ホリエアツシのロックン談義 第3回:SPARTA LOCALS / HINTO・安部コウセイ

インタビュー
音楽
2017.6.6
ホリエアツシ / 安部コウセイ 撮影=高田梓

ホリエアツシ / 安部コウセイ 撮影=高田梓

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なんと、第三回目となりました『ホリエアツシのロックン談義』!!
今回のお相手は現・HINTO、そして、2009年に解散したSPARTA LOCALSが昨年めでたく再結成した、Vo,G安部コウセイ君です。
我々は九州出身の同い歳。デビュー当時こそよく対バンしていて、自分にはない魅力と才能にリスペクトを抱いていました。
気付けばしばらく疎遠になっていて、実はお互いの事をあまり深く知らなかったのであります。
お互いが持っているイメージの思い違いもありつつ、それぞれのバンドの歩み、ミュージシャンとしての性格を赤裸々に語らいます。
音楽性もスタイルも違う同世代トーク。
ロックミュージックのこれからを担う若者達にとっても、必ずやヒントになるはずです。(おっ、上手いぞ!)
そんな安部コウセイ君率いるSPARTA LOCALSは、オリジナルメンバーで、7月15日恵比寿The Garden Hallにてワンマンライブを行います。


HINTOを始めるときに思ったのが、「物販が売れるバンドにしよう」

――お2人は同世代で九州出身という共通項がありますよね。

安部:でも、これまでそんなに絡む機会がなくて。

ホリエ:めちゃくちゃ久しぶりに会うんだよね。だから今回は、お互い九州出身で同い歳のミュージシャンの、生き方を語る回みたいな――

安部:生き方!?(笑)

――近況から触れていくと、まずSPARTA LOCALS(以下、スパルタ)のオリジナルメンバーでの復活という大きなトピックスがありまして。

ホリエ:今回、スパルタをまた動かすことになったのは?

安部:経緯としては、先ずHINTOの事から少し話すけど、HINTOのサポートベーシストが指の腱鞘炎を患って、活動のペースを落としたいっていうことになって「新しいベーシストどうしようか?」「あ、光広(スパルタのメンバーだった安部光広)、あいつちょっとバンドやりたそうだし聞いてみようかな」っていうところから始まったんだよね。

ホリエ:あ、そうか。HINTOも今は光広がベース弾いてるんだ。

安部:そうそう。HINTOが今はほぼスパルタのメンバーになってて。それからしばらくして、HINTOとは別にギターの伊東(真一)と組んでる弾き語りのユニットでスパルタの曲をやったときに、「やっぱいい曲だなぁ。バンドでもう一回やりたいな」って思えて。でもHINTOでやるのはなんか違うし、オリジナルメンバーで……ドラムの中山(昭仁)も今は普通に働いてるし、ちょっと難しいかもしれないとは思いつつ、声をかけたんだよね。

ホリエHINTOをずっと継続していきながら、スパルタはたまにやろうか、みたいな感じ?

安部:今はそういうスタンスだね。

ホリエ:スパルタとHINTOとの線引きみたいなものはあるの?

安部:やっぱりHINTOではスパルタの、あの暴力的っていうのかな? 狂気とか破壊的な部分っていうのが出せなくて。HINTOだけじゃ埋められない自分の音楽的欲求みたいなものが湧いてきたというか。

ホリエ:そっか。自分の内面で渦巻いてる、ドロっとしたものを出せる音楽はスパルタの方なんだ?

安部:音楽性というよりかは感情を吐露する場所みたいな。怒りをぶちまける場所。HINTOはどちらかといえば音楽性をもっと追求する方向で。

ホリエ:うん。HINTOはスタイリッシュな印象があるし、そこを全面に押し出してるのかなって思ってたんだけど。

安部:そうだね。……まずHINTOを始めるときに思ったのが、「物販が売れるバンドにしよう」という。

ホリエ:あははは!

安部:スパルタはあんまり物販が売れなくて(笑)。物販がかっこいいバンドにしてえな、みたいな。

ホリエHINTOの物販って自分でデザイン作ってるんでしょ?

安部:ほとんど作ってるかな。

ホリエ:ロゴの絵を描いたりとかさ。Facebookとかで見てるんだけど、HINTOのロゴとかもいつもかっこいいし、絵がすごく面白い。

ホリエアツシ 撮影=高田梓

ホリエアツシ 撮影=高田梓

曲作りも練習も1人でのんびりやるほうが合ってる

安部:ホリエくんはentでしょ?

