un:c、初のアニメ主題歌決定で胸中語る 「“好きだ”と思ってやってきたことは全部無駄じゃなかった」
un:c 撮影=風間大洋
中国で実際に行われている、ロボット同士の対決をショーアップした大会をモチーフにDJIが手がけたアニメ『ROBOMASTERS:THE ANIMATED SERIES』。リアリティを追求し、細部までこだわり抜いた世界観を持つこの作品。その全貌が徐々に明らかとなるにつれ、日増しに期待が寄せられている。SPICEでは今回、そのオープニングテーマを担当するun:cにインタビュー。歌唱に込めた想いや自身初の実写MV撮影に挑んだ際のエピソード、そして作品への期待や感想など、じっくりと語ってくれた。MV撮影時の様子を収めた写真とともにお届け!
——『ROBOMASTERS:THE ANIMATED SERIES』(以下、ロボマス)のOPテーマにun:cさんが歌う「super nova」が流れるわけですが、OP映像が完成したらしく、今日は映像を持って来ていただいてるんです。
本当ですか! 僕もまだオープニング観てないんですよ。
——じゃあ、まずは観てみましょうか。
観ましょう、観ましょう。
(視聴中)
おぉ〜、すげえ! 素晴らしい、ワクワクする感じ。……いやあ、本当に主題歌になるんですね(笑)。実感が沸きました、今。
——un:cさん、アニメの主題歌って初めてですよね?
初ですね。漫画のイメージソングとか、アーケードゲームの曲を歌わせてもらったりはあるんですけど、アニメの主題歌になるのは初めてです。
——話が来たときは率直にどう感じました?
いやもう、ビックリしましたね。以前、ロボマスの担当の方と他のお仕事を一緒にしたときに「アニメがすごく好きなんです」「主題歌をやってみたいと思ってるんです」っていう話をしたことを覚えてくださっていて今回のお話をいただいたんですけど、なんというか、コンペとかに出したわけじゃないから……実は過去に何回かコンペに参加した事があるんですけど、落ちちゃって。
——すごい数の応募がくるらしいですね。
そうなんですよ。今回はゼロから作る企画という事でお誘いをいただいて、「ぼくで本当にいいのかな?」とも思ったんですけど、今まで積み重ねてきた事とか「タイアップを取りたい」と口に出してきたこと、きっと色んなことが結びついて形になったんだなって、率直に嬉しかったですね。まずは応援してくださってるリスナーのみなさまに感謝を伝えたいと思いました。
©RoboMasters
——主題歌のお話があってから作品の背景や中身を知っていったんでしょうか。
最初はまったく無知で、今もまだ勉強中なんですけど、中国で実際に行われている、日本で言うところの『ロボコン』がもっとエンタメ性に富んだような、総合格闘技みたいな世界があって。
——ショーになっている。
そうですね。ただのコンテストではなくショーアップされていて、出場者がヒーローなんですよ。画面に出てくるだけで歓声がすごくて。競技自体もどこから見たらいいのかっていうくらい展開が早いし、チーム戦だったりもするのでゲーム性が高くて何がどう転ぶかわからない。そういう世界があるっていうことを映像を交えながら教えていただきました。
——すごいですよね。僕の想像するロボット競技って、玉を運んで何個入ったとか、そういうイメージで止まってました。
僕もそうでした(笑)。NHKでやってそうなやつ。それが今やドローンレースとかもやっていたり、アメリカではお互いのロボットを潰し合うようなデスマッチもあったりして。技術的に本当にすごいところまで来たんだなぁって。
©RoboMasters
——そういった世界が描かれているロボマスですが、un:cさんはこの作品のどんなところが好きですか?
僕は普段からアニメをめちゃくちゃ観るんですけど、そういうアニメ好きからみても、ものすごく世界観の描写が丁寧で凄いと思いました。現時点では1話しか観れていないんですけど、既にこれからどうなるんだろう?っていう期待感がすごく強い。特に最後の、主人公が心を閉ざすほどのデッカい闇があるっていうことが分かるところとか、いろんな命題が1話の中にもたくさんあって丸く収まらない感じ。そこが僕は好きなんです。
——伏線があるんだろうなって思わせてくれる。
そう、たくさんそれを匂わせていて。今までの僕の経験からすると、1話が最終的に大きな伏線の回収につながることが多いと思うんですね。このシーンは最終話のここにつながっているとか。例えば部長が海に飛び込むシーンにしても、普段は絶対にそういうことをしなそうな人が熱くなってそれをするわけだから、それって絶対に今後タンタン(主人公)が心を開いていく上でのキーポイントのキャラだと思って観ていたんです。だから、さっき観たオープニング映像で2人が揃って一緒に扉を開けるカットって、きっとそういう意味合いなんじゃないかって。……ちょっといま分析してるんですけど(笑)。
——おぉー!
