キアヌ・リーブス&チャド・スタエルスキ監督インタビュー ウォシャウスキー兄弟から学んだ“意味のあるこだわり”とは

動画
インタビュー
イベント/レジャー
2017.7.4
左から、チャド・スタエルスキ監督、キアヌ・リーブス

左から、チャド・スタエルスキ監督、キアヌ・リーブス

画像を全て表示(5件)

7月7日(金)公開の映画『ジョン・ウィック:チャプター2』はキアヌ・リーブス演じる最強の殺し屋・ジョン・ウィックの復讐劇を描いたアクション映画『ジョン・ウィック』の続編。全米では公開から8日間で前作のトータル興収(前作総興収約4.3千万ドル)を超える約4.6千万ドルを稼ぎ出すなど成功を収めている。前作は、ジョン・ウィックが、愛犬を殺したマフィアたちを銃とカンフーを融合した“ガン・フー”で殺戮するシンプルな復讐劇を、キアヌの肉体を駆使したアクションとセリフの少ない繊細な演技で魅せる作品だった。今作のジョンは、家を焼かれて再び復讐に立ち上がるが、危険を感じたマフィアによって懸賞金をかけられ、世界中の殺し屋に狙われることになる。柔道、柔術、近接格闘術など様々な動きを取り入れて進化を遂げたアクションも見どころながら、あらたに個性豊かな殺し屋たちも登場し、世界に広がる暗殺組織“コンチネンタル”の全ぼうも明らかになるなど、さらにその世界は広がっている。

前作に引き続いてメガホンをとったチャド・スタエルスキ監督は、スタントマンからキャリアをスタートし、監督として成功した稀有な人物。『マトリックス』シリーズでキアヌと出会い、キアヌの監督作『ファイティング・タイガー』などでも現場をともにした、まさに彼の盟友。そんな関係にある二人は、ともに企画を立ち上げた『ジョン・ウィック』シリーズの最新作に何を託したのか? 来日インタビューで、ウォシャウスキー兄弟(現・姉妹)から学んだ“こだわり”の映画製作術や、アクション映画にかける思いなどを語ってくれた。

 

ウォシャウスキー兄弟から学んだ“意味のあるこだわり”

キアヌ・リーブス

キアヌ・リーブス

――スタエルスキ監督はスタントマン出身、リーブスさんも自身でアクション映画を監督していて、お二人とも凄く情熱がある方だと思います。アクション映画を作るうえで、お互いのいいところを教えてください。

キアヌ:お互いに話したりはしていないんですが、スタエルスキ監督はアクションのことを凄く知っているし、お互いにテイストが似ているんです。

スタエルスキ監督:そう、ツーカーで意思疎通できるんです。二人とも70年代のアクション映画、日本のアニメ、香港やアジアの映画が好きですし、『マトリックス』では二人ともユエン・ウーピンにお世話になりましたから。音楽や本も同じようなものが好きだったりして、テイストが近いんです。なにより、同じ“ウォシャウスキー兄弟” (現・姉妹)という学校で学んでいますから(笑)。彼(キアヌ)はアクションも出来るし、監督も出来るので、あまり説明しなくていいいので(仕事をするのが)非常に楽ですね。あれこれ話さなくても通じる。「You go there!Shoot gun! Good!」と言う風に(笑)。

――すごいですね(笑)。

キアヌ:でも、本当に「大丈夫、わかった!」ということが、現場でも多いんですよ。

――非常に成功した1作目に続いて、続編を製作するにあたって気を付けたことはありますか?

