Hello Sleepwalkersとそのファンの創り出す“新世界”とは 

レポート
音楽
2017.7.19
Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

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Hello Sleepwalkers 2017 “シンセカイ” 2017.7.13 LIQUIDROOM

定刻になると、ユウキ (Dr)が他4人に先立ってスタンバイ。ピアノの音色を基調としたSEに彼がビートを絡ませ始めたところで、マコト (Ba)、タソコ (Gt)、ナルミ (Gt/Vo)、
シュンタロウ (Vo/Gt)が現れ、ステージ上にメンバー全員が揃った。1曲目は前作『Planless Perfection』の最終曲だった「Perfect Planner」。後のシュンタロウのMC曰く、絶対的な絶望を塗り替えていくような同曲を、このツアーの出発点にしたいという思いがバンドにはあったのだそう。<醒める 醒める 醒める 醒めたよ 夢は/本当の眩しさに気付いたら きっとそこまで行こう>と決意のフレーズを繰り返すほどに、しなやかさが増していくアンサンブル。その凛とした強さは、そのままこのバンドの現状を表しているように思えた。

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

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今年2月にリリースしたミニアルバム『シンセカイ』を引っさげ、全国8ヶ所をまわったツアー『Hello Sleepwalkers 2017 “シンセカイ”』。元々『シンセカイ』がバンドの肉体性を前面に出したような音像のアルバムだったこともあってか、この日のライブは実験的ワンマンシリーズ『Quintet Laboratory』ともまた異なり、バンドの演奏をシンプルに伝えていくような構成だった。「始めようぜ、リキッドルーム! 「神話崩壊」!」(シュンタロウ)と非常事態を知らせるように照明が明滅し、大洪水のようなサウンドが轟くと、タソコの超絶ギターソロが炸裂。異世界へ導く呪文のように日本語詞と英詞が交錯する「Rollin’」を経ての「Jamming」では、シュンタロウが高く掲げたマイクへ向かってオーディエンスが拳を突き上げ大合唱。そんな中、まるで自己紹介をするようかのように5人によるソロ回しも華麗にキマッたのだった。

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

変拍子で目まぐるしく展開していく「2XXX」で一際大きな歓声が起きれば、続く「Sleep Tight」ではバカでかい音量の手拍子に鼓舞されるかのように、シュンタロウが気合いの滲み出た声色で唄う。そして予測不能な遊び心とバンドの屋台骨としての安定感を兼ね備えたユウキによるソロパートに、やはりこの人がバンドの要を担う人物なのだということを改めて思い知らされたところで、歪かつ愉快にスウィングする「デジ・ボウイ」へと突入。スリル抜群ではある一方、キメ所はどれも流されることなくしっかりと押さえられているし、5人の演奏はただ衝動的なわけではなく、落ち着きさえ感じる時があるほど。バンドの地力を剥き出しの状態で伝えていく演奏で浮き彫りになっていくのは、どのジャンルにも括ることのできないこのバンドの特異性と、一筋縄ではいかないこのバンドの魅力に好奇心を揺さぶられていくオーディエンスの熱量の高さだった。

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

ミュージシャンシップに則ってひたすら自分たちの腕っぷしのみで魅せていくような演奏を続けるバンドがいて、メンバーのファインプレーに対してしっかりリアクションを示していくオーディエンスがいて、場内のテンションがどんどん上昇していく――というシンプルなコミュニケーションの構図。MCが始まるなり「ヤベー! みんな、めーっちゃ笑顔が素敵です! ありがとうございます!」と興奮気味に伝えていたナルミは、そのあと「今回のツアーはどこもお客さんが温かい場所ばかりだった」とも話していたが、例えば、MC中に突如発生した沈黙の時間に対してシュンタロウが「ほら、無は最高の音楽って言うじゃん」と冗談めかす、それに対してユウキが「この時間、めっちゃいいこと言ってるバンドが多いのにね」と呟きドッと笑いが起こるなど、MCに飾り気がなかったのもおそらくその居心地の良さゆえだろう。そしてその空気感は、音楽を通してバンドとオーディエンスが混じりけのないコミュニケーションし続けてきたからこそ生まれたものに他ならないわけだ。

