寺島しのぶ×柄本 佑『秘密の花園』宣伝写真撮影現場に潜入!
1982年4月に下北沢・本多劇場の開場記念公演として、唐十郎が書き下ろした『秘密の花園』が来年1〜2月、福原充則の演出で上演される。出演は寺島しのぶ、柄本佑ら。物語の舞台は、日暮里にあるひしゃげたアパート。寺島演じるキャバレーホステスの一葉と、田口トモロヲ演じる夫・大貫の元に、柄本演じるアキヨシが通うという、奇妙な三角関係を描いている。初演時は柄本明がアキヨシ役を演じたが、35年の時を経て、今回、息子の柄本佑がその役を演じることになり、親子二代の同役出演が話題を呼びそうだ。8月下旬に行われた宣伝写真の撮影現場を取材した。
撮影中の柄本佑
午前9時すぎに始まった宣伝写真撮影。柄本佑は、白シャツに、少しダボついた白っぽいズボンを身につけていた。物憂げな表情で何枚か撮影を終えると、柄本が不意に「最近、三点倒立ができるようになって」と切り出し、カメラの前で三点倒立を披露。笑いが起きた。
撮影中の柄本佑
現場には、演出・福原の姿も。「朝起きたら自分の体が35メートルぐらいになっていて、動くたびにものを壊しちゃう。なんかすみません、っていう感じで」「14歳の時どんな自分だった? 14歳の時の自分を出して」、などと指示も面白い。柄本はその要望に応えようと、あれこれ試行錯誤していた。
福原充則(後姿)、柄本佑
白いシャツワンピースを着た寺島しのぶが撮影に合流する。舞台では2010年、蜷川幸雄演出の『血は立ったまま眠っている』以来の共演だという二人。その時は絡みが少なかったにもかかわらず、撮影の息はピッタリ。「危ない理髪店みたいな感じで」「愛おしさもありつつ、快感も出しつつ」といった福原の要望を体現していく。時にプロレス技を交えるなどして、写真に立体感が生まれていった。
撮影中の寺島しのぶ、柄本佑
唐十郎の綴る物語の、狂気にも似た奇妙さがよく滲み出た現場だった。撮影の合間、寺島が柄本に聞く。「この本の面白さってどこだと思う?」。柄本は「子供の頃からテントで見ていたから、面白さとかそういう視点はあんまり……。でも、唐さんのセリフを喋ってみたいなと思っています」。寺島も「それは思った!」。
撮影中の寺島しのぶ、柄本佑
二人での撮影を終えた後は、寺島のワンショット撮影へ。時に儚げな雰囲気を醸し出すが、時に「襲いかかる3秒前」(福原)のしたたかさも表現。その表現の幅の広さに、福原を始め、スタッフたちも感心しきりだった。
撮影中の寺島しのぶ
撮影後、寺島に少しだけ話を聞くことができた。「楽しかったですね。プロレスはウズウズしましたよ」と撮影の感想を述べる。柄本が親子二代で同役出演することについては「すごいことだと思いますよ。歌舞伎では普通にできることが、こういう作品で二代続けてというのは、柄本さんにしてみれば感慨深いでしょうし、端から見ていても素敵ですよね。すごいことだなぁと思います」と話す。
撮影中の寺島しのぶ
「さっき、佑くんも言っていたけれど、唐さんの作品を見ることが年中行事というか、家族の中の行事だって言っていた。脈々と唐さんの世界を肌で感じている人と共演できるのは、自分のわからない部分を気づかせてくれると思う。今までアングラというジャンルに馴染みがなかった人にとっては、そこにどういう化学反応が起きるのかなって」
「唐さんの演出ではなくて、福原さんが演出するっていうところでどういう風になるのか。どういう風にハチャメチャになっていくのか。その、ハチャメチャの度合いが楽しみだなと思います。……説明つかない部分をどういう頃合いでお客さんに渡すのかなぁ。説明がつきすぎても面白くないし、説明するために本が書かれているわけではないから。唐さんの脳の中をいかに私たちが脚色していくかということですよね」
撮影中の寺島しのぶ
2018年、最初の公演となる。「私1月公演って1回もやったことがないんです。だから……1月に唐作品っていうのもすごく渋くていいなぁと思います。作品全体が「1月から見せられちゃったよ!」というものにしたいですね。年の初めにどれだけインパクト与えられるのかっていうのは楽しみです。監督もやりたいことがたくさんあるみたいだから、いろんなことが生み出されていけばいいですよね」。そう意気込みを語った。
取材・文・撮影=五月女菜穂
■演出・出演:福原充則
■出演:寺島しのぶ/柄本佑/玉置玲央/川面千晶/三土幸敏/和田瑠子/池田鉄洋/田口トモロヲ
■会場:東京芸術劇場 シアターイースト
■公式サイト:http://www.geigeki.jp/performance/theater153/