「あさが来た」亀助役でおなじみ三宅弘城が関西で大いに語った~ナイロン100℃待望の3年ぶり新作舞台『ちょっと、まってください』
『ちょっと、まってください』合同取材会にて(撮影/石橋法子)
新作としては3年ぶりとなる待望のナイロン100℃劇団公演『ちょっと、まってください』が、11月の東京公演を皮切りに全国6ヶ所で上演される。本作についてナイロン100℃主宰で作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)は「現代における道化としての、金持ちの家族と乞食の家族が入れ替わる物語だ」とコメントしている。「詳細はまったく分からない」と語るのは、劇団の看板役者のひとり、三宅弘城。兵庫公演の合同取材会で、劇団やKERA作品への思いを語った。
「昔、医者だと思ったら最終的にきこり役だったこともあるので、新作は不安です(笑)」
ーー待望の書き下ろし新作『ちょっと、まってください』の上演が決定しました。
久しぶりのナイロン100℃の新作なので、ドキドキ感と不安の両方の気持ちがあります。
三宅弘城
ーー不安とは?
ご存じの通りKERAさんの新作は稽古をしながら作っていくスタイルなので、どういうものが出来上がるのかまったく分からない。昔、医者の役だなと思っていたら最終的にきこりだったということもあったので、油断ができないってことですよね(笑)。それも長年やってきたお互いへの信頼感があるからこそ可能なんだと思います。だから、よく役作りについて聞かれるんですけど、意味がないというか。すごく固めていくと、どんでん返しに対応しきれないので、常にニュートラルな状態でやっています。
三宅弘城
ーー役どころは?
分からないんですよ。(チラシにある)犬じゃないかな?と思ったり(笑)。実際に昔あったんです。個人的に2回ほどお休みして、久しぶりの劇団公演だー!という時に「今回三宅には、犬をやってもらいたい」と言われて、「えっ!?」って。結果的に語り部みたいな良い役だったんですけど。
三宅弘城
ーーKERAさんが実際に演じて演出されることはあるのですか。
昔はちょこちょこありました。言葉で言ってもニュアンスが伝わらない時にKERAさんが髪の毛を振り乱して、ものすごいデカい声で演じて見せたりする。そういう時はみんな、何て言うか……あまり見てはいけないようなものを見たという感じで(笑)。凝視しない程度に見ながら、ニヤニヤしています。
三宅弘城
ーー(笑)。今回も寓話的な作品になりそうですが、派手な事件や出来事が起こらない作品の場合、どこを頼りに形作っていかれるのでしょう。
どうなんですかね。役の手掛かりも少ないですし。稽古をしながら役柄も出来上がっていくので……。だから本当に、一緒に作っていく感じなんです。最近は稽古場で「ここどう思う?」と聞かれることもあるので、例えばこういうのはどうでしょうと意見を出し合ったり。「ちょっと、そういう風に動いてみて」とKERAさんの頭の中にあるイメージを伝えられて、役者が具現化していくとか。そうやって作っていくと、単純に作品や役柄にすごく愛着が沸きますよね。一緒に育っていく感じ。集団での一体感が生まれる、その楽しさがあるんです。
三宅弘城
ーー具体的にKERAさんのどんな点に信頼を寄せていますか?
例えば、自分はAプランの方が面白いしやりやすいと思っていても、KERAさんに「Bだ」と言われ、いざ板の上にあげてみるとやっぱりBの方がウケるんです。お客さんに伝わるというか。そこで「やっぱりKERAさんの言うことは間違いないんだな」と体感したり。自分が出演していない公演を観たりすると、「KERAさんの演出って面白いな」って再確認しますね。逆にKERAさんも役者が他の舞台に出ているのを観て同じように思うこともあるだろうし。僕の場合KERAさんから芝居の道に入ったので、KERAさんは親であり師匠なところがあります。
「KERAさんは新しいことを求めるスピリットがすごい。毎回ワクワクさせられます!」
ーー2018年、ナイロン100℃は25周年を迎えます。
25年も経っているというのが信じられないです。正直、劇団健康(1985年旗揚げ)からこんなに続くと思っていなかった。若い時は誰もがそうであるように”ノーフューチャー”でしたから(笑)。個人的には来年で50歳を迎えるので、ダブル・アニバーサリーみたいな気持ちです。
三宅弘城
ーーKERAさんの作風や興味の対象について、変化などは感じますか?
KERAさんの中でブームがあると思うんですけど。一時はものすごくカフカに凝っていましたし、あとは岸田國士さんの戯曲とか。中でもずっと変わっていないのが、別役実さんへの興味ですよね。先日「これ別役さんが書いたの? と思われるぐらいの作品を書きたい」と言うので、究極だな!と思いました。面白いこというひとだなと(笑)。
三宅弘城
ーーナイロン100℃を初めて観る方に、劇団の魅力をどう伝えますか?
