イラストレーター及川正通の半世紀以上に渡る仕事を展観
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及川正通による本展ポスター用デザイン
『ぴあ』の“顔”シリーズから寺山演劇のポスター、最新作までを網羅
1972年の創刊から2011年に休刊するまで、映画や音楽、アート、演劇、スポーツなど多彩なエンターテインメント情報を掲載し、主に若い世代の支持を得てきた情報誌『ぴあ』。その表紙を創刊3年後から担当し、“旬の顔”を描き続けたイラストレーター及川正通の全貌を紹介する展覧会が、愛知の「刈谷市美術館」で始まった。
1939年に旧満州・大連で生まれ横須賀で育った及川は、中学卒業後に百貨店「ヨコスカさいか屋」図案課に就職し、デザインとイラストレーションの基礎を現場で学ぶ。20代で日宣美展に入選し、’68年には「主婦と生活社」での勤務時代に出会った横尾忠則と共同事務所を設立。フリーランスのイラストレーターとして活動を始めたこの頃、横尾を通じて寺山修司とも出会い「演劇実験室◎天井桟敷」のポスターや舞台美術なども手がけていたのだ。
その後、1975年から描き続けた『ぴあ』のイラストは、俳優やミュージシャン、スポーツ選手といった有名人や映画のキャラクターなどの顔を、独自の視点によるパロディをまじえて大胆にデフォルメ。強烈なインパクトを世に放ち続けた作品は36年間で約1300点にのぼり、2007年には「同一雑誌の表紙イラスト制作者の世界一長いキャリア」でギネス世界記録に認定されている。
<特大号>と銘打たれた本展では、自身が年代ごとに厳選した『ぴあ』の代表作をはじめ、デパート広告など初期のグラフィック・デザイン、天井桟敷のポスター、音楽雑誌を飾ったロックミュージシャンのイラストレーション、『平凡パンチ』や『PLAYBOY・日本版』など’70年代初頭から男性誌に連載していた刺激的な劇画なども展観。さらに、長年のキャリアの集大成として現在取り組んでいる大作《ドリーム・マップ》シリーズの最新作も初公開するなど、約400点の作品や資料が展示されている。
若者雑誌が相次いで創刊しサブカルチャーが隆盛した’60~’70年代の、時代の空気を鋭い感性で描き出した作品群のエネルギーも凄まじいが、構想30年という《ドリーム・マップ》に込められた熱量も相当なもの。76年の人生とそれぞれの街に対する思いやイメージが凝縮された作品は、やはり実物の前に立って細部まで目を凝らし、謎解き感覚も楽しみながらその世界観を堪能してみてほしい。
ドリーム・マップ-大連/2015
会期:2015年9月19日(土)〜11月8日(日)
会場:刈谷市美術館(愛知県刈谷市住吉町4-5)
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は16:30まで
休館日:月曜(ただし10/12は開館)、9/24(木)、10/13(火)、11/4(水)
観覧料:一般900円、学生700円、中学生以下無料
アクセス:名古屋駅からJR快速で約20分「刈谷」駅下車、南口から徒歩約10分
刈谷市美術館公式ホームページ:http://www.city.kariya.lg.jp/museum/