アメリカの名作絵本原作ミュージカル『フロッグとトード』、がま君役の川平慈英が大阪で見どころを語る!

インタビュー
2017.8.10
『フロッグとトード』合同取材会にて(撮影/石橋法子)

『フロッグとトード』合同取材会にて(撮影/石橋法子)


春夏秋冬と巡る季節の中で2匹のカエルの心温まる友情を描いたミュージカル『フロッグとトード』が2年ぶりに再演される。原作はアメリカを代表する絵本作家アーノルド・ローベルの名作シリーズから「ふたりはともだち」を舞台化。ちなみに日本では「ふたりはともだち」内の一編「おてがみ」が、小学2年生の国語の教科書に掲載されている。春、冬眠から目覚めたかえる君(鈴木壮麻)は「手紙を一通ももらったことがない」というがま君(川平慈英)のために手紙を書いて、カタツムリ君に配達をお願いするのだが……。2006年の初演から今回で5回目の再演を数える本作。そのすべてにがま君役で出演してきた川平慈英が、大阪の合同取材会で見所を語った。

「他人にも自分にも寛容になれる。優秀な精神科医に出会うようなミュージカルです!」

ーー川平さんにとっては5回目の再演になります。

さすがに5年生にもなると物語も自分のなかで咀嚼できるようになりました。やっとM-1からM-20までの曲の流れがひとつの線として繋がった。前回まではシーンごとにレビューとして演じる力業のような部分があったけど、老いて力が入れられなくなった面もあるのかな(笑)。とはいえ、今回も平均年齢49歳のおじちゃん、おばちゃんが駆け回っていますね。

川平慈英

川平慈英

ーー年齢を重ねることで見えてくる部分もあったそうですね。

そうですね。歳を重ねると他人にも自分にも優しくなれる。作品のテーマでもある、人のために邁進する・生きる・尽力する。大切なひとのために生きる喜びみたいなものを感じられるし、伝えたいと思うようになりました。若いときは自分が目立って成就していれば満足だけど、それ以上に今は終わったときのお客さんとの一体感、高揚感や幸福感の共有を幕が開いた瞬間から目指しています。

川平慈英

川平慈英

ーー”優しさ”がひとつのキーワードに?

何にでも優しくあれというよりは、寛容さですね。仲間や同僚、クラスメイトなど、他人はこうあるべきだと要求しがちですが、相手のあるがままを受け入れる、自分が自分であることを受け入れる寛容さ、それでいいんだよと。がま君やかえる君も完全ではないし、負の部分も持っているけど、それさえもあなたなんだと受け入れる。修正、強制しようとしない。きみの足りない部分は僕が、僕の足りない部分はきみがと互いに補い合うことで、多少のでこぼこはあるけど、完全に近い形で穏やかな関係が築ける。見終わったあとに、家族や大切なひとに温かい気持ちで接することができて、なおかつ自分にも優しくなれる作品です。

川平慈英

川平慈英

ーー現代人にこそ、観て欲しいそうですね。

今は隙あらば「はい、あなた悪いことしました!」となって見つけたら、市中引き回しの刑か魔女狩りかっていうぐらい突いて叩いて、引きずり下ろして凄いじゃないですか。そっちばかりにみんなのエネルギーが集中している。自分もいつ弱点をこじあけられるか分からないと、鎧がないとビクビクしちゃう。そこをちょっと待って、もっと寛容な気持ちも忘れてはいけないんじゃないですかと。僕の場合、作品を通して自分の負の部分も受け止められるようになったので、精神衛生上とてもいい。すごく優秀な精神科医と出会ったような、メンタルヘルスにも効果的なミュージカルです(笑)。

川平慈英

川平慈英

「がま君は反面教師なキャラクター。『優しくしてー』の声にも無視しています(笑)」

ーー絵本が原作だけに、ビジュアル面も気になります。

視覚的には照明、装置、衣装がまばゆいぐらい興味の対象が満載で、ワンシーンごとに楽しめる”絵本”になっています。例えば僕のがま君のイボはボタン、カタツムリの殻はバックパックで表現したり。怖いバケガエルの目は光ります。またミュージカルとしては、2003年度トニー賞で最優秀作品賞、最優秀オリジナルスコア賞、最優秀脚本賞にノミネートされていますが、改めて曲の力を感じます。高橋亜子さんの訳詞もすばらしい。お子さんの耳にもスーっと入ってくる。装置も秀逸で、そこは鈴木裕美さんの細やかな演出の賜物ですね。

川平慈英

川平慈英

ーーがま君の役作りのポイントは?

