『I Love Musical』に出演の泉見洋平にインタビュー~「ミュージカルは色んな人生を教えてくれる永遠の学校」

インタビュー
2017.8.31
泉見洋平

泉見洋平


ミュージカルを愛する豪華キャストたちによるスペシャルコンサート『I Love Musical』が今年2017年9月2日&3日に東京グローブ座で開催される。今回で第4回目を迎える本イベント、「History」というサブタイトルが加えられ、ミュージカルの歴史とともに、珠玉のミュージカル・ナンバーの数々を堪能できる趣向という。出演は、泉見洋平 岡田浩暉 カン・テウル 坂元健児 渡辺大輔 / 井上智恵 貴城けい 増田有華 莉奈(男女別五十音順)といった錚々たる顔ぶれ。このほど、前回の『I Love Musical』にも出演したミュージカル俳優の泉見洋平に、このミュージカル・コンサートについて話を聞くことができた。

​■『レ・ミゼラブル』のイントロを聴くだけで汗をかく

-- 泉見さんは昨年(2016年)に続き、今回二度目の『I Love Musical』出演となります。前回の感想からお聞かせいただけますか。

とても楽しかったです。僕たちが楽しんでいることによって、お客様も笑顔で楽しんでくださっている。その光景を見た時に、ちょうどクリスマスの時期だったので、「今年のクリスマスは本当にいいクリスマスだなあ」と個人的に思いました。

不思議だな、と思ったのが、特に『レ・ミゼラブル』、あるいは『ダンス・オブ・バンパイア』や『RENT』もそうだったんですけど、曲のイントロを聴いただけで、自分がかつてその作品の中で演じていた頃の記憶が鮮明に蘇ってくるんです。あの時こういう気持ちだったなぁとか、スケジュールが忙しくて大変だったなぁ、稽古場に通っていた時は暑かったなぁとか。それこそが音楽の力というものなのでしょうね。

-- 今回も、岡田浩暉さんが出演されますね。昨年2016年の2月の第2回『I Love Musical』では、岡田さんのデビュー25周年を記念して、岡田さん自身が企画をされました。

ええ、そうです。そして前回(第3回)の時は、岡田さんはMCのポジションも兼ねて、全体を引っ張っていってくれました。

-- そんな岡田さんは『レ・ミゼラブル』で泉見さんと同じ時期に同じ役(マリウス)をやっていましたよね。

そうなんです。同じ時期に一緒に稽古をして、一緒にあの革命を戦った間柄なんです(笑)。……なのですが、同じ舞台の上で共演することはありませんでした。毎日のように稽古場や劇場で会っているのに、舞台には一度も一緒に立っていないっていう(笑)。ですから、前回の『I Love Musical』でお会いできて、同じ舞台で一緒に歌えたっていうのは、すごく嬉しかったですね。十何年越の夢が叶ったみたいな感じでした。

-- そして前回、泉見さんは『レ・ミゼラブル』から、マリウスの「カフェソング」を歌いましたね。

はい。久しぶりに歌わせて頂きました。……『レ・ミゼラブル』といえば、先日『レ・ミゼラブル』日本初演30周年のスペシャル・ウィークがありまして、本編の後にOB、OG達が一堂に会する特別カーテンコールに呼んでいただきました。マリウス役の僕は、ヴァルジャン役の鹿賀丈史さんの隣なりに立っていました。緞帳が上がり、♪ダン!ダーン♪というイントロが流れると、それを聴いた僕は何にもしていないのに汗が止まらなくなっちゃったんです。

僕がマリウスを演じていた頃の『レ・ミゼラブル』は、7月から9月にかけての真夏の帝劇だったんですよ。で、マリウスはウール素材のすごい厚着の衣裳で、真夏を過ごしていたんですね。「カフェソング」を歌う時には、実は下に結婚式の服を着て、その上にウールのコートを羽織っていたので、その感覚を体が覚えていたのでしょう。イントロを聴くだけで条件反射のように汗が吹きだしてくるんです。前回の『I Love Musical』では真冬の12月だったにも係らず、やはり同じ現象が起きました。それどころか、今も、この話をしただけで汗ばんできています(笑)。

-- 前回は『ダンス・オブ・ヴァンパイア』のナンバーも歌われました。

かつて『ダンス・オブ・ヴァンパイア』では、アルフレートという役を演じさせていただきました。そのアルフレートが歌う「サラへ」というナンバーを前回は歌わせていただきました。

それぞれの作品を卒業して何年も経つんですけれども、ちょっと歌うだけで、一瞬にして当時に戻れるという、そんな気持ちになりました。自分はまだまだいけるんじゃないか、という錯覚も起こしつつ(笑)。