ホリエ:ソロ名義ね? そう、ent。

安部:聞いたとき、HINTOとentってバンド名、もうほとんど同じだなって思った記憶がある(笑)。entもテナーとはやっぱり違うよね? 音楽性とか。

ホリエ:音楽性はもうまったく違ってて、entのスタートは自分のプライベートで普段聴いてるような音楽を自分で作りたいなっていうところだから。チルアウトしたいときに聴く音楽。ステージの上でギターをかき鳴らして歌うとか、そういうイメージは全くなくて。

安部:ベッドルームミュージックみたいな?

ホリエ:そう。最初は特ににそういう方向で始めて。最近はだんだん外に向いた感じになってきてるから、この間のアルバム(『ELEMENT』)にも、別にロックバンドでやってもおかしくない曲は入ってるんだけど。だからといって、その曲たちをストレイテナーや、でなくともバンドとしてやりたいっていう欲求はあんまりなくって。

安部:ライブはどうしてるの?

ホリエ:最近は弾き語りに打ち込みを同期させてやったりしてる。前のアルバムのときはレコーディング・エンジニア(菅井正剛)にドラムを叩いてもらって、ギターをOJ(ストレイテナーの大山純)が弾いて、3人のバンド編成でライブをやって、ツアーを回ったりもしたけど、ここ4年以上表立った活動はしてなかったから。今年新しい作品を出して、作風も変わって、ライブのやり方を考えたときに、ソロでやろうと。弾き語りの延長みたいに……弾き語りって、やってるうちに身軽さを実感するっていうか、すごい楽じゃない?

安部:うん、楽。全部自分のテンポでできるからね。

ホリエ:スケジュールとかもあんまりしがらみなく、「あ、俺空いてるからいくよ」って、1人で楽器手持ちで行けたりもするし。

安部:しかも、entのあの雰囲気は、きっとバンドだとなかなか出ないよね。

ホリエ:そうだね。人力であの世界観を出すためには、メンバーも大所帯になるし、それをやるまでの精神力がなかったね(笑)。作るのだけでいっぱいいっぱいになっちゃって。

安部:わかるなぁ、それ。人が増えていけばいくほど、しがらみも増えていくしね。

ホリエ:うんうん。偉いなと思ったのは、ゴッチ(ASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文)のソロのバンドは全員アジカンと違う――シモリョウはアジカンでもサポートをやってるけど、あれだけ新しい人たちを集めてやってるの、すごいなって。

安部:すごいよね!

ホリエ:しかもすごく楽しそうだからね。まあ、実際楽しいんだろうなぁ。

安部:もともとホリエくんは、人をいっぱい呼んでみんなでワイワイやるよりかは、一人でいる方が好きなの?

ホリエ:どっちかっていうとそうだね。曲作りも1人でするし、……練習も1人でのんびりやるほうが合ってるタイプで。

安部:へえー! ちょっと意外だなぁ。俺はホリエくんってわりと、いつも大勢で集ってワイワイやってると思ってた(笑)。

ホリエ:ワッショイ系? 全然そうじゃない(笑)。例えば飲みに行く時も2人か多くて3、4人くらいで、一つのテーブルを囲んで全員で一つの話題を共有したい。

安部コウセイ 撮影=高田梓

安部コウセイ 撮影=高田梓

ホリエくんはあまり九州のイナタさがない

安部:意外だなぁ。ホリエくんって洋服のブランドとかもやってるよね?

ホリエ:あれは自分で仕切ってやってるわけじゃなくて、友達がやってるところにミュージシャンとして関わってて、シーズンごとにテーマ曲をentとして作るっていうことをやってるんだけど。洋服自体にも意見はするけど、ユーザー目線を入れたりとか。ファッションと音楽の関わりって時代背景とかによるけど、影響し合っていけたらいいなとは思っていて。どうしたらかっこいいか、説得力があるかを具体的に考えたり。

