創立95周年! OSK日本歌劇団 新橋演舞場公演レビュー「夏のおどり」製作発表レポート

2017.7.28
レポート
舞台

OSK日本歌劇団(左から)悠浦あやと、楊琳、高世麻央、桐生麻耶、真麻里都


2017年に劇団創立95周年を迎え、来るべき100周年に向け力強く歩み続けるOSK日本歌劇団の95周年記念公演、レビュー『夏のおどり』が、8月31日~9月3日、新橋演舞場で上演される。

関西を拠点に活動を続けるOSK日本歌劇団は、大正11年に「松竹楽劇部」として大阪に誕生した女性だけの歌劇団。宝塚歌劇団、姉妹劇団である松竹歌劇団(SKD1928~96)と並ぶ、日本三大少女歌劇の1つとして人気を博してきた。特にダンスの高いレベルが有名で「ダンスのOSK」とも称され、レビュー黄金期を牽引した存在だった。

だが、レビューという芸術自体が時代の波の中で難しい局面を迎えたことから、平成15年には一時解散という最大の難局に直面するも、「OSK存続の会」が立ち上げられ、劇団員自らが街頭で署名活動をするなど東奔西走の尽力により、見事復活を果たして平成16年には大阪松竹座で『春のおどり』を上演。公演は大成功を収め、以降OSK日本歌劇団の活躍の場は再び大きく広がっていった。

近年では戦国武将「真田幸村」を扱ったミュージカルや、ボカロミュージカル『カンタレラ~愛と裏切りの毒薬~』、ダンスレビュー『ROMEO&JURIET』、桃太郎伝説に材を取り、想像の翼を広げた野心作『鬼の城』など、幅拾い演目を上演。伝統を受け継ぎながら、新たに革新的な作品にも挑戦し、劇団創立100周年という大きな節目に向かって、躍進を続けている。

そんなOSK日本歌劇団95周年を祝して上演されるレビュー『夏のおどり』公演を前に6月24日都内で記者懇親会が開かれ、松竹株式会社取締役副社長安孫子正、OSK日本歌劇団トップスター高世麻央、男役スター桐生麻耶、楊琳、真麻里都、悠浦あやとが出席。公演への抱負を語った。

まず、安孫子副社長から「3回目となる新橋演舞場でのOSK日本歌劇団のレビュー公演に、大変期待している。松竹から生まれたOSK日本歌劇団には、一時期残念なことに松竹から離れて活動されていた時期があり、解散の危機も経験されたが、現在のトップスターの高世さん、また桐生さんら20名の劇団員の頑張りで、存続が叶いまた松竹ともご縁が結ばれて、今日を迎えている。楊さん、真麻さん、悠浦さんらはその存続の会以降の入団で、先輩たちが苦難の中築いたOSKの歴史を担っていく存在として活躍している。大阪松竹座で上演された『春のおどり』を一部手直しして『夏のおどり』として上演させて頂くが、和ものレビューの『夜桜~夢幻義経譚』洋物レビューの『Brilliant Wave~100年への鼓動~』共に素晴らしい内容で、個人的には掛け値なしに日本一のレビュー劇団だと思っているので、是非多くの方に新橋演舞場に足をお運び頂きたい」という挨拶があった。

続いて、トップスターの高世麻央から「おかげ様にてOSK日本歌劇団は今年創立95周年を迎えさせて頂きました。先日の大阪松竹座での『春のおどり』の公演、大阪松竹座で大正11年に生まれた劇団が、今こうして95周年を迎えられた時に、また大阪松竹座の舞台で公演させて頂いていること、昭和5年から歌い継がれております「桜咲く国」というテーマソングを、今も歌わせて頂けていることを奇跡のように思っております。今回もまた昨年に引き続き、歴史ある新橋演舞場という素晴らしい劇場で、私たちOSKの公演をさせて頂けること、松竹様のお力をお借りして、東京のお客様にOSKを観て頂けると思いますと、今、すごくワクワクしております。95周年に、100年に向かって歩んでいくOSKの色々な魅力が詰まった公演となっておりますので皆様のお力をお借りして1人でも多くの方に観て頂けたらと思っております」と力強い言葉が聞かれた。

