「ただ、立つことから始めてみよう」小野寺修二ワークショップ~銀座九劇アカデミア見学レポート
ワークショップで講師を務めた小野寺修二
カンパニーデラシネラ主宰で演出家の小野寺修二によるワークショップ「ただ、立つことから始めてみよう」が8月18日、銀座にある銀座九劇アカデミアで開かれた。小野寺の指導のもと、参加者24人は自らの身体と向き合った。俳優の高畑敦子や倉科カナも参加した。
ワークショップ参加者たち (撮影:五月女菜穂)
銀座九劇アカデミアは、長谷川京子や新垣結衣らが所属するレプロエンタテインメントが新設したワークショップスタジオ。かつては歌舞練場にも使われていたという銀座1丁目にある建物の2階と中3階部分をスタジオとしてリノベーション。「プロフェッショナルの、プロフェッショナルによる、プロフェッショナルのためのエンタテインメント研究所」をコンセプトとして掲げ、今年オープンした。今回のワークショップは、銀座九劇アカデミアにとっては記念すべき最初の事業だった。
ワークショップで講師を務めた小野寺修二 (撮影:五月女菜穂)
講師を務めた小野寺は、日本マイム研究所にてマイムを学び、95年〜06年、パフォーマンスシアター水と油にて活動。その後文化庁新進芸術家海外留学制度研修員として1年間フランスに滞在した経験を持つ。この日は、マイムの基本である「身体を分解すること」を目標に設定。まずは、立っている状態から寝ている状態へ、寝ているから状態から立っている状態へ、という動きを等速で行うことからスタートした。簡単そうに見えるが、これが案外難しいようだ。等速ではなくどこかでスピードが上がってしまったり、つま先立ちなど自分で自分の体勢をきつくしてしまったり。小野寺は「綺麗なフォルムでやらなくてはという意識がありませんか。自分の体と向き合って欲しい。体が硬いなら、自分の体がどこが硬いのか。どこに重心を置くのがいいのか。自分で探ってもらっていいですか」と参加者に声をかけた。
ワークショップの参加者たち (撮影:五月女菜穂)
体格が似ている同士で2人組になった。両手を引っ張りあいながら一緒に立ち上がる動作、背中合わせになって一緒に立ち上がる動作、片方に支えてもらいながら前後左右に立ったまま倒れていく動作など、次々と動きの指示が伝えられる。中でも面白かったのは「ゴム人形」という動作。2人組のうち、片方がもう片方の身体の部位を動かす。動かされた人間はまるで硬めのゴム人形のように、その部位を元に戻す。研ぎ澄まされた感覚を保ちながら、その動作を繰り返すのだ。参加者たちは言葉を使わない、身体を通したコミュニケーションに集中する。多くの参加者は、思い通りに動かない自分の身体の不自由さに驚き、いかに今まで自分が身体に対して無頓着だったかをひしひしと感じているようだった。小野寺のアドバイスのもと少しずつ少しずつ改善が見られて喜びや楽しさを味わっている参加者もいた。
ワークショップで講師を務めた小野寺修二 (撮影:五月女菜穂)
ワークショップの終盤、「置くと触るの違いってなんでしょう?」と小野寺が参加者に投げかけた。床に手を置く、床を手で触る。外から見たら同じ動作に見えるが、一体何が違うのか。小野寺は「自分の場合は時間の経緯で考える。触ったらそこから始まる。触って、冷たいなとか感覚が持続するじゃないですか。この“持続”が違いそうだなぁって思っています。置くと触る。動詞の時間を思っています」と話す。斬新な問いかけと答えに、参加者は納得した様子だった。
ワークショップで講師を務めた小野寺修二(左) (撮影:五月女菜穂)
「喋らないということから何が生まれるか。セリフに縛られていない強さというものがあります。マイムはダンスと違って解放を求めていない。いかに自分の中に入っていくかなんです。自分の体を見つめ直すことの連続です。まずは自分にはどれぐらいのことができるのか、自分の体を見つめ直すことから始めてみてはいかがでしょう」。そう小野寺は話して、2時間の濃密なワークショップが終わった。
なお、銀座九劇アカデミアでは今後も興味深い企画が予定されている。12月にはNYの演劇学校『ステラ・アドラー・スタジオ』より主任講師ロン・バラスを招き、ワークショップを行う。ロバート・デ・ニーロやマーロン・ブランド等、ハリウッドスターも実践する演技理論を一流の指導者から学ぶチャンスだ。詳しくは公式サイトにてチェックをしてほしい。
取材・文・撮影=五月女菜穂
「ただ、立つことから始めてみよう」
■日時:2017年8月18日(金)19:00〜21:00
■会場:銀座九劇アカデミア
■公式サイト:https://asakusa-kokono.com/academia/
■日時:
2017年12月13日(水)14日(木)16日(土)18日(月)19日(火)20日(水)各18時~21時
2017年12月22日(金)13時~16時(発表会)
■参加費108,000円
■定員:15名~最大30名
■日時:
2017年12月13日(水)14日(木)15日(金)16日(土)18日(月)19日(火)20日(水)21日(木)各11時~17時
■参加費162,000円
■定員:15名~最大30名
■公式サイト:https://asakusa-kokono.com/academia/