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

ということで、バンド側もオーディエンス側も、みんながみんな自分自身に素直でいられていることが至る場面から読み取ることができたこの日。全方位型で感情を発露していくようなタイプのライブだったからこそ、「私たちの最初の曲」と紹介された「月面歩行」(デビューアルバム『マジルヨル:ネムラナイワクセイ』収録)をはじめとした、歌やアンサンブルをじっくりと伝えていくパートはかつてなく奥深い響きをしていたし、「汗冷えてきたっしょ? もう1回汗かこうよ!」とシュンタロウが投げかけてからの終盤戦は、天井知らずの勢いで場内のヴォルテージが上昇していった。「この瞬間のために書いた曲、唄ってもいいか!?」(シュンタロウ)と渾身の「新世界」を炸裂させたあと、噛み締めるようにして「音ってのは生まれた時まっさらな状態で、今回のアルバムもまさにそうで。いろいろな想いが乗っかって成長したアルバムになったと思ってます。今日このステージにこんなアルバムを持ってこれて、みんなと唄えて、幸せでした」とシュンタロウは語る。そして「最後一曲、唄いたい曲を持ってきました。未来はいつだって怖いくらい眩しいけど、次の場所でまた会えるように、そう願って唄います」と本編ラストに演奏されたのは「日食」。この日の1曲目「Perfect Planner」で唄われた決意は<時代は新しい呼吸を始める/加速と明滅を繰り返しながら>という確信へと形を変えたのだった。

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

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聴き手の胸元へ真正面からぶつかっていくようなこの日のシュンタロウの歌を聴いて、正直「あれ? こんなに男臭い人だったっけ?」とずっと驚かされ続けていたのだが、アンコールにて、一人弾き語りで披露した「夜明け」にまた心臓をグッと掴まれたような気持ちにさせられた。「服もボロボロ、汗もビショビショ、声もガラガラ。この状態がめちゃくちゃ幸せです」と本人も笑顔を見せていたように、歌の上手さとか調子の良さとか、そういう表面上のあれこれを全て引っ剥がしたところにある、生身の歌声だけが確かにあの時響いていたからだ。

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

オーディエンスに呼びこまれる形で5人が再びステージに揃ったあと、
マコト「駆け抜けたというよりかは一歩一歩踏みしめた感覚。何でだろう?」
ナルミ「楽しかったからじゃない? その分」
シュンタロウ「一つ言えることは、音楽を演奏する側からすると、俺らみたいなツインボーカルの変則なバンドをね、よく見つけて、ハマって、ライブに足を運んでくれたなあと。仲間が増えたなって、そういう感覚です

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

など、それぞれがツアーの充実感を言葉にしていたように、このツアーはバンドに大きな手応えをもたらしてくれたことだろう。絶え間なく湧き出る音楽家としての好奇心や表現欲、そしてその表現の向こう側に待つ“仲間”と向き合いながら、Hello Sleepwalkersはこれからも“新世界”へ挑み続ける。去り際に鳴らされた「午夜の待ち合わせ」の清々しい響きは、バンドの新たな始まりを祝すかのようだった。


取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=Yosuke Torii

Hello Sleepwalkers 撮影=Yosuke Torii

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セットリスト
Hello Sleepwalkers 2017 “シンセカイ” 2017.7.13 LIQUIDROOM
1. Perfect Planner
2. 神話崩壊
3. Rollin’ 
4. Jamming
5. 2XXX
6. Sleep Tight 
7. Sundown 
- ドラムソロ -
8. デジ・ボウイ
9. Bloody Mary
10. 月面歩行
11. 環状遊泳
12. DNAの階段
13. アキレスと亀
14. Worker Ant
15. YAH YAH YAH 
16. 猿は木から何処へ落ちる
17. 新世界 
18. 日食 
[ENCORE]
19. 夜明け
20. 午夜の待ち合わせ 

 

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