-- いや、錯覚ではなく、充分にいけますよ! 失礼ですが、見た感じも当時とあまり変わってません。

ありがとうございます。でも、あれを毎日毎日、何百ステージ続けてやるとなるとやっぱりしんどいですね。そこは、こういう、コンサートという機会だからこそ楽しめばいいんだ、と思いました。

-- 『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『ダンス・オブ・ヴァンパイア』など、泉見さんの出演したステージは何度も拝見してきましたが、個人的に最も思い出深い作品は『SHIROH』(劇団☆新感線)ですね。泉見さんはゼンザという役を演じていました。その舞台は今でも「ゲキ×シネ」などで見ることができます。

『SHIROH』ね!  あれが上演された年というのは『レ・ミゼラブル コンサート』がありまして、それをやりながら『ミス・サイゴン』もやっていました。『ミス・サイゴン』の本番では、毎回キムに殺される(笑)。その『ミス・サイゴン』のマチネとソワレの間や、マチネの後の夜に、帝国劇場内の稽古場で『SHIROH』の稽古をやっていたんです。その当時はラジオ番組のレギュラーもやっていて、稽古の後の夜中に収録がありました。ですから、大変だった記憶しかありません(笑)。みるみるうちに痩せていきましたね(笑)。今となっては、すべていい思い出なんですけど。

■ミュージカルは色んな人生を教えてくれる永遠の学校

-- ときに、『I Love Musical』で歌うミュージカル・ナンバーはどのように決めてゆくのですか。

最初に制作サイドから「どういう歌を歌いましょうか」という相談があり、僕のほうから「こういうのはどうですか」とリクエストして、それを検討していただき通ったものであったり、あるいは、制作側から曲目を提案いただく場合もあります。

-- 今回は『RENT』のナンバーを歌ってくださるそうですね。泉見さんは1999年、日本での『RENT』にベニーの役で出演されています。泉見さんにとってはこれがミュージカル初出演でした。アメリカの初演が1996年ですから、かない早い時期でしたね。

そうですね。最も熱かった頃の『RENT』だったかもしれません。向こうのカンパニーのスタッフ・チームがそのままやってきて。話の内容もリアルタイムに近いものとしてお客さまに受け止めていただけたんじゃないでしょうか。HIVの問題を取り上げた作品でしたが、今だったらもっといい薬が出てきてますし、ベニーが持っていた携帯電話も当時はすごく大きかったんです(笑)が、今ならスマホが主流ですからね。いわゆるミュージカル、という感じではなくて、どちらかというとシンガーという感じの人達が集まり、当時の若者がそのまま舞台に乗っているというような印象でしたね。

『RENT』への出演が決まってからニューヨークに行き、劇場のバックステージに入ってベニー役の方とお話しをしました。「これから日本で僕らがやるんです」みたいな話をして。遠いものだと思っていた、夢にまで見ていたステージがすごく近くなったような感慨がありました。その後に『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』にも出演させていただくようになり、ブロードウェイの看板と同じものに自分は出演させていただいているんだ、夢は諦めずに願えば叶うんだなっていうことをひしひしと感じました。

-- 『RENT』のバックステージにはまだオリジナルメンバーがいたんですか。アンソニー・ラップ、アダム・パスカル、イディーナ・メンゼル……・。

はい。いましたよ。

-- なんと! で、今回そんな『RENT』から歌うのは「one song groly」とのこと。これは、本来ロジャーの歌ですね。

ロジャーは、自分の命がそんなに長くないということを分かっているアーティストです。自分の作品を、あるいは自分の言葉を残していきたい、という切実な思いで歌っている曲なんです。歌い手には、誰しもみんなそういう気持ちがあるんじゃないでしょうか。当時それを歌っていたロジャーの役は、TMネットワークの宇都宮隆さんだったのですが、彼が歌うことによって毎回格別の感動をいただいてました。もっとも、自分はベニー役だったから、ご一緒させていただきながらも、彼に意地悪をしなきゃいけなかったんですけどね(笑)。まあ、僕も今年ちょうどCDデビュー20周年を迎えたこともあり、当時のナンバーにチャレンジしてみたいという気持ちがありました。

-- 『RENT』のベニーといい、『ミス・サイゴン』のトゥイといい、泉見さんは“憎まれ役”を見事に演じてこられましたね。ただ、主人公たちが払おうとしない家賃をとりたてるベニーも、それから家同士が決めた許婚者を探し出すトゥイも、ある意味、とてもまっとうな人物だと思うんですよね。