キアヌ:うーん。世界観のトーンにあわせる、ということかな。

スタエルスキ監督:あと、ぼくたちは、“ジョンが何を考え、どうしていくのか”が核になるよう意識しました。1作目のモチーフは、ジョン・ウィックがいて、子犬がいて……という、非常にわかりやすいものでした。でも、(2作目は)子犬がいなくてもジョン・ウィックに共感させたいわけですから、ジョンがどういうことを考えて、どう行動するのかを意識しなくてはいけない。そこは、キアヌがよく考えて演じてくれました。キャラクターについて考えて、掘り下げていくのは非常に難しいことですが、一番面白いところでもある。お話としては、そんなに難しくないものですが、どうやってストーリー・プロットを面白くしていくかは、やっぱりキャラクターなんですよ。(1作目でジョン・ウィックが)100人殺した後ですから、余計に(笑)。

チャド・スタエルスキ監督

チャド・スタエルスキ監督


――『ジョン・ウィック』シリーズからは、スーツや時計といった服装や、バイク、自動車、銃など、どれをとってもこだわりを感じます。なぜここまで細部にこだわられたのでしょうか? また、特に好きなこだわりのポイントはありますか?

スタエルスキ監督:ぼくがウォシャウスキー兄弟の下で働いてわかったことは、彼らが世界観を構築するのが上手いということ。それはつまり、細部が大事だということなんです。(撮影に)どんな道具、どんな照明を使うのか。ぼくたちは「カーポルノ」「スーツポルノ」「ファッションポルノ」という風に、何でも「〇〇ポルノ」と呼ぶくらいこだわりました(笑)。例えば、どうでもいい銃ではなくて、「なぜこの銃を使うのか」ということを意識すれば、それが彼(ジョン・ウィック)のキャラクターを描くことになる。ですから、それぞれのアイテムの中には、ジョン・ウィックがジョン・ウィックである所以(ゆえん)が含まれています。ぼくは、キアヌにタートルネックを着させたり、3ピースのスーツを着させたり、色いろと試してみたんですが……そういった細部にこだわるのは楽しいですね。スーツ、車、銃、ファッション、ぼくは全部好きです(笑)。ジョン・ウィックにその世界の色んな部分を味わってもらうために、すべての細部にこだわっています。例えば、ジョン・ウィックの腕時計の盤面は、すべて内側を向いています。デザインだけではなくて、(すべてのアイテムに)実用的で、意味のあるこだわりがあるんです。キアヌはどう思う?

キアヌ:もう、何も話すことはないよ(笑)。ぼくは、服も好きですし、きちんと仕立てたスーツも好きですし、いい靴も好きですし、昔風のタイプライター……最近、50年代風の“Baby Portable”っていう型のを手に入れたんですが、そういうものも好きです。

スタエルスキ監督:ぼくは、スーツについては何もわからないので、テイラー(編注:ピーター・セラフィノウィッツ演じるウェポン・ソムリエ)が出て来るシーンは、キアヌに任せました(笑)。あのシーンは、キアヌが(セリフを)書いているんですよ。

キアヌ・リーブスがセリフを書いたという“ウェポン・ソムリエ”のシーン
 

ルールがないから、やりたいことをやっただけ

左から、チャド・スタエルスキ監督、キアヌ・リーブス

左から、チャド・スタエルスキ監督、キアヌ・リーブス

――1作目の『ジョン・ウィック』は、カンフーと銃を組み合わせた“ガン・フー”が印象的でした。今作では、さらに柔道や柔術、近接格闘技がより効果的に振付に取り入れられていますね。

キアヌ:柔道や柔術、近接格闘術を取り入れるアイデアは、前作でチャドやディヴィッド・リーチ(『ジョン・ウィック』をアンクレジットで共同監督)から出たものです。より接近戦にして、アメリカのアクション映画では見たことがないようなことをやりたかったので、銃を持ったまま柔術・柔道の動きを取り入れました。やっていて凄く楽しかったんですが、ぼくはそれまで柔道経験はなかったんですよ。1本目の『ジョン・ウィック』は、相手を投げたりする部分で少しだけ難しい動きもあったけど、シンプルな振付にしてもらっていました。ただ、続編を観たときに同じだと、「ああ、それはもう見た」と思われちゃうから(笑)、もう少し複雑にしています。