安部:傍からみると、そういう活動をブイブイやってるなぁっていうイメージから、ワッショイ系に繋がってたんだけど(笑)、そういうわけじゃないんだね。

ホリエ:積極的に社交的なタイプではないけど、「この人の感性好きだな」「信頼できるな」っていう人と関わりたくて。洋服にしても、ブランドに関わったことで色んな工程や裏側も知れたしね。インスタレーションやショーに関わったときは、そっちのジャンルの――俺らで言うところの舞台監督や舞台美術の人たちに混じってミーティングとか出たんだけど、もうめちゃくちゃ刺激になって、個々の仕事に対するプライドだったり、良くしたいっていう情熱を感じて。ミュージシャンの場合はやっぱり、ミュージシャンありきの話し合いになるけど、それがファッションになるとデザイナーが主導で上から指示してるわけじゃなくて、いろんな人の力で成り立ってる。かえってデザイナーの方が――

安部:「それじゃできないっすよ!」みたいに言われたりもするんだ?

ホリエ:そうそう。そこが面白いなって。それぞれがそれぞれの持ち味で関わっているのが面白かったし、やって良かったなって。

安部:もともと洋服は好きなの?

ホリエ:すごく好き。大学で東京に出てきてからも、楽器よりも洋服を見るために都会に繰り出してたし。お金なかったからあまり買えなかったけど。

安部:あまり九州のイナタさがないもんね。……なんで?

ホリエ:なんでなんだろう(笑)。

安部:ズルいよね(笑)。モテ感がすごいあるじゃん。

ホリエ:いや、全然。田舎感はあると思うんだけど……昔からそういうイメージ?

安部:昔から。2人で……SHELTERだっけ? 対バンしたときがテナーを最初に観たときだったと思うんだけど――

ホリエ:あ、それはすごく記憶にある。

安部:その最初からあったよ、モテ感。

ホリエ:いやいや、その当時の自分達を見たらすごいダサくて……だけどその頃って、メジャーでも、ロックバンドにスタイリストとかヘアメイクがついてるのはカッコ悪いと思ってて。そうじゃなかった?

安部:ああ、うん。というか、その発想すらなかったね。

ホリエ:でも実はそれが普通だったんじゃないかって。今はバンドもデビューから衣装もスタイリストが入ってバンドのイメージをちゃんとプロデュース出来てる。

安部:マジ? 芸能人みてえじゃん。

ホリエ:そう。マジで今はそれが普通になってきてて。俺たちは10年くらいファッションとは無縁に生きてきて、ここに来てたまたま友達のつてとかで、デザイナーや作り手と繋がっていったけど、昔はむしろそういう業界に対してのコンプレックスもあったりして。俺たちの時代のロックって、ファッションと結びついてなかったから。

安部:たしかに。

ホリエアツシ / 安部コウセイ 撮影=高田梓

ホリエアツシ / 安部コウセイ 撮影=高田梓

たまに攻めた服着るとすんごい叩かれる(笑)

ホリエ:スパルタはぶっ飛んだ服着てたけどさ。

安部:そうだっけ? 俺たちほどファッションと遠いバンドもいないと思うんだけど(笑)。

ホリエ:いや、ぶっ飛んでるなってずっと思ってたよ。あの感覚ってどこからくるのかな?って気になってたんだよね。

安部:あんまり考えたことなかったんだけど……まず、俺が影響受けたのってNUMBER GIRLだから。NUMBER GIRLってさ……当時、向井(秀徳)さん、超ダサくて。いわゆる普通のシャツ着て眼鏡かけた、ただの兄ちゃんが出てきてロックを歌うっていう。

ホリエ:そうだよね。ツアーに荷物持って行かずに、道中で買って着て捨てる、みたいな話聞いた事ある(笑)。

安部:そう! そういうものに対してカッコよさを感じて、衝撃を受けたの、俺は。着飾ってないっていうか、普通の人が出てきて、音楽はめちゃくちゃカッコいいっていう。その感覚があるから、着飾ることにそこまでこだわりをもってたわけじゃないんだよね。

ホリエ:その、「あんまり考えてないのに、見る人が見たらオシャレ」っていうのがいい。すごい安直な例を出すと、カート・コバーンとか、オシャレしてるかどうか分からないじゃん?

