小田和正のサプライズ登場にも沸いた、スキマスイッチ3時間超の濃密ライブ

レポート
2017.8.7
スキマスイッチ / 小田和正

スキマスイッチ / 小田和正

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スキマスイッチ TOUR 2017“re:Action” S.S vs S.S 2017.7.24  中野サンプラザ

スキマスイッチが、12組のミュージシャンをプロデューサーに迎えて制作したセルフカバーアルバムをリリースする――そのニュースが発表されたのは昨年冬のことで、同作『re:Action』のリリースは今から約半年前に遡るが、その報せを聞いた時も、また実際に音源を聴いた時もかなり驚いた。なぜなら、スキマスイッチは2003年のデビュー以来ずっと大橋卓弥と常田真太郎のセルフプロデュースでやってきたうえに、自分たちの曲を自分たちの手で、何度も生まれ変わらせてきた人たちだったからだ。ここのところ年に1作品ほどのペースでリリースされているライブ音源を聴けば彼らの“アレンジの鬼”っぷりを堪能することができるし、その引き出しの多さに唖然とさせられることだろう。そうやって頑なに自分の城を守り続けてきた人たちがプロデューサーを招いたこと、それによって、これまでも毎回異なる表情を見せてくれていた各曲がさらなる変化を遂げていたことが、とにかく衝撃的だったのだ。

前置きが長くなったが、そんなアルバム『re:Action』を引っさげた全国ツアーの追加公演として行われたのが『スキマスイッチ TOUR 2017“re:Action” S.S vs S.S』である。『re:Action』制作に携わったミュージシャンを各地に招き、デビュー後初(!)のツーマン形式で行われた同ツアーだが、追加公演の2日間はライブタイトルから察せられるように“スキマスイッチ vs スキマスイッチ”という異例の形式だった。以下のテキストでは、7月24日、中野サンプラザ公演の模様をレポートしていきたい。

舞台裏の生中継も含んだオープニングムービーの放映後、ステージに現れたのは大橋と常田の二人のみ。そう、“スキマスイッチ vs スキマスイッチ”と題されたこの日は、前半は二人きりのアコースティック、後半はサポートメンバーを迎えたバンド編成、という二部構成だったのだ。「どうも、スキマスイッチでーす!」と大橋が元気に挨拶し、届けた1曲目は2003年リリースの「君の話」。続く「夏のコスモナウト」は原曲からテンポを大幅に落とし、しっとりしたバラードへと変貌させていた。「種を蒔く人」にて、低~中音域でそっと語りかけるようなボーカルと鍵盤ハーモニカの音色が誰の心にもある原風景をやわらかに描くと、一転、「ハナツ」では、常田が奏でるフレーズに乗って大橋の歌声が奥へ奥へと羽ばたいていく。後のMCで話していたように、スキマスイッチはデビュー以前/当初の時期に二人きりで演奏をしにいく機会が多かったらしく、この編成でのライブは二人にとって原点回帰の意味があるとのこと。そんなサウンドの中で<向き合えた分だけ重くなり ぶつかり合うたび頑丈(つよ)くなっていく>と、二人が築いてきた関係性を示すようなフレーズがまっすぐに唄われたのだった。

開演とともにその場に立ち上がったオーディエンスはじっくり聴き入っている様子だったが、当の本人たちは「……すごい緊張感あるね」(常田)、「だよね。どうしたの、みんな? そうやって驚かそうとして!」(大橋)と、MCに入った途端にラフなテンションに。「ここからどんどん暗くなっていきますよ」という大橋の謎の宣言を聞いてオーディエンスは続々と着席していったが、そのあと始まったのは「Hello Especially」の軽快なイントロ。再び立ち上がるオーディエンスに対して、大橋、「立つんかい!」と切れ味良くツッコむが、弾むようなリズムに誘われて客席からは手拍子が起きていったのだった。

「Ah Yeah!!」で前半戦・アコースティックパートを終えたところでインターバル。対バン形式の他公演ではここでステージ転換が行われたため、その間大橋&常田がトークをしていたそうだが、転換なしだったこの日もトークパートは健在。『re:Action』制作の経緯やレコーディング時のエピソード、今回のプロデューサー陣は“自分たちと同じくセルフプロデュースでやってきたミュージシャン”にこだわって選定したのだということなど、アルバムやツアーにまつわる話を聞かせてくれた。

衣装チェンジした大橋と常田、そして村石雅行(Dr)、石成正人(G)、種子田健(B)、浦清英(Key)、松本智也(Per)といったおなじみの面々が登場し、後半戦・バンドパートへ。「どうも、スキマスイッチでーす!」と大橋の声が気持ちよく響くなか、バスドラのビートに合わせて手拍子が起き、そのまま「パラボラヴァ」がスタート。歌詞に合わせて両手を広げるオーディエンスの姿を目一杯の明転が照らし出し、開放的な幕開けとなった。ステージ上の人数は一気に増えたが、大橋が自由にのびのびと唄い、そのために常田がアンサンブルの舵を取る、という二人のバランスはそのまま。民族音楽風の「雫」、白熱のアウトロでハイライトを描いた「ズラチナルーカ」、『re:Action』唯一のセルフプロデュース曲「奏(かなで)re:produced by スキマスイッチ」、この日二度目の「Ah Yeah!!」――と多彩なアプローチが続くが、サウンドがどれだけ華やかになろうとも結局軸は変わらないのだということが、このバンドパートからはよく伝わってきた。

