LAMP IN TERREN、ONIGAWARAを迎え、サイダーガールが新たな旅立ちの日に刻んだもの
サイダーガール 撮影=結城さやか
CIDER LABO Vol.4 2017.4.22 SHIBUYA CLUB QUATTRO
サイダーガールの自主企画『CIDER LABO Vol.4』。ゲストはONIGAWARAとLAMP IN TERREN。発表された時は正直異色の組み合わせだと思ったが、本編のMCでフジムラ(Ba.)が「LAMP IN TERRENは、深夜の番組で「緑閃光」を聴いて良い曲だ!と思って音源を買いに行って」「ONIGAWARAは二人が元々やっていた竹内電気っていうバンドがすごく好きで」と明かしていたように、今回のゲストは2組とも、メンバーにとっての憧れの存在だったという。既にニュースリリースもあったように、このライブ中、今年夏にメジャーデビューをすることを発表した彼ら。このタイミングでこういうブッキングになったのは、もしかすると“憧れの人と同じ土俵に”という彼らなりの決意と覚悟の表れだったのかもしれない。
LAMP IN TERREN 撮影=結城さやか
トップバッターはLAMP IN TERREN。暗転の中メンバーがスタンバイし、音を重ね始めたところで「遊ぼうぜ渋谷ー!」と松本 大(Vocal & Guitar)が呼びかけた。1曲目は「林檎の理」。そして「heartbeat」、「send me」と続くオープニング。5月からは自身のワンマンツアーが始まるテレンだが、後のMCで松本も言っていたようにこの日は“プレ・ワンマンツアー”的なセットリスト。鼓動のような川口 大喜(Drums)のビートが曲間を繋げるなか、前半に届けられたのはこのバンドを象徴するようなライブ定番曲ばかり。聴き慣れた曲が多いはずだが、それでも4人のサウンドは瑞々しく、バンドが新たな季節に突入したことが早々に読み取れた。2組とは特に親交が深いわけではないが今日は素敵な1日になるという確信があって参加した、という趣旨のMCを挟み、それ以降は4月12日にリリースしたアルバム『fantasia』の収録曲を中心に披露。松本の歌の気迫とそれをもう一段階押し上げようとするバンドサウンドとの相互作用が痺れるような「at (liberty)」。対して、両手でそっと包み込むように奏でられたバラード「pellucid」。そして新旧王道というべき「緑閃光」「涙星群の夜」という並び。『fantasia』収録曲たちは、痛みを伴いながらでも前に進んでいかんとするバンドの意志がそのまま表れたような曲が多く、セットリストが進むにつれて開けていくバンドのサウンドを前に、身体を揺らすオーディエンスの数も増えていく。そして「最後に俺らがいちばん届けたい曲をやります。素晴らしい日常にするために!」(松本)とあっという間にラストの「地球儀」へ。場内の開放感と解放感が掛け合わさっていく光景はとても眩しかった。
LAMP IN TERREN 撮影=結城さやか
ONIGAWARA 撮影=結城さやか
直近にリリースした新作の温度感がライブにも反映されていた点において、テレンと共通していたONIGAWARA。初めて彼らのGIGを観るという人も多かったのだろう、斉藤伸也(Vocal,GAYA,Programming)の軽快なダンスや竹内サティフォ(Vocal,Guitar,Programming)の気障な台詞、背中合わせでポーズをキメる二人の姿にフロアがどよめく。最初こそは様子見気味のオーディエンスも多かったが、3曲目「恋のメリーゴーランド」の頃には「フゥー!」とテンションの高い歓声が上がっていて、<僕はダレカレ構わずトリコにさせるよ プレイボーイ>というあの歌詞は本当にその通りだと実感させられる。「お前らどよめいてる場合じゃないぞ! しっかりついてこい!」「楽しむつもりで来てるんだろ!? バンドじゃなくても関係ないだろ!?」と熱く煽るのが斉藤、それに対して「分かるよ分かるよ~」とゆるく頷くのが竹内だ。きっと今までのONIGAWARAだったらこうしてポップでキュートな面を見せるのみで終わっていたが、変化があったのは中盤。最新アルバム『ヒットチャートをねらえ!』から「僕の恋人」「I don't wanna die」とミディアムナンバーを連続で披露したのだ。テンポを落とし、一旦チルアウトさせることを目的としたようなこのパート。その後はみんなで振り付けを楽しんだ「ヒットチャートをねらえ!」、そして「タンクトップは似合わない」とクライマックスへ向けて盛り上がるばかりだったが、その幸福感が一層映えたのもこの2曲が効果的に挟み込まれていたからだろう。ステージ中央でポーズをキメる二人に向かってシャッター音が鳴り響きまくるラストシーンまで、強烈なインパクトと、それだけでは語れない愛すべき魅力を振りまいていった二人だった。