安部:カート・コバーンはもう顔がオシャレだけど(笑)。

ホリエ:(笑)。あの人って「オシャレだ」と思ってああいう服を着てたかどうかは分からないんだけど、それが一つのジャンルになるくらいファッションに影響を与えてるっていう。そういう方向、そういう見方から、スパルタはオシャレに見えてたんだよね。

安部:それはすごい嬉しいな。テナーはさ、ひなっち(日向秀和)もオシャレだよね。

ホリエ:ひなっちもオシャレ顔だからね。ひなっちは攻めた服着ても似会うし、でも俺がたまに攻めた服着るとすんごいファンから叩かれる(笑)。

安部:たまには攻めたっていいのにね(笑)。あと、音楽と服装が合ってるっていうのは重要かもしれない。スパルタがあんまりにもラグジュアリーな、金のかかってる服を着てても音楽と合わないなって思うし、その格好をしてたとしたら、お客さんからは「これはギャグでやってるんだな」って言われると思う。テナーは4人になって、ヘアメイクさんとか衣裳さんと仕事するようになって、何か変わった?

ホリエ:うん。最初は、そういう人たちに任せると型にはめられちゃうんじゃないか?っていう勝手な先入観があったんだけど、そうじゃなくて。ちゃんとアーティストに似合うものを提案してくれたり、こちら側の気持ちに立って仕事をしてくれるってわかったし、さらにそこから俺たちの知らない、気付かないようなことも提案してくれる。結局、客観的に見て似合ってるのがオシャレなんだよ。

安部:でもやっぱり、最初は否定的なところから入るんだね。

ホリエ:結構、何に対してもそうかも。

安部:そこは九州感、あるね(笑)。島感っていうかさ。

ホリエ:それはいまだにある、本当に(笑)。

安部:俺も基本的に盆地の――福岡の田川市っていうところで生まれ育ったんだけど、周りが盆地だから「敵か/味方か」で考える(笑)。

安部コウセイ 撮影=高田梓

安部コウセイ 撮影=高田梓

10何年前にスパルタがやってたことが、
今の日本のロックの主要な部分みたいになってる

ホリエ:警戒心は強くなるよね。しかも九州出身のバンドって実際クセの強い人が多いし、仲間意識っていうよりは孤高な人が多いっていうか。向井さんにしても、孤高の存在だよね。

安部:だね。九州出身で仲が良いバンドっているの?

ホリエ:先輩だけど、モーサム(MO’SOME TONEBENDER)の百々さんとか。ただ、先輩後輩っていうノリはまったくなくて、ちょうどいい距離感があって、対バンして打ち上げで飲む事はあるけど、プライベートで飲みに連れて行かれる事もないし、誘う事もないし。誰かが仕切って飲み会とかしてくれると助かるんだよね。心を閉ざしてるわけではないけど、自分からは仕切れないタイプだから。

安部:あぁ、俺は全然行かないからなぁ、そういうの。

ホリエ:イメージないよね。どことつるんでるとかも分からない。

安部:誰ともつるんでないね。……ダメだなぁ。38にもなって思うことじゃないけど(笑)。

ホリエ:(笑)。でもさ、今は仲のいい後輩とかあんまりいないかもしれないけど、10何年前にスパルタがやってたことが、今の日本のロックの主要な部分みたいになってるって感じない? あの頃は「福岡から変な人たちが出てきた」って思ってたんだけど(笑)。

安部:うん(笑)。

ホリエ:やっぱり福岡から出てくる人たちってどこか変だなって思ってて――(スパルタは)ポストパンクだったじゃん。ポストパンクっていうジャンルも、日本のロックの中ではムーブメント的なものじゃなくて、好きな人だけが知ってるみたいな……ラプチャーとかレディオ4、!!!とか、俺はそういう音楽がめっちゃ好きで。

安部:ラプチャーとかが出てきたのがちょうどスパルタと同じくらいで。「この感じ、俺たちの方が早かったからな!」って話してたの、覚えてるよ(笑)。

ホリエ:そこに日本のメロディとかを入れてるのが、すごくヘンテコでカッコよかった。その当時はヘンテコだったものが、今は普通に継承されてるっていうか。「スパルタを知っててやってんのかな?」って思う。

安部:それ、もっと言って欲しいね(笑)。実際、「これ俺らが随分前にやってたのにな」って思うことは多いけど、本人たちはあまりその意識はないんだろうなとも思う。「好きでした」とか言われることはあるんだけどね。

