさんが結婚したので、お祝い的なのを勝手に込めてみました。マスコミの皆さんには、昨今の不倫問題に話題を絡めていただいて……」とPRするが「僕は不倫しません!」と山崎が遮り、会場はまた笑いに包まれた。
スチール撮影の間も「小顔ポーズ!」と声をかけあったり「みんな味方くんを撮りたいんだから」「善さん邪魔!」とふざけあうなどカンパニーの仲の良さをみせた。
※以下、一部ネタバレを含みます。ご注意ください。
目が離せない!仕掛けだらけの90分
この作品をみて驚いたことが2つある。1つは、本当に中身がないということ。もう1つは、中身がなくてもこんなに笑えるのか!ということだ。舞台上のできごとは、会話でも小さな動きでも、すべてが次の笑いの仕掛け(罠?)になっている。役者や演出家が「中身はありません」と言ったのは謙遜ではなかった。
場内アナウンスが、この作品の幕開けだ。ステージには、古い洋館を思わせるセット。上手に設置されたブースで、鳥場(伊藤裕一)はサウンドチェックをするが、体調が悪いらしく冒頭から不安がよぎる。しかし、会見の「鳥場くんの成長した姿を」という伊藤の言葉を信じて温かい目で見守ってほしい!
伊藤裕一©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
サプライズを計画する出水(梶原善)は、落ち着いた声つきで貫録のダメっぷりを披露する。
梶原善 ©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
残念なのは(といっても“演技が残念”という意味ではない)、座長・栗栖(山崎)だ。杏里と婚約中にも関わらず、またも浮気疑惑が上がるのだ。会見で「不倫しない」と宣言したばかりなのに……と、がっかりした次の瞬間、山崎樹範(本人)と座長・栗栖(役)を混同していたことに気づかされる。そのくらい栗栖という役に山崎が馴染んでいる。
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
頼もしかったのが女優陣。里田の大根女優ぶり(あくまで役の上で、である)とヒステリーにみせない品の良い暴れっぷりは、さすが彩吹真央だ。杏里(上地春奈)の迷いのないキレ具合は、今作の崩壊の核になっている。
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
城山(大水洋介)も、ぼんやりしてみえるが抜け目ない仕事ぶりが印象的。いちいちおかしい。
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
金貸しの八神(松下洸平)は、スマートな立ち居振る舞いのままドタバタに笑いに巻き込まれていく。この脚本は、2枚目なほど間抜けに見えるように出来ているようだ。
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
劇中劇で大黒寺を演じる新入団員・大宮(味方良介)は、“いい奴なんですけれど、ちょっとバカピュア”と言われるタイプ。シリアスなシーンでもツボに入ると笑いが止まらなくなってしまう。「笑うな!素に戻るな!がんばれ!」と叱咤する座長には気の毒だが、観ている側もつられて笑える。
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
整列! 私語禁止!
設定もセットも崩壊していく中、座長は「一旦、裏で整理してこい!」と座員に言い放つ。観る側の気持ちを代弁するこの台詞に爆笑しながら頷いた。回り舞台や影を使った演出など、劇中劇の演出に良かれと思って準備したであろう仕掛けも、ことごとく「崩壊」の仕掛けになってしまう。崩壊のピッチがあがる後半は、カタルシスさえ得られた。演劇作品において"考えさせられる作品”とは、多くの場合ほめ言葉として使われる。本作には中身がない。考えようもなく、考える暇もないように作られた、潔い作品だ。舞台上のヒヤヒヤはすべてギャグ。遠慮なく笑い飛ばして楽しんでほしい。
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
©舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」
舞台「崩壊シリーズ『リメンバーミー』」は、六本木・俳優座劇場で4月30日まで、その後は、大阪、名古屋、福岡で巡演の予定。
取材・文・撮影:塚田史香
■作・演出:オークラ
■出演:(敬称略)山崎樹範、松下洸平、味方良介、上地春奈、大水洋介(ラバーガール)、伊藤裕一、彩吹真央、梶原善
■劇場:俳優座劇場
■日程:2017年4月13日(木)~4月30日(日)
■終演後 アフタートーク開催
4月14日(金)19:30回:山崎樹範・上地春奈・大水洋介
4月17日(月)19:30回:山崎樹範・松下洸平・味方良介
4月18日(火)19:30回:山崎樹範・大水洋介・オークラ(作・演出)
4月19日(水)19:30回:山崎樹範・上地春奈・彩吹真央
4月21日(金)19:30回:山崎樹範・味方良介・梶原 善
4月24日(月)19:30回:山崎樹範・松下洸平・彩吹真央
MC=全日程 伊藤裕一
■劇場:松下IMPホール
■日程:2017年5月3日(水・祝)~4日(木・祝)
■終演後 アフタートーク開催
5月3日(水・祝)16:30回:山崎樹範・味方良介・彩吹真央 MC=伊藤裕一
■劇場:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
■日程:2017年5月11日(木)18:30開演
■終演後 アフタートーク開催
5月11日(木)18:30回:山崎樹範・上地春奈・大水洋介 MC=伊藤裕一
■劇場:都久志会館
■日程:2017年5月13日(土)~14日(日)
■終演後 アフタートーク開催
5月14日(日)13:30回:山崎樹範・松下洸平・梶原 善 MC=伊藤裕一