全体的に原点回帰色が強いライブだったが、だからこそ、二つの新曲の存在は特に重要なものだった。1曲目「さよならエスケープ」は既にCMで放映されている曲だが、個人的にはこのツアーで初解禁となった2曲目「ミスターカイト」が強く印象に残っている。うだつが上がらぬ主人公の葛藤を静と動を行き来するサウンドで表現した同曲は、熱量も情報量も膨大だが、Aメロ→サビ→Aメロで終わるコンパクトな構成で、スキマスイッチがこれまで発表してきたどの曲にも似ていないものだったのだ。

――というライブの展開やセットリストからも分かるように、リリースに際して行われたツアーであるにもかかわらず、アルバム再現のような内容にはならなかったことが今回のツアーの大きな特徴だった。そういうライブの構成からは『re:Action』の“その先”を打ち出したいという二人の意志を読み取ることもできるが、さらに言うと、“吸収→還元→進化”という一連の流れを分かりやすく表すことにより、音楽の楽しさと際限ない可能性を全国の人たちと分かち合いたいという純粋な気持ちが二人の中にあったのでは、と考えることもできる。十数分に及んで雑談を繰り広げるラフなMCは相変わらずだったが、いつにもまして、アルバムやツアーに関する説明を丁寧にしていたのはおそらくそのためだろう。デビューから14年。周囲からは中堅やベテランと呼ばれる立場になりつつあるが、初期の頃からよく言っていた“アーティストではなく近所のお兄さんのような存在でありたい”という部分は変わらないまま。本編ラストの「トラベラーズ・ハイ」、常田やサポートメンバーの渾身のプレイを見て大喜びでエアギターしたりタオルを振り回したりしている大橋の姿は、とても無邪気なものだった。

そしてこの日はこれだけではなかった。アンコールではなんと、シークレットゲストの小田和正が登場! 「スキマにはいつもいつも世話になってまして、今日少しでもそれをお返しできないかと思ってやってまいりました。元気なうちに。(拍手が起こる)……お客さん、ありがたいねぇ。分かってる、君たち?」と早速炸裂する小田和正節に、大橋と常田がタジタジになっている様子が微笑ましい。この3人+サポートバンドというこの日ならではの編成で披露したのは、常田リクエストの「恋は大騒ぎ」(常田自らメインボーカルをとる場面も!)、初めの三音で爆発的な歓声が上がった「ラブ・ストーリーは突然に」、そして『re:Action』収録の共作曲「君のとなり produced by 小田和正」の3曲。「ラブ・ストーリーは突然に」では企むような表情で視線を合わせた大橋&小田が客席へ駆け出す場面もあり、場内は瞬く間に興奮に包まれていった。

さらに、熱気冷めやらぬ客席へ「ていうか、もう帰りなさいよ! そうやって呼べば出てくると思って!」「でも小田さん出てきてすっごい緊張したから、僕も騒ぎたいと思ってたんですよ!」(大橋)と、天邪鬼を通り越して逆に素直な言葉を投げかけたあと、ダブルアンコールとして「全力少年」を演奏。近年同曲で恒例になっているロングトーンを用いたコール&レスポンスを会場一体となって楽しみながら、3時間超の濃密なライブを締め括ってみせた。しかし、ツアーファイナルで発表されたように、9月13日には「さよならエスケープ」「ミスターカイト」を含む新曲4曲を収録したニューシングルをリリース、そして2018年には全国ツアーを開催、とさらなるアクションも続々と用意されているというスキマスイッチ。前代未聞の試みであった『re:Action』を経て繰り出す次なる一手は、一体どのようなものになるのだろうか。今後の展開がますます楽しみになるようなツアーだった。


取材・文=蜂須賀ちなみ

セットリスト
スキマスイッチ TOUR 2017“re:Action” S.S vs S.S 2017.7.24  中野サンプラザ
 
アコースティックパート
1.君の話
2.夏のコスモナウト
3.種を蒔く人
4.ハナツ
5.Hello Especially
6.Ah Yeah!!
 
バンドパート
7.パラボラヴァ
8.雫
9.ズラチナルーカ
10.奏(かなで)re:produced by スキマスイッチ
11.さよならエスケープ
12.ミスターカイト
13.キミドリ色の世界
14.キレイだ
15.Ah Yeah!!
16.トラベラーズ・ハイ
[ENCORE]
17.恋は大騒ぎ(オリジナル:小田和正)
18.ラブ・ストーリーは突然に(オリジナル:小田和正)
19.君のとなり produced by 小田和正
[W ENCORE]
20.全力少年
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