波音に溶ける高校生たちの声と演奏、2017年版ままごと「わたしの星」が開幕

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2017.8.17
ままごと「わたしの星」より。(撮影:濱田英明)

ままごと「わたしの星」より。(撮影:濱田英明)


柴幸男が作・演出を手がける、ままごと「わたしの星」が本日8月17日に開幕した。

「わたしの星」は、ままごとの代表作「わが星」の世界観をベースに、2014年に高校生キャストによって上演された作品。火星への移住が進む中、スピカの転校と文化祭の発表をめぐる、高校生たちの夏休み最後の日が描かれる。2017年版となる今作では、高校生キャスト10人と高校生スタッフ7人が公募で集められ、新たな作品として立ち上げられる。

対面式に作られた客席の中央には、ぽっかりと浮かぶように舞台が広がる。そこには古ぼけた木の柱が2本立ち、その一方に寄り添うように、大型のラジカセが置かれている。舞台の両袖にはピアノ、ギター、鉄琴、バイオリンなどさまざまな楽器が並び、開演前の場内には、寄せては返す波音が静かに響いていた。

高校生スタッフが開演の挨拶を述べたあと、ライトブルーのジャンパースカートの制服を着た高校生キャストが「私たちの文化祭にお越しいただきありがとうございます。今から、私たちの発表を始めます」と続けると、場面は一気にとある高校の日常風景へ。繰り広げられるのは、些細なことが大事件になり、最後は笑いが巻き起こる、どこにでもありそうな高校生たちのやりとりだ。

みんなのまとめ役ヒビラナ(日比楽那)、マイペースなタイちゃん(田井文乃)、何か胸にひっかかりのあるトウコ(土本燈子)、実はみんなをよく見ているサヤハ(関彩葉)、しっかり者で大人っぽい雰囲気を持つスピカ(札内萌花が転入してくるヒカリ役と2役)、スピカの幼馴染で大人しいヒナコ(須藤日奈子)、真っ直ぐな性格のイオ(池田衣穂)、明るい現代っ子のイズミ(太田泉)、そして弱気な兄ケンジ(成井憲二)とムードメーカーの弟ジュン(松尾潤)が、ふざけたり怒ったり笑ったりを騒々しく繰り返す。しかし彼らを取り巻く状況は決して“どこにでもありそう”なものではない。環境汚染が進んだ地球からは人が流出し、火星へと移住を始めているのだ。この高校にいるのは、そんな“地球に残っている人たち”であり、その中からまた1人、スピカが火星へと旅立つのだった……。

海が近い高校という設定になったこと、客席が対面式になったこと、男子キャストが2人に増え兄弟役として描かれていること、舞台に出ていないキャストが劇中で度々楽器を演奏していることなど、2014年版との違いは多数あるが、中でも大きいのは、登場人物1人ひとりが抱えるドラマがより濃く描かれたことだ。それによって、それぞれの葛藤や衝突、そして“認め合い”の理由が深まり、さらに“なぜ残るのか、残らないのか”という本作が抱える難しい問いに、新たなアプローチが加わった。公演は8月27日まで東京・三鷹市芸術文化センター 星のホールにて。

なお「わたしの星」公式サイトでは、高校生スタッフによるキャスト、および柴を含めたスタッフ陣のインタビューが公開中だ。

ままごと「わたしの星」

2017年8月17日(木)~27日(日)
東京都 三鷹市芸術文化センター 星のホール

作・演出:柴幸男
出演:池田衣穂、太田泉、須藤日奈子、関彩葉、田井文乃、土本燈子、成井憲二、日比楽那、札内萌花、松尾潤

高校生STAFF:(劇作・演出部門)圓城寺すみれ、小笠原里、塚田真愛、松川小百合 / (運営部門)大鋸塔子、谷川清夏、鶴飼奈津美

ステージナタリー
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