結構変わったひとが多いと思われがちですけど、劇団員はいたって普通です。犬山イヌコさんは声優で色んな声(『みどりのマキバオー』マキバオー役、『ポケットモンスター』ニャース役など)を出していますが普通ですし、峯村リエさんは大河ドラマ『真田丸』で意地悪な役(乳母・大蔵卿局)を演じていましたがすごく優しい方ですし、大倉孝二くんはデカいですけど腰は低いですし。そういう意味では、パブリックイメージと、逆なひとが結構いるかもしれない。
三宅弘城
村岡希美さんは料理が好きでお弁当を作ってくるし、みのすけさんはなぜかリュックをずっと前でしょっていますね(笑)。最初は電車の中で邪魔になるからなのかな?と思っていたら、「お疲れさまでした~」と稽古場を出るときからそれだったので……。そういう色んな方が、色んなところで活躍しています。舞台以外で僕らに興味を持った方には「こういう一面もあるんだよ」と、舞台ではギャップを楽しんで頂けると思います。
三宅弘城
ーー兵庫公演で楽しみなことは?
大好きな阪神タイガースの本拠地なので、個人的にも楽しみにしています。以前、宿泊先が甲子園の近くだったので朝に甲子園の周りを散歩して。マクドナルドに入ったら、星野仙一監督がリーグ優勝したときのスコアが張ってあって、それを見たときは泣きそうになりました。NHK連続テレビ小説『あさが来た』でも大阪には通っていたので、すごく馴染みのある地域ですね。
三宅弘城
ーー国民的ドラマ『あさが来た』を経験して、俳優として変化はありましたか。
これだけ長い間やっていると演じる上で大きく変わることはないですけど、大阪の方のコミュニケーションは近いじゃないですか。普通に道を歩いていても「よ、番頭さん!」と声を掛けて下さるので、作品が生活に馴染んでいるんだなと実感しました。僕の役が結婚する回では「よかったね!」「おめでとう!」と言われてありがたかった。ここまで役として声を掛けられたことは、今までにない経験でした。
三宅弘城
ーー最後に、関西のファンへメッセージを。
KERAさんのすごいところは、常に新しいことをやっていこう!というスピリットがあるところ。特に劇団公演ではそうですね。自分もラクをしないですし、僕らも得意技を封じられたりするので、そういう意味でも怖さがあります。「えー、どうしよう」となりますが、KERAさんがヒントを出してくれたり、自分でもアイデアを試したり。結果、今までにない仕上がりになる。それはナイロン100℃の現場だからこそ出来るもの、劇団公演ならではだと思います。そこが楽しみな部分でもあるんですよね。やっぱり、まだ誰も見たことがない世界ですから。台本の最初のト書きを読むと「わ!こんなふうになるんだ」と、毎回ワクワクさせられます。
三宅弘城
取材・文・撮影=石橋法子
■出演:
三宅弘城 大倉孝二 みのすけ 犬山イヌコ 峯村リエ 村岡希美 藤田秀世 廣川三憲
木乃江祐希 小園茉奈/水野美紀 遠藤雄弥 マギー
■企画・製作:シリーウォーク キューブ
■問い合わせ:キューブ 03-5485-2252(平日12時~18時)
■最新情報:
http://www.cubeinc.co.jp/
http://sillywalk.com/nylon/
■日程:2017年11月10日(金)-12月3日(日)
■会場:下北沢 本多劇場
■発売開始:2017年9月9日(土)
■料金: 6,900円 (前売・当日共/全席指定/税込)
※学生割引券:4,300円(東京公演のみ/前売のみ/税込/ぴあのみ)
リーズナブルな価格で多くの学生の皆様にご覧頂くため、学生割引券をご用意致しました。
※学生割引券は当日指定席引換券となります。当日、劇場受付にて開演30分前(開場時間)より指定席券とお引き換え致します。その際、必ず学生証をご提示ください。学生指定券は、通常の席に比べてややご覧になりにくいお席になる場合がございます。2名様以上の場合、お席が離れる場合もございます。なお枚数には限りがございます。また、学生証のご提示がない場合は一般料金との差額をいただきます。
※当日券は開演の1時間前より劇場受付にて販売いたします。
※開場は開演の30分前です。未就学児童の入場はご遠慮ください。
※車椅子でのご来場は必ず事前にキューブまでお問い合わせください。
※11月22日(水)昼夜公演は収録のため、客席にカメラが入る予定です。予めご了承下さい。
■問い合わせ:キューブ 03-5485-2252(平日12時~18時)
■公式サイト: http://www.sillywalk.com/nylon/
■音楽:鈴木光介
■美術:BOKETA
■照明:関口裕二
■音響:水越佳一
■映像:上田大樹
■衣裳:宮本宣子
■ヘアメイク:宮内宏明
■演出助手:山田美紀
■舞台監督:竹井祐樹 福澤諭志
■宣伝美術:はらだなおこ