入野自由『屋根の上のヴァイオリン弾き』インタビュー~今の自分なら、作品の良さをもっと引き出せる

インタビュー
2017.9.12
入野自由(撮影:荒川潤)

入野自由(撮影:荒川潤)


愛され続けて、ついに日本初演50周年。帝政ロシア時代の寒村に暮らすユダヤ人一家の愛と旅立ちを描くミュージカル、『屋根の上のヴァイオリン弾き』が4年ぶりに帰ってくる。市村正親&鳳蘭のゴールデンコンビは前回のままに、夫妻の娘たちとその相手役にはフレッシュな顔ぶれが揃った。長女ツァイテルの恋人モーテルに扮するのは、2013年公演では次女の恋人パーチックを演じた入野自由。製作発表を終えた入野に、現在の心境を聞いた。

この作品が、その後の活動の礎になった

――まずは、2013年公演の思い出からお聞かせいただければと思います。

当時はミュージカルの経験が浅かったので、カンパニーにどう溶け込んでいくかということを含めて、とにかく一生懸命やるだけで精一杯でした。ただ、パーチックは革命を志す学生の役。二十歳そこそこの僕が右も左も分からない中、どうにかしようと必死に取り組む姿が、「革命を起こすんだ」というパーチックの強い気持ちにつながっていた部分はあると思います。伝統ある作品に、若さだけで立ち向かっていたという感じでした。

――この作品をきっかけに、入野さんのミュージカル界での目覚ましいご活躍が始まった印象があります。

ありがとうございます。でも、僕は子役からやっているので舞台の仕事も経験してはいましたが、あの時期は声の仕事が多かったですし、大舞台でのミュージカルも初めてでした。現場に知っている人も全くいない中で、外国に来たような感じというか(笑)、分からないことがあっても、誰に聞けばいいのかが分からないところからのスタートでした。でも皆さんが温かく迎え入れてくださったおかげで、本番を重ねるごとに変な緊張感が徐々にほぐれていき、日々のちょっとしたニュアンスの違いも感じながら舞台に立てるようになり、舞台ってこんなに楽しんだと、改めて感じることができたんです。そういう意味では、この作品が僕のその後の活動の礎になった、といっても過言ではないと思います。

――当時からモーテル役にも興味があった、というようなことは?

あの時はとにかくパーチックを演じるのに一生懸命だったので、想像もしていませんでした。だから今回のお話をいただいた時は、「まさか⁉」と思ったんです。でも改めて台本や原作を読み返すと、当時とは感じ方が違っていて、今なら作品に対してもっともっと深く向き合えるんじゃないかと思うようになって。そうすれば作品の良さをもっと引き出せると思い、ぜひやらせていただきたい、というお返事をしました。今の自分としてまた市村さんや鳳さんと一緒にこの作品を作り上げていきたい、と思ったことも大きかったですね。

共演者との関係値の中で作るモーテル役

――お稽古が始まるのはまだ少し先かと思いますが、現時点で捉えているモーテルの人物像について聞かせてください。

気弱な仕立屋という設定ですが、すごく男前な部分もあるんですよ。ひとりの人間として成長していく姿を演じられることに、大きなやりがいを感じています。今の時点で思っているのはそれくらいで、あとは稽古に入ってからですね。あまり作り込み過ぎずに臨んで、市村さんや鳳さん、相手役の実咲凜音さんとの関係値の中で作っていければと思っています。

――前回公演中、植本潤(現・純米)さんと照井裕隆さんが演じられるモーテルを毎日ご覧になっていたことを考えると、そのイメージから逃れるのは大変そうにも思えます。

確かにお二人の印象は強いですが、お二人と僕とではタイプが全然違うので、そこはあまり意識せずにできるかなと思います。でもお二人がモーテルのソロ曲、『奇蹟の中の奇蹟』をすごく幸せそうに歌っていらしたことは、今でもよく覚えていて。それに負けないくらいの幸福感を、自分なりの表現で出していきたいですね。

――初めてモーテルの衣裳を着けて臨んだ、チラシ撮影の感想は?

