生きるよろこびを描いた画家『熊谷守一展』 東京で久々の大回顧展が開催決定

レポート
2017.7.26
熊谷守一 《猫》 1965年 愛知県美術館 木村定三コレクション

熊谷守一 《猫》 1965年 愛知県美術館 木村定三コレクション

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猫、花、虫などの身近な自然を、明るい色彩と単純化された形で描き、97歳まで現役だった洋画家・熊谷守一。没後40年となる今年、東京で久しぶりとなる大回顧展の開催が決定した。東京国立近代美術館『没後40年 熊谷守一 生きるよろこび』の記者発表会より、知られざる魅力に迫る展覧会の内容を探ってきた。

スケッチや日記もーー 200点超から探る創作の秘密

熊谷守一は没後40年経った現在、ポピュラーな画家ではないかもしれない。しかし、身近な自然を愛でた温かな作風で多くの根強いファンを獲得している(筆者もそのうちの一人だ)。画業の他にも、ひょうひょうとした味わいを持つエッセイ『へたも絵のうち』がロングセラーとなり、今も読み継がれているようだ。

しかし、穏やかでユーモラスな作風の背景には、科学者のような鋭い観察眼、考え抜かれた制作方法が潜んでいるという。本展では代表作《雨滴》、《猫》をはじめとした油彩画のほか、日記やスケッチなどの資料を含めた200点以上が一堂に会す。最新の研究成果を踏まえ、今までの熊谷守一像を刷新するような展覧会を目指すという。

熊谷守一 《雨滴》 1961年 愛知県美術館 木村定三コレクション

熊谷守一 《雨滴》 1961年 愛知県美術館 木村定三コレクション

「仙人」と呼ばれた画家の、意外な面に迫る

97歳まで生きた熊谷が、今日知られる画風にたどり着いたのは、意外にも60歳を超えてから。そこまでの制作を辿ると、実に様々な制作方法を試してきたことがわかる。暗闇や逆光などの特殊な条件のもと見え方を探ったり、同じ柄を同じ画面の中で繰り返し登場させて動きを表現したりーー。

長い髭をたくわえた風貌から当時の人々は「仙人」と呼んでいたそうだが、その画家人生をたどるほどにストイックな生涯現役の画家の姿が浮かび上がってくるようだ。

熊谷守一 《蝋燭》 1909年 岐阜県美術館

熊谷守一 《蝋燭》 1909年 岐阜県美術館

家族の死、病を乗り越えて描いた「生きるよろこび」

97歳まで生きた熊谷だが、その長い人生の中では、戦争を挟んで5人の子供のうち3人を次々と亡くしたり、自身も病を抱えるなど様々な出来事があった。

しかし、熊谷の作品からは「生きるよろこび」が溢れている。まどろむ猫の柔らかさと体温、ひらひらと元気に舞う揚羽蝶の躍動感、ハルシヤ菊にこっそり隠れるカタツムリの愛らしさ。そこには、死や病を知る者からのいのちへの賞賛が描かれているようだ。

熊谷守一 《鬼百合に揚羽蝶》 1959年 東京国立近代美術館

熊谷守一 《鬼百合に揚羽蝶》 1959年 東京国立近代美術館

「命っておもしろい」と思ってもらえる展覧会にしたい

記者発表会にて、東京国立近代美術館館長・神代浩氏は「熊谷の長い生涯の中では、様々なことがありました。しかし、生きること、命を祝福することを決してやめなかった熊谷の人生とその作品は、今を生きる私たちに勇気と励ましを与えてくれるものだと信じております」と、画家の魅力を語った。

また、東京国立近代美術館 企画課長・蔵屋美香氏は、熊谷守一の作品に初めて触れる人へこんなメッセージを送った。
「本展で『かわいいお爺さん』『猫の画家』という今までの熊谷守一のイメージを変えたいと言いましたが、最初はそれが入り口でも良いと思います。そこをきっかけに暗い作品を含めたいろんな試みを知ってもらい、別の形で『命っておもしろい』と思ってもらえるのでは。間口は広く、展覧会を見たらギュッとすぼまって、出た後は気持ちよくパッと広がるような、そんな展覧会を目指したいと思います」。

熊谷守一 1971年 (91歳) 撮影:日本経済新聞社

熊谷守一 1971年 (91歳) 撮影:日本経済新聞社

本展は2017年12月1日(金)から2018年3月21日(水・祝)まで、東京国立近代美術館にて開催予定。往年のファンも、初めて出会う人も、熊谷守一のあたたかくて深い作品世界を存分に味わえる展覧会になりそうだ。

東京国立近代美術館

東京国立近代美術館

 
イベント情報
没後40年 熊谷守一 生きるよろこび​

会期:2017年12月1日(金)~2018年3月21日(水・祝)
会場:東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー
休館日:月曜日(ただし 1月8日、2月12日は開館)、年末年始(12月28日~2018年1月1日)、1月9日(火)、2月13日(火)
開館時間:10:00~17:00(金、土曜日は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
観覧料:一般 1,400円 / 大学・専門学校生 900円 / 高校生 400円
*当日券の料金。*中学生以下、障がい者手帳等をご提示の方とその付添者(1名)は無料。
主催:東京国立近代美術館、日本経済新聞社、テレビ東京
展覧会特設サイト:http://kumagai2017.exhn.jp/
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