ホリエ:ポストパンク的な感じと、和のフォークっぽい感じがあって。でも、歌詞先行というよりは音先行で。

安部:うん。音先行だね。

ホリエ:今は、「何を歌いたいか」から入ってるバンドが多い気がするんだけど、俺たちも「何を歌いたいか」は全く無かった。

安部:テナーは英詞のイメージも強かったし。

ホリエ:インディーズの頃は特にライブだと英詞の曲が多かったね。最近はちゃんと歌いたいことありきで詞を書くようにはなったけど、書き始める時点では何も考えてない。音に合わせて乗せた言葉から繋いで書いていくから。

ホリエアツシ 撮影=高田梓

ホリエアツシ 撮影=高田梓

ホリエくんの言葉って、肉肉しくない

安部:ホリエくんってあまり言葉が強くならないようにしてるでしょ? 英詞の曲と聴き比べても、日本語の詞の馴染みがいい気がするんだよね。違和感がないように作られてる。

ホリエ:英詞っぽい母音の乗せ方とかは考えてるかな。昔は言葉そのものも抽象的で、具体的な言葉のイメージが映らないようにしてた。メロディと一体になって心地良く響くように言葉を選んでいって、意味は後からなんとなく分かる人には分かるみたいに。

安部:すごく抽象的な書き方をしてたっていうことだよね。今はもっと具体的になった?

ホリエ:そうだね。今はちゃんと、言葉からすぐにイメージができるようなものを書こうとしてて。

安部:感情とかも想起させるような?

ホリエ:そうだね、でも感情よりは……風景。その風景に対して思うことは人それぞれ違っていいと思うんだけど。

安部:その風景を見たときの、ホリエくんの感情ってあるわけじゃん。それは投影させるの?

ホリエ:直接ではないけど。一つの風景を描写して、それをそのとき自分は「悲しい」と思ってる、だけどそれを「美しい」って思う人もいるし、「懐かしい」って感じる人もいるし……っていうような余白は持たせて。

安部:じゃあホリエくん自身の感情とはちょっと距離感があるんだ? 「悲しい風景」っていう風には書かない。

ホリエ:うん。若い頃はむしろ、何も考えてなかったから、誰も悲しいとは思わない風景を描いて、そこに「悲しい」って付けてたかもしれないけど。

安部:なるほど。……捻くれてんなぁ(一同笑)。それに、日本語詞の曲を聴いてもやっぱり俺とは距離感が全然違ってて、特にentの方は聴いていて風景っぽい印象だったんだよね。なんというか、対象との距離感みたいなものが一定なの、ずっと。あまり近づかずに傍観するように進んでいくところが、すごい都会的な感じがした。俺はもっと近いところで見ちゃうから。

ホリエ:一曲の中で、対象となる人であったり風景、自分の内面だったりとの距離を、一定にしたり、コウセイみたいに近づけたりするワザを身につけたらすごいんだろうな。

安部:うん、たしかに。完全にコントロールできればね。

ホリエ:そういう技法とかちゃんと考えたことなくて、あまりにも考えてこなさすぎたから最近になってビビってるっていうか。

安部:じゃあ、たまたまそういう距離感になったんだね。ホリエくんの言葉って、肉肉しくないじゃん。言葉の匂い――生々しさとか、人間から出るたんぱく質の匂いみたいなものを、丁寧に消してる感じがしたんだよね。

ホリエ:それしか書けないんだと思う。あまり自分で触れてる感、噛んでる感がないってことでしょ?

安部:そうそう。人間とかも、ある意味物質として捉えてるっていう感じがして、それが面白かった。人も、風景とかコップとかと同じテンションで描いてる気がしたんだよね。

ホリエ:そういう肌感の伝わるようなことを書こうとしても、どうしたらいいのかわからなくて、借りてきた表現になっちゃう。それじゃあんまり面白くないから、ちゃんと自分の書き方をしようと。他のアーティストに楽曲提供したときに、そこはすごく思った。

ホリエアツシ / 安部コウセイ 撮影=高田梓

ホリエアツシ / 安部コウセイ 撮影=高田梓

高校時代にやってたバンドはもろユニコーンの影響を受けてて

安部:メロディから作っていって、詞が乗ってガッカリすることってある? 俺は時々、これめっちゃいい曲じゃんっていう曲に詞が乗ったらガッカリすることがあるんだけどさ(笑)。

ホリエ:自分で?