そういういろんな伏線がすごく丁寧なので。そこが一ファンとして楽しみですね。
——読みますねぇ。完全にアニメファン的視点からの意見でした。
いやぁ、好きなんですよ。こういう考察をしながら観るのが。
©RoboMasters
——それと比べたら遥かに浅はかな僕の視点ではあるんですが、一人の少年の成長っていうことも根底のテーマとしてはあるし、何かの目標に向かっていくという前向きな要素もあると思うんです。だから主題歌もそういった要素を踏まえた曲になっていて。そのあたりは、un:cさん自身ともリンクする部分はあったんじゃないでしょうか。
<泣いたっていいんだ>っていう歌詞が、僕はすごくグッとくるんです。何があっても結局未来に向かっていくっていう。そのためには過程がどんなにみっともなくても、自分が好きなものは絶対に誰にも邪魔されちゃいけないものだと思うし、誰かに邪魔されて辞めちゃうようでは好きになったものに対してもったいないとも思うので。だから、どれだけみっともなくても前に進んでいくっていう、これって僕は非常にアニソンらしいなって思う歌詞ですごく大好きなんです。
——僕は最初に聴いた時、これはun:cさんが書いたのかな?って思ったくらいハマってます。
あ、本当ですか! ロボマスターズっていう一つの大会に向けてみんなで頑張っていることを通して、福山(沙織)さんがとても普遍的な、現代ではみんなが抱えているようなテーマを描いていらっしゃって。……夢というものをどう捉えているかは100人いたら100通り、それぞれ違うと思うんですけど、でもみんなが共通して抱えている想いとしては、「もっと前に行きたい」っていうことだと思うんですよね。それは普遍的なことで、でも普遍的なことを伝えるってすごく難しい。僕が考えてそうな歌詞だと感じてもらったとしたら、それはこの歌詞に僕のフィーリングがすごく合っていて、自分の言葉として発しやすかったからだと思うんです。
©RoboMasters
——なるほど。
つまりそれって、アニメを観るみんなにとってもそうなんじゃないかって。だからすごく良い歌詞だなと思ってます。
——アニソン自体、背中を押してくれるようなメッセージを持った曲って多いと思うんですけど、アニソンを数多く聴いてきているun:cさん的観点でいうと、やはりそうあるべきものなんでしょうか。
アニメって2次元で、普段体験できないファンタジーを観るものだと思うんです。やっぱりそこには夢と希望があってほしい。だからそういったメッセージや歌詞に元気付けられるし、アニソンってこうだよねっていう全体的なイメージはありつつも、その中でどの曲にもそれぞれの命題があって、それがやっぱり一貫して前向きな……どれだけ転んでも立ち上がれ、貫き通せみたいなメッセージがアニソンにあるから、僕はアニソンが好きなんですよね。
——中にはトリッキーな世界観であったり、全く冒険とは程遠い日常系のアニメもあるじゃないですか。そっちよりは、王道の冒険要素があるものや前向きな気持ちにさせてくれる作品が好きだったり?
あまり意識したことはないんですけど、普段歌わせてもらっているボーカロイドの曲を見返しても、確かにそういうテーマを持った曲を選んでるかも。自分がそれを聴いて元気が出たから歌いたい、っていう気持ちがあって、そういう選曲になっているんだろうなって。……萌えソングも好きなんですけどね、それは聴く方が好きなので(笑)。
——では、この「super nova」の歌詞と曲が送られてきたとき、まずはどう歌おうと思いました?
いただいたときは既に仮歌が入っていて、そのときはまだ違う歌詞だったんですけど、それをまず何回も聴いて。あまり深い事は考えず直感的に歌いました。僕は大体、まず歌詞カードをプリントして色々と注釈を入れながら、自分がどう歌うかを決めるんですけど、この「super nova」に関しては全然迷わなかったです。レコーディングのときに「もっとこうしてくれませんか」っていう要望はあったんですけど、それも全部自分の範疇内というか、「わかりました!」って感じで。すごく自分にとってもパーソナルな歌詞の内容だったから、フィーリングが一番近いのかもしれないですね。
——サウンド面に関しては。
もう、どストライクでした。疾走感があってイントロでギターが歌うように入る感じとか、超絶好きですね(笑)。サビ前でブレイクが入るところなんか、もう「キター!」って感じでした。
——録り終えてみて、いま新たに感じている部分はありますか?