いわゆる子供向けではなく完全に大人芝居です。子供たちも追っかけてこないと「置いてかれる!」ぐらいのペースでお話が進むので、そこが僕らにとっても面白いところ(笑)。子どもは一番手強いオーディエンスで、子供にはこの程度でいいでしょとやるとすぐ見抜きますから。がま君としては、「ムカつくけど目が話せない」「がま君の悪事を暴いてやる!」と反面教師な役回りで、観客の気持ちを前のめりにさせるのがポイントです。子供たちってヒール的なキャラクターが好きじゃないですか。だから「優しくしてー」と言われても、「えっ、何がいけないの?」と完全に無視しています(笑)。

川平慈英

川平慈英

ーー(笑)。今回、演出面での変更点は?

衣装がメッシュになるなど、より軽く改良されています。芝居は初心に返ってシンプルに。やっぱり再演を重ねるごとに物語の意味を掘り下げたり、理論武装して伏線を張ってみたりと、頭でっかちになりがちですよね。でもさすがに5回目ともなると、「楽しいのが一番!」となる(笑)。シンプルに好きなものは好き、嫌いなものは嫌いとすることで、最初と最後の繋がりも分かりやすくなった。枝葉を取り除くことで、幹がぶっとくなった感じです。人間、物事を単純にとらえると心も晴れますよね。メッセージもストレートに届くと思います。

ーー子どもから大人まで楽しめる作品と言えそうですね。

川平慈英

川平慈英

ある意味、生きる痛みや難しさを知っている大人の方が、途中でグサッとくる部分があると思います。毎回ラストシーンでは芝居をしながら自分でも涙してしまう。「ママ何で泣いてんの?」という観客の声が聞こえたり、相手を思う尊さに感じ入って「家に帰ったらもう少し旦那に優しくしよう」と思ったり。終演後、何十年かぶりに手を繋いで大阪城公園を歩いて帰るご夫婦がいるかもしれないですよ(笑)。そうやって、夕飯の時間まで、夫婦や家族の対話が続けば成功だなと。先日、初演から11年目にして遂に親子2代で観に来てくれた方がいたので、めざせ3世代での観劇です。ここまできたら還暦まで頑張りたい。そのときは、僕とかえる君役の鈴木壮麻さんとで、赤いちゃんちゃんこを着て出ようかな(笑)。

川平慈英

川平慈英

 
取材・文・撮影=石橋法子
 
公演情報
ブロードウェイミュージカル『フロッグとトード ~がま君とかえる君の春夏秋冬~』
 
■原作:アーノルド・ローベル
■演出:鈴木裕美
■上演台本・訳詞:高橋亜子
■音楽監督:八幡茂
■出演:川平慈英、鈴木壮麻、戸井勝海、中山昇、宮菜穂子、樹里咲穂
キーボード:飯田緑子
■公式サイト http://www.musical-frogandtoad.jp/

<志木公演>
2017年7月23日(日)13:00 開演 12:30 開場
会場:志木市民会館パルシティ
 
<東京公演>
2017年8月16日(水)〜20日(日)
■会場:東京芸術劇場 プレイハウス
 
<大阪公演>
2017年8月23日(水)〜24日(木)
■会場:森ノ宮ピロティホール
 
<埼玉公演>
2017年8月26日(土)〜27日(日)
■会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
 
<その他のツアー>
■宮城公演:7月26日(水)14:00 多賀城市民会館 大ホール
■日光公演:7月28日(金)14:00 今市文化会館
■入間公演:7月30日(日)14:00 入間市市民会館
■常陸太田公演:8月5日(土)13:00 常陸太田市民交流センター
■取手公演:8月6日(日)14:30 取手市立市民会館

■黒部公演:8月11日(金)14:00 黒部市国際文化センター コラーレ
■砺波公演:8月12日(土)18:30 砺波市文化会館
■新潟公演:8月14日(月)13:00 新潟県民会館
■都城公演:9月2日(土)13:00 都城市総合文化ホール 中ホール
■日向公演:9月3日(日)15:00 日向市文化交流センター

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