安部:そう。嘘英語みたいな仮の歌詞で作っているときが一番カッコよくて、詞が乗ると「はぁ、なんだこれ」って。俺の場合は声も変わっちゃうというか。日本語にスポイルされて日本語の声になっちゃう。

ホリエ:ああ、それは俺もそうだよ。俺がentでほとんど英語で書いてるのはそういう理由。英語っぽい節回して歌いながら曲を作ってるから、それを無理に日本語にすると歌い方も変わっちゃって、語気が変わってきたり。

安部:やっぱり日本語と英語ってかなりギャップがあるんだなぁって。

ホリエ:声の質というか、発声のときの口の開け方、舌とか喉とか体の構造の使い方が違うんだろうね。

安部:そういえばホリエくんは、日本人のアーティストでいうとどこから影響を受けてるの? あんまり日本人からの影響が見えなくて。

ホリエ:あ、そう? バンドブームの頃に大量に聴いたいろんなバンドのいろんな要素から影響を受けてるから、そう聴こえるのかもしれない。ビジュアル系も聴いたし、ブルーハーツとかユニコーンみたいな普段着の音楽も聴いたし……

安部:ユニコーン聴いてたの? なんの影響も見えない(笑)。

ホリエ:高校時代にやってたバンドはもろユニコーンの影響を受けてて。歌詞とかも脱力系のラブソングみたいなものを――

安部:マジかよ(笑)。イメージねえなぁ。

ホリエ:「平日の客がいない野球場に、デーゲームを観に行くデート」みたいなことを高校時代に歌ってた(一同笑)。長崎にいた中学高校時代は、俺はラジオから音楽を吸収してて、地方のラジオ局ってけっこう偏ってるから、長崎にライブに来てくれるアーティストの曲はヘビーローテーションされるし、そこで聴いて「カッコいいな」と思った日本のバンドは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかシアターブルックとかだった。あと、洋楽の番組はUKロック好きな人がディレクターで、チャートの上位をレディオヘッドとかブラーとか当時のUKバンドが独占みたいな。

安部:おお! 俺もミッシェルもシアターブルックも超好きで、コピバンやってたよ。

ホリエ:おお~、シアターブルックのコピーはレアすぎる(笑)。その辺の先輩世代って洋楽とも平行して聴けるような個性のあるバンドがいっぱいいて。その下のNUMBER GIRLとかくるりとかSUPERCARの世代がムーブメントになった頃は、もう自分たちも東京で、インディーでライブ活動してた時期だから、勝手にライバル視してたかな。まだ自分たちの音楽の方向性も固まってないのに、とにかく全部敵ぐらいの意識だったから(苦笑)。かつ、周りはパンクとかメロコアのバンドばっかり盛り上がってる中で、暗~いギターロックやってて――

安部:2人編成でね。

ホリエアツシ 撮影=高田梓

ホリエアツシ 撮影=高田梓

今は曲の作り方を自分で意図的に変えている

ホリエ:そうそう(笑)。そういう反骨心の塊だったなぁ。……コウセイは、東京出てきてどのくらい経つ?

安部:俺は出てきたのが24とか5の頃なんだけど、俺は最後まで(東京に)出たくないって言ってて。

ホリエ:福岡でやらせてくれって?

安部:うん。そう思ってたんだけど、当時はそういうのは異例だったから。今ならメールとかでデータのやり取りができちゃうんだけど。そこからももう、10数年経って。

ホリエ:そっか。その間にスパルタも一回解散して、また集まって再結成っていうね。俺、改めてスパルタの曲を聴き返してみて、曲がすごかった。特に、「FLy」っていう曲が当時からめっちゃ好きで。

安部:お、ありがとう!

ホリエ:踊れる感じの曲も、今聴いてめちゃくちゃカッコいいんだけど、「FLy」の、あのサビで下がる感じが。こういう曲を書ける人、今いないなぁって。

安部:俺、サビで下がるんだよね。そこを曲を作る人からはわりと「良い」って言ってもらえるかも。コードの感じとか。

ホリエ:コードも、めちゃくちゃこだわってるでしょ?