個人的には、これ以上は出ないっていうテイクを録れました。もちろん、イベントやライブで歌わせてもらうことでまた成長するとは思うんですけど、その時点で自分が込めたいものは全部出せたっていう満足感があって。初めてのタイアップでしたけど、キャラクターたちが映えるように、物語のバックで疾走感をもって流れるために、心意気みたいな部分はちゃんと入れられたと思います。
——さきほど実際にOP映像も観て、あらためて。
いやぁ、マジでアニメになるんだなぁって(笑)。
——そこに尽きますか(笑)。
本当にやっと実感が出てきました。
——先日には僕も立ち会わせていただいたMVの撮影もありました。MVはアニメのシーンも織り込みつつ、わりとun:cさんも出ていて。
わりと出てます(笑)。楽しかったですね、MV撮影。生身で何かを撮るっていうのはなかなか緊張しましたけど。でもそれは一番最初「撮りまーす」ってなったときだけで、すぐ楽しくなって全然リラックスしてましたね。まわりのスタッフの方もとても気さくな人だったし、それに恵まれたのも大きかったです。
——過去にも“踊ってみた”動画などは上げてましたけど、あれは大体セルフか近しい人に頼むわけじゃないですか。
そうですね。風間さんにもお願いしたり(笑)。
——そうそう(笑)。あれとは違って、たくさんスタッフさんがいて複数のカットを撮って繋ぐというやり方は初めてですよね?
初めてでしたね。でも面白かったです。映像もカッコ良かったし。
——それにun:cさんの動きがやっぱりキレキレなんですよ。
ありがとうございます。ああやって動いたときに褒めてもらえると、やっぱり演劇やダンスをやっておいて良かったなって思いますね。そういう風に自分が「好きだ」と思ってやってきたことは全部無駄じゃなかったんだなってっていうことが、ああいう瞬間に実感できるので。
——最初は実写をもう少し少なくする予定だったのが、un:cさんの動きがすごかったために実写パートを増やしたらしいです。
嬉しいです、本当に。普段から実際に動きはしないまでも、(動きの)妄想はするんですよ。自分の見たかったはずのものと乖離が出てくると、そこを修正しながら。僕はその繰り返しをずっとしていて。
——じゃあ、出演されたライブの映像とかも見返したり。
そうですね。僕はライブの映像と音源は終わったあとに絶対に確認します。それで客観的に見て「もっと動けたな」とか「もっと体力をつけなきゃダメだな」とか。
——過去のライブパフォーマンスと比べて変わってきている実感もありますか。
わりと余裕は出てきましたね。昔は息が上がったりすることもあったんですけど、今は通っているボイトレも相性がいいし、魅せる部分と歌に集中する部分のメリハリもだいぶ出てきました。でもロボマスのMVに関しては、ライブよりもどっちかといえばコンテンポラリーダンスとかジャズとかバレエ、そういう自分が学んできたことから引っ張り出した要素を、ちょっとだけライブ寄りにアレンジしたっていう感覚ですね。
——それプラス、過去に見てきたいろんなアーティストのMVもイメージとして脳内には蓄積されているでしょうし。
そうですね。
——一回クルッと回転したときの、監督さんのテンションの上がりっぷりもすごかったです。
でも、あの回ってるカット使われてませんでしたけどね(一同笑)。
——リスナーの方、ファンの方にぜひ観てほしいです。撮影では福山さんとも一緒でしたが、福山さんにお会いしてどのような印象を持ちましたか。
お話をした際に歌詞の作り方の話で盛り上がったんですけど、(歌詞は)自分の言いたいことに自然となっていく、というお話をされていて、福山さんの歌詞がなぜ普遍的なのかっていうことをお話して改めて気づきました。福山さんもいま前に進んでいる、現在進行形の人間であり、夢を見て自分の好きなものに向かって前進している強い女性なんだけど、歌詞を見ると転んでもいい、泣いたっていい、でも最後には未来に向かおう、みたいな想いがこもっている。実際にそう思っている人なんだなぁって、すごくシンパシーを感じました。
——前向きな言葉が並んでいますけど、それが嘘っぽくも綺麗事にも映らないんですよね。泥臭さみたいな部分もすごく伝わってくる。
