『Kalafina “9+ONE”』最終公演の地香港でふりしぼった「勇気と巡る思いのグルーヴ」
撮影:川杉あゆみ
Kalafina “9+ONE”in Hong Kong 2017.7.29(Sat) 香港・九龍湾国際展貿中心6階展貿廳3
Kalafinaが自身の9周年を記念して行ってきた『Kalafina“9+ONE”』ツアー。SPICEではその発表から準備期間のインタビュー、生中継放送、オフの密着動画など多面的にこの9年の道のりを追い続けてきた。
筆者としても千葉で行われたゲネプロ、東京国際フォーラム ホールAの公演と見させてもらってきたが、ここまで見続けて、彼女たちの思いを聴き続けたら最後を見届けない訳にはいかない。そう思い最終公演の地、香港に飛んだ。
会場は九龍灣國際展貿中心、香港中心街からタクシーで15分ほどの大型ホール、開場前からホールのエントランスには現地のKalafinaファンが何かを配っている。見るとオリジナルの香港公演の開催を祝うリストバンド。アンコールの時のお願いのチラシとともに入場者全員に配っていた。日本のライブではなかなか見られないファン同士の距離の近さは、めったに来てくれないアーティストが我が国に来てくれたという高揚感から生まれるものなのかもしれない。
会場は1300人超満員。東京のツアーで見られたような紗幕などは釣られていないが、背後には大型LEDのスクリーンがあり、シンプルながらこれまで行ってきた“9+ONE”と同じ構成だ。
(c)Woody, Billy/ED Production
一曲目は「to the beginning」からスタート。初速から会場の熱量は最高潮、それはそうだ、香港のファンはここまで待ち続けてきたのだから。もう彼らとKalafinaの間に遮るものはない。後は思いっきり音楽の旅を楽しむだけだ。
「香港のみんな!楽しんでいってね!」Wakanaの一言から「misterioso」「Lacrimosa」と立て続けに歌う。お立ち台に立つと会場の距離が近い分、筆者の見ていた最後尾からでもくっきりと足元まで彼女たちを見ることができる。
「ただいま香港」とKeikoが挨拶をすると、Hikaruは「ようこそ!今日はみんなの顔をちゃんと見ているからね」と英語でMCを繰り広げる。これまで各国でライブを行ってきたKalafinaらしく、臆することもなく堂々たるステージだ。
Wakana (c)Woody, Billy/ED Production
「明日の景色」「光の旋律」「未来」をしっとりと歌い上げた後、「アニメは好きですか?『空の境界』知ってる?」とHikaruが語りかけると会場からは割れんばかりの拍手。それをきっかけとしてライブは一気に展開されていく。「oblivious」「傷跡」「ARIA」「seventh heaven」「sprinter」とKalafinaが主題歌を担当した劇場版『空の境界』楽曲を畳み掛けるように展開する。やはりアニメファンというベースを持っているファンが多いのか、曲に対する観客の集中力が普通ではない。
特筆すべきは「sprinter」だ。前述したファン有志のリストバンドにもサビの歌詞が刻まれるくらい、香港のファンの中では特別な曲になっているであろうこの曲が披露された時の一体感はなかなか日本では見られないものだった。
Keiko (c)Woody, Billy/ED Production
「ハーモニーは言葉を超えて、曲を伝えられるものだと思います」という言葉の後に、そのハーモニーを持たない「春を待つ」をじっくり聴かせる、新たなKalafinaの一面を観た後に待っていたのは『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』エンディングテーマ「君の銀の庭」。イントロが流れた瞬間の地響きのようなどよめきはしばらく忘れられそうにない。
“9+ONE”ツアーを通してグルーヴィかつバンドマン個々の実力を魅せつけてくれたインストを得て、流れてきたのは「メルヒェン」。日本でのツアーではこれまでの衣装で作られた巨大なオブジェが登場していたが、その代わりに現れたのは『Kalafina ArenaLIVE 2016』のオープニングで纏っていた和装衣装。ジャポニズムを感じさせる衣装に歓声が上がる中、それを脱ぎ捨て声を張り上げるKalafina。
Hikaru (c)Woody, Billy/ED Production
先日のツアーでは筆者は巨大オブジェを“過去を背負う”と表現させてもらった。それはここまでの9年の積み重ね、重みを感じたからではあるが、この日のライブで和装を纏ったKalafinaを見た瞬間、このツアーで彼女たちが得た自信を垣間見たような気がした。
まるであの巨大オブジェを羽織ったような堂々たるステージング。過去を背負い続けたこのツアーでの月日が血肉となり。それすら装飾としているかのように見えたのだ。自身を見に付けたKalafinaはそのまま「Magia」「Kyrie」。そしてこの日一番の盛り上がりをみせた「heavenly blue」「One Light」へ。
(c)Woody, Billy/ED Production
香港のライブで一番印象的だったのは、距離感の近さと会場を巡る血流のようなグルーヴ。一曲一曲に対する反応がとにかく濃厚なのだ。今聴かなければ次はいつ会えるかわからない、という思いが乗った応援はダイレクトにステージに届き、それを受けたKalafinaやバンドメンバーたちも応えるように曲を届ける、巡り巡る想いは言葉にならない衝動を生み出す。
「何言うか忘れちゃった!」とHikaruが笑えば、「集まってくれたみんなに拍手!」とKeikoが促す。Keikoは更に「2010年のアジアツアーから始めた「帰ってくる」の約束、守れています。また必ず戻ってくるね、ありがとう!」と感極まりながらMC。
最後の曲「into the world」が終わり、アンコールの時間。香港はちょっと違った。事前にファンが配っていた冊子の通りのコールは「sprinter」の歌詞の一変。