安部:うん、そうだね。ただ、コードが多くなりすぎちゃうんだよね。多くなりすぎるとどんどん一人っぽくなって、バンドっぽい音から外れていっちゃうし踊れなくなるから、なるべく増やさないようには気をつけてるけど。

ホリエ:(テナーは)あえてコードを少なくするというか、洋楽っぽいってそういうことかな?って思って、あまり(コードの種類を)多用せずにシンプルにループさせて作ってた。そこが全く違ったんだよね。……今は曲の作り方を自分で意図的に変えているし、いろんなコードを使ったり、転調とかにもトライしようかなって今更思っていて、そういう今の自分が昔のスパルタを聴くと、「はぁ~、すっげぇ」って(笑)。当時は、あそこまで作り込まれてるって思わなくて、単純にギターの音とかフレーズがカッコいいなとか、ライブがクールで狂ってるなとしか思ってなかった。だから、今このタイミングで聴き直せたのはすごく良かったな。

――そんなスパルタの音に触れる機会としては、11年ぶりのオリジナルメンバーでのワンマンが控えてます。

安部:7月15日。

ホリエ:11年ぶりってすごいよね。

安部:活動再開してからは2回目のライブで、ワンマンは初なんだけど……いやぁ、来て欲しいですね(笑)。

ホリエ:スパルタがなんで一回解散したのかは……中山くんが先に辞めたんだよね?

安部:そう。中山が先に辞めて、そこからはわりとヒーヒー言いながらやってたんだけど、しばらくして光広も辞めるって言って、「あぁ、これでもう無理だな」と思ったんだよね。これはもうスパルタじゃないなって。

ホリエ:半分いなくなっちゃってるからね。

安部:うん。同じ屋号で続けていく選択肢を、否定はしてなかったけど……でも、それだとあまりにもスパルタとは違うことになりすぎちゃうなぁと思った。

ホリエ:そうすると曲もやらなくなるわけだけど、やっぱり曲って、自分たちだけのものじゃなくなってるじゃん。俺たちの場合はずーっと続けてるから――

安部:それもすごいよねぇ!

ホリエ:いや、すごくはないんだよ(笑)。

安部:いやいや、俺からしたらすごいよ。ないの? そういう危機とか。

ホリエ:解散の危機はない。でも、しんどい時期というか……仲が悪くなったりはないんだけど、気を遣いすぎちゃったりする時期はあった。今は昔よりも気楽に意見し合えるように努めてるんだけど、それまではちょっとしんどいこともあって。3人から4人になったのは大きかったし、いろいろと見直して新しい関係性を作れた。そのあとメジャーデビュー10周年のタイミングで、昔の曲を洗いなおしたりとか、今のファンは自分たちに何を求めてるんだろう?とか……そういうことやるの、すごい恥ずかしかったんだよ。でも、やってみたら思ってた以上にそれぞれのバンドに対する想いを感じれたし、すごくバンド自体が健全になれたというか。

安部コウセイ 撮影=高田梓

安部コウセイ 撮影=高田梓

ドラムに厳しくしちゃダメ

安部:風通しが良くなったんだ。

ホリエ:うん。バンドの中身にも風が通った感じはあった。

安部:バンドで、ホリエくんがほぼ全部曲を作ってるでしょ? そのとき――頭の中にあるイメージをデモにして持っていって、自分の思ってるようにならなかったとき、それに対するストレスというか、「いや、そうじゃないんだよな」っていう気持ちとの折り合いってどうつける? そういうことってあるじゃん。表面的には「お、それもいいじゃん」とか言いながら、内面では「なぁんか違うんだよなぁ」って思うことが。

ホリエ:うーん。そういう場合、俺はみんなでいるときじゃなくて、個人的に言うかな。あとは全然違う方向に行こうとしてたら、「俺はこういうイメージをしてたんだけど」って説明したり。でも、一旦は流れに身を任せた方が、もしかしたらそっちの方が良くなるかもしれないとは思ってる。

安部:そっちの方が良かったこともある?