人柄が出ていますよね。「一緒に行こう」みたいな、手を引っ張ってくれる強さがあって、それは言葉としてすごく強いんですよね。そういう言葉を歌にするって、覚悟がないとできないと思うんです。でもそれをチョイスしてきたってことは、それだけの福山さんの想いがこもってるんじゃないかなって。「君ならなれる」とかではなく、「ボクらがなろう」っていう。それが全てを体現しているんじゃないかなと思います。
——ああ、確かに。
歌詞を見ると、その人の人となりがわかりますよね。僕は2番の歌詞も好きで、<見てるだけじゃ絶対にヤだ!>っていうところ、ここなんかは絶対的に福山さん自身の言葉なんじゃないかな?って思うし、僕もそう思うんです。ただ手をこまねいて、自分では何も行動せずに思い描いているだけじゃ絶対に嫌だ、ちゃんと実現させていくんだっていう。
——<ヤだ!>のところのun:cさんの歌い方も、かなり感情がこもっています。
最初、「こんな感じかな?」っていう歌い方で歌ったら、成田(旬)さんのディレクションで「もっと“ヤだ感”を出してください」って言われて。かなり“ヤだ感”を出せましたね(笑)。そしたら一発OKをいただけて。メロディと歌詞がまた良いんですよ。
——MVでは2番もじっくり聴けますから注目してほしい箇所ですね。最後に、un:c自身のことでいうと、今後に向けていま思い描いていることや展望ってどんなものがありますか。
今年の取り組みとしては……もしかしたら「そんな適当でいいの?」って思われるかもしれないですけど、笑える年にしようと思っていて。そのための準備を年初めから色々としているから、下半期には色々と発表できることも増えるし、去年よりもあらゆる面でスピードが上がると思います。今はわりと、好きなことを好きにやらせてもらっていて、それがさっきの「芝居やってて良かった」みたいな感じで、また作品に還元していけることが今後もあるし、そこを楽しみにしてほしいなと思いますね。
——それプラスこれまでのライブ活動や動画投稿なんかも。
はい。あとはもっと自分の言葉を発信したいなって思うようになってきたので、その辺も期待してもらえたら。配信に関しても自分のやり方を色々と見直しつつ、新しいことにも挑戦していきたい。自分らしくやりたいなとは思っています。
——今後もアニメとは積極的に関わっていきたいですね。
いきます! ……お願いします!(笑)
——いっそ、声の仕事とかも良いんじゃないかと思うんですよ。
やりたいんですよね! そこもいままで勉強してきたことだし、どこかで披露できる機会もくるんじゃないかと思う。その時のために鍛錬をおこたらず……鍛錬っていうと堅苦しいので、楽しんでやっていけたらと思います。
——僕もこの年になって実感するんですけど、好きだからっていうだけの理由でこれまで色々とやってみたことが、後々の人生につながってくるんですよね。
つながるんですよね、絶対! やっぱり好きなことって自分を助けてくれるんですよ。もちろん、上を見れば上手い人なんていくらでもいるけど、そこを見続けると絶対に潰れてしまうし、誰かを羨んでもその人になれるわけでもない。それだったら自分を好きになる努力をしていいと思うし、自分大好きマンでいいんじゃないかって、最近は思います。他人のことは尊敬しつつ、「自分はこうだから」「これしか興味ないし」って、視野が狭くならない程度に好きにやった方が、後々自分を助けてくれるんですよね。
——それ、すごくいいスタンスだと思います。
最近、「〜のため」みたいに、自分以外に視野がいき過ぎるのも時に危険だなって思うこともあって。真面目に色んなことに向き合いすぎると、僕の場合はクリエイトや表現が義務とか責任になっちゃって不自由になることがあるんです。きっと聴いてくれる人はそれを期待していなくて、伸び伸びやっているアーティストの歌や行動を見たいと思ってくれてるんじゃないかな、と。だから、生き生きと伸び伸び、笑顔でやっていきたいなって思います。
取材・文・撮影=風間大洋
日中同時公開決定
WOWOW(先行放送):10月13日(金)22:30~毎週放送
同日に中国配信サイトより公開開始
その後、日本の配信各社より順次配信予定