スタエルスキ監督:横捨身技だったり、引き込みだったり、フライング巴投げだったりね。

キアヌ:1作目でそういう経験をしているので、(2作目は)より複雑な技も見せることができました。ただ、基本的な動きもちゃんと一から覚えたので、それも取り入れています。

スタエルスキ監督:ジョン・ウィックは“掴む”のが好きなんです。なにかと、“掴む”武術は銃と相性がいいんですよ。銃を使いながら、「どうやって“侍映画”を撮るか」ということを意識しているんです。三船(敏郎)さんのような、ね。

キアヌ:とんでもない、とんでもないよ!三船さんは神だよ! 彼に比べれば、ぼくなんて小さな虫のような存在ですよ。ぼくらはみんな、三船さんという“太陽”の子どもなんです。

――最後の質問です。劇中に登場する殺し屋組織“コンチネンタル”には絶対のルールが存在します。お二人には、普段守るべきルールのようなものはありますか? また、その普段の生活の中で幸せを感じることを教えてください。

キアヌ:リストに載せる掟のようなものはないですが……嘘は吐かないとか、裏切らないとか、そういうことは相手に求めますし、ぼくもそうありたいと思います。それと、幸せはどこにでもあるものだと思いますよ。映画作りで良い仕事をすること、自分の愛する作品を作り出し、自分の仲間とコラボレーションできることも幸せですし。毎日現場に行ってベストを尽くして、何が起きるかわからないですが、それは自分のやっていることなので、すごく喜びがあります。

スタエルスキ監督:ぼくもキャリアが長いほうですが、『ジョン・ウィック』は(ルールが他と)ちょっと違う作品なんです。原作ありきではない、オリジナルの作品ですから。大好きなキアヌと仕事が出来ることが本当に楽しかったですし、スタッフも顔なじみばかりで、キャスト・スタッフともにお気に入りの人とやれたのがすごくよかった。ハリウッドでは、原作があって、それがシリーズ化されることが多いですが、ぼくらは何もないところから『ジョン・ウィック』というものを作り上げることが出来ました。『ジョン・ウィック』は、本当にキアヌの頭の中かから生まれたもの。ぼくらと、脚本のデレク・コルスタッドさんで生み出したものだから、好きなことが出来る。『ジョン・ウィック:チャプター2』も原作がなくて、ルールがないから、やりたいことをやっただけです。こうやって東京に来たときに、「次(『ジョン・ウィック3』)はどうしようか」とキアヌと気軽に話せますし。何の制限もなく、想像力の限りを尽くせるということは、ハリウッドでは珍しいことですし、幸せなことなんですよ。だから、ぼくはそういう時が幸せですね(笑)。

キアヌ・リーブス

キアヌ・リーブス


映画『ジョン・ウィック:チャプター2』は7月7日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開。

インタビュー・文=藤本洋輔

作品情報
映画『ジョン・ウィック:チャプター2』
 

 
【あらすじ】伝説の殺し屋ジョン・ウィックが繰り広げた壮絶なる復讐劇から五日後。彼の元にイタリアン・マフィアのサンティーノが姉殺しの依頼にやってくる。しかし平穏な隠居生活を望むジョンは彼の依頼を一蹴、サンティーノの怒りを買い、想い出の詰まった家をバズーカで破壊されてしまう。愛犬と共に一命をとりとめたジョンはサンティーノへ復讐を開始するが、命の危機を感じたサンティーノに7億円の懸賞金を懸けられ、全世界の殺し屋に命を狙われることになる。 
監督:チャド・スタエルスキ『ジョン・ウィック』 
出演:キアヌ・リーブス、コモン、ローレンス・フィッシュバーン、ルビー・ローズほか 
配給:ポニーキャニオン 2017年/アメリカ 
原題:John Wick : Chapter 2 
(C)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. (C)Niko Tavernise 
公式サイト:http://johnwick.jp/
シェア / 保存先を選択