ミュージカル『ビューティフル』でキャロル・キング役に挑む平原綾香「人生は自分次第」

2017.5.12
インタビュー
舞台

平原綾香 (撮影:山越隼)


『ラブ・ネバー・ダイ』のクリスティーヌ役から約3年。平原綾香がミュージカルに再び戻ってくる。日本初演となるミュージカル『ビューティフル』でキャロル・キング役を演じる平原に、今の心境を聞いた。

—— 再び、ミュージカルの世界へようこそ!

ありがとうございます。ミュージカルで活躍されている方々から、叱咤激励をいただいています(笑)。『ラブ・ネバー・ダイ』はほとんど歌で綴られていましたが、今回は台詞も多く演技も入ってきます。不安な部分も多いですが、製作発表で見ていただいた通り、中川晃教さんを筆頭に優しいキャストの方々ばかり。和気藹々としたカンパニーになりそうでとても楽しみです。

—— 今は歌稽古中?

まだですね。PV(プロモーション映像)のために「Beautiful」と「I Feel The Earth Move」、あと会見で披露した「You’ve Got A Friend」を練習したくらいで、まだ本格的な歌稽古には入っていないです。そういえば、知っている曲ばかりなので、新たにスコアを読んで曲を覚えるという苦労がないですね。そこは唯一安心できるところかな。

—— キャロル・キングはご存知でしたか。

はい。子供の頃、「You’ve Got A Friend」は季節を表した曲だと、母から聞いて、「どこにいてもあなたの友達だよ」と歌っていると知り、幼心にかっこいいなぁと思っていました。

—— このミュージカルは、キャロル・キングの16歳から30歳くらいまでの話です。

私はキャロル・キングのもっと大人になった姿しか知らないので、この年代のキャロルを演じるのは難しくもありますね。若い世代の方はこの物語のキャロルを新鮮に感じるでしょうし、彼女と同世代の方は、「キャロルはこうだったのよ」とご覧いただける。いろんな角度から楽しめると思います。16歳から30歳…、ミュージカルはいろいろと演じられて嬉しいですね。

—— 今の時点で、この作品中のキャロルはどんな人物だと思われますか。

全ての人に愛を持てる女性。愛するジェリー・ゴフィンに裏切られる場面でも、キャロルは怒りながらも愛があって、決して彼の愛人マリリンを責めることはないんですよ。

—— そう、キャロルは相手のせいではなく、自分が変わろうとするんですよね。

そこがキャロルの人柄を表していると感じます。誰も責めないし、傷つけない。ジェリーがどんなことをしても、彼女には愛があるから、悲しくて、優しくて、切なくて。

—— 彼女のひたむきな姿は、同じ女性として、応援したくなります。

なりますね! 台詞に、「人生って面白いもので、自分が望む方向にも望んでいない方向にも行く。たとえ望んでいない方向に行ったとしても素晴らしいもの」とあって、それはキャロル自身を表していると思います。人生を良くするかどうかは自分自身。キャロルはジェリーとの別れを受け入れて、でも、「どんなに離れていてもあなたは友達だよ」と愛を捨てなかったから「You’ve Got A Friend」が生まれた。

—— 別れた後も、ジェリーとは一緒に創作活動を続けるわけで。

私だったら無理! キャロルって優しいんですよね。ウルウルしてきちゃった。

—— 優しさもあるだろうし、彼の才能を認めてリスペクトしていたんでしょうね。彼女が人間のエゴを超えたところが、ビッグナンバー「Beautiful」に繋がるのかと。弾き語りの経験は?

PVやテレビドラマで何回かあります。でも、まだなれていなくて。今、ピアノを練習していますが、弾きながら歌うのは難しいですね。とは言えキャロルの象徴的な姿だから、頑張らないと。

—— アーティストとしてのキャロル・キングの魅力は?