おっしゃる通りです。ヒールなポジションとして捉えられてはいますけども、そうなんです。トゥイなんて、伝統や慣習が厳格だった時代の人物で、許嫁であるキムと結ばれると信じていたのに、キムがクリスとあんなことしちゃうんで(笑)。

-- クリスよりもトゥイのほうに誠意を感じます。

まったく、そうです(笑)。キムに一回振られて、北ベトナム勝利後に迎えにゆくと、キムは米兵の子タムを産んでいて……。人民委員長になったトゥイの立場としては生かしてはおけないわけですよ。ただ、人民委員長にまでのぼりつめる糧となったのはキムへの愛だったんじゃないかと思うんです。とても純粋な感情の持ち主だったと思うんですよ。

それで、他のトゥイ役の方がどう思いながら演じていらっしゃったのかはわからないのですが、僕がトゥイを演じた際の解釈としては……キムの息子タムは、命がけで守るべき愛する人が生んだ子供ですよ。気持ち的には殺せないわけですよね。でも自分の立場、今まで生きてきた自分の人生、背負っているもの、色んなことを考えたらタムは生かしておけない。だからトゥイはタムを殺そうとするんです。でも、あれは子供を殺すというより「この子を殺してしまうぞ、俺を殺さないと」ということだと思うんですね。つまり「俺が生きている限りこの子は生かしてはおけない。だから俺を殺してくれ」という気持ちでした。2004年から2014年までの10年間、トゥイを毎日毎日こういう心境で演じていたので、精神的にも体力的にも結構きつかったですね。

-- そんな『ミス・サイゴン』のナンバーも今回歌いますか。

明言はできませんが、『ミス・サイゴン』は音楽的に素晴らしい楽曲ばかりということもあり、おそらく。

-- 今回共演される岡田浩暉さんや坂元健児さんはテレビや舞台などでそれぞれ悪役や憎まれ役が増えてきたような印象があります。

どんどん演るべきです。僕なんか初っぱなからそうでしたから(笑)。前回の『I Love Musical』では、岡田さん・坂元さんと一緒にクィーンの「We Will Rock You」を歌いましたが、あの曲って歌い手の意外な一面が見れるんですよね。彼らと最初に出会った時のイメージ、岡田さんだったらマリウスだったり、坂元さんだったらアンジョルラスだったり、それらとはまったく違った一面を彼らに見出すことができたのは大変面白かったです。

--今回は他にも、色々な曲が色々な俳優さんによって歌われますね。

全36曲って、すごいですよね。バンドの方々も、ずっとノリっぱなしですし。セットリストもかなり贅沢ですよ。いわゆるロックミュージカルから、グランドミュージカルまで、ジャンルを超えて盛りだくさん。美味しいところより取り見取りといいますが、まさに歌の玉手箱や~って感じですね(笑)。

-- 公演のタイトル『I Love Musical』に因んで、泉見さんの“ミュージカル愛”をお聞かせください。

人間として、あるいは一人の歌手として生きていると、それほどドラマチックなことなんて起きないのが普通ですよね。僕も、そんなだいそれた人生を送っている人間ではないですし。けれどもミュージカルでは、役を通じて色んな人生を生きさせていただける。例えばトゥイの人生なんて壮絶じゃないですか。ファンタジーの世界でありながらも役の人生を生きさせていただき、役の気持ちで歌うことで、僕自身の人生や歌の幅も確実に広がっていく。だから僕にとって、ミュージカルは色んな人生を教えてくれる永遠の学校、卒業することのない学校じゃないかなと思っています。その意味で、僕にとって、なくてはならないものです。

-- では最後に読者の皆さんにメッセージを。

『I Love Musical』という、まさにミュージカルを愛するミュージカル・スターの方々が、珠玉のミュージカルナンバーを披露していく、本当に夢の共演のひと時です。お客さまには、心があったかくなったり、また明日も頑張ろうとか、そういう気持ちになっていただきたいので、出演者一同頑張ります!

取材・文・撮影=安藤光夫

公演情報
『I Love Musical』
 
■会場:東京グローブ座 (東京都)
■日時:2017/9/2(土)~2017/9/3(日)
■出演:
泉見洋平 岡田浩暉 カン・テウル 坂元健児 渡辺大輔

井上智恵 貴城けい 増田有華 莉奈(男女別五十音順) 
司会:立花裕人
アンサンブル:松谷嵐 Marcelino一色 石毛美帆 吉元美里衣
■演出:永野拓也
■音楽監督:鎌田雅人
■振付:岡千絵
■公式サイト:http://www.ilove-musical.jp/
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