「君に会いたい、君が愛しい」とリフレインする1300人のファン。好きという気持ちに国境など関係ないのだ。願いは叶う、初日千葉から受け継がれ続けてきた指輪型LEDライトのスイッチをオンにすれば、そこにはキラーチューン「音楽」を引っさげたKalafinaがいる。ここぞとばかりに声を出し、拳を振り上げる会場。続く「blaze」も熱狂の中に終わる。
(c)Woody, Billy/ED Production
「この“9+ONE”ライトは全国を回ってきました、この香港が最後の地だけど、また会えるように「約束!」って言って帰してね!でも広東語って約束って何ていうの?」とファンに言葉を教えてもらうMCも。「私も広東語覚えてきました!」とWakanaが披露したのは「私は小籠包が好き」という言葉、これには香港のファンも爆笑。
Kalafinaのこれまでとこれからを繋ぐ大事なツアーとなった『Kalafina“9+ONE”』その最後に選ばれたのは「アレルヤ」。
恐らく、これまでの彼女なら決して選ばなかったであろう歌い方でマイクに向かうKeiko。美しくたおやかに音楽を響かせてきた彼女が今までほとんど見せなかった、全身を使って響かせるような熱唱、いや激唱。今まで何度もこの曲を聴いて、何度も心打たれてきたが、この日は違った。どんな状況でも歌うこと、伝えることを諦めない。
(c)Woody, Billy/ED Production
ここまで歌詞を体現するライブはなかなかない。言葉通り“ふりしぼって”いる。Keikoだけではない、Wakanaも、Hikaruもすべてを出し切っている。終わってしまうのか、異国のホールで一人物悲しさを感じる。改めて思うのは、音楽を作るのも、伝えるのも、受け取るのも、“いのち”なのだということ。
花びらが舞うような光の中、ツアーの全ては終幕した。もうやってきている10周年に向けて動き出したKalafinaの音楽は、きっとあかるいほうへ向かっていく。
(c)Woody, Billy/ED Production
終演後のKalafinaにインタビューを敢行
撮影:川杉あゆみ
――全て終了しました、お疲れ様でした。
Wakana:今日で16公演目、国内だと13公演やらせて頂いて、終わってみて今すごく悲しく寂しくなってきました。国内には国内の、海外は海外のセットリストでやらせていただきましたが、凄く良いツアーになったと思います。
Hikaru:パンフレットやブログにも今年の目標として「向き合う」というのをテーマにしていて、一曲の中で一回は必ずみんなを見ようと決めたツアーなんですけど、お客さんの顔を見ながらやっていると全部違うし、一つも同じライブはなかったですね。香港の人はみんな凄く熱かった!
Keiko:今回繋げたい、繋げようと思って始めたツアーですけど、私達が“9+ONE”ライトとよんでいたLEDリングによって、一つの形のあるものが繋がっていくっていうこと。実在するものがあるのと無いのとではこんなに違うんだなと。口で言っていた「繋げていくね」っていう気持ちがもっと見えてくるというか。海を超えた香港の地まで、ずっと繋げてきた絆が事象のある形としても見えたので、こういう形も1つの経験として大切に心に留めていきたいと思いました。
――「メルヒェン」の時に羽織っていた羽織は?
Hikaru:日本ではオブジェを使っていたんですけど、あれは持ってこられないので、そのかわりに持ってきたんです。
Keiko:私達自身がオブジェになるというイメージですかね(笑)。SPICEさんが以前レポートで「過去を背負う」と言ってくれたので、それをどう表現しようかなってギリギリまで考えてこうなりましたね。オブジェを自分たちで背負おうと。
Wakana:着物だし、海外のかたも喜んでくれるかなって。
――これで今年はアコースティックツアーを残して、いよいよ10周年になります。コメントを頂ければ。
Wakana:ツアーを終えたので、私達の9周年のその先をお見せできるかと思いますが、今まで積み重ねてきたことは何も変わらずに、歌い続ける気持ちは変わらずに皆さんに音楽を届けられればと思っています。
Hikaru:“9+ONE”というタイトルは今年の目標でもあるんです。今回ツアーで+ONEを実
感したので、コレを胸に刻みながらあと半年10周年まで、一歩一歩みなさんと作る年にし
たいですね。
Keiko:来年の10周年にみんなが笑顔でお祝いできるように、一曲ずつ大事に「その日しか作れない音楽」を作るという気持ちをこのファイナルで新たに胸に刻んだので、その気持を忘れずに歌を届けていきたいですね。
レポート・文:加東岳史 撮影:(c)Woody, Billy/ED Production/川杉あゆみ
01.to the beginning
02.misterioso
03.Lacrimosa
04.明日の景色
05.光の旋律
06.未来
07.oblivious
08.傷跡
09.ARIA
10.seventh heaven
11.sprinter
12.春を待つ
13.君の銀の庭
<Instrumental>
14.メルヒェン
15.Magia
16.Kyrie
17.heavenly blue
18.One Light
19.into the world
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E01.音楽
E02.blaze
E03.アレルヤ
2017/11/13(月) 周南市文化会館
2017/11/15(水) 広島文化学園HBGホール
2017/11/22(水) 札幌市教育文化会館 大ホール
2017/11/26(日) 和田山ジュピターホール 大ホール
2017/11/27(月) 倉敷市民会館
2017/12/2(土) 電力ホール
2017/12/3(日) 東京オペラシティ コンサートホール
2017/12/9(土) 富山県民会館
2017/12/13(水) 愛知県芸術劇場 大ホール
2017/12/14(木) 福岡シンフォニーホール
2017/12/19(火)・20(水) ザ・シンフォニーホール
2017/12/22(金)・23(土・祝) Bunkamura オーチャードホール
デビュー 10 周年記念ライブ開催決定 !
2018/1/23( 火 ) 日本武道館