一番は歌声だと思います。もちろん曲も素敵ですが、彼女の歌には一切エゴを感じない。上手く歌おうとか、ここを聴かせようと感じさせないところが、人気のひとつかと。自伝を読んだら、「私が歌うと赤ちゃんが泣くのよ」と言っていて、自分のことをよく言わないところが、日本人の奥ゆかしさに通じている気がしました。欧米は自分のいいところをアピールする文化なのに。

—— 役になって歌うのは、普段のアーティストの時とは違いますか?

違いますね。『ラブ・ネバー・ダイ』ではオペラ歌手の役でしたから、オペラを歌う難しさがありました。今回のキャロル・キングは自然体で作っていない歌声を自分がどう作るかが難しい。彼女の声のかすれ方がかっこいいところですが、自分の声を枯らすわけにもいかず。枯れたように聞かせる難しさがあります。やはり、歌声もある程度似ていた方がリアリティがあると思うのですが、日本語で歌う難しさもありますね。

—— 実在の人物を演じるには、歌声も似せると。

歌手としては、そこから攻めていきたいです。歌声が似てきたら、自ずと演技もついてくる気がします。DVDや映像を見ると、みんなキャロルのことが大好きで、彼女が歌い始めると周りの人みんながハッピーになるんですよね。ブロードウェイのカンパニーにキャロルが即興で歌を教える映像があって、そこで「Beautiful」を弾き語るんです。キャストたちが一緒に歌い始めると彼女は血管が切れるんじゃないかという勢いで歌い始めて、キャロル役の女優さんが「大丈夫?そんなに無理しないで」と。これがキャロルだ!と思いました。自分の歌声、人生全てをかけて歌うからこそ伝わるし、彼女の前にいると自分の心がパーっと開く。キャロルの心がオープンだから、私もオープンになれる。そんな彼女の人柄まで演じられたら成功だと思います。

—— キャロル・キングとご自身を重ね合わせるところはありますか?

台詞で「私、真面目だから」とあって。そこが一番、共感します。私も変に真面目なところがあるから。なぜこんなに真面目にやらなきゃいけないんだろう、もっともっと自由にやればいいじゃないと自分を変えたい気持ちもあります。でも今回キャロルの役と出会って、「これが私、そのままでいい」と思えた。あなたらしく生きなさいと、キャロルから教えてもらっている気がします。

—— 3年前、『ラブ・ネバー・ダイ』に出演なさって、変わったことは?

クリスティーヌを演じ、オペラの発声を学んだことで歌声が変わり、太くなりました。単純に筋肉がついて、音域がすごく広がったんですよ。表現も変わりました。自分の歌にちょっとニュアンスをつけるにも、今までやらなかったことにトライしてみたり。人前で演技をすることは、こんなにも自分を変えるんですね。きっと『ビューティフル』でもまた違う力を授けていただけると思います。

—— イープラス会員に向けて、メッセージをどうぞ。

イープラス会員の皆さんにご覧いただけるのが、とても嬉しいです。心を込めてキャロル・キングを演じますので、本番を楽しみにしていてください。初めてミュージカルをご覧になる方にも、この作品はとても見やすくて楽しい作品だと思います。またミュージカルファンの方にもご満足いただけるよう、顔晴ります!

取材・文=三浦真紀  写真撮影=山越 隼

公演情報
ミュージカル『ビューティフル』
 
■会場:帝国劇場
■日程:2017/7/26(水)~2017/8/26(土)

■出演:
水樹奈々/平原綾香(Wキャスト)

中川晃教 伊礼彼方 ソニン 武田真治 剣幸
伊藤広祥 神田恭兵 長谷川開 東山光明 山田元 山野靖博 清水泰雄(SWING)
エリアンナ 菅谷真理恵 高城奈月子 MARIA-E ラリソン彩華 綿引さやか 原田真絢(SWING)
■脚本:ダグラス・マクグラス
■音楽・詞:
ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング
バリー・マン&シンシア・ワイル
■演出:マーク・ブルーニ
■翻訳:目黒条
■訳詞:湯川れい子

 
■公式サイト:http://www.tohostage.com/beautiful/
一般発売開始:2017年5月13日(土)

 
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