ONIGAWARA 撮影=結城さやか
サイダーガール 撮影=結城さやか
そしてもちろんトリはサイダーガール。1曲目に選ばれたのは「ドラマチック」。ライブの回数を重ねるほどに団結力を高めていくメンバー&オーディエンスの関係性が、この曲には分かりやすく表れている。バンドの成長を浮き彫りにさせてくれるストレートなロックソングは、この3人の歩みにずっと寄り添い続けてきた。そこから勢いを加速させるように「モラトリアムさん」へ。そのあとは「魔法」「夕凪」「スワロウ」と続いていくわけだが、緩と急を行き来するような曲の並びだからこそこのバンドの芯にあたるYurin(Vo/Gt.)の歌の強さがより強調されることとなる。そんななか特に驚かされたのは、7曲目「アイヴィー」演奏前にフジムラが楽器を置き「まだまだいけますか! そんなもんじゃないでしょ!」「今日ぐらいはここ、渋谷クラブクアトロを一番アツいライブハウスにしようぜ!」とオーディエンスを煽りまくっていたこと。音源などから読み取れる爽やかな印象とは異なり、泥臭い性格のバンドだということはライブを観ていて分かっていたつもりだったが、だからこそ、これまでは自分たちの感情をどのように出せばいいのか?という方法論が定まっていないような印象があったのが正直なところ。しかしこの日は、想像以上に熱血な一面を見せたフジムラだけでなく、人見知りだからこそ音楽に辿り着いたんだと語っていたYurinや、二人よりも落ち着いて見えるが何度もフロアを見渡しては充実した表情を浮かべていた知(Gt.)も、これまでで一番素直に自分自身を出せているような感じがあった。「2、3年目になりますけど、やっと僕らの音楽が伝わってる感触があって。ホントにみなさんのおかげだと思ってます」と噛み締めるように語るYurin。本編ラストの「NO.2」には、今目の前にいる人たちと共にこれからも歩いていくんだという変わらない決意が託されたのだった。
サイダーガール 撮影=結城さやか
サイダーガール 撮影=結城さやか
そしてアンコール。転換中、ステージの幕が下げられたことを不思議に思いながら待っていると、そこ映し出されたのはバンドの新イメージキャラクターに起用された池間夏海が登場する映像。そうして、サイダーガールが初めてライブを行った日から3年後、つまり2017年7月24日にメジャーデビューすることが発表されたのだった。大歓声に迎えられてステージに再登場するメンバー。「早速なんだけど、そのメジャーデビューシングルを聴いてもらってもいいですか?」(Yurin)と、自らの王道を更新するような新曲「エバーグリーン」を披露する。そしてこの日の最後に演奏されたのは、サイダーガール初のオリジナル曲「群青」。<いつか夢に見ていた青春が/僕らの中に有ったんだ/諦めてきた代償が胸をついても/曖昧だった感情を気が付いたら/叫んでいた>というサビのフレーズが、「僕らニコニコ動画で集まったから、最初はこうやって邦楽ロックを聴いてるお客さんがつくのか本当に心配で、ずっと悩んでて。でも今こういう景色を見れてすごく安心しました」とフジムラが話していたこのバンドの歩みそのもののように響きわたった。あの頃と変わらない衝動を胸にサイダーガールはメジャーフィールドへ繰り出していく。まずは7月24日、メジャー1stシングルの到着を楽しみに待っていたい。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=結城さやか
サイダーガール 撮影=結城さやか
1. 林檎の理
2. heartbeat
3. send me
4. at (liberty)
5. pellucid
6. 緑閃光
7. 涙星群の夜
8. 地球儀
1. ボーイフレンドになりたいっ!
2. ポップミュージックは僕のもの
3. 恋のメリーゴーランド
4. エビバディOK?
5. 僕の恋人
6. I don't wanna die
7. ヒットチャートをねらえ!
8. タンクトップは似合わない
1. ドラマチック
2. モラトリアムさん
3. 魔法
4. 夕凪
5. スワロウ
6. パズル
7. アイヴィー
8. オーバードライブ
9. NO.2
[ENOCORE]
10. エバーグリーン
11. 群青