ホリエ:あるある。全然ガラッと変わって、リズム自体も思ってたのと違うビート感になったりもするし、それがかえって良かったり。

安部:それはすごいね。

ホリエ:デモをあんまり作り込まないからかもしれない。ギターのアレンジとかは全然作っていかないし。それに、うちはひなっちが曲の飲み込みが異常に早いから、まずベースが先にアレンジされちゃって、そこが基準で曲の方向性が決まったりもする。俺としては自分の作った曲を理解するスピードが早い人がいるのは、やっぱり楽だね。他のバンドはドラムから決めていく場合も多いと思うんだけど、うちはそうじゃなくて、むしろ全体像が見えてからリズムパターンを決めていくことも多くて……多くのバンドが、ドラムに対しての要求が厳しくなることってあるじゃん?

安部:そうだね。昔はうちもそうだった。

ホリエ:それがうちは一切ない。

安部:へぇー! ……いいバンドだね。そりゃあ続くわ。

ホリエ:ドラムに厳しいバンドは続かない?

安部:ドラムに厳しいのはダメだよ! 全ボーカリストに言いたい、「ドラムに厳しくしちゃダメ」。俺も、ちょっとのズレが異様に気になっていろいろ言っちゃうことが前はあったんだけど、そうなると良いことが一個もない!!(笑)

ホリエ:(笑)。

安部:それに、こっちが本当に良い曲を作れてたんなら、勝手に良いフレーズが上がってくるものだと思うんだよね。その曲自体がすごいパワーを持っていれば、各パートがどんな演奏をしても良くなるはずで。そこが分かってなかったし、それだけの曲が書けてなかったんだなと思えるようになったな……10年前の自分に言ってやりたいけど。

ホリエ:深いね。……いやぁ、こんなところにバンドを長く続ける秘訣があると思わなかった(笑)。それはこれだけ続けてこないと分からないことかもしれないね。

安部:ほんとだね。

ホリエ:自分が作る曲に対してのハードルは、俺もどんどん上げていってて。技法を知らずに作ってた頃の曲に対しても、あのときの自分がもっと幅をもたせてたら、もっと良い曲を作れてたのにって思うこともあるし。もちろん、若い頃は若い頃なりの、無造作な良さっていうのはあるけど、今作っている曲は絶対に昔は作れなかったと思うし、今の新しい曲をどんどん磨いていって、それを聴いて欲しい。昔のファンにも今の曲を聴いて欲しいなって思うし。

安部:うんうん。

ホリエ:スパルタは新曲は作ってるの?

安部:まだ作ってないんだよね。でも作りたいとは思ってて……次のワンマンには間に合わないかもしれないけど。今は、中山が音楽からしばらく離れてたこともあって、まずはその勘を取り戻すところからリハーサルをしながら詰めている感じかな。

ホリエ:……甘く?

安部:甘くね(笑)。いや、全然甘いよ、今の俺は!

 

取材・文=風間大洋 撮影=高田梓

ホリエアツシ / 安部コウセイ 撮影=高田梓

ホリエアツシ / 安部コウセイ 撮影=高田梓

SPARTA LOCALS情報
SPARTA LOCALS ワンマンライブ『復活のファンファーレ』
日程:2017年7月15日(土)
会場:恵比寿The Garden Hall
開場17:00/開演18:00
前売:¥4,320(D代別)/オールスタンディング
[問] ディスクガレージ 050-5533-0888

『AFTER BALLET』
日程:2017年7月22日(土)
会場:渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 17:00/START 18:00
出演 :SPARTA LOCALS、夜の本気ダンス、imai(group_inou)、山内総一郎(フジファブリック)
前売り ¥3,800 (税込・ドリンク代別)

 

ストレイテナー情報
ストレイテナー BROKEN SCENE TOUR 2017
6月9日(金)青森 Quarter open 18:30 / start 19:00
with go!go!vanillas
6月13日(火)愛知 名古屋 CLUB QUATTRO open 18:00 / start 19:00
with きのこ帝国
6月15日(木)東京 渋谷 CLUB QUATTRO open 18:00 / start 19:00
with きのこ帝国
6月18日(日)神奈川 横浜 BAY HALL open 17:00 / start 18:00
with go!go!vanillas
6月26日(月)大阪 梅田 CLUB QUATTRO open 18:00 / start 19:00
with My Hair is Bad
6月28日(水)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM open 18:00 / start 19:00
with My Hair is Bad 
6月30日(金)熊本 B.9 V1 open 18:30 / start 19:00
with My Hair is Bad
 *全公演チケット 4,500円(税込・D代別)
*18歳以下当日身分証提示で500円キャッシュバック
 
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