高世麻央

桐生麻耶は「昨年新橋演舞場の舞台に立ったことが、ついこの間のような感じが致しまして、1年というのは本当に早いなという風に思っております。今回は38人で新橋演舞場の舞台に立たせて頂くのですが、松竹座で公演をした後、実際に本番を経験したからこそ見える課題というものがございまして、その課題にもう1度トライできるということは、私たち舞台人にとりましてはとても最高なことなんです。これからお稽古に入っていくわけなんですけれども、その課題をよりクリアにして、もっと良い舞台を東京に観に来てくださるお客様にお伝えできたらなと思っております。また、先ほども、高世さんと私は存続の会の頃からというお話がありましたが、大袈裟に聞こえるかも知れませんが、1度しかない人生というのを、今私たちはOSKに賭けているのであろうな、ということを最近よく思うようになりました。もちろん人が生きているということは、幼くても年配になっても何時でも素敵なことだと思いますが、その中でも世間で言う1番良い時期をOSKの団員として過ごさせてもらって、尚且つこんなに素敵な舞台に自分たちの表現ができる幸せを噛みしめている日々なので、今回の演舞場の公演もしっかりと悔いのないように務めたいと思いますので、是非皆さん何度でも観に来て頂けたら嬉しいです」

桐生麻耶

楊琳は「私はただシンプルに本当にたくさんの方に観に来て頂きたいと思います!ですので最大限皆様のお力をお借りして、ご助力頂けたら嬉しいです」

楊琳

真麻里都は「まだ東京の方の中でOSKを観たことがないという方がたくさんいらっしゃると思います。東京ばかりでなく、北海島から沖縄までたくさんの方にOSKの名前を知って頂きたいと思いますので、その為にも私たちは頑張りたいと思います。8月の31日から9月3日ので、新橋演舞場で私たちOSK爛漫の桜を咲かせますので、どうぞ皆様よろしくお願い致します」

真麻里都

悠浦あやとは「この劇団創立95周年という節目の年に、私がこうして劇団員として携わることができるというのは本当にすごいことだなと思っています。95年前ってどういう時代だったんだろう、どういう風に劇団ができていったんだろう、という風に今改めて95年前を考える時がありまして、今更なのですが、95年前の日本を勉強させて頂いたら、とてもじゃなく女性がレオタードを着てバレエを踊るという自体が斬新なことで、とても貴重な団体だったんだなと思いました。もちろん女性がスポットライトを浴びる自体が厳しい時代だったのかと思いますが、そのような中で先輩方が強い意志を持って劇団をつないでこられたのだと、わからないことも多くありつつも、感じるものがありました。今は映像などで世界中の舞台を観られる時代になっている中で、もしかしたら私たちの舞台はアナログなものかも知れませんが、こうしてお客様が毎日劇場に足を運んでくださって、スタッフさんと共にその日、その時、人間同士が力を合わせて作るという、ある意味今の時代にとって貴重な存在なのでは、と今私は思っています。そうした、アナログだけれども、皆様がリアルタイムで同じ劇場空間の中で観よう!と思ってくださる舞台を、私たちも十分楽しんでたくさん表現したいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します」と挨拶。男役5名の揃い踏みでありつつ、それぞれの話しぶりに個性が感じられる興味深い時間となっていた。

悠浦あやと

引き続いて質疑応答が行われ、第一部の日本物レビュー『桜鏡~夢幻義経譚』で演じるそれぞれの役柄と演じる上で大切にしていることは?という質問に、源義経を演じる高世は「牛若丸の時代から壇ノ浦までが早いテンポで描かれている中で、皆さんがよくご存知の歴史上の人物をイメージを壊さずにかつ、如何に私ならではの牛若丸であり義経として表現できるかを追及したい」と語ると、弁慶役の桐生は「高世さんと1期違いという二人の関係が、役柄に投影される部分があっても良いのかな?」と弁慶役に大きなやりがいを感じていることを述べつつ「弁慶がやれるのは桐生さんしかいない!と皆から言われて、それはどうなのかと」と、女性らしい戸惑いをチラリと覗かせ「でも嬉しいです!」と力強く言い切り、笑いを誘う一幕も。