ヒゲを着けてメガネをかけてメジャーを首にかけた時、「ああモーテルだ!」って、懐かしい気持ちになりました。うれしかったですし、似合っている……と、自分では思ってます(笑)。見た目は大事なので、僕がモーテルになるために、この衣裳が大きな助けになってくれるのではないかと思います。

観る側の“立ち位置”によって感じ方が変わる作品

――共演者の方々の印象をお聞かせください。まずはテヴィエ役、市村正親さんから。

前回の稽古で最初にご一緒した時の僕は、「ちゃんとやらなきゃ」という気持ちばかりが大きくて、変に緊張し過ぎていました。でもそんな時、市村さんが「役者としてのキャリアには差があっても、役の上では対等な人間同士なんだからビビるんじゃない、リラックスしてやれ」と言ってくださって。声をかけていただいたことで、その時はさらに緊張したんですが(笑)、その言葉を意識することで要らない緊張がほぐれていきました。そのおかげでパーチックとしてテヴィエに語り掛けられるようになっていったので、本当に大きな言葉をいただいたなと思います。

――では、ゴールデ役の鳳蘭さんについては?

鳳さんとは、役としては絡むシーンがほとんどなかったんですが、ちょっとした一言でカンパニーを和ませてくださっていたことが印象に残っていますね。若輩者の僕が言うのも失礼なんですが、とてもチャーミングな方で。そんなお二人と、前回とは違う自分で共演できるのが本当に楽しみです。前回から色々な経験を重ね、以前よりは少し自信がついたことで余計な緊張感からは抜け出せていると思いますし、現場に知っている人も増えていますから(笑)。

――相手役の実咲凜音さんとは、今日の製作発表が初対面だったのですか?

歌稽古で一度お会いしてはいましたが、ご挨拶させていただいた程度だったので、お話をしたのは今日が初めてでした。すごく気さくで、笑顔が素敵な方という印象ですね。製作発表では一緒に歌唱披露もしたんですが、あの瞬間はちゃんとツァイテルとモーテルでいられたと思います。稽古が始まったら、ちゃんと恋人同士に見えるように、コミュニケーションをしっかり取っていきたいですね。

――最後に、この作品がこれほど長く愛され続けている理由について、入野さんの考えをお聞かせください。

観る年代によって、感じ方がどんどん変わることだと思います。さっきも少しお話ししましたが、僕自身、前回感じたことと今改めて台本を読んで感じることとでは圧倒的に違うんです。例えば、人と人との別れの重さ。SNSのある今だと分かりにくい「もう二度と会えないかもしれない」という感覚を、前回ももちろん想像してはいましたが、海外留学を経験したことで、もっと深く想像できるようになりました。僕が親になったら、その時に感じることはまた変わるはず。観る側の“立ち位置”によって変わる作品ですから、以前観たことがある方も、そしてもちろん初めての方にも、ぜひ足を運んでいただきたいと思います。

取材・文=町田麻子  写真撮影=荒川潤

公演情報
ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』
 
■台本:ジョセフ・スタイン 
■音楽:ジェリー・ボック 
■作詞:シェルドン・ハーニック 
■オリジナルプロダクション演出・振付:ジェローム・ロビンス 
■日本版振付:真島茂樹 
■日本版演出:寺崎秀臣

 
■出演:市村正親 鳳蘭 実咲凜音 神田沙也加 唯月ふうか 入野自由 広瀬友祐 神田恭兵 今井清隆 他
 
<東京公演>
■日程:2017年12月5日(火)~12月29日(金)
■会場:帝国劇場

 
<大阪公演>
■日程:2018年1月3日(水)~8日(月・祝)
■会場:梅田芸術劇場メインホール

 
<静岡公演>
■日程:2018年1月13日(土)~14日(日)
■会場:静岡市清水文化会館(マリナート)

 
<愛知公演>
■日程:2018年1月19日(金)~21日(日)
■会場:愛知県芸術劇場大ホール

 
<福岡公演>
■日程:2018年1月24日(水)~28日(日)
■会場:博多座

 
<埼玉公演>
■日程:2018年2月10日(土)~12日(月・祝)
■会場:ウェスタ川越大ホール

 
■公式サイト:http://www.tohostage.com/yane/
 
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