桐生麻耶、高世麻央

また那須与一を演じる楊は「扇を射貫けなかったら死ぬという緊張感と覚悟を全身で表したい」と決意を語った後、「細かい見どころポイントはフィナーレで高世さんが履かれているキラキラの足袋です! 作・演出の尾上菊之丞先生こだわりの足袋なので、是非お見逃しなく」と、ピンポイントを突いた見どころをあげて爆笑を誘い、場は更に和やかに盛り上がる。

高世麻央、楊琳

平教経を演じる真麻は「平家側が4人しかいなくて、内3人は公達なので戦場に出るのは私1人です」と驚きの事情を語り「平家側なので動きに気品が出るようにという演出の先生の指示に、戦場で気品のある動きはしたことがないので、悩みましたが常に姿勢に気をつけています」とこちらもこだわりポイントを披露。佐藤継信を演じる悠浦は「義経を身を挺して命を賭けて守る役柄なので、外国人の方が観ても『サムライ!』と言って頂けるような、カッコいい死に様を観て頂けたら」と、優しい柔らかな話し方と笑顔で語り、サムライとのギャップの魅力を彷彿とさせていた。

また、『Brilliant Wave~100年への鼓動~』のそれぞれのおススメ、見どころは?という質問に、高世はまず「選べません!」とまさに嬉しい悲鳴状態。「どの場面も切っても切っても金太郎飴のように素晴らしいんです」と語って、これも朗らかな笑いを誘った。その中で「作・演出の中村一徳先生が『95周年を迎えたということは、100周年への道が始まっているということなんじゃないか』と言ってくださった」と噛みしめるように話し「『100年への輝く道』の場面では、これまで紡いできた歴史を伝えていこうという素晴らしい歌詞を書いてくださっているので、ダンスの魅力だけでなく歌詞なども含めてご堪能頂きたい」と深い思いを述べた。桐生は娘役を肩に乗せる大技のリフトがあると明かし「女性同士でなんということをさせるのか!(笑)という振りで」と笑わせつつ、「信頼して頂けているからこそついた振りだし、お客様にも『さすがOSKね』と言って頂ける振りなので、失敗のないよう務めたいし、他にも様々なリフトがあるのでお楽しみください」と語ると、呼応するように悠浦が「お客様に『女性同士でどうやって持ち上げているの?』『どうやって回しているの?』とよく訊かれますが、それは企業秘密です」と茶目っ気たっぷりに話したのち「女性同士での大技も先輩方から受け継いできたものなので見どころです」とOSKの誇りを感じさせていた。

悠浦あやと、真麻里都

また真麻はやはりすべてが見どころだとしつつ「敢えてあげると、フィナーレナンバーで男役が白シャツの正式な黒燕尾で、ズラリと階段に居並んで踊るシーンはとても久しぶりなので、ゾクゾクしながらやりたいし、それを感じて頂きたい」と、歌劇の男役ならではの美学を語った。一方楊は「夏はもともと暑いものですが」と前置きしながら「なぜ演舞場だけこんなに気温が高いのか?!」と気象庁が言うくらい(笑)、身体中からパワーを出してヒートアップして行きたいと思います。気象庁公認で頑張ります!」と、実にユニークな見どころ発言で、会場全体を笑いの渦に巻き込み、OSK日本歌劇団が放つ、夏の終わりの熱い、熱い公演に、大きな期待が高まる時間となっていた。

取材・文・撮影=橘涼香

公演情報
OSK日本歌劇団
レビュー『夏のおどり』

第1部『桜鏡~夢幻義経譚~』作・演出・振付:尾上菊之丞
第2部『Brilliant Wave~100年への鼓動~』作・演出:中村一徳

 
■日時:2017年8月31日(木)~9月3日(日)
■会場:新橋演舞場
■出演:高世麻央/桐生麻耶/楊琳/真麻里都/悠浦あやと/朝香櫻子(特別専科)/緋波亜紀(特別専科)/OSK日本歌劇団劇団員
■公式サイト